俺らの青春戦略   作:さんかくふらすこ

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第17話です。


第17話 恋の代策戦  ──意外に行ける組み合わせ?──

 それから、俺プロデュース・楠木さんの恋愛大作戦が始まった。

 楠木さんには悪いけど、俺は昔見たドラマっぽくて超ワクワクしていた。

 

 

 慎重な楠木さんはまず那賀川への自分の好意を確かめたい……とか言ってたけど1日目にして一目瞭然だったので止めさせた。

 いい加減認めろと外から見た楠木さんの様子を懇切丁寧に説明してやるとすぐに認めてくれた。

 恥ずかしさに折れたというのが正しい。

 

 次に、とりあえず緊張しないようにしよう、ということになった。

 告白云々の前に、楠木さんはもっと那賀川に意識してもらう必要がある。なのにいつもどもってちゃあコミュニケーションになりゃしない。

 

 よって多少は顔を見て話せ、と言った。

 

 

 

「最初は挨拶からでいいからさ」

 

「えっ……なんか急に来たなって思われない?」

 

「普段女子とはフツーに挨拶出来てんだろそれでいいんだよ」

 

「違う、周りの男の子たちに」

 

「ばーか、すれ違いざまにするっとやるくらいでいーの!そもそも周りのことなんか気にしてたら始まんねーだろうが」

 

「うぅ……はーい」

 

 

 

 と、まあこう言って上手く出来るわけもなく、結局俺が挨拶したら同じようにすることになった。

 

 俺と那賀川たちは仲悪くないし、別に変なことでもない。

 とにかく、那賀川には楠木さんと図書館で話した意外にもっと共通点を持たせなければならない。

 

 

 はい、次。ルックス。

 これが一番困った。何故って……。

 

 

 

「ねぇ、赤坂くん、これどっちが良いと思う?これの方が可愛い……かな?」

 

「俺に聞くな」

 

 

 

 こればっかりは専門外だ。

 

 

 駅の100均のヘアアクセコーナーで騒ぐ男女二人。

 女子の方が『これどっちが私に似合うかな?』と聞いている。端から見たらどう見てもカップルだろう。

 

 おい、その棚の隙間から興味津々で見てくる中学生、残念だけどただの友達だ。

 お前が欲してるイチャイチャは何もないぞ。

 

 

 

「あのね楠木さん、今選んでんの那賀川の気ぃ引くためじゃん?カワイイ~カンジになるためじゃん?そうっしょ?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「それを!俺に!聞くなッ!!男の気引くのに他の男の意見聞いてどうすんだよ!」

 

 

 

 楠木さんは何か難しい問題を出されたような顔をしている。

 

 

 

「……ダメなの?」

 

「ダメ!……ってぇほどでもねぇけど俺はダメだと思うぜ!?」

 

「……?」

 

 

 

 あー、この箱入り娘!世間知らず!いや、恋愛知らず?

 

 それはどっちでも良いけど、ともかく、俺が一番に困ってるのがあんまりにも俺を頼りすぎるところだ。

 

 

 いや、協力するとは言ったぜ?

 

 でもそりゃ、ちょっと引き合わせやすくするーとか、なんか好みのタイプを聞いてくるーとか、そんな内容のハズだ。

 断じて、『どうやったら好きな男の子ウケ良いかな?』と聞かれることではない!と俺は言いたい。

 

 

 確かに悪くはない。身近な男は俺くらいだし、恋愛初心者さん的には男の考えも聞きたいだろう。

 

 だけどこう、聞かれる側としては……!何かが!何かがダメな気がする!

 

 やろうと思えば楠木さんをどんどんヤベー方向へ持って行ける気がしてヤバい!

 俺が選んだアクセを那賀川が褒めたりしちゃったらなんとなく感じるであろう気まずさがヤバい!!

 

 

 ……これを機に気が付いたけど、この子あまりにも女子が抱いてるべき男子への何かが欠けている。

 警戒心とか疑いとか言うヤツ。

 

 男女の感覚が幼稚園生とか小学校低学年の時で止まってるような、誰でも友達!が勝ってる感じ。

 

 言うなれば……性に幼い。そう、これだ。

 

 

 楠木さんは何かたまに幼い感じがする。

 女子ってより、女の子ってカンジ。すごいヤな言い方すると、エロい感じがしない。色気がない。

 

 別に、可愛くないって言ってるわけじゃない。

 くるっと丸い垂れ目と気弱そうなハの字眉毛、ほわほわしてて、どことなく疎い感じ。

 こーゆーのが好きなヤツだっているだろう。でも俺のタイプじゃない。

 

 俺は例えば──俺はユキちゃんみたいな、明るくてぐいぐい引っ張ってくれる感じの子が俺は好きだ。

 

 

 変に幼いのと、俺のタイプじゃない。

 この二つの理由で、俺は楠木さんのことをそういう目で見れない。

 

 だからこそこんな近い女友達で居られてるのかも。料理が好きで、ちょっと世間知らずだけどそこが面白くて、優しい。

 俺の自慢の友達だ。

 

 

 だけど。

 

 

 それは!!それとして!!!俺は!!男だ!!

 

 女の子が好きな男に振り向いて貰おうと頑張ってるんだから、()が手を出してはいけない部分が存在する。

 俺は必死に自分で決めるように言った。

 

 

 

「だーかーら、絶対自分で決めた方が良いから!

 

お前那賀川が『今日ヘアピンしてるの?良いね~』っつって話振ってきたら、『うん、赤坂くんが選んでくれたの』って言うつもりかぁ~!?

 

俺が那賀川だったら絶対勘違いするぜ、この前の女子らみたいに!」

 

「あ!?そういうことか!付き合ってるみたいになっちゃうって?」

 

「そーだよそんなことになったら困るだろ?ええ?」

 

「うん、うん……困る。困っちゃうや……確かに……!」

 

 

 

 楠木さんはようやく分かってくれたのか、俺に向けていたヘアピンを自分で選び始めた。

 一安心だ。疲れを一気に口から吐き出した。

 

 

 

「わーったら俺じゃなくて麗とかに聞けよな。

 

だー、もう。これから好きになってもらうぞ!って時に他の男匂わすヤツがどこにいんだよ!」

 

「ご、ごめん……。

 

だってなんか一番聞きやすくて……赤坂くんは那賀川くんみたいな感じがしないから」

 

「……」

 

 

 

 え?これつまり俺『男』として見られてなかったってこと?

 

 

 

「ありがとね、赤坂くん」

「……ウン」

 

 

 

 別に楠木さんがそういう人ってのは知ってるし、悪気がないのも分かってるし、『男』として見られてもなーんも変わりゃしないし、俺も同じ事思ってるから要はお互い様なんだけど……なんだけど!

 

 なんかモヤる。一人の『男』として那賀川に全部負けてる気がする。ちくしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、ようやく適材適所に頼るようになった楠木さんは、1週間もすると俺にも分かるほど変わってきた。

 

 ちゃんとした美容院に行ったのか、伸びっぱだった髪の長さはそのままに毛先を揃えて、長くなった前髪は大人っぽく右へ流す感じで。

 たまに髪を束ねるヘアゴムも飾り付きだったりシュシュになったりして女の子感がアップした。

 

 うんうん、恋する女の子ってカンジ。

 

 その他のスペックは元から悪くないし、もう魅力面は問題ないだろうなと思う。

 後はようやくどもらず出来るようになった挨拶から接点を広げていきたいが……どうするべきかな。

 

 

 

「んー、やっぱりずっと髪を下ろしっぱなしなのは大変だな……」

 

 

 

 時間はお昼休み。

 弁当に手をつける前に髪を縛りながら、楠木さんはぼやいた。

 確かめるように頭を振ると、首筋あたりで短い髪束がふるっと揺れた。

 

 

 

「なんだ、今さら。好きに縛ればいーじゃん」

 

「だって、ほら。今微妙な長さなの。色んな結び方出来ないけど、縛らないと邪魔な感じ」

 

「えー?んじゃあ切れば良かったじゃん」

 

 

 

 楠木さんは中学生時代、滅茶苦茶髪が長かった。前髪は目元を隠し、二つ縛りの髪は腰辺りまであった。

 だから高校を機に一気に短くしたんだろうなと思っていたし、本当は短い方が好きなんじゃないかと思っていたんだけど。

 

 そう言うと、楠木さんははにかんで前髪を直した。

 

 

 

「ううん、確かに高校生になるからって一気に短くしたけど、私は長い方も好きだよ。

 

……というか、また長くしてみたくなった?今まで、あんなに長かったけど、ヘアアレンジしたこと無かったから……。

 

うふふ、あのね、私ポニーテールしてみたいんだ」

 

「ポニーテール?」

 

 

 

 黄色いシュシュでまとめられて、歩く度にゆらゆら揺れる髪束が、脳裏をよぎる。

 あの髪型をするには結構な長さが必要だろう。

 

 

 

「うん!やってみたくなったの。……て、前まであんなに長かったんだからやれば良かったのに、って話だよね……あはは」

 

「へえ~、いいじゃんね。だーいぶ時間掛かりそうだけど」

 

「まあねー」

 

 

 

 そう言って、楠木さんは楽しそうに笑った。自分でポニーテールをしたい!と思うほど、楠木さんが前向きに、そして恋にウキウキしてる証拠だ。

 

 釣られて、俺も思わず口角が上を向いた。明るい気分で、弁当の包みを解く。

 

 

 今日は鮭弁当だ。

 『これレンチンするだけでいいんだって!鮭弁できるわよ?』と母さんが買ってきたのだが、正直サイズが足りない。

 これは多分色んなおかずに合わせるもので、メインに据えるものじゃない。

 

 そのせいで、鮭にクリームコロッケにハンバーグにほうれん草ソテー、と明らかに鮭が邪魔者なラインナップになってしまった。

 

 かわいそうに思ってふりかけを鮭にしてみたら、切り身の立つ瀬がなくなった。かわいそうに。

 

 

 かわいそうだから最初に食べてやろうと箸を取ったとき、「おーい!」と大きな声が響いた。全員が振り向く。

 

 見ると、学級委員長が手を上げてクラスを見渡していた。

 

 

 

「次の英表、体育祭の担当種目決めに変更だって!」

 

 

 

 途端、クラスは『英表中止』のニュースに湧き上がった。

 担任の笹山先生が担当の授業だからこそできる技だ。

 

 クラスが喜びに溢れる中、俺は別の意味で盛り上がっていた。

 

 

 これだ。

 

 体育祭。年に1度のビッグイベント。

 東雲付属は体育祭と文化祭が隔年開催だから、こんなデカいイベントはこれきりしかない。

 二人の距離を縮めるのにこんなにぴったりな事はない。

 

 運動得意な那賀川が、不得意な楠木さんを支える構図なんかにすれば、それはもう意識すること間違いなしじゃないか。

 

 

 

「えー健人ー?お前何にするよ種目」

 

「オレぇ?別に何でもいーけど……」

 

「じゃあオレと棒引きやろうぜ!オレ得意だからよ~」

 

「はぁ~?なんだよ普段プレー下手なくせに~」

 

「やマジで自信あるから!マジでさ!」

 

「言うじゃん」

 

 

 

 丁度面白い会話が聞こえてくる。

 

 

 

「うう~、体育祭か~……。赤坂くんはなにやる?」

 

「楠木さん」

 

「ん?」

 

「棒引きね」

 

「えっ」

 

「那賀川と一緒に」

 

「えっ……ええええ~!?」

 








そろそろタイトルに困ってきました。
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