第八十三話 現れるK/新たな来客
無名は孤島を出る前に、メイカーと会話していた。
「では、これより先は琉兵衛様の意見に従い新型メモリの開発、そしてアクセサリーシステムで使用するギジメモリの開発を行ってもらいます。」
『依頼内容確認.....新型メモリ生成...
現段階の情報で作れるメモリは"二本"です。
アクセサリーシステム関連のメモリはまだデータが少なく現段階での製作は不可能です。』
「そうですか....まぁ良いでしょう。
至急、その二本のメモリを作ってください。
アクセサリーシステムに関しては追加のデータが揃い次第で構いません。」
『了解....無名様、貴方に一つ質問があります。
解答してくださいますか?』
「何ですかメイカー。」
『何故、須藤霧彦を救いこの孤島に匿っているのですか?
ミュージアムのデータを閲覧しました。
須藤霧彦はミュージアムを裏切り妻の冴子から粛清された筈です。
なのに何故、彼の肉体が孤島に保管されているのですか?』
「監視カメラをハッキングしたのですね。
そんな許可はメイカー、貴方に与えていませんが....」
『その通りです。
しかし、私はミュージアムの利益を優先させる為に作られました。
貴方の行動がミュージアムに対する裏切り行為になるのではと警戒しております。』
「先ず彼を助けたのは僕が試したい研究を行うためです。」
『その研究についてお聞きしても?』
「まだ、草案の段階なので.....そしてそれを実行するのに霧彦を使うのが一番良いと言う結論を出しただけです。」
『ならば何故それを琉兵衛様に報告なさらないのです?』
「組織のトップに渡す物は完璧にしてからと決めています。
草案段階の研究など話すに値しないと結論付けただけです。」
「逆に聞きましょうメイカー。
僕がミュージアムを裏切ると思いますか?
その予兆は?まさか霧彦を生存させた程度が理由とは言いませんよね?」
『.........』
「良いですかメイカー。
僕の研究に口を出したいのも分かります。
人間とは時に非合理的な行動を取りますから。
しかし、その行動が必ずしも最悪な結果を生む訳ではありません。」
「僕を断じたいのならそれ相応の証拠を持ってきてください。
出来ないのなら過分な口出しは遠慮して貰いましょう。」
『了解しました無名様。
余計な口出しをお許しください。』
「いえいえ、貴方は完成してから日が浅い。これから色んな事を学んでいくんです。
ガイアメモリだけでなく人についてもね。
では、私は風都に戻ります。
メモリが完成したら連絡を....黒岩を置いてきますので彼に渡してください。」
そして、無名が部屋を出ようとすると足を止めて振り返った。
「そうだ.....一つ"忠告"をしましょう。」
『忠告ですか?』
「えぇ、忠告です。」
【機械風情が僕の楽しみを邪魔するな。貴様を消さないのは物語を楽しくさせるためだ次、余計なことを言えば地球の記憶からお前を消すぞ?メイカー】
メイカーは無名ではない誰かからの脅迫を聞き、機械でありながら恐怖感を覚えた。
しかし、無名に言われた忠告は覚えておらず、思い出すこともないだろう。
ただ、無名に対する恐怖だけを残しながら.....
(まただ.....また何かが起こった。)
無名は風都に戻りながら自分に対する違和感について考えていた。
まるで、自分以外の誰かと入れ替わっている様な感覚だ。
しかし、それを示す証拠もない。
メイカーに尋ねたが何も知らなかった。
だが、僕には分かる。
何かが起きていると....思えば可笑しいことはこれまでにあった だが、違和感が前よりもドンドンと強くなっていく。
(一体何なんだこれは?)
答えが出ないまま無名は風都に到着すると、園咲邸に向かうのだった。
園咲邸では先に来客があったらしく、琉兵衛はその相手をしていた。
師上院が琉兵衛に僕が来たことを報告すると部屋の中に通された。そこには白い服を着た銀髪の外人男性が立っていた。
その格好から財団Xの人物だと分かる。
その人物が僕を見ると琉兵衛に尋ねる。
「Mr.琉兵衛。
彼は何者ですか?」
「彼が我がミュージアムでガイアメモリの研究開発を行っている者だ。」
「無名と申します。」
そう挨拶すると白服の男も返す。
「私は財団Xのエージェントである"キース・アンダーソン"だ。
無名とは君の事だったのか。」
「僕の事をご存じで?」
「あぁ、私が推し進めていた"ネクロオーバー計画"の研究者と被験者達を匿っているだろう?」
"ネクロオーバー計画"NEVERの大元となる酵素を使った人体の再生技術の計画名だ。
これが使われたのはガイアメモリとのコンペティションだった筈......
「貴方は...」
「そう、私はネクロオーバー計画....NEVERを投資対象として推薦して加頭が推し進めていたガイアメモリと競合し負けた。
私は役に立たなかった大道克己とマリアを消そうとしたが君が介入し、ミュージアムに加わったせいで制裁が出来なかった。」
「つまり、間接的に私の邪魔を君はしたのだよ。」
「それは残念でした。
しかし、大道マリアのお陰でミュージアムの研究は進みました。
出資先である財団からしたらデメリットは無いのでは?」
無名の問いにキースは答える。
「確かに、組織としてはな。
だが、我々は同じ組織に属してはいるが仲間ではない。
加頭は気に入らない....だからこそ私はミュージアムの総帥であるMr,琉兵衛に提案を持って来たのだよ。」
「提案ですか?」
「あぁ、取引相手を加頭から私に変える...そう言う提案だ。」
「それをするメリットはあるんですか?」
「先ず、私のメリットはミュージアムの功績を私の手柄として報告できる。
君達のメリットは私が"ミュージアムへの出資を止める"事を財団に報告するのを止められる。」
「それは僕達を脅していると言うことですか?」
「いえ、ただ友好的な取引相手に変えた方が良いと提案しているだけです。」
琉兵衛が何故、来客がいるのに僕を呼んだのか理解できた。
この男の言い分は滅茶苦茶だ。
確かにミュージアムとしては取引するエージェントが変わるだけなので損はない。
だが、出資停止を交渉材料に使うのはどう考えてもおかしい。
奴は僕達の組織に有益な物を提示できていない。寧ろ脅して奪い取ろうとしているのだ。
(成る程、僕の呼ばれた理由が分かりましたよ。)
想定できているが一応、琉兵衛に確認する。
「その判断は頭目である琉兵衛様が決められることです。
琉兵衛様、如何致しましょう?」
「ガイアメモリに関することは君の方が詳しい。
君の決定を組織の決定としよう。」
(思った通りだ。
なら遠慮無く......)
僕はキースに向かい笑顔で言い放った。
「まるで"ハゲタカ"ですね。」
「どういう意味です。」
「他人の功績を奪い取り、あたかも自分が勝ち取ったかのように喧伝する。
愚かで矮小な人間を日本の言葉でハゲタカと揶揄するんです。」
「丁度、貴方みたいな人をね......」
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