聖櫻Days~キミと過ごす、特別な日々〜   作:もちうさ

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長らくお待たせしました
当小説大幅アップデート第2弾です


第2話『キミと一緒にストーリーを紡いで』

 

 

 

「はぁ〜〜」

 

 

 ある日の昼休み。

 昼下がりの聖櫻学園は3年生の教室が並ぶ廊下を、1人の女子生徒が溜息を吐きながら歩いていた。

 

 赤い差し色が目立つ3年生の制服を着た、青髪のおさげの髪型が特徴的な彼女。

 図書委員にして、椎名心実と並んで全校生徒から厚く慕われている、正に聖櫻を代表する人気者(マドンナ)である村上文緒だ。

 

 とても謙虚な性格に容姿端麗な佇まいが特徴的な、正に美少女を体現する彼女は何よりとっても本好きとして知られており、普段から図書委員会の一員として活動しており、本については人一倍知識がある。

 

 そのため図書室を訪れた生徒たちの要望を聞いてお薦めの本を探したり、はたまた書店を訪れて図書室に収める本を探したりするのも得意中の得意。

 

 そんな彼女が溜息を吐いている理由、それは──

 

 

「私自身やってみようとも思ったし、生徒会や望月さんの薦めで募集することにはしたんだけど…本も描いた事のない私が小説なんて本当に描けるのかな…」

 

 

 そう、オリジナル小説の執筆である。

 

 これは少々時系列を遡らなければならない。

 時は1〜2日前にまで遡る。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「『高校生オリジナル小説コンテスト』?」

「えぇ、そうなの。昨日りさちゃんが教えてくれてね、全国の全高校生を対象にオリジナルの小説を出して競い合うの。優勝したらそのまま書籍化されるそうなのよ〜」

 

 

 2日前の午後。

 生徒会室で椅子に座って話していたのは村上と天都かなた──村上と同じ3年生で聖櫻学園現生徒会長だ。

 

 天都はちょうどこの前日に副会長である篠宮りさから当コンテストのことを聞き、学園からも誰か出てもらおうかと思っていたと言う。

 そんな時に図書委員でかつ普段から様々な本を読んでいたり知っていたりする村上に白羽の矢を立てたのだ。

 

 

「りさちゃんから聞いた時に、これは村上さんにしか出来ないことだと思って声をかけたんだけど…どうかしら?」

「そうですね、ええっと……」

 

 

 村上は机の上に置かれていた、天都のはからいで用意してもらったダージリンティーの入ったティーカップを持ち上げ、一口、口に含んで考え込む。

 確かに彼女自身は本は好きで、普段から様々な本を読んではいるのだが、一つだけやっていないことがあった。

 

 それは『自身で本を描いたことがない』ということ。

 本はおろか、1章どころか1話も小説サイトに投稿したこともないのだ。

 

 それに本を読むのとは違い、それを描くのは並大抵のことではない。

 語彙力や文章構成、ストーリーの進め方と考えるだけで頭がパンクしそうなほど、物語を描くのは大変な作業なのだ。

 

 

「ええっと…せっかく声をかけてくださったんですけど…私に果たして皆さんに納得してもらえそうな小説を描ける自信があるのかが分からなくて…」

「そうなのね〜、えぇ、私たちだって、当コンテストに適任なのが村上さんだと思っただけだから、別に無理強いはしないわよ。ゆっくりと考えてちょうだい」

「はい…」

 

 

 村上はそう小さく返事し、ソーサーの上に置かれたダージリンティーの入ったカップを持ち上げる。

 

 実は彼女自身、心では決まっているのだが、脳内ではまだ結論が定まっていないのだ。

 

 

『「どうしよう…小説の執筆には興味はあるけど、私の執筆した小説がどれだけ受け入れてもらえるか分からないし…天都さんは無理強いはしてないとは言ってくれてるけど、せっかく声をかけてくれたから断りたくもない……うぅぅ…」』

 

 

 小説の執筆という、これまで本を読んできた彼女だからこそチャレンジしたいという気持ち+せっかくの天都からの誘いを断りたくないという気持ちと、だが果たして自分にそこまての執筆能力があるのか、執筆したところでどれだけ受け入れてもらえるのか、評価してもらえるのかという気持ちで板挟みになる。

 

 そんな板挟みな村上をハッとさせたのは、生徒会室に面した廊下から聞こえてきた1人の声だった。

 

 

『いいじゃない、せっかくなんだし応募してみたらどうかしら〜』

「…こ、この声は…」

 

 

 扉が開きっぱなしな生徒会室へと聞こえてきた声。

 その声に心当たりがある村上は思わず聞こえてきた方を振り返ると、そこにいたのは──

 

 

 

 村上や天都と同じ3年生の望月エレナだ。

 第1話で朝練に勤しむ皆藤と椎名を狙い撃ちしたスト…いや、写真部の部長である彼女は村上とはかなり仲が良いのだ。

 

 だからこそ、村上は溜息を吐きながらこう言った。

 

 

「望月さんったらもう…勝手な言動は困りますよ…」

「勝手な言動じゃないわよ〜、文緒ちゃんは普段から様々な本を読んでいるから知ってる言葉数も多いでしょ?それを活かさない手は無いわ。かなたちゃん、このコンテストの主催者って何処の出版会社なの?」

「えぇ、この会社よ。これまでいろんなジャンルの小説を出していて、今はこの時代小説が大人気みたいなのよ〜」

「へぇ、結構大きな会社じゃない」

「でしょ〜♪」

「応募できる小説って、どんなジャンルでもいいのよね?」

「もちろん。恋愛系から探偵もの、時代小説とか何ならサスペンスものでもなんでもいいわよ」

「なんでもいいのなら〜……決めたわ。文緒ちゃんが描けそうなジャンルは恋愛ものね〜」

「も、望月さん…!そ、そんな…か、勝手に決めないでください…」

「…私思ったんだけど、文緒ちゃんは何か勘違いしてるわ。文緒ちゃん、1人で描くことばかり考えてない?」

「……え?」

 

 

 望月の言葉に村上は驚きの余り、目を丸くさせる。

 

 

「別に1人で無理して描かなくてもいいのよ。お友達とか、仲の良い後輩とかと描くのも一興じゃない?」

「お友達…仲の良い後輩…ですか?」

 

 

 更に目を丸くさせる村上の脳裏には"とある後輩"の姿が写り、"あの人となら…"と一つの希望を抱いていた。

 

 

「ふふふ、この文緒ちゃんの顔…もうお相手はいるようね」

「えぇ、村上さんと仲の良いお友達と言えば、ね?」

 

 

 そして望月と天都は既にそれを見抜いていた。

 2人に見抜かれた村上は…

 

 

『「私…描ける気がする…それに…あの人とも一緒に描けば…うん、断われるかもしれないけど…一度声をかけてみようかな…』」

 

 

 村上はそう決心し、天都へ描ける予感がすると同時にもしかしたら辞退するかもしれない旨を伝えた後、生徒会室を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 そして、今に至る。

 

 

『あの時は描けそうな予感がしたけど…やっぱり自信が無くなってきたかも…』

 

 

 あの時の生徒会室でのやり取りでは描くと決心したものの、1日経つとまたあの時の不安が脳裏を過ってきた。

 心では描くと定まっているものの、やはり頭の中は不安なままでいた。

 

 それに、一緒に描くお相手も付き合ってくれるのかどうかも分からない。

 

 

「…放課後、訊いてみようかな」

 

 

 村上は放課後訊いてみることにし、午後の授業が始まる前に教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──放課後。

 

 聖櫻学園は秋の大会に出場するべく様々な部活が練習に勤しんでいた。

 

 新体操部や水泳部、陸上部にサッカー部はもちろん"仲の良い後輩"が属している部活も練習に明け暮れている。

 

 村上はその部活動が行われている場所へと向かうと…

 

 

「ええと…テニス部のコートはここの筈…あっ、今聞こえてきたのって、テニスボールの跳ね返る音?」

 

 

 村上が着いたのはテニス部のコートだ。

 村上が来た時には練習の真っ最中で、時折ラケットがボールを跳ね返す音が響き渡っていた。

 

 

「皆さん、秋の大会に向けて練習してますね。ええと、男子コートは…」

 

 

 村上はそのコートのうち、右側の男子コートへ目を向けた。

 そのコートでは……

 

 

「それじゃ、いっくよ〜」

 

 

 1人の男子がコートの向こうにいる後輩へ向けてサーブを打とうとしていた。

 

 パチン!!!!!

 

 

「す、すごい音…」

 

 

 サーブの音に驚く村上はテニスコートの手前側にいる淡いブルーのフリル付きのシャツにキュロットという可憐なテニスウェア姿をした彼──2年生の新名由依へ目線がいく。

 

 女の子と見間違えそうな可憐で容姿端麗なルックスに雰囲気は他の男子部員とは明らかに異色であり異彩である。

 

 村上はコートの外からしばらく新名の練習を見続け…

 

 

「…あ、皆さんが出てきました。休憩かな…」

 

 

 コートのドアが開き、部員たちがゾロゾロと出てきた。

 と、その中からピンクのテニスウェア姿の加賀美茉莉へ声をかける。

 

 

「加賀美さん、お疲れ様です」

「あ、村上先輩。お疲れ様です。先輩がテニス部へ来るなんて珍しいですね。何かご用ですか?」

「い、いえ…その…新名くんへ少し用があって…」

「由依くんにですか?由依くんなら、今あそこのベンチで休憩中ですよ」

 

 

 加賀美が指差した方を見ると、確かにベンチに座って休憩している新名の姿が見えた。

 

 

「ありがとうございます。では、私はここで」

 

 

 と、新名の元へ駆け寄ろうとする村上の背中へ加賀美がこう言った。

 

 

「そう言えば先輩。『高校生小説コンテスト』の話は聞きましたか? 先輩のことだから、既にご存知かと思いますけど…」

「は、はい…私は図書委員会と生徒会で聞きましたよ。この学園からもコンテストへ募集する生徒を探しているみたいで…」

「そうなんですね。私は絵本が得意なので、小説なんてとても描けそうもないですけど…先輩は?」

「…わ、私も小説は苦手です、ね……本を読むのは好きですけど、描くのはちょっと…」

「ですよね……あ、ごめんなさい。由依くんに用がありましたよね。では、私はここで」

「ありがとうございます、加賀美さん」

 

 

 ここで加賀美と別れた村上は新名の元へと向かい…

 

 

「…新名くん。部活お疲れ様です。今少しだけいいですか?」

「あ、先輩。お疲れ様です。えぇ、ちょうど今休憩中なので、いいですよ」

 

 

 女の子と瓜二つなよく通る甘い声で村上へ話しかけた新名は村上を隣に座らせる。

 

 

「それで先輩、僕に用って?」

「あの…大きな声では言えないんですけど、私…今回の『高校生小説コンテスト』に募集することになりまして…」

「『高校生小説コンテスト』って、あの出版会社が主催するコンテストですよね?僕もクラスメイトから聞きましたけど…って、む、村上先輩が?」

 

 

 新名はまさかと言った感じで丸くした目を村上へ向ける。

 

 

「はい…そうなんです。それで、その……か、可能な限りでいいのですが、その…あなたと一緒に小説を描いてくれないかな、と…」

「…僕が、ですか?」

 

 

 村上からの頼みに新名は更に目を丸くした。

 まさかのまさか、目の前にいる先輩が小説コンテストに募集するどころか、そのパートナーとして自分を指名したのだ。驚くのも無理はない。

 

 そんな新名に対し、村上は意を決した表情で語りかける。

 

 

「も、もちろんあなたが今、秋の大会に向けて練習中なのは分かっています…練習のスケジュールもタイトになってきているのもあなたや加賀美さんからも聞いてますし。それでも、私はあなたと一緒に小説を描きたい…昨日、生徒会からそれを聞いた時から私にも出来そうかも、そして、あなたとならいい小説が出来るかも、と思ったんです。アシスタントでも付き合うだけでも構いません。だから…私と一緒に小説を描いてくれませんか?」

「村上先輩…」

 

 

 新名は村上にしてはかなり珍しい姿に内心驚いていた。

 いつも謙虚で受け身な先輩が、こうも自分に対して少しわがままな姿を見せるなんて新名はほとんど見たことがないからだ。

 

 新名は少し考えた後、ほんの僅かな笑みを溢し、

 

 

「…ええ、いいですよ。一緒に小説を描きましょう」

 

 

 と、村上の頼みを承諾。

 

 

「…いいんですか?ありがとうございます。でも、どうして…」

「…実は僕も、村上先輩が小説を描いたらどんな物語になるのか気になっていたんです。それに…村上先輩なら今回のコンテストにも参加して、ひょっとしたら僕に声をかけるのかも、と思っていたので…」

「新名くん…」

 

 

 ほんの少し照れを見せながら言った新名に村上はうふふと微笑む。

 

 

「ちょ、ちょっと村上先輩…」

「すみません、今のあなたがほんの少しおかしくて、つい……でも、これで踏ん切りがつきました。あなたに声をかけて本当によかったです」

 

 

 そう言った村上の表情は秋晴れの蒼空のようにスッキリしていた。

 

 

「由依く〜ん、そろそろ練習再開だよ〜」

「うん、今行くね〜」

「それでは私はここで失礼しますね。新名くん、身体に気をつけて練習に励んでください」

「はい、こちらこそありがとうございました」

 

 

 2人はベンチから立ち上がると、笑顔で手を振って別れた。

 

 

「私のわがままに付き合ってくれるなんて、新名くんって本当に…」

 

 

 村上は加賀美が待つテニスコートへ戻る新名の背中を見つめながら、僅かに頬を赤くする。

 

 

「今回の小説のジャンルは…望月さんの言う通り、恋愛ものがいいかもしれませんね。登場人物は…」

 

 

 そして、今回の小説コンテストに提出する小説のジャンルと登場人物が脳裏に浮かんだ村上は図書室へと踵を返していった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌朝…

 

 

「おはようございます…」

 

 

 村上は遅刻することなく、いつも通り聖櫻学園へ登校。

 自身の教室である3-Cの教室へ入ると…

 

 

「おはよう文緒ちゃん」

「あ…望月さん、おはようございます」

 

 

 教室内の村上の机の前には望月がいた。

 それも、なにやらとってもニコニコしている。

 

 

「あ、あの…私の教室に何かご用ですか?」

「うふふ〜やっぱり私の予想通りだったわね〜」

「…よ、予想?」

「文緒ちゃんが募集に出す小説のジャンルよ。私は恋愛ものがいいって言ったら文緒ちゃん、昨日由依くんに何か頼み込んでいたわね〜」

「…えっ!?ど、どうしてそれを…」

「大会に向けて練習に励むみんなを撮っていたら文緒ちゃんの姿が見えたのよ。それでどうしたのかな〜って見ていたら、テニス部のコートへ向かったでしょ?」

「は、はい…」

「それで、これはきっと由依くんに何かお願いか頼みに行ったのねとすぐ分かったの。それで聞き耳を立てていたら、一緒に小説を描こう、アシスタントでも付き合うだけでもいいって然りに頼み込んでいたから、これは私の予測通り恋愛ものに描くつもりねって思ったの」

「お、おっしゃる通りです…」

「その後由依くんと別れた後、今回の小説は恋愛ものがいいかもって言ってたわね〜♪ふふふ、どう文緒ちゃん?私の推理、合ってるかしら?」

 

 

 "推理"ではなく単純に"見聞き"してただけなのだが、まさかのまさか、昨日の自分の様子や言葉を望月に見聞きされていたことに村上は…

 

 

「もう…やっぱり望月さんには敵いませんね…」

 

 

 もうこの人には敵わないとばかりに苦笑いした。

 

 

「望月さんのおっしゃる通り、今回は恋愛ものにしようと考えています。登場人物も概ね決まってまして…ええっと、さすがにこの場では言えないですけど…」

「別に無理して教えなくてもいいわよ。私も文緒ちゃんが描き上げるまでの楽しみにしておきたいし。文緒ちゃんと由依くんならきっと、素敵な小説が描けると思うわ」

「えぇ。私も何も優勝しようとか書籍化されたらどうしようなんて考えずに、自分の脳内で紡いだストーリーを描き上げることに集中しようと思っているんです」

「さすが文緒ちゃんね。それにかなたちゃんから聞いたら、どうやら聖櫻から募集するのは文緒ちゃんだけらしいし〜」

「ふふ、望月さんの今の心強い言葉を聞けて自信が湧いてきました。望月さん、私頑張りますね。…それで、ご用ってそれだけですか?」

「あっ、そうだった〜あのね、数学の教科書を忘れちゃったから、良かったら貸して欲しくて…」

「数学の教科書ですか?…はい、いいですよ。あ、でも私のクラスも2時間目が数学なので、すぐに返してくださいね」

 

 

 村上は望月へ数学の教科書を貸した。

 受け取った望月は終わったらすぐに返すわねと言い、手を振りながら教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 そして、村上の小説コンテスト応募の話は2年生の間でも…

 

 

「…え、村上先輩が?」

「うん。今回の『高校生小説コンテスト』に村上先輩が応募することになってね。それで、そのアシスタント役というか付き添い役に僕がやることになって…」

 

 

 3年生の教室のある階から一つ下の2年生の教室。

 そこの2-Cでは今回の村上の小説応募を話す新名と、聞いて驚いた皆藤と櫻井がいた。

 

 

「そうなんだね。僕は心実ちゃんや笹原先輩から聞いたけど、誰が出るのかまでは分からなかったなぁ〜。でも、村上先輩なら本に強いし、村上先輩が小説を描いたらどんなお話になるのか気になってたから、今回のコンテスト応募は楽しみだね」

「僕も一昨日望月先輩からコンテストについては聞いていたから、きっと村上先輩が応募するだろうなぁとは思っていたけど、本当に応募するんだね〜」

 

 

 皆藤も櫻井も驚きはしたものの、普段から本に触れている村上がどんなお話を描き上げるのか楽しみにしてるようだ。

 

 

「えへへ、僕も聞いた時はびっくりしたし、アシスタント役というか付き添い役に僕を指名したのもびっくりしたけど、僕も普段からもし村上先輩が小説を執筆したらどんなお話になるのかは気になってたから…今回はなんだか楽しみなんだよね、ふふ」

「そうだよね〜…って、由依くんって今、秋の大会に向けて練習の真っ最中でしょ?付き合うだけって言ったって、日程は大丈夫なの?」

「それなら大丈夫。僕のスケジュールなら村上先輩へも伝えてあるし、村上先輩もそれを分かった上でアシスタントをお願いしてきたから。それでね……2人に折り合ってお願いがあるんだけど…村上先輩が小説コンテストに応募すること、他の生徒には秘密にしてもらってもいいかな?」

「秘密って言うか、もう一部の生徒は知ってると思うけど…それ以上の口外はしないでってこと?」

 

 

 と、皆藤が訊くと

 

 

「まあそういうことかな。村上先輩って人一倍責任感が強いから、他の生徒に知れ渡ったらプレッシャーで描けなくなっちゃうかもしれないから。とりあえず、このことは他の生徒には内密ってことで」

「うん、分かった」

「内密ね、オッケー」

 

 

 2人へ約束を取り付けた新名と皆藤と櫻井はクラスが賑やかになる前に話題を変え、村上のことを他のクラスメイトに漏れないようにした。

 

 

 

***

 

 

 

 昼休み──

 

 

 図書室にいた村上は小説のヒントになりそうな本を探して見て、探して見てを繰り返していた。

 

 

「今回の小説の登場人物は私と新名くんに似た2人で、先輩後輩の枠を超えた青春ストーリーにしていきたいから……」

 

 

 村上は小説のジャンルの本棚から適当に恋愛系小説を見つけて

 

 

「なるほど…クラスメイトだった2人が卒業式でプロポーズするお話…とてもロマンチックで素敵なお話ですね…それでこれは…遠距離恋愛だった2人が引き裂かれて…こ、これは流石に今回の小説の趣旨には合わないかも…」

 

 

 卒業式でプロポーズすると言う何ともロマンチックな青春ストーリーや、遠距離恋愛でありながら2人が引き裂かれてしまう……という胸が引き裂けそうなほど悲観なストーリーなど、村上は気になった小説をパラパラと見ていた。

 

 

「あ…これは…学年の違う2人が仲良くなって、喧嘩もしちゃうけど先輩後輩の枠を超えた本当の恋人へとなっていく……これは私が考えてる小説の趣旨に合ってるかも。ふふ、なんだか…私と新名くんみたい……って、な、何言ってんだろう私…」

 

 

 そんな中、村上が偶然見つけた恋愛小説。

 その中身はまさしく、自分が描きたいストーリーに似た甘酸っぱい青春もののストーリーだったことに村上は微笑むと共に、ふと脳裏に映った新名の姿に顔を赤くする。

 

 そんな村上の横顔をファインダー越しで見つめる()()が1人いた。

 

 

「恋愛小説を開いて顔を赤くする文緒ちゃんいただき〜♡」

 

 

 パシャッ⭐︎

 

 

「…きゃっ!…も、望月さん!?」

「ムフフ〜♡今の表情、とっても良かったわぁ〜♡あの表情は正に脳裏に大切な人を思い浮かべた乙女の表情ね〜♡」

「も、もう…か、からかわないでください…!///」

「ごめんごめん〜♪それで、小説は上手く行ってる?」

「はい。登場人物は決まりましたので、ヒントになりそうな小説を探していたら、偶然私が描きたいストーリーと概ね同じ小説を見つけたんです」

 

 

 と、村上は望月へヒントになりそうな小説を見せる。

 

 

「そうなんだぁ〜あ、これは大学生の2人が主人公のお話なのね。文緒ちゃんが描きたいのは高校生のお話なのよね?」

「そうですね。この本は先輩後輩という枠を超え、偶に喧嘩もしちゃうけど、それを乗り越えて真の恋人へとなっていくと言う素敵なお話なんです」

「ふ〜ん、そっかぁ〜」

 

 

 望月は村上が持ってる小説を見た後、小説を持ってる村上へカメラの焦点を当てて…

 

 

 パシャッ!

 

 

「せっかくだから広報活動になるかな〜って撮っちゃった〜♪」

「もう、望月さんったら…ふふ」

 

 

 キーンコーンカーンコーン!!!!!

 

 

「それじゃあ私は教室へ戻るわね。文緒ちゃん、また後で」

「はい、私もそろそろ戻らないと。5時間目はえっと…」

 

 

 午後の授業を告げる予鈴が聖櫻学園へ響き渡る。

 村上と望月は足早に教室へと戻って行く。

 

 

「今回の小説のタイトルは……『先輩と僕の越境ライン』にしようかな」

 

 

 村上は教室へ戻る道中、今回の小説コンテストに出す作品のタイトルを決め、執筆を本格的に始めることにした。

 

 

 

 

 それから数時間後──

 

 

 村上は図書室で小説の原稿を描いていた。

 

 

「『こうして出会った2人は同じひとときを過ごすことになります。お昼になると一緒にお昼ご飯を食べ、お互いの部活や委員会活動にも顔を出し、そして帰りは一緒に……2人には先輩と後輩という壁は感じられず、学校でも話題になるほどの関係にまでなるのです…』ふぅ……少し休憩しようかな」

 

 

 放課後も小説を描いていた村上はペンを置き、思いっきり背伸びをする。

 

 

「それにしても、どうして望月さんはあの段階で私が恋愛ものを描くと気づいたんだろう…私、何も言ってなかったのに…」

 

 

 村上はあの時の生徒会室で会った望月の姿を思い浮かべ、語った言葉を脳内でリフレインする。

 

 いつも内に引っ込みがちな自分とは真逆の性格。積極的に接し、そして外の世界へも連れて行ってくれる望月。

 

 彼女の趣味故、頻ぱ…いや、ときどき盗撮紛いのことをしてしまうのは玉に瑕だが、村上はそれでも自分にとって太陽のような望月はかけがえのない友人となっていた。

 

 そんな彼女と日々を共にしている間に、自分が考えていそうな大半のことは望月には既にお見通しになっていたのかもしれない。

 

 そして、望月と共に自分を引っ張ってくれる新名もまた、彼女にとっては大切な友人となっていた。

 

 

「望月さんに新名くん…あのお二人と出会えたからこそ、今の私がいると言っても過言ではありませんから、その恩返しのつもりで小説を執筆していこうかな…」

 

 

 その後も村上は静かな図書室で、ただひたすらに小説の原稿を書き続け…

 

 

「さて、ここからの展開は…」

 

 

 キーンコーンカーンコーン!!!!!

 

「…あら、もう下校の時間?私もそろそろ帰らないと…あっ、そうだ。せっかくだから…新名くんと途中まで一緒に帰ろうかな…」

 

 

 村上はカバンを持ち、図書室を出る。

 そして職員室でカギを返却した後、新名のいるテニスコートへと向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「なんだかすみません…私のわがままに付き合ってもらって…」

「そんな、気にしないでください。僕だって、今日は村上先輩と一緒に帰ろうかなと思っていましたから…」

 

 

 2人は並んで新桔梗ヶ丘駅までの道を歩いていく。

 秋の空は夕暮れを迎え、オレンジ色に染まった夕陽の日差しが辺りを包み込む。

 

 

「秋になると、暗くなるのが早いですね。あ…ほら、あそこに月が見えますよ」

「あ、本当…今日は三日月なんですね…」

 

 

 空を見上げると、既に薄暗くなっていた空を三日月が優しく街を照らしているのが見える。

 

 村上は新名と一緒に帰りながらも、このシチュエーションを小説に活かせないかと考える。

 だが、それに呆気に取られて……

 

 

「…村…先輩……村上…先輩……目の…前……電柱……村上先輩!!め、目の前に電柱が!!」

「…え?……あっ!!」

 

 

 目の前に立つ電柱には注意を払っていなかった。

 村上が気づくと、まさに自分の目の前に電柱が聳え立っていた。

 新名が意識を呼び戻してくれたお陰でぶつかりはしなかったものの、もし1人なら確実にぶつかっている。

 

 

「す、すみません…つ、つい…小説のことで頭がいっぱいになって…あなたが声をかけなければぶつかっていましたね」

「よかった…もう、先輩。小説も大切ですけど、周りにも注意を払ってくださいね」

「はい…すみませんでした…」

 

 

 新名は自身へ謝る村上を見て、つい苦笑いする。

 そして、自分以外には決して見せない彼女の素顔につい微笑んでしまう。

 

 

「…あ、そうだ。新名くん、もしよかったら、今度のお休みの日に2人でお出かけに行きませんか?」

「…お出かけ?えぇ、いいですよ。大会が終わった後なら予定は空いてますけど…」

「…よかった。三日月を見て思い出したんですけと、実は望月さんから月の写真を集めた展覧会が開催されることを聞きまして…日程を聞いたら丁度秋の大会の後とのことなので、リフレッシュも兼ねて一緒に行きたいな、と思っていたんです」

「あ、ありがとうございます…」

 

 

 新名は珍しく自分を誘ってきた村上に照れ、その照れ顔を隠すように暗くなっていく秋空を眺めるフリをする。

 

 

「ふふふ、新名くんは大会で私は小説コンテスト…お互い頑張って、一緒にお出かけ行きましょうね♪」

「は、はい…と、共にが、頑張りましょう…///」

「…ふふ、新名くんったら、そんなに照れなくてもいいのに…」

「せ、先輩…!!も、もぅ〜///」

 

 

 珍しく村上に積極的に誘われて照れる新名と、そんな新名にお出かけという名のデートの約束を取り付けて微笑む村上。

 

 2人は共に沈みゆく夕陽が照らし出す街を歩きつつ、家路へと向かっていった。

 

 

 

***

 

 

 

 ──そして翌日。

 

 高校生小説コンテストに向けた小説執筆は順調に進み、村上は余裕の表情を見せるようになってきた。

 

 

 

「こんにちは〜」

「あ、望月さん」

「ふふ、表情がこれまでと違って余裕ね〜執筆が上手くいってるのかしら?」

「はい。おかげさまで、小説の方は順調に進んでいます。これも新名くんや望月さんのおかげです」

 

 

 午前中の授業の合間の休憩時間、望月は村上の元を訪れ、執筆の進展度を聞いていた。

 

 

「とある高校の3年生の女の子と2年生の男の子をモデルにして、先輩後輩の垣根を超えた恋愛ストーリーという設定にしたおかげか、執筆が上手く進んでいるから嬉しくて。それも……望月さんのお陰でもあるんです」

「うんうん、このまま執筆を進めたら応募には余裕で間に合うわね。私早く見たみたいわぁ〜♡」

「ふふ、仕上がるまで楽しみにしていてくださいね」

「分かったわ。……あ、でも文緒ちゃん。順調な今だからこそ気をつけるのよ?文緒ちゃんなら分かっていると思うけど…」

「…は、はい。ええ、大丈夫です。アイデアも思いついたらすぐに書くようにしてますし…」

「…よかった。それなら大丈夫ね。それに、今日のお昼のインタビュー、文緒ちゃんでしょ?」

「は、はい…インタビューなんて久しぶりで緊張しますけど、今の気持ちを精一杯お伝えしたいと思っているので楽しみにしていてくださいね」

 

 

 

 

 その後……

 

 

 

 

「へぇ〜それじゃあ今回のコンテスト応募もジャンルを決めてくれたのも望月先輩なんですね〜」

「…はい。望月さんの鶴の一声がなかったら、私は小説コンテストには応募してなかったと思いますので、本当にあの人には感謝なんです」

 

 

 いつも通りの平和なお昼を迎えた聖櫻学園。

 学園中に設置されているスピーカーから聞こえていたのは、お昼のインタビューを仕切る櫻井明音と彼女の質問に応える村上だった。

 

 生徒たちは教室をはじめとする校舎内から中庭、グラウンドから聞こえるインタビューに耳を澄ませ、村上が応募する小説へ密かな期待感を持つ。

 

 無論新名もその1人で、彼は中庭のベンチでそれを聴きながら秋空を眺めている。

 

 

「あ、由依くんだ!」

「新名さん、こんにちは」

「…ん、エミちゃんに心実ちゃん?どうしたの?」

 

 

 そんな新名の元へ相楽と椎名がやって来た。

 新名は2年生の女子の中では相楽とは加賀美と並んで一番仲が良く、椎名とも流石に皆藤ほどではないが親交を持っている。

 

 

「ねぇねぇ、聞いたよ?今回の小説コンテスト、キミがアシスタントやってるって?」

「ま、まぁ…アシスタントと言ってもほんの少しアドバイスしたり、労ったりくらいしかやってないよ?」

「それでもすごいですよ。そのほんの少しだけの労りがあるからこそ、村上先輩は執筆に集中できるんですから」

「え、えっ…そ、そうかな…」

「そうだよ〜!!」

 

 

 急に2人から褒められたことに、新名は少し慌てる素振りを見せる。

 

 

「…でも、流石に村上先輩から一緒に描こう、アシスタントでも付き合うだけでもいいと強く言われた時は僕もびっくりしたけどね、えへへ…」

「へぇ〜そうなんだぁ〜、村上先輩って謙虚で受け身なイメージがあったから、びっくりだよ〜」

「そうですね。それくらい意を決して新名さんにアシスタント役を頼んだのは、きっと、あなたと一緒なら描けると思ったのかもしれませんね」

「そうだよね〜、それにしても楽しみだなぁ〜どんなストーリーなんだろう〜?」

「とっても楽しみですね、ふふ」

 

 

 村上が執筆している小説に期待感を膨らませる相楽と椎名。

 新名はそんな2人の笑顔を眺めつつ、緊張した面持ちでインタビューに応える村上の声を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 ──放課後。

 

 今日は部活の練習はお休みなだけあり、生徒たちは足早に帰っていく。

 無論村上もその1人で、彼女はカバンを肩にかけて3階から1階の昇降口へと降りると……

 

 

「あら、雨……今日降るって言ってなかったような…」

 

 

 昇降口から見えたのは、今朝の気象予報では言ってなかった雨が降ってる光景であった。

 それも、かなりの降り方で度々雨足が激しくなりながら、ただひたすらに地面に雨水を落としている。

 何なら、遠くからゴロゴロと雷鳴まで聞こえてくる始末。

 

 

「どうしよう…傘、持ってきてなかったかも…」

 

 

 今朝の気象予報を聞いて登校した村上は傘を持ってきてなかった。

 ならば傘を持っている誰かと一緒に帰る、なんてことを考えるのだが、生憎昇降口にいるのは村上だけ。頼みの綱(?)とも言える望月も仲の良い後輩である櫻井と帰ってしまい、途方に暮れた村上はもう濡れ鼠になってもいいから帰ろうと意を決した刹那。

 

 

「ハァハァ……あっ……村上先輩…」

「えっ、あ、新名くん?…ま、まだ帰ってなかったんですか?」

 

 

 昇降口へ現れたのは新名だった。

 それも、少しだけ息を荒くしている。

 

 

「あ、あの…息が荒いですけど、もしかして走ってきたんですか?」

「は、はい…そ、その…実は母がクルマで迎えに来てくれていて…良かったら村上先輩もどうかなと思って、探していたんです」

「え、私を?く、車って…もしかして私を送ってくれるんですか?」

 

 

 それを聞いた村上は目を丸くする。

 それは、ここで救いの手を差し伸べてきたのが新名だったからだ。

 

 

「はい。村上先輩の家の近くまでなら僕が案内できますので」

「本当にいいんですか?………ありがとうございます」

 

 

 村上は上靴からローファーに履き替え、雨足が弱まっている今のうちに新名の母親が待っている駐車場まで向かった。

 

 

「あ、あれがウチのクルマです」

 

 

 駐車場に停まっていたのは、とても繊細なガラスフレークがボディカラーに混ぜられている"ホワイトノーヴァ・ガラスフレーク"のボディカラーを纏う"レクサス LBX MORIZO RR"だった。

 

 

「こんにちは。無理を言って申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

「こんにちは。こちらこそ、由依が毎日お世話になってるわね。ささっ、乗って乗って」

「はい。では、失礼します」

「僕は村上先輩の家の近くまでナビするから助手席ね」

 

 

 村上は左の後部座席、ナビ役の新名は助手席へと座り、新名の母である朋美が乗り込みエンジンを始動。

 1.6L3気筒ターボエンジンの野太い吸排気音を響かせながら、新名のナビの元、一路村上の自宅周辺へと向かった。

 

 

 

 

 

「ここを左なのね?」

「うん、そしたら高架があるから、その下を潜って──」

 

 

 LBX MORIZO RRは新名親子と村上を乗せて、雨の降る市街地を走っていく。

 後部座席にいた村上はふと窓から外の景色を眺める。

 そして、その自分の目の前の運転席と助手席で自分のためにクルマを動かしてくれている新名親子に村上は申し訳ない気持ちよりも、感謝の気持ちが満ち満ちていた。

 

 

『私のためにこうして動いてくれるなんて……なんてお礼を言えばいいのか…あ、そうだ。このシチュエーションも小説に活かせたら…』

 

 

 村上はカバンからメモ帳を取り出して、思いついた限りのアイデアをしたためていった。

 

 それから数時間後……

 

 自宅の近くまで送ってもらった村上は新名と別れ、クルマが見えなくなるまで手を振り、無事に帰宅。

 その後、夕食やお風呂を挟み、パジャマ姿になった村上は自室の机へ向かい、小説の執筆を始めた。

 

 

「応募期限まであと2週間…このストーリーもそろそろ佳境に入るところまで書いてきたから、急がないと…」

 

 

 村上は今日までメモ帳にしたためてきた内容を膨らませて、原稿用紙に書いていく。

 

 自身と新名をモデルにした、先輩後輩の枠を超えた純粋な恋愛ストーリー。

 彼女は新名と出会ってからこれまでの経験を物語へ昇華することで、物語そのものに生命を吹き込んでいく。

 

 

「『この狭い空間と距離の近さ…これは彼女のハートをドキドキさせるのには充分すぎるものでした。「あ、あの……」彼女は何かを言おうとしましたが、この慣れない空間では話すことはできず、彼女は口籠もってしまいました。』」

 

 

 原稿用紙にそうしたためた村上は、ふと先程のことを思い出す。

 傘を忘れたがために昇降口で1人で悩んでいたところを、息を切らしてまで探してくれていた新名。

 

 出来れば自分も新名と一緒に帰りたかったものの、もう彼はお友達と一緒に帰っているかも…と、諦めかけていた刹那、彼は自分を探してくれて、しかも途中までクルマで送ってくれたという奇跡。

 

 新名くん──彼はそこまでして、私と一緒に帰りたかったんだ……

 村上は先程の新名の笑みを思い浮かべて、ふふ、と微笑む。

 

 

「新名くん……あなたは、それほど私のことを…私とのひとときを大切にしてくれているんですね…」

 

 

 村上は自分のことを最優先に考えてくれている新名へ感謝の念と共に一瞬の恋愛感情が湧き出し…

 

 

「この描いてる小説のように、新名くんと私は……既に先輩と後輩の枠を超えた純粋な恋あ…じゃなくて、友情が結ばれていたんですね…」

 

 

 ──高校生で友情が結ばれたのなら…この小説のヒントにもなった"大学生の先輩後輩の枠を超えた純粋な恋人"を描いた小説のように、新名くんと私が大学生になったら、本当にあの本のような恋愛関係になれるのかも……

 

 村上は大学生になった自分と新名の姿を思い浮かべると、途端に顔を赤くする。

 

 

「い、いけない…そ、想像するだけでもドキドキしちゃう…///…い、今は小説作りに集中しないと…」

 

 

 村上は頬を火照ったまま、寝るまで執筆していた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 翌日のお昼──

 

 村上と新名は図書室にいた。

 村上は神妙な面持ちで原稿用紙に書かれた原文を脳内で読んでいく新名を見つめる。

 

 キッカケは今朝、朝練を終えた新名へ対して『自分だけでは小説の今の完成度が分からないから、一度あなたに読んでほしい』と頼んだからだ。

 

 自分では完璧だと思っていても、それを読むのは自分ではない多くの人たち。

 セリフや文章構成、ストーリーの流れ方などが自分贔屓になっていないかが彼女にとって一番の懸念点だったのだ。

 

 そんな心境でいる村上は神妙な面持ちで原稿用紙を読む新名に心中ドキドキしていく。

 

 

「…ふぅ…今読み終えました」

「えっと…どうですか?」

「…え、完璧ですよ?…とてもよく物語が描かれていて、つい物語へ引き込まれてしまうほどでした」

 

 

 新名の率直な感想を聞いた村上はホッと胸を撫で下ろし

 

 

「よかった…ありがとうございます。自分ではよく描けてると思っていたんですけど、それを皆さんが見たらどう感じ取るんだろうと気になっていたので…でも、あなたの今の感想で本当に安心しました。ありがとうございます」

 

 

 安堵の表情で新名へ感謝を伝える。

 

 

「…僕もまさかここまで書き上げていたなんて思ってなかったので、本当にびっくりしました。…あと、ここまでお話を書けること自体がすごいことだから、もっと自信もってもいいんですよ?」

「……ここまでお話を書けること自体がすごいことだから、もっと自信もってもいい?そうですね、ふふ。他人から見てすごいってことでも自分のことになると、案外分からないですよね。…でも、それでしたら新名くんにも言えることだと思いますよ?加賀美さんから聞いたんですけど、あなたのサーブは自分じゃ真似できないと言ってましたし、何なら球の初速が速すぎて打ち返せないとも言ってましたし…」

「そ、そうなんですね…あはは、あはははは…」

 

 

 新名は村上を労うつもりが逆に褒められたことについ苦笑いする。

 

 

「ストーリーはこれで完結ではありませんので、全て書き上げるまでにもう少し時間がかかりますが……皆さんに満足してもらえるよう、最後までストーリーを書き上げるので、楽しみにしていてくださいね」

「はい。僕も楽しみにしてますね。…でも、無理は禁物なので困ったことがあったら、いつでも僕に声をかけてください」

「新名くん…ありがとうございます…」

 

 

 村上は新名からの優しい心遣いに心が温まり、ニコッと笑みを見せる。

 新名もそんな村上に微笑みかけ、2人は午後の授業が始まる前に図書室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数週間の日時が経ち…………

 

 

 

 

 

 

 

「あ、村上先輩。おはようございます」

「おはよう……ございます…」

 

 

 とある金曜日の朝、新名はいつも通り村上へ挨拶をするも、村上の表情は何処か曇っていた。

 

 新名はそんな村上の異変に気づき

 

 

「あの……表情が晴れないのですが、何かあったんですか?」

「い、いえ……なんでもありません…」

 

 

 何かあったのかと訊くも、村上はそれだけを言って足早に教室へと向かってしまった。

 

 

「……………」

 

 

 村上に取り残された新名は廊下で1人、ついに村上から小説のアイデアが尽きてしまったと確信していた。

 

 

 その後のお昼……

 

 

 皆藤や櫻井と教室でお昼を済ませた新名は図書室へ向かった。

 

 ガラガラカラ……

 

 

「失礼します…あっ」

「あっ……新名くん…」

 

 

 図書室へ入ると、たまたま村上と鉢合わせた。

 村上は新名の表情を見るや否や、申し訳ないといった表情を浮かべる。

 

 

「あの…今朝は…すみませんでした…」

「いえいえ、新名くんは何も悪くはありません…今朝の言動は全て私が悪いので…」

「そんな…でも、今朝の村上先輩は明らかに様子が変だったので、これは何かあった…いや、小説のアイデアが出なくなっちゃったのかなと…」

「……!!…ふふ、やっぱり…あなたに隠し事なんて、できないんですね…」

 

 

 新名の言葉に村上は驚き、ふふ、と諦めの表情を見せる。

 ──やっぱり彼──新名くんに隠し事なんて通らないんだ。

 

 そう思った村上は新名を席に通して、自身の心中を明かしていく。

 

 

「…え、応募期限までに間に合わない?」

「はい……実は応募期限まで、あと1週間というところでアイデアが出なくなってしまって…どうして描けなくなったのか、自分でも分からなくて…」

 

 

 村上は新名の隣で心中を吐露していく。

 ここまで順調に書き進めてきた彼女にとっては最大の壁にして、アクシデントである。

 

 

「実はこのことは、まだ天都さんや望月さんには伝えていません。でも、出来たらそのことは2人には伏せておきたいんです…お二人には心配をかけたくないですし、そして、何よりもあなただからこそ、言えることなので…だから、このことは決してお二人には言わないでください…」

「はい…分かりました…」

 

 

 新名は村上と約束をすると、図書室を後にする。

 村上はそんな新名の背中を見届けながら…

 

 

「どうして描けなくなっちゃったんだろう…私…」

 

 

 どうして描けなくなったのか、その要因を考えることにした。

 

 

 

***

 

 

 その帰り──

 

 

 放課後、委員会活動を終えた村上は1人で家路へ向かうべく、新桔梗ヶ丘駅まで向かっていた。

 その道中も村上は描けなくなった要因を探っていく。

 

 

「応募期限まで、あと1週間なのに…どうしよう…」

 

 

 村上は歩いて駅まで向かう間にも、その脳内や心は応募期限が近づいていることにかなり焦っていた。

 

 

「いっそのこと…辞退しようかな…今回は頑張ったし…」

 

 

 と、"辞退"という言葉が彼女の口から出てきた刹那……

 

 

「あ…あれはうちの学校の制服……やっぱり、電車通学してる人たちって結構いるんですね…」

 

 

 村上が見つけたのは駅前で楽しそうに会話をしているカップル、それも2人とも村上と同じ聖櫻の制服を着ていた。

 村上はそんな楽しそうな2人を遠くから眺めていると…

 

 

「…え…?あれ…?この胸のモヤモヤは何……?2人は楽しそうに話してるだけなのに、どうして……」

 

 

 途端に村上の胸はモヤモヤした気持ちになり、彼女はそのモヤモヤの正体がわからずに戸惑う。

 

 すると……

 

 

「あれ……あの光景……何処かで見たような………あっ、そうだ……あの日のお昼……新名くんが他の女の子と楽しそうに話してる姿…………って、えっ…?」

 

 

 村上が思い出したのは最初に新名に小説を読んでもらった翌日のお昼、いつも通りに彼へ会いに行くと、そこで新名が加賀美と楽しそうに話してる姿であった。

 

 その姿に村上は最初は何も思わなかった。

 

 だが、翌日のお昼に村上が新名に会うべく向かうと、そこにいたのは相楽や櫻井(明音)と楽しそうに会話をする彼の姿が。

 

 特に相楽とは彼女が買ったリスのワッペンを何処に付けるかで盛り上がり、相楽が胸の辺りに付けようとした途端、顔を赤くしながら『も、もぅ…///ば、場所を考えてよエミちゃん…!///』とワッペンを没収する姿が見えたり、櫻井とも楽しそうに移動先の教室へ向かう姿や、彼女と一緒に帰っていく姿も。

 

 村上はそんな新名や周りの女の子たちに対する嫉妬心が芽生え、それが知らず知らずのうちに執筆に影を落としていたのだ。

 

 何故なら、今回の小説のテーマは『先輩(自分)後輩(新名くん)の恋愛ストーリー』なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そっか………私………嫉妬してたんだ………

 

 いつも新名くんと一緒にいるから、彼が他の女の子と一緒にいることが許せないという気持ちが……私にもあったんだ………

 

 私にも彼を独り占めしたいという気持ちがあったんだ…………

 

 だって………私だって………女の子なんだから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 嫉妬………嫉妬………嫉妬………って、あっ!!!!!

 

 

 

 

 村上は途端に何かを思いつき、即座にカバンからメモ帳を取り出して書き留めていく。

 

 それでもアイデアが雪崩れてきた村上は思いもかけず咄嗟に走り出し、同級生の笹原野々花の祖父が営む喫茶店『コスモス』へと駆け込んでいく。

 

 カランカラン♪

 

 

「いらっしゃ…って村上さん!?どうしたの?そんなに走って…」

「はぁ…はぁ…あ、いえ……気にしないでください…それよりも、少しだけお邪魔してもいいですか?」

「えぇ、もちろん。あ、そうだわ。実はね、お爺ちゃんがショートケーキの新メニューを開発したんだけど、試してくれる人がいなくて困ってたの。よかったら、味の感想も兼ねて試してみない?…あ、もちろんお代金は頂かないから安心して」

「…いいんですか?では、いただきます…」

 

 

 村上はコーヒーと一緒に試作品のショートケーキを注文し、メモ帳と原稿用紙を取り出して執筆を始める。

 

 メモ帳に書かれてあったのは、新名が他の女の子たちと楽しそうに過ごす姿やそれらに対する嫉妬心、そして、そんな彼を独り占めしたいという気持ちが自分にもあったんだという、ストーリーの案であった。

 

 村上はこれまでの鬱憤やモヤモヤを晴らすかのように原稿用紙を瞬く間に埋めていく。

 

 その姿を笹原はカウンター越しから見守る。

 

 

「はい、村上さん。コーヒーと試作品のショートケーキよ。後で味の感想だけお願いね」

「ありがとうございます」

 

 

 村上は目の前に置かれた試作品のショートケーキに視線が向かう。

 

 

「わぁ…おいしそう…いただきます」

 

 

 村上はフォークを持ち、生クリームが塗られたふわふわのスポンジ生地を切って、口に運ぶ。

 

 

「ん……ふふ、おいしい…」

 

 

 ショートケーキが好きな村上にとっては夢のひととき。そして、小説執筆で疲れた脳にケーキの甘さがしみていく。

 

 正に彼女にとってはこの上ないご褒美タイムだ。

 

 

「あの…とても、おいしいです…特にスポンジ生地がふわふわで、上に乗ってるイチゴも甘酸っぱくて…」

「…よかったぁ〜♪ふふ、ショートケーキが好きな村上さんに褒められたら、大成功かも」

「…あ、ありがとうございます」

「小説作りはどう?望月さんや神楽坂さんから聞いたら、だいぶ進んでいるみたいだけど…」

「はい。小説の方はほぼほぼ出来かけていまして、今ラストを書いてるところなんです。実はこの1〜2週間、なかなかアイデアが浮かばなくて困っていたんですけど…ついさっき、途端にアイデアが浮かんできて……いざ執筆しようと思っても、なかなかいいアイデアが浮かばない時ってあるんですよね……」

「ふふ、そういう時ってあるわよね。私も新メニューの開発する時に"何かいいメニュー作らなきゃ"って思っても、なかなか思い浮かべられなかったりするけど、何もしてない時にパッと思いついちゃうのよね〜」

「そうですよね、ふふ」

 

 

 笹原と談笑する村上の表情はとても晴れやかなものだった。

 村上はこの場面もストーリーに入れ、ついさっき降ってきたアイデアと共に最後の仕上げをしていく。

 

 その後、村上は帰宅。

 明日はお休みということもあってか、村上は就寝の時間まで原稿用紙に文章を書き留めていく。

 

 

「…………よし、出来た」

 

 

 最後の原稿用紙の行を句読点で締め、チラリと時計を見ると、時間は23:30を指していた。

 

 

「できた……これが、私が初めて書いた恋愛小説…」

 

 

 村上は改めて、自身が書いた小説を眺める。

 天都や望月の鶴の一声で始まり、仲の良い後輩である新名に声をかけて、彼からの助けも借りながら書き上げたストーリー。

 

 その中身は執筆前にヒントにした大学生の先輩後輩の恋愛を描いた小説を元にしているものの、登場人物は自身と新名をモデルにした………と言うより、自身と新名そのものであった。

 

 そして、その内容もまさしく自分が新名と出会って、先輩と後輩の壁や垣根を感じさせない友情を紡ぎ、時には新名が他の女の子たちと楽しそうにしている姿を見ては嫉妬し、自分は彼を独り占めしたかったんだ…私だって女の子なんだ…と言う乙女の感情を抱きつつも彼との距離を縮めて行き……そして、いつかは恋人となっていく………という、純粋な恋愛ストーリーであった。

 

 

「ふわぁ……書き終えたらなんだか眠くなってきちゃった…新名くんは…もう寝てるのかな…」

 

 

 全ての作業を終えて身体が落ち着いたのか、村上は大きく欠伸をする。

 そして傍に置かれてある自身のスマホを見つめ、新名に小説が出来た旨を伝えようかと考える。

 

 

「…やっぱり明日投函してから伝えようかな」

 

 

 村上は明日投函してから伝えることにし、ベッドに潜って部屋の明かりを消し、夢の中へと入っていった…

 

 

 

 

***

 

 

 

 それから3週間後……

 

 

 応募期限まであと1〜2日という正にギリギリのタイミングで滑り込みで小説をコンテスト主催の出版会社へ投函した村上は、新名と一緒に中庭のベンチでランチにしていた。

 

 

「そう言えば先輩。コンテスト主催の出版会社へ小説を送ってから、そろそろ3週間ですよね?」

「はい、確かに私が小説を投函してから今日で3週間ほど経ちますけど…それにしては音沙汰が無いですね…」

 

 

 村上はコンテスト主催の出版会社へ送った小説がどうなったのか気になっていた。

 

 

「今回は全国の高校生を対象にしたコンテストなので、選定に時間がかかっているかもしれませんね。最終選考まで残った作品の著者には主催者先から連絡が……あら?」

 

 

 と、村上の制服のスカートのポケットに入っていたスマホへ通知が届いた。

 見ると、どうやら出版会社からのようだった。

 

 

「コンテスト主催の出版会社からのようですね。ええっと……」

 

 

 村上は届いたメールをじっくりと読んでいく。

 

 

「え……嘘……と、特別審査員賞…?」

「…ん?先輩、い、今なんて言いました?」

 

 

 メールに書かれてある文面を見ながら戸惑う村上。

 新名が真横からひょっこりと文面を見てみると……

 

 

「えっと…『今回は当社の全国高校生小説コンテストにご応募いただき、ありがとうございました。全国から集められた作品を厳正に選定しました結果、あなたが執筆した作品『先輩と、僕の越境ライン』は特別審査員賞を授与するに値すると判断し、試験的な販売を決定したことをお伝えさせていただきます。つきましては……』……えぇ!?し、試験販売!?」

 

 

 なんと、彼女が書いた作品が特別審査員賞を受賞し、試験名目での販売が決定。

 特別審査員賞のトロフィーや賞状の配送日についても書かれてあった。

 

 

「私の作品が……皆さんの心に響いたんですね……とても嬉しいです……」

 

 

 村上は両目から嬉し涙をこぼし、歓喜の表情を見せる。

 新名も村上に感化されたのか、隣で嬉し涙を流していた。

 

 

「新名くん…今回のコンテスト応募に協力してくれて、本当にありがとうございました…あなたと一緒ならきっと、素敵なストーリーを描けると思っていましたので、あなたには感謝の言葉しかありません…」

「あ、ありがとうございます…僕は出来ることをやっただけですけど、それでも先輩のかいた作品が選ばれたのは本当に嬉しいです!」

 

 

 村上からの感謝の言葉に新名も村上を祝福する。

 2人は午後の授業が始まるまで、その余韻に浸り続けていた。

 

 

 翌日になると、新聞部が村上の描いた作品が小説コンテストで特別審査員賞を受賞し、作品が実際に小説となって試験的な販売がされることになったと報じるや否や、学園中が祝福ムードに包まれ、村上が描いた小説を早く読んでみたいという声が連日生徒会に届き、天都含めた生徒会役員は嬉しい悲鳴を上げた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 それから1週間後……

 

 

 特別審査員賞受賞&作品の販売決定という大ニュースが学園中を駆け巡り、新聞部や放送部のインタビューに答えた村上は、いつも通り図書委員会の仕事をしながら、本棚の点検をしていた。

 

 と、ふととある本棚に納められていた小説と目が合った。

 棚から取り出すと、そこに書かれてあったタイトルには『先輩と僕の越境ライン』とあった。

 

 正真正銘、村上がゼロから書き上げた恋愛ストーリー。

 そして、自分自身と新名をモデルにしつつも、実際の村上本人と新名との関係や思い出、想いをストーリーへ昇華させた甘酸っぱい青春ストーリーでもある。

 

 村上はこれまで執筆を支えてくれた新名のことを想いながら、彼が練習しているテニスコートの方へ向く。

 

 そしてにこやかに微笑むと、そっと本棚へ戻して仕事の続きをするのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






どうも、ガルフレ13周年でヒャッハーしている筆者、もちうさです。
当小説大幅アップデート第2弾、いかがでしたでしょうか?

今回はかなり難易度が高かったです…
なにぶん文緒ちゃんメインのお話は書いたことが無い上に文章構成やらセリフやらでだいぶ頭を使いましたので……

その結果、総文字数が初の2万文字突破(長いww)したのは筆者がだいぶ手こずった証拠なので、そう思っていただけたら幸いです

まあでも、なんとか文緒ちゃんのお誕生日である今日(11/2)のうちに間に合ったので満足してます♪
因みにストーリーの中で文緒ちゃんが描いた小説のタイトルはGeminiに作ってもらいました

次の第3話は風町陽歌ちゃんと3人目のオリキャラ『櫻井潤』くんをメインにそえたお話ですので、お楽しみに〜
それでは(・ω・)ノ









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