リリィ白銀から話を聞くと脱出マジックを成功させるために"インビジブルメモリ"を使っていたのだが制御が効かなくなり更にはメモリまで排出されなくなってしまったらしい。
その話を聞いたフィリップは疑問に思う。
「おかしいね。
本来メモリは"挿した瞬間"に超人形態に変身する筈だ。
姿を消す能力が発揮するのはその後だよ。」
「ん?じゃあ
「このメモリは"異常"だ。
バグが発生しているのかも....」
その言葉に動揺したのかリリィは消えたり出たりしている。
「そんなぁ....お願いします私を元に戻してください。」
リリィの頼みに翔太郎は快諾するとメモリの居所を突き止めようとリリィに質問する。
「そのメモリは黒服の組織の売人から買ったのか?」
「いえ、貰ったんです。
んー、物腰の柔らかい感じの人で悩んでる私の元に現れてこのメモリをくれたんです。」
「売人じゃない"謎の紳士"。」
フィリップはそれに該当する人物を考えて頭を悩ませている。
「その男を探し出すしかないな。」
そう言うと翔太郎達はメモリを渡した謎の人物を探し始めるのだった。
Another side
井坂の戦いはかなりの苦戦を強いられていた。
追加ルールもあるが何より三体のドーパントが強かったのだ。
デビルメモリのドーパントは身体に雷を纏うとその速度で攻撃を行う。
それには負荷がかかるようだがスフィンクスドーパントの光による回復でそれを無効化している。
そして、シープドーパントはデビルドーパントの攻撃の間をぬって井坂に着実にダメージを与えていった。
サラが腕時計を見ている辺り、彼女が制限時間を計っているのだろう。
(時間を教えてくれなかったのも私の動揺を誘う作戦ですか。)
井坂は少ない手段の中で勝ち筋を探っていた。
ウェザーメモリの力は封じられたが私には"他のメモリ"の力がある。
井坂の身体には無数のコネクターが付いておりそこに沢山のメモリを挿していた。
"ガイアメモリのキメラ"....井坂を現すのに正確な言葉はこれ以上無いだろう。
故に副次的に手に入れた力もある。
1つ目が"異常なまでの耐久性"だ。
原作でも通常のマキシマムドライブを受け付けなかった井坂だがエンゼルビゼラの力により耐久力が更に上がっていた。
そのお陰もあり三体からの攻撃にも何とか耐えられていた。
もう1つが"身体能力の向上"だ。
ウェザーメモリ自体、パワータイプのメモリではなく能力特化のメモリであるが度重なるメモリの実験により、肉体のパワーが強化されていた。
その代償として"カロリー消費"が増えてしまったのは難点だが当たればそれなりのダメージは与えられるようになった。
(兎に角、今は無茶をしてでもダメージを与えた方が良さそうですね。)
そう言うと井坂は高速で攻撃を仕掛けてくるデビルドーパント....リーゼの攻撃をわざと受けた。
拳が深々と刺さるがそれを両手で止める。
「ぐっ....捕まえましたよ。」
そのまま蹴りを加えようとしたらシープメモリの水島に止められてしまう。
蹴った感触からもダメージが無いことが分かる。
そして、リーゼを捕まえていた腕を逆に捕まれるとそのまま関節技を極めて倒そうとしてきた。
嫌な予感がした井坂は無理矢理腕を引き抜く。
「プロレス.....いや、柔術ですか。
貴方は武道家か何かで?」
井坂の問いに答えること無く、戦闘はまた振り出しに戻る。
("厄介すぎる"こちらが捨て身で攻撃してもかわされ、あちらはダメージを受けても回復する手段がある。
オマケにその回復役が全くこちらに来ようとしない。)
ガイアメモリはその特性上、毒素により人間の本来の性質が大きく出る。
暴力的ではない筈の人間も内在していた感情がメモリにより漏れ出すのだ。
しかし、美頭と水島からはその気配が全くしなかった。
恐らくドライバーの影響もあるのだろう。
毒素肯定派の井坂にとっては不愉快が結論だが今回はそれが井坂自身を苦しめていた。
(やれやれ...絶体絶命とはこの事ですね。
やはり、メモリの能力が少ないのが原因でしょう。
もっと、強い力が欲しいですねぇ.....
仕方ありませんが奥の手を使いましょうか。)
そう言うと井坂はもしもの時に仕込んでいた手段を使うのだった。
サラと獅子神は井坂の戦いを傍観しながら琉兵衛に報告するための評価をしていた。
「耐久力に関しては獅子神クラスと言えるわね。
シルバークラス三体からの攻撃を食らっても平気そうだし....」
「ふん!だが、能力頼りな面が強いな。
武術の心得はあるようだが達人クラスには程遠い。
この状況を打開する手段はないだろう。」
「それには同意ね。
もし、彼が時間切れによる勝利を狙っているのなら諦めた方が良いわ。」
琉兵衛から追加で言われた命令には私達のルール追加と制限時間の変更が言い渡されていた。
「まさか、"サラの考える制限時間"まで戦うとは.....
これも全て琉兵衛様を怒らせた罰だな良い気味だ。」
獅子神はそう言って苦戦する井坂を笑っていた。
そんな中、井坂の動きが変わる。
リーゼの拳に合わせて身体を前に押し出したのだ。
結果としてリーゼの鋭い爪が井坂の肩を貫通させたが、本人は痛むどころか笑っていた。
「あはははは!そんなものですか?」
水島も残った腕を掴み関節技を極めるが折れるのすら気にしない素振りで水島を掴むと美頭へと突進していく。
先程とは打って変わった動きに美頭、リーゼ、水島は井坂に押し倒されてしまう。
「さぁ、彼等を捕まえましたよ。
これは試験の合格と捉えても宜しいですか?」
そう言う井坂にサラも認めざるを得なくなった。
戦いが終わり、メモリを解除した両名に美頭が回復を行う。
両手を握り支障が無いことが分かると井坂は立ち上がった。
「凄いメモリですねぇスフィンクスメモリとは....
とても興味深いですよ。」
そう言いながら立ち上がるとその場を立ち去ろうとする井坂にサラが尋ねた。
「ねぇ、貴方一体何をしたの?
決着が付く前のあの一瞬、貴方の身体に異変があったように見えたけど....」
井坂は答え合わせをするように口を開けた。
そこには穴の空いた歯が数本付いていた。
「虫歯ではありませんよ?
ここには緊急用にエンゼルビゼラを入れておいたんです。
一つ噛めばかなり強化されますからね。」
「成る程、それがあの強さと無茶が出来た理由なのね。
理解したわありがとう。
近い内に琉兵衛様からの接触があるかもしれないからその時はよろしくね。
では、私達はこれで失礼するわ。
行きましょう獅子神。」
そう言って二人が出ていくのを確認すると井坂は口から大量の吐血をした。
「グボォ!.....ハァハァ。
やはり無茶が過ぎましたねぇ。」
歯に仕込んでいたエンゼルビゼラは合計で四つ。
あの一戦で一気にそれを服用したのだ。
急激に上昇した毒素により多少のダメージを井坂は負っていた。
井坂は時計を確認する。
(そろそろ、"彼女の経過観察"をしなければ....)
井坂は口をハンカチで拭くと立ち上がり目当ての場所へ向かうのだった。
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