それから放課後になった
「今日は律はバイトか……」
昼休憩の時間に律に今日はバイトのシフトがあるから一緒に帰れないって言われたんだ。残念だけど仕方ないね、律も大変なんだな
「じゃあ侑姉達と帰ろっと……ってあれ、侑姉からメッセージ来てる」
そう思って侑姉にメッセージを送ろうとスマホを開いたら先に向こうからメッセージが届いていた。 メッセージが送信されたのは俺と侑姉と歩夢ちゃんの3人がいるグループチャットだった。
そして侑姉からは「2人とも予定ある? もし大丈夫だったら3人で帰ろうよ!」と送られていた
2人と帰ろうと思ってたのでちょうどいいと思い俺はグループに分かったとメッセージを送信して、待ち合わせ場所へと向かった
──
そして待ち合わせしている場所へとたどり着いた
「お、歩夢ちゃんだ。おーい!」
待ち合わせ場所には俺より先に歩夢ちゃんが校内の掲示板を見ながら待っていた。侑姉はまだ来ていないようだ
「あ、柚月くん!」
俺が呼びかけると歩夢ちゃんはこちらを振り向き笑顔で反応し、こちらへと駆け寄ってきた
「先に待ってたんだ。ごめんね待たせちゃって」
「ううん、私も今来たところだよ」
「それなら良かった。侑姉はまだ来てないのかな」
「そうみたいだね……あ、来たよ!」
「歩夢ー! 柚月ー!」
そんなことを話してると後ろの方から侑姉の声が聞こえてきた、振り向くとこちらに向かって走ってくる侑姉の姿が見えた
「2人とも先に来てたんだ。待った?」
「いや、俺も歩夢ちゃんも今来たところだよ」
「そっか、あのね。寄りたいところがあるんだけどいいかな?」
「うん。勿論」
「俺も別にいいけど……何処に行くの?」
また買い物でも行くのかな? 俺はそう思っていたのだが……
「それはね……スクールアイドル同好会だよ!」
侑姉は満面の笑みでそう言った
「す、スクールアイドル!?」
当然、歩夢ちゃんは驚いている様子だ。
「急だなぁ、どうしたのさ一体」
まぁ理由はなんとなく分かるけどね
「うん! 昨日スクールアイドルの動画とかいっぱい見たんだよね!」
案の定、やっぱり昨日見たというスクールアイドルの動画を見漁ってすっかりどハマりしてしまったのが理由だった
「カッコよくて……可愛くて……輝いてて……もう、かんっぜんにときめいちゃった!!」
侑姉は昨日ライブを見た直後と同じようなテンションになっていた。まぁ寝坊するほど動画見てたもんね。
「みんな素敵だけど1番はやっぱり昨日のあの子! 優木せつ菜ちゃんって言うんだって!」
めちゃめちゃ語るね。なんか俺たち置いてけぼりにされてる気がするよ
「ね、ねぇ柚月くん」
「ん、どうしたの歩夢ちゃん?」
「昨日の侑ちゃんってそんなにスクールアイドルの動画に夢中になってたの?」
「うん、俺がランニング行く前からずっと見てたからね」
「そうなんだ……侑ちゃんがそんなに何か夢中になるなんて珍しいね」
侑姉が熱く語っていると歩夢ちゃんがひそひそ声で俺に質問してきたので答えてあげた
「その子結構有名みたいなんだよね〜。神出鬼没の謎のスクールアイドルなんだって! 同好会の活動以外で姿を見かけた人はいないみたいだよ」
俺たちがひそひそ話してるのに気づくことなく侑姉は続けて熱く語っている
「ファンクラブとかあるのかな〜? 次のライブが決まってるなら見に行きたいなー!!」
「でも私たち2年生だよ? 3人で予備校通うって決めたしそんな暇ないんじゃ……」
熱く語ってる侑姉に対して歩夢ちゃんがそんな指摘をした。そういえばそんな約束もしてたね、予備校の事を考えると今から新しく何かを始めるっていうのは厳しいんじゃないのかな
「確かにそうだよね……けどその点は問題ないよ! せつ菜ちゃんの歌を聴きながら勉強したら凄く捗ったんだ!」
「え、ただずっと動画見てただけだと思ってたけどそうじゃなかったんだ」
「当然! 今日の小テストもバッチリだよ!」
そう言いながら侑姉はこちらに向けてピースサインを見せた。まぁ確かに音楽を聴きながら勉強してたら凄く捗るもんね。俺も集中したい時は音楽聴きながら勉強してるし、最近はfinisって名前のアーティストの曲をよく聴いてるな
「なんだか凄くやる気が湧いてくるんだよね! こんな気持ち初めてかも……えへへっ!」
先程歩夢ちゃんと話したとおり、侑姉が何かに夢中になるというのは凄く珍しい……いや、もしかしたら初めて見るかもしれない。ここまで楽しそうにしてる所を見ると微笑ましくなってくるな。きっとそれは歩夢ちゃんも同じだろう。
「まずはサインを貰わないとね! 早速行こっ!」
言い終わるや否や、侑姉は走り出した
「あぁっ! 待ってよ侑ちゃん!」
「まったく……仕方ない、俺達も行こうよ歩夢ちゃん」
「うん。そうだね」
勢いよく走り出してしまった侑姉の背中を、俺達も追いかけることにした
そして侑姉を追いかけていたら部室棟についたよ
「おぉ〜! ここが部室棟かー!」
「そういえば始めてきたね」
「そうだね……それにしても広すぎない?」
優木さんに会うためにはまずはスクールアイドル同好会の部室を探さなければならない。だからここに来たんだろうけど……
「そういえばさ、スクールアイドル同好会の部室ってどこにあるか知ってるの?」
「え? 知らないけど?」
「そんなさも当然かのような顔で言われても困るんだけど」
俺が質問すると侑姉はキョトンとした表情でそう言った
「だってホームページの更新も止まってるし案内図にも載ってないんだもん」
「え、そうなの?」
「うん……調べてみたけどどこにも書いてないよ」
そんなことある? と、俺が疑問に思っているとスマホでホームページを確認した歩夢ちゃんが教えてくれた
「じゃあどうやって探すつもり? まさかとは思うけど……」
「片っ端から探すに決まってるじゃん!」
「えぇ……? そんなの無理だよぉ……」
予想通りの返答だった。歩夢ちゃんも呆れてるじゃん。俺も歩夢ちゃんと同じ考えだね、こんなにたくさん部室があるんだから片っ端から探すなんて無謀に決まってるよ
「大丈夫、すぐ見つかるよ!」
「どっからその自信出てくるの?」
「いいからいいから! ほら、レッツゴー!」
「あ……! だから待ってってばぁ!」
歩夢ちゃんの制止も聞かず侑姉は再び走り出してしまった、やる気に満ち溢れすぎでしょ
そんなわけで早速聞き込みスタート。手当り次第聞いて回るからパパっと済ませないとね。とりあえずたまたま視界に入った部室の扉をノックして開いた
「あの〜……」
「流しそうめん同好会へようこそ! 入部希望ですか?」
「1件目からクセ強すぎない?」
扉を開けて真っ先に竹で作られた流しそうめんの装置と茶碗を持った複数の部員らしき人達が目に入った。なんなのさこの光景
「えっと……スクールアイドル同好会を探してるんですけどどこにあるか分かります?」
目の前の状況に困惑しつつも、俺は本来の目的であるスクールアイドル同好会のことについて尋ねた
「うーん……知らないなぁ」
部長さんらしき人はそう言いながらそうめんをすすり始めた。どんな状況なのこれ?
……とにかくスクールアイドル同好会についての情報を得られなかったわけだしここにはもう用はない。そう思い部室を出ようとしたら……
「美味しそう……」
侑姉が目の前の流しそうめんを見て食欲を沸かせ始めた
「あっ……し、失礼しました!」
「ほら、侑姉! 行くよ!」
「あぁっ! 待って!」
このままだとめんどくさいことになりそうな予感がしたので侑姉の手を引き、俺たちは部室から出た
「まさかあんな同好会があるなんて……」
「ホントだよ、まさか学校の中で流しそうめんしてるとこを見るとは思わなかったもん」
歩夢ちゃんは先程の流しそうめん同好会に驚いていた様子なので俺もそれに賛同した
「うーん……ここじゃ情報を得られなかったか。よし、じゃあ次行こう!」
「すごいね、今の出来事に全く動揺してない」
それくらいスクールアイドル同好会の部室を探すことに前向きなんだろうね。まぁいい事なんだけども
そして、色々尋ねて回ったが全く情報は得られなかった。
「全然見つからな〜い……」
「そりゃそうだよ……簡単に見つかったら苦労しないって」
「同好会だけで100個以上あるみたいだよ……?」
「マジか……」
「そんなにあるの……? あー……なんか頭痛くなってきた」
そんな数の中から探そうとしてたの……? 無謀すぎない? そもそもこの学校広すぎるんだよ、某鬼ごっこ番組に使われてもおかしくないレベルなんだよね
「てゆーか、私たち知らなかったけど色んな同好会があったよね」
「うん、ちょっとびっくりしちゃったよ……」
2人が話してた通りさっきの時間の間に様々な同好会に出会ったのだ。 料理研究同好会や手芸同好会など珍しいけどまあ理解出来る……というものや最初に見つけた流しそうめん同好会や巨大パフェ討伐同好会など訳の分からないものまで存在した。もう何でもありじゃん
「……いっその事便乗して新しい同好会を立ち上げるのもありだな……例えば高咲柚月のカッコよさを語り合う同好会とか」
「お、あの子に聞いてみよ! すみませーん!」
「無視しないでよ」
思いっきりスルーされたんだけど、悲しい。でも可愛いって言われるよりはマシ……なのかな?
そして侑姉は諦めずスクールアイドル同好会を探すようだ。そこでたまたま通りかかったピンク色の髪で背が小さい女の子に話しかけた。
「スクールアイドル同好会ってどこにあるか分かるかな?」
「…………」
侑姉が質問したが、その子は表情を変えることなく、ただずっとこちらを見つめていた
「あー……もしかして急ぎだったとか……?」
「だとしたら迷惑だったかな……」
確かに急いでる時に急に話しかけられたら迷惑かもね、とりあえず謝った方が……
「あれ? りなりーじゃん!」
「あ……。愛さん」
そう思っていたら階段の方から金髪で、いかにもギャルっぽい容姿の女の子が現れた
りなりー? っていうのはこのピンク髪の子のあだ名かな、ってことは2人は友達同士なんだろう。けど2人とも系統が違うしなんだか意外な組み合わせだな、初対面の俺が言うのもなんだけど
「ほら、ここがスクールアイドル同好会の場所だよ」
そしてその後、彼女は俺たちに校内図のスクールアイドル同好会がある場所を指さして教えてくれた。
「誰に聞いても分からなかったのに……」
「まぁ、最近出来たばかりの同好会だからね」
「そっか……どうりで何も情報が得られなかったわけだ」
最近出来たばかりってことは知らない人が多くても無理はないのかもね。とにかく教えてくれたこの人には感謝しないとね
「ありがとう! 助かったよ!」
「いいのいいの、気にしないで!」
侑姉がお礼を言うと笑顔でそんな返事をした、ギャルっぽい容姿だったからちょっと不安だったけどめちゃめちゃ良い人だったな、反省
「じゃあ行こっか……ってあれ?」
場所も教えて貰った事だし早速向かおうと思ったのだが……侑姉は先程のピンク髪の子に袖を引っ張られていた
「別に急ぎじゃなかった。ちょっとびっくりしただけ」
「あぁ、その事か。こっちこそごめんね?」
多分この子は1年生だろうし……まぁいきなり話しかけられたらビックリするよね。
「好きなの? スクールアイドル」
「へ? うん! ……まあ、ハマったばかりなんだけどね」
その子は侑姉にスクールアイドルは好きかと質問した
「そう……あなた達も?」
「俺はまだなんとも言えないかな。歩夢ちゃんは?」
「私も……うん、まだよく分からない……かな」
「歩夢ちゃん……? どうかした?」
「え? な、なんでもないよ!!」
歩夢ちゃんの話し方が少々ぎこちなかった気がするので問いかけてみたが誤魔化すような素振りを見せられた……ほんとにどうしたんだろうな
そしてあの後2人にお礼を言い、俺たちは教えて貰った場所までたどり着いた。ドアのネームプレートにはスクールアイドル同好会と書かれていた。どうやらここで間違いないみたいだ。
「ここがスクールアイドル同好会の部室……!!」
念願の場所を見つけられたからか、侑姉はものすごく嬉しそうにしている。
「あの……2人とも」
ドアに向けて足を進めようとしたその時、歩夢ちゃんが何かを言おうとした。そしてそれと同時に……
「何をしているんですか?」
突然誰かから話しかけられた。振り向くと黒髪で眼鏡をかけた女の子がいた
「普通科2年。高咲柚月さん、高咲侑さん、上原歩夢さんですね」
「え? なんで私たちの名前知ってるんですか?」
突然名前を呼ばれたことに驚き、侑姉はその事に疑問を持った
「確かに……もしかしてようやく俺のかっこよさが知れ渡っ……」
「生徒会長たるもの、全生徒の名前を把握するのは当然のことですから」
「「生徒会長!!?」」
「だから無視しないでって」
突然明かされた事に2人は驚きを隠せずにいた、この子が生徒会長だったなんてな。後また無視されたんだけど? そんなに俺がかっこいいのが嫌なの? いい加減泣いても許される気がしてきた
「申し遅れましたね、中川奈々といいます」
そう言って生徒会長……もとい中川さんは軽く会釈した
「ところで……この同好会に何か用ですか?」
「はいっ! 優木せつ菜ちゃんに会いに来たんです!」
中川さんに聞かれると侑姉は元気よく答えた
「そうですか。ですが、彼女はもうここには来ませんよ」
「……えっ?」
「スクールアイドルはもう辞めたそうです」
突然の一言に俺たちは驚きを隠せずにいた
「辞めたってどういう……?」
「そのままの意味です。それに、彼女だけではありません、このスクールアイドル同好会は……」
中川さんはそう言いながら部室の扉の前まで歩き、スクールアイドル同好会のネームプレートを取り上げ……
「ただいまをもって、廃部となりました」
「えっ……?」
「そんな……」
「それでは、私はこれで。失礼します」
動揺していた俺たちに追い討ちをかけるかのごとく、スクールアイドル同好会が廃部になったことを知らせた中川さんは俺たちに一言挨拶をしてそのまま去っていった
最後まで読んでいただきありがとうございました!