色とりどりの夢と希望   作:AtR

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今回から1期2話の話に入り、今作2人目の主人公である彼の出番となります!

それではどうぞ!


前途多難

「さーてと、この後予定も特にねーしこのまま真っ直ぐ帰るかな」

 

 今オレが居るのは情報処理学科の教室であり、ちょうど今帰りのホームルームが終わったので部活の準備をしてる人やそのまま下校する人の2つに別れており、オレは後者側である。……スクールアイドル同好会が廃部になる前は前者だったんだが……いや、今はクヨクヨするよりこれからどうするかを考えないとな。案はあるがそのためにはまだ色々足りねぇからな……

 

 オレが今後のことについて頭を悩ませている時だった。

 

「あ、涼風君」

 

 後ろの方から声が聞こえてきたのでオレは声のする方を振り向いた。そこには背が低くピンク色の髪をした女子がいた。

 

「お、天王寺か。どうした?」

 

 彼女は天王寺璃奈、オレと同じ情報処理学科の1年である。

 

「オレに何か用か? もしかしてデートのお誘いか? それならこの後特に予定もないし喜んで……」

 

「違う、貸してもらってたシャーペンと消しゴムを返そうと思って」

 

 デートの誘いかと浮かれてたオレに構わず天王寺はオレへの用事をスパッと言い放った。ちくしょうせっかく可愛い子とキャッキャウフフできると思ったのによぉ。

 

「貸してくれてありがとう、まさか筆箱ごと忘れるなんて……」

 

「なんだその事か、別に気にすんなよ。天王寺みたいな可愛い子が困ってるのにほっとく訳にはいかねぇだろ? そうだ、せっかくだしこの後一緒に放課後デートでもしないか?」

 

「……涼風君のそういうブレないとこある意味すごいと思う」

 

 天王寺はオレに対して賞賛の言葉を述べた。……いや、褒められてる気しねぇな多分適当に流されたわこれ悲しっ。

 ところで天王寺は先程からオレとの会話に表情を全く変化させていない。

 これには理由があり、オレが天王寺と話し始めたばかりの時本人から自分は中々気持ちを表情に表すことが出来ない……そのせいで人とあまり仲良くすることができないと告げられたのだ。

 誰にでも苦手な事はあるしオレはそれについてあまり言及はしていない。

 

「それと人を待たせてるから涼風君とデートは出来ない」

 

「人を待たせてる……友達か?」

 

「うん、同じ学科で2年生の人。優しくて良い人なの」

 

「ふーん、それなら仕方ねぇな。じゃあまた今度にでも……」

 

「言い忘れたけど何も無くても涼風君とデートはしないよ、それじゃ」

 

「急に辛辣になるじゃねえかおい」

 

 天王寺はオレにそう言い残し教室を後にした。なんだ? そんなにオレを傷つけたいのか? 

 

「それにしても天王寺に友達か……」

 

 普段は教室では孤立しているからあいつの交友関係に若干心配なとこもあったけど……今の話を聞いて安心したな。

 

「それじゃオレも帰るか……ん?」

 

 オレも帰ろうとした時、突如スマホにメッセージが届いた。

 

「なになに……? ゲッ、マジかよ……」

 

 メッセージを確認すると思わず拒否反応を露わにしてしまった。送り主はかすみからで内容は話があるからしずくと一緒に食堂で待っていて欲しい……との事だった。

 

「帰ろうとした瞬間これか……はぁ……」

 

 

 

 

 

 そんでもってかすみに呼び出され食堂に着いた訳だが……なんだろう、すげー嫌な予感がする。

 

 無視してもいいんだけどそんなことしたらもっとめんどくさい事になるからな、そう思いオレは待ち合わせしてる席へと足を運んだ。

 

「あ、時雨君」

 

「よぉしずく、先に来てたんだな」

 

 待ち合わせしてる席に着くと先にしずくが座っていた、かすみの話じゃしずくも呼び出していたらしいな。こいつも大変なんだな。

 

「てかあいつはまだ来てないのかよ」

 

「うん、なんの連絡も聞いてないの……」

 

 まじか、人を呼び出してなんの連絡もなしとかどんな神経してんだよあいつは。

 

 でもしずくと2人っきりならちょうどいいな。聞きたいことがあったし。

 

「しずく、お前さえ良ければオレが演劇の稽古に付き合ってやろうか? 例えば濡れ場の……」

 

「生徒指導に連絡してもいいかな」

 

「ふざけすぎたわごめんなさい」

 

 オレはイケメンスマイルで話しかけたつもりなんだが危うく生徒指導ルートになるとこだったわ。危ねぇ危ねぇ、オレはこんなとこで人生終了したくないからな。

 

「まぁ冗談はさておき……しずくに聞きたいことがあるんだよ」

 

「……それって鈴音さんのこと?」

 

 オレが先程と違って真面目なトーンで聞きたいことがあると話を切り出したらオレが内容を話す前にしずくが先に問いかけてきた。

 

「おう、察しが早くて助かる」

 

「やっぱり……時雨君が仕事でお世話になってるっていう転校生って鈴音さんのことなんでしょ?」

 

「ああ、それにしても2人が幼なじみだったなんてな」

 

 幼なじみがいるって話自体は聞いたことがあるけど鈴音さんとしずくが幼なじみ同士なんて流石に気づかなかったぞ。

 

 

「うん、昔はよく一緒に遊んだりしてたんだ。演劇の稽古にも付き合ってくれてたし……」

 

 しずくは懐かしそうに鈴音さんとの思い出を語っている。

 

「ねぇ、鈴音さんが作った曲を教えて欲しいんだけど……ダメかな?」

 

「別にいいぞ。今送るからちょっと待ってろよ……」

 

 しずくに鈴音さんが作った曲を教えて欲しい……と言われたのでオレはしずくの個人チャットに鈴音さんの作った曲の動画を1曲送った。

 

「finis……この人が鈴音さんなの?」

 

「ああ、鈴音さんもオレも偽名で活動してるのさ」

 

 オレはトキって名前で活動してる、時雨の時の部分を少しいじって……って感じだな。

 

「ま、そんなことはどうでもいい。早速聞いてみな」

 

「うん……」

 

 しずくはイヤホンをして、動画の再生ボタンを押した。

 

 

 

「っ……!?」

 

 

 動画が再生され、曲のイントロが流れるとしずくは驚いたのか目を見開いている。

 

 さっき話した感じだと鈴音さん……finisの曲を初めて聴いたんだろう、そりゃあれを初めて聴いたら驚くよな。

 

 

 そして曲が聴き終わったのか、しずくはイヤホンを外しスマホの画面を閉じた。

 

「どうだ? finisの曲を聴いた感想は?」

 

 オレはしずくに曲の感想を聞いてみる。

 

「うん……とても凄かったよ。曲を聴いた瞬間この曲の世界観に引き込まれて……鈴音さんがこの曲に込めた思いがすごく伝わってきた…」

 

 案の定好評のようだ、流石鈴音さんだな。

 

「これを鈴音さんが作ったんだ……」

 

 曲を聴き終わってもしずくは未だに驚きを隠せていないようだ、しずくと鈴音さんは幼なじみなわけだししずくはきっと小さい頃から鈴音さんの演奏を聴いているわけだ、色々感じるものがあるんだろう。

 

「あのね、時雨君」

 

「ん、どした?」

 

 そんなことを思っているとしずくがオレを呼びかけた。

 

「鈴音さんの両親とお兄さんが有名な音楽家なのは知ってる?」

 

「ああ、1回本人から聞いたことあるぞ、その人たちも有名だし曲も聴いたことある」

 

「鈴音さんの家族の人達の演奏は世界に通用するくらいすごくて……色んな人から称賛されてるの」

 

 しずくからは鈴音さんの家族について話された、聞いた話だとコンサートを開くと常に全席満席になるらしい。直接あったことは無いがオレにも凄さは伝わってくる。

 

「けど、昔の鈴音さんの演奏は周りから認められなくて……私は好きだったんだけどね?」

 

「え、そうだったのか。てっきり昔からあんなにすごいかと……」

 

 流石に驚いたな……鈴音さんは天才だ、あの曲が作れるのも才能……と思ってたがきっと並外れた努力をしたって事なのか。

 

「でも、今はこんなに沢山の人が鈴音さんの曲を絶賛してて……鈴音さんは引っ越して私と離れ離れになってからものすごい努力をしてそれが報われた思うと自分の事のように嬉しくて……!」

 

 

 しずくは声のトーンが上がりながら話している。鈴音さんの過去を知ってるからこそ曲を聴き、沢山の好評されてるコメントを見た時の感動は人一倍なんだろう。

 

「……やっぱり鈴音さんは凄い人だなぁ」

 

 しずくは胸に手を当てて微笑みながらそう呟いた。よほど嬉しかったんだろうな。

 

 ……だとすると余計に先日の鈴音さんの態度が疑問に感じてくる、しずくのこの様子だと仲が悪いなんてことは無いし鈴音さんが一方的に嫌っているなんて事も考えづらいしな……。引っかかるのは昔のことについてだな。その時に何かあったに違いない……さりげなく聞いてみるか。

 

「なぁ、しずく」

 

 オレがしずくに問いかけようとしたその時……

 

 

「しず子──! シグ助──!」

 

 聞きなれた声が聞こえてきた、声のするほうを振り向くとこちらに走ってくるかすみの姿が見えた。そういやすっかり忘れてたわ。

 

 そしてかすみはオレたちの座ってる席に座り込んだ。

 

「かすみさん、やっと来たの? 全く……」

 

「そうだそうだ、お前が呼び出したくせによ」

 

「2人して責めないで!! それより聞いてよ!!」

 

 

 

 

 

 話によるとかすみは無断で誰もいない生徒会室に忍び込みスクールアイドル同好会のネームプレートを盗み出し、部室に戻そうと思ったら既に別の部の部室に変わってしまっていたらしい、そして案の定生徒会長に見つかったとの事。

 

 ……うん、バカだなこいつ。

 

「あの意地悪生徒会長……!!」

 

 かすみは怒りながらコッペパンを食べている、いやお前の自業自得だろうが。

 

「怖かったね……けど生徒会室に忍び込んだりするからだよ。かすみさんの自業自得だよ?」

 

「うぐっ……」

 

 話を聞いたしずくはかすみを宥めながらも正論をぶつけた、そしてかすみは図星かのような反応をした。

 

「でもそっか……部室、無くなっちゃったんだ」

 

 かすみを宥めるのをやめたしずくはスクールアイドル同好会の部室が無くなったショックからか少し落ち込むような素振りを見せた。

 

「こうなったら徹底抗戦だよ! シグ助、デモ活動の準備して!」

 

「マジでこれ以上罪を重ねるのやめとけ、内申に響くぞ」

 

「えっ……! じ、じゃあなしで」

 

 内申に響かなかったらやるつもりだったのかよ、怖ぇよ。

 

「あはは……でも気持ちは分かるよ」

 

「だよね?」

 

「ま、確かにそうだよな。一応部員であるオレ達になんの相談も無しってのはな」

 

 全くあの人は……廃部にする意思はやっぱり変わらないみたいだな。

 

「せつ菜さんには相談したの?」

 

「する訳ないじゃん! 部活以外で会ったことないしそもそも連絡もつかないもん!」

 

「そうだよね……」

 

 

 ……こいつらに全てを話すのはまだ早いよな。 クソっ、早く何とかしねーといけないのに……!! 

 

 そんなことを考えていると……

 

「ごめんね、ちょっといい?」

 

「あ、部長!」

 

 オレたちが座ってる席の横に1人の女子生徒が来た、確かこの人は演劇部の部長だったか。

 

「何かお困りですか? あなたのように美しい方の悩みなら喜んで相談にのりますよ」

 

 勿論オレはすかさず声をかけた、こんな美しい女性に声をかけないなんて男じゃねえ。

 

「あはは、面白い子だね。それより私はしずくに用があったんだ」

 

 なんか華麗にスルーされたんだが、悲しすぎるだろ。

 

「そっか、もうこんな時間……私そろそろ演劇部の稽古にいかなきゃ」

 

 そう言いながらしずくは椅子から立ち上がった。

 

「ごめんなさい2人とも……また後で連絡するね!!」

 

「それじゃ私たちは失礼するよ」

 

「あ……ち、ちょっと!」

 

 かすみの制止も届かずしずくと演劇部の部長はこの場を離れた。

 

「……今からでも遅くない、後を追いかけるか……? 美少女2人に挟まれるプレイってのも悪くない」

 

「シグ助は黙ってて! このド変態!!」

 

「グァァ!!!」

 

 かすみに全力で背中をぶん殴られた……今のは効いたぜ……

 

 

 

 

 

 その後しずくと別れた後オレとかすみは中庭へとやってきてベンチに座った。

 

 

「ぐぬぬ……しず子の薄情者!!」

 

 またもやこいつは怒りながらコッペパンを食べている。何個食べるんだよ、太るぞ。

 

 

「仕方ねーだろ、しずくにはしずくの予定があるんだから」

 

「それはそうけど……でも彼方先輩やエマ先輩とも連絡が取れないし……」

 

 かすみは俯いて声のトーンも下がり、落ち込んだような態度になる。

 

「オレもその2人とは連絡が取れないんだよ、どうしたんだろうな」

 

 2人は連絡を無視するような人じゃないし、何かしら予定でもあるんだろうが少し心配だな……

 

 ……だからこそオレが何とかしなきゃいけないんだ。ただ、オレ1人だとまたあの時と同じことになりかねない。

 

 曲のことについては鈴音さんに頼むつもりだ、依頼料はオレが払うしそこについては問題ない。

 

 ただそれは同好会が復活した後の話だ、そこをなんとかしなきゃ始まらねぇ、そのために協力者が必要なんだ。 お披露目ライブの時、せつ菜さんのライブを見て同好会に入りたいと思った人、そしてせつ菜さんを説得してくれそうな人……そんな人がいれば完璧なんだが……。復活した後の事も考えるとサポーターになってくれる人もいてくれると助かるな……。メンバーが接しやすいような女子が1人、そしてステップの指導ができる人、こちらは男女問わない。……とまぁだいぶ贅沢を言ったがこの辺の人材が欲しいところなんだが……そんな都合よくいる訳ないよな。

 たとえいたとしてもこの学園はとんでもないくらいの生徒がいるんだ、その中から探すなんて流石のオレでもとてもじゃないが無理がある。

 

「もう! シグ助ってば聞いてるの?」

 

「っ……悪ぃ、ちょっと考え事してた」

 

 オレが今後のことについて考えているとかすみに軽く注意された、何かオレに話しかけてたんだろうか……悪いことしたな。

 

「全く! しっかりしてよ! ……」

 

 オレが話を無視していた事に怒っていると思えばかすみは急に声のトーンが落ちて……

 

 

「今は……シグ助しか頼れる人がいないんだから……」

 

 俯きながらそんなことを言った。

 

「……分かってるよ、そんなこと。オレが何とかしてやる」

 

 ……らしくねーないつもは笑顔でキャッキャしてるのに、今目の前にいるかすみはとても悲しそうな顔をしてる。そんなかすみを見たオレは少しでも気持ちが紛れたらいいと思い励ますようなことを言った

 

 と言ったところで今のオレにできることなんて……

 

 そんなことを思っていた時だった。

 

 

 

「でも、スクールアイドルってどうやったらなれるんだろう?」

 

「うーん……スクールっていうくらいだし部に入らないとダメなのかな?」

 

「でもスクールアイドル同好会は無くなってたし……いっその事、律とあと誰かもう1人誘って新しく立ち上げるのはどうかな?」

 

 スクールアイドルという単語が聞こえてきて思わず耳がピクっと反応した。同好会が無くなってた事を知ってるようだし……入部しようとしたのか?

 

 ちょうどいい、話を聞いてみるか。そう思ったオレは声のする方へと向いた。

 

「いい案だと思うけど……律くん手伝ってくれるかな?」

 

「そこなんだよねー……最近バイトが忙しいみたいだから無理かな……」

 

「それに律くんを誘えたとしても後1人をどうするかだよね……うーん……」

 

 そこには女子生徒2人と男子生徒1人の姿があった、それを見たオレはすぐさまベンチから飛び上がり……

 

 

「あぁ……! これは運命に違いねぇ!!」

 

「きゃっ?!」

 

「何っ?!」

 

「びっくりした! 誰!?」

 

 オレは3人の前に立ちそう言い放った。オレが突然現れたせいか驚いているようだ。

 

「貴女たちのような美少女に出逢えるなんて……やはり天はオレを見放してなかったようだな!!」

 

 しかし、オレは構わずセリフを吐くことを続けた。なぜなら美少女がそこにいるからな!! 

 

 女子生徒達の顔を見るとポカーンとしたような表情を浮かべている……これは決まったな。ちなみにもう1人の男子もポカーンとしてるがまぁこれはほっといていいだろう。

 

「スクールアイドルについて知りたいんですか……? ならオレが手取り足取り……」

 

「邪魔!!」

 

「グァァ!!!」

 

 後一歩のところでかすみに後ろからぶん殴られた、何すんだオイ。

 

「この変態はほおって置いて……セーンパーイ、スクールアイドルに興味あるんですかぁ〜?」

 

 

 オレの完璧なセリフに割り込んできたかすみはいつも通りの表情と声色でそう言った。なんだよ心配して損したわ。

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます!

1期2話のお話は涼風時雨くんをメインとしたお話になります!主人公達の中では1番濃いキャラでございます()
そんな時雨くんですが彼の活躍を楽しみにしてくださると嬉しいです!
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