侑さん、歩夢さん、柚月さんを加え新しく同好会を立ち上げ、今から活動スタートする訳だが……
「まずは活動場所の確保ですね!」
……まぁそうなるよな。部室は使えないわけだし
というわけで学園の外で何かいい場所がないか探し回ってる。しかし工事中だったり子供がたくさんいたりで中々いい場所が見つからない
ちなみに探してる途中……
「ここも無理ですね……」
「そうだね……でも、なんでわざわざ学園の外を探してるの?」
「それは……かすみんは生徒会に睨まれてるんですよ……なので構内での活動は難しいんです」
「え……何があったの」
侑さんに聞かれるとかすみはばつの悪そうな顔で答え、柚月さんはそれを疑問に思っているようだ。すみません、完全にこいつの自業自得っす。
というかさっきから色々歩き回ってそろそろ疲れてきたんだが……なんで4人は全然平気そうなんだよ。そろそろいい場所見つかってくれよ
「うーん……あ、そうだ! 私いい場所知ってる!」
すると、侑さんがどうやら心当たりのある場所を思い出したようだ。
「ホントですか!?」
「うん、案内するから着いてきてよ。みんな行こ!」
「あっ……待ってよ侑姉!」
オレたちは侑さんの案内に着いていくことにした……ってちょっと待ってください走るんすか? オレそろそろ限界なんですけど
しかしオレのそんな思いも届くことなくみんな走り出してしまった
侑さんについて行ってたどり着いたのは東京湾近くの公園だった
その場所は先程とは違い辺りに人はおらず、まさに練習場所にはうってつけの場所であった
「おぉ〜! 広いです!」
「ここなら誰の迷惑にもならないと思うし……どうかな?」
「バッチリです! ……それよりも……」
「ぜぇ……ぜぇ……ん、皆さんどうしたんすか?」
練習場所を見つけこれから練習開始……と思っていたら4人の視線がオレに集まった
「どうしたもこうしたもないよ、時雨くん疲れすぎでしょ」
柚月さんはオレが疲れ果ててることに対してツッコミを入れた
「いや…………こんだけ動いたんだから疲れるに決まってるじゃないっすか……はぁ……」
オレはあまりの疲れからか地面に膝を着いた、服が汚れるとかそんなこと言ってられるか
「確かにいっぱい動いたけど……そこまでではないかな」
「あははっ、時雨くんってば体力無さすぎだよ〜!」
かすみだけでなく歩夢さんと侑さんは平気そうにしてる……。オレが体力ないのは自覚済みだったが……まさか女子以下とは思わなかったわ。普通にメンタルに来る
「もうっ! シグ助ってばトレーニングしないと!」
「俺が付き合ってあげようか?」
「いえ、オレがトレーニングしたらそれだけで身体壊れます」
「そんな自信満々に言うことかな……」
柚月さんは見た目に反して結構鍛えてるみたいだからな、柚月さんと一緒のトレーニングなんてオレには絶対無理だ。それにオレに体力がないのは昔からだし
「あーやべ、なんか出そう」
「もう限界じゃん」
「こうしとけばそのうちマシになるんで……すみませんオレのことほっといて話進めてください」
これ以上オレに構いすぎると話が進まなそうと思ったオレはそんな提案をした。体力無し男は辛いぜ
「シグ助がそう言うなら……コホン。それでは皆さん、これを見てください!」
かすみはそう言いながら鞄の中を探り始め……
「ジャーン!」
取り出したのはスクールアイドル同好会のネームプレートだった。マジで盗んできたんだな、嘘であって欲しかったわ。しかもよく見たら小さく『かすみんの』って書いてあるし
「あれ? それって生徒会長が持ってたんじゃ……」
「かすみんが取り返したんです!!」
「へぇ〜……よく話し合って貰えたね」
「いえ、無断です」
「ダメじゃん」
「だから睨まれてるんじゃないのかな……」
柚月さんと歩夢さんはかすみに正論を言った。少しは反省しろこいつは
「うっ……! と、とりあえず。早速活動を始めますよ!」
「誤魔化した……まぁいいや。じゃあ早速ステップの練習かな?」
「それも大事だけど……まずはこれです!」
そう言ってかすみはスマホを取り出した。あぁ……そういう事か
「スマホで何するの?」
「それはですね……」
「自己紹介動画っすね、まずはスクールアイドルをやってるって事を知ってもらう必要があるんで……動画をアップロードして同好会を宣伝しましょう。運が良ければ部員も集まるかもしれませんし」
疲れが少し回復したオレは立ち上がり、説明をしようとしたかすみに割って入って全て説明した
「って、なんでシグ助が言っちゃうの!」
「お前に説明させたらどうせ人がいっぱいいた方が自分の可愛さが引き立つとか言い出すだろ」
「うぐっ……べ、別にそんな事言わないし……」
「思いっきり図星だろ」
やっぱりな、かすみが言おうとする事も大体わかってきたわ
「時雨くんはかすみちゃんのことに詳しいんだね」
柚月さんがオレにそんな事を言ってきた
「あー……まぁ、一応中学からの仲なんで」
「えっ、そうだったんだ」
オレが答えると柚月さんは少しばかり驚いた反応を見せた。そういえば言ってなかったなこれ
色々あったが早速自己紹介動画の撮影をすることに、まずは手本としてかすみの撮影をするとのこと。侑さんがスマホを向けかすみを撮影する形だ
そして録画ボタンをタッチし、撮影が始まると……
「ヤッホー! 皆のアイドル、かすみんだよ〜! かすみん、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長になったんだけど……そんな大役が務まるかとっても不安〜。でもぉ、応援してくれる皆の為に〜、日本一可愛いスクールアイドル目指して頑張るよっ♪」
……まぁこんな感じになるのは予想出来たよな、柚月さんと歩夢さんはポカーンってしてるし……おいどうすんだよこの空気。……なんて思っていたら
「わぁ〜……!! すごく可愛いよかすみちゃん! 私トキめいちゃった!!」
「「えっ!?」」
オレ達と違い侑さんは今のかすみの自己紹介にときめいてしまったようだ。……この人あれか? なんでも可愛いっていうタイプの人か? 今どきの女子高生かよ……今どきの女子高生だったわ
「流石侑先輩です〜。かすみんの可愛さを分かってますね〜!」
ほーらすぐ得意げになる。こいつは褒めたらすぐ調子に乗るからな
「それじゃ次、歩夢先輩の番ですよ。今みたいな感じでお願いしますね」
「えぇっ!? 私!? 無理無理無理だよぉ!!」
歩夢さんは明らかに恥ずかしがってる様子だ、まぁ歩夢さんはかすみとはタイプが違うしこういうのはハードルが高いだろうな
「なんで恥ずかしがってるんですか!! 自己紹介はスクールアイドルの第一歩ですよ!」
「目が怖いよかすみちゃん!!?」
「大丈夫ですよ、かすみん程じゃないですけど歩夢先輩も十分可愛いですよっ。ほら早速〜!」
かすみのやり方は少々強引な気もするが、スクールアイドルは大勢の客の前で歌って踊らなければいけない。つまり自己紹介くらいは出来ないとな。
まぁ歩夢さんはこういうのは得意じゃなさそうだし少しづつ慣れていってもらえばいいか
「で、でも……」
やっぱり恥ずかしいのか歩夢さんはまだ決心がつかない様子だ
「少しづつでもいいからやってみたら? 大丈夫、俺達もちゃんと見てるから」
……と、柚月さんが歩夢さんに向けてそう言った
すると歩夢さんは……
「柚月くん……わ、分かった。やってみるよ……」
柚月さんに促さられ、歩夢さんは自己紹介動画を撮ることを決めたようだ。
そして歩夢さんの撮影を開始、今度はかすみが撮影係で歩夢さんにスマホを向けている
「あ……えっと……。に、虹ヶ咲学園普通科2年の上原歩夢です……。えっと、私……」
歩夢さんの撮影が始まった訳だが……やはり恥ずかしさが抜けきっていないのか声も小さく下を向きながらもじもじしている
「もう、声が小さいですよ!!」
そんな光景を見たかすみは歩夢さんに指摘した
「あっ……ご、ごめん……。わ、私! スクールアイドルやりたくて!!!」
「今度は大きすぎます!」
指摘されて慌ててしまったせいか今度は単なる大声になってしまい、それをまた指摘された。
「ちゃんとファンのみんなのことを思い浮かべてください!」
「ふ、ファン……? そんな事言われたって……」
「全く、これじゃ不合格ですね!」
困惑してる歩夢さんにかすみは追い討ちをかけるように不合格と告げた。厳しいなおい
「あちゃ〜……でも、初めてだから仕方ないよ」
「うんうん、かすみちゃんも許してあげて?」
「お2人は甘すぎます! それじゃ1人前のスクールアイドルにはなれませんよ!」
侑さんと柚月さんは歩夢さんを庇うような発言をしたが、それに対してかすみは甘すぎると指摘した。
「そ、そんなこと言われたっていきなりは難しいよぉ!」
それに対して歩夢さんは反発した。確かに歩夢さんの言う通りだな、自己紹介動画はスクールアイドルとしてできておいた方がいいのは確かだがいきなりできるもんじゃねーだろ。
そしてそんな歩夢さんを見たかすみが……
「仕方ないですね、ではかすみんがアドバイスをしてあげます」
「アドバイス?」
突如かすみにそんな事を言われた歩夢さんは疑問に感じたような顔をしている。これはこの場にいるかすみを除いた全員がそうだろう
「はい、まずは両手を頭の上に乗せてください」
疑問に感じてるオレ達に構わずかすみは歩夢さんにそう告げた。
「えっ……こ、こう?」
そしてかすみに言われた通りに歩夢さんはポーズを取った
「よし、次は語尾にピョンを付けてみましょう!」
「ピ、ピョン!?」
「なんでそうなるんだよおい」
両手を頭に乗せたらウサギのポーズだし……語尾にピョンって付ける……まぁやりたい事は分かる。ただやる意味が理解できないんだよ。
「はぁ……あの馬鹿は……。2人も何とか言ってやって下さいよ」
オレは侑さんと柚月さんに助けを求めようと2人の方を向くと……
「うさピョン!!」
「ん? なんかこれ既視感が……」
「柚月覚えてる? あゆぴょんだよ! 小さい頃やってたじゃん!」
「あゆぴょん……あ、思い出した!! ……ぐふっ、ダメだ。可愛すぎる……」
侑さんは目をキラキラ輝かせていて柚月さんは昔のことを思い出したのか何故か吹き出している
「あ、コレ2人もダメそうっすね」
え、2人もおかしくなるんすか? ボケはオレの役目じゃないんすか? せめて2人はツッコミでいてくださいよ
「さぁ……! 行きますよ!」
「あ……ああ……」
しかし困惑しているオレに構わずかすみは歩夢さんに自己紹介を続けさせようとしていた
つーか歩夢さん困ってるだろ、さすがに止めるか……
「おいかすみ、そこまでにしとけ」
オレはかすみの肩に手を置き一旦辞めるよう促した
「むっ……シグ助は黙ってて! スクールアイドルの先輩としてかすみんがみっちり指導しないといけないんだから!」
しかし、オレの言葉に耳を傾ける様子もなかった
「歩夢先輩! 早くしてください!」
「あ……歩夢だピョン……」
聞こえるか聞こえないか位の声で歩夢さんは言った。当然かすみがそれを許すはずもなく……
「声が小さいです!」
「あ……あ、歩夢だピョン!!」
「もっとうさピョンになりきって!!」
「うさピョンだピョン!!」
「ピョンに気持ちがこもってない!!」
「ピョ────ン!!!」
先程よりも酷いかすみの指導に歩夢さんは恥ずかしさからか若干涙目になっている。しかしかすみの指導は止まらなかった
……申し訳ないっす歩夢さん。こうなったかすみは言っても聞かないんで
つーかアイツ気づいてんのかよ。
……今のお前は、あの人とやってる事同じじゃねーのか?
その後気づけば夕方になっていた。
「週末には動画をアップするので、ちゃんと自主練しておいて下さいね?」
あの後何度も続けたがかすみが納得いくものは撮れずに練習は終わってしまった。恐らく明日もやるんだろう
「可愛い怖いかわいい怖いカワイイこわいカワイイコワイ……」
歩夢さんは可愛いがトラウマになったのか自暴自棄になってしまった
「歩夢ちゃん大丈夫? ……ごめんね、俺が止めてあげれば良かったのについつい見るのに夢中になっちゃって……」
今の歩夢さんの状態を見て柚月さんは反省しながら歩夢さんを慰めている。まぁ柚月さんが止めようとしてもあいつは聞かなそうだけど
「それにしても……可愛いって大変なんだね」
「まぁ、アイドルの基本ですから」
「でも、せつ菜ちゃんは可愛いっていうよりはカッコイイって感じだったなあ〜……」
柚月さんと歩夢さんを見ていると、かすみと侑さんのやり取りが聞こえてきたのでオレはそちらに反応した
「え、侑さんはせつ菜さんを知ってるんすか?」
「うん! この前のライブを見たんだ。それをみて、私はスクールアイドルを好きになったの!」
「そういう事だったんすか……」
やっぱりオレの予想した通りだった。恐らく今日話した感じだと侑さんはせつ菜さんのライブを見て強く胸を打たれたんだろう
……この人ならいけるか……?
「あ、そういえば気になってたんだけどさ。同好会ってなんで廃部になっちゃったの?」
オレが考え事をしてると侑さんがそんな質問をしてきた。そういえば説明してなかったか
「それは……元はと言えばせつ菜先輩がいけないんです」
するとかすみが口を開き、説明し始めた
「グループを結成した時は、結構いい感じだったのに……お披露目ライブを決めた時からなんかピリピリし始めて……こんなパフォーマンスじゃ、ファンのみんなに大好きな気持ちは届きません!! って怒っちゃって……だからかすみんもついつい反発しちゃってそのまま活動休止に……」
「そんな事が……時雨くんはその時どうしてたの?」
「……オレももちろんサポーターとしてちゃんと手伝いはしてましたよ。ただ、今話してくれた活動休止の原因になった瞬間の時、オレの都合が悪くてその時は席を外してたんすよ。この話も後でかすみから聞きました」
あの時期は仕事の方が溜まってて練習メニューだけ伝えて席を外すなんてことが多かったからな。 ……もしあの時オレがあの場に居たら何かが変わってたかもしれねーのにな
「うーん……かすみちゃんもせつ菜ちゃんもファンのみんなに届けたいものがあるんだよね?」
「当たり前ですよ! スクールアイドルにとって応援してくれるファンは大切なんですから!」
「そこはかすみちゃんも優木さんも同じはずだよね? ならどうして……」
「それは恐らく……アイドルとしての方向性の違いですね」
疑問に思った発言をした柚月さんにオレはそう答えた
「かすみは見ての通り可愛いアイドルを目指していて……せつ菜さんは先程侑さんが言ってくれた通りカッコよくて熱血系のアイドルを目指している……。カッコイイアイドルと可愛いアイドルじゃ大分違いますからね」
「そっか……確かにスクールアイドルの動画を見た時も色んなタイプのアイドルがいたもんね」
スクールアイドルに限らず方向性の違いで解散する音楽グループは珍しくない、今回の同好会も同じ感じだろう……
「そういうわけです。だからこそかすみんはせつ菜先輩に負けず、最高に可愛いアイドルでいないと……」
「可愛いって何……可愛いって難しいよ……」
ふと横を見てみるとまだ歩夢さんが項垂れていた。大丈夫かこの人?
「もう、歩夢先輩! そんなんじゃファンのみんなに可愛いは届きませんよ……あっ……」
その時、かすみの言葉が詰まり、俯いた
「もしかしてかすみん……同じことしてる……?」
かすみがボソッとそう呟いたのが聞こえてきた
……やっと気づいたか、もっと早い段階で気づいて欲しかったが
「かすみちゃん?」
侑さんは俯いたかすみを見て心配そうに見つめている
「ご、ごめんなさい! かすみん今日は失礼しますね……!!」
かすみは立ち上がり侑さん達に一言告げて軽く礼をすると、こちらに背を向け去っていった
あの様子だと大分落ち込んでるみたいだな……流石に心配になってくる
「ねぇ時雨くん、かすみちゃん大丈夫?」
かすみの事を心配した侑さんがそうオレに尋ねてきた
「あー……心配しないで大丈夫っすよ。あいつはオレが何とかしとくんで……そろそろオレも失礼しますね。今日は色々迷惑かけてすみませんでした、それじゃ」
オレは侑さん達に一言告げ、軽く礼をしてかすみの後を追いかけて行った
そしてあの後少し走ると立ち止まっているかすみの背中が見えた
「見つけた……」
オレは立ち止まっているかすみの元へ駆け足で向かって行った
「お前な、1人で走って行かなくてもいいだろ……」
オレにとっちゃ走って追いかけるのも一苦労なんだよ、今回はそんなに疲れなかったけど
オレがかすみにそう言うとかすみはこちらを振り向き……
「っ……お前。だ、大丈夫か?」
こちらを振り向きかすみと目が合った。するとかすみは涙目になっていたので思わず驚いてしまった
「ねぇ、シグ助……」
「……どうした?」
「やっと同好会が復活するかもって張り切っちゃって……頑張ったのに、歩夢先輩を困らせちゃった……」
かすみは声を震わせながらそう言った。どうやら先程の事を反省して、酷く落ち込んでる様子だ
「かすみんが間違ってたのかな……? それなのにせつ菜先輩の事悪く言って……」
「……それはお前が仕切るのに慣れてないだけだろ……歩夢さんと同じだ。歩夢さんには明日謝ればいい。初めてなんだしそんなに気に病む必要……」
オレはかすみを励ましてやったつもりなのだが……
「ごめんね、今日はもう帰る…….また明日ね」
「あっ……オイ!」
よっぽど落ち込んでるのかオレの声も届かず、かすみは再びこの場を去っていった。今度は先程と違いゆっくりと歩いて行った。走ってないので追いかけようと思えば全然追いかけることは可能だが、この様子だと今日は何言っても逆効果だろうな……明日また改めて話した方が良さそうだ。そう思いオレはその場を動かず、去っていくかすみを後ろ姿を見つめていた
「……はぁ、何やってんだよオレは……」
まさかここまで落ち込むなんてな……自己紹介の時に無理矢理にでも止めた方が良かったのか?
……誰かが悲しんでる顔なんて……もう見たくないのにな
最後まで読んでいただきありがとうございました!
運動神経抜群な柚月くんに反して時雨くんは女子並み…下手したらそれ以下の体力とさせていただきました。可哀想に(他人事)