俺らの青春戦略   作:さんかくふらすこ

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遅れてすみませんでした。
またぽつぽつと投稿していきます。


第20話 黒と白のマリアージュ  ──続きは軽い口当たりで──

「……赤坂くん」

 

「あーん?」

 

「まだあるの?」

 

「ったりめーよ。俺からのプレゼントだぜ?」

 

「……うわぁ……」

 

「ちゃーんと受け取ってくれよ?」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 

 

 喜び半分、困惑半分。目の前に積み上がっていくモノを見て、楠木さんは笑いつつ顔を青くする。

 

 

 

「い、今?」

 

「えぇ~、食べてくんねーのー?」

 

「だって……だって……こんなの多すぎるよ!!」

 

「えー」

 

 

 

 ガタッと立ち上がった反動で、バラバラとポッキータワーが崩れていった。

 まだプリッツもあるのに。

 

 

 今日は皆でポッキーをシェアしたりポッキーゲームで盛り上がるポッキーの日……の、休日明け。

 

 皆金曜は揃いも揃ってポッキー食ってたくせに、今日はあの見慣れた赤い箱は影も形もない。

 一日だけ構われるポッキーがかわいそうだと思わないのか。

 

 興味が11日だけなのは店も同じなのか、昨日母さんの荷物持ちで付いていったドンキホーテで山のように売りたたかれていた。

 1箱62円はアツすぎる。

 

 

 

「これ、何個あるの……」

 

「10?」

 

「買いすぎだよ……」

 

「ええ~?いーい誕生日プレゼントだと思うんだけどな~、俺はさぁ?」

 

「うぅ」

 

 

 

 いつもの困り眉で、また詰みなおされるポッキータワーを見る楠木さん。

 でも口元が笑ってるから別に嫌じゃないんだろう。良かった。

 

 

 

「ちゃーんとこの前のアイス代と同じ値段分買って来たんだからさぁ」

 

「なんでそういうところだけ生真面目なの!」

 

「はぁ~?俺は元から真面目だぜ?少なくとも誕プレ貰っといてなーんも返さないほどじゃねぇなぁ」

 

「でも……」

 

「いやぁ、ホントは何欲しいか聞こうと思ってたんだけどさぁ、まーさか誕生日とっくに過ぎてるたぁ思わねーじゃーん?」

 

「うっ」

 

「ねぇ?まさか言い忘れてるーとかさあ。無いとと思うじゃん?」

 

「……そ、それは!それは悪かったから!私が言わなかったのが悪いから!ありがたく貰います!」

 

「はっはー、好きに受け取れバーカ」

 

 

 

 出来上がったポッキーとプリッツのタワーをどう崩そうかあわあわしているのを見て、俺は満足してパンを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金曜、楠木さんが落とした学生証を拾ってやった時、俺はある部分に目が釘付けになった。

 

 生年月日欄。10月17日。

 

 楠木さんの誕生日だ。1か月も過ぎていた。突っ返しつつ聞くと、楠木さんは目をすーっとそらした。

 

 

 

「……はああぁぁぁ!?言い損ねたぁ?」

 

「あ、あははは……」

 

 

 

 俺が誕生日を言い忘れてたのをそれなりに根に持っていた楠木さんは、今度は自分もやり返してやろうと思ったらしく、しばらく黙っていたらしい。

 

 しかしそこは楠木さん、一向に俺が聞かないことに流され、なかなか言いだせず、結局そのまま一ヶ月も経ってしまったらしい。

 

 馬鹿じゃねぇの。

 

 

 

「……バッカじゃねぇの……」

 

「……ごめん」

 

 

 

 ちょうど手持ちがなかったこともあって、その日は何にも買わず。

 そこでちょうどよくポッキーが売りたたかれていたから、きっちりスモールダブル代分買っていってやったというわけだ。

 

 

 

「わぁ……うわぁ……」

 

 

 

 ポッキータワーを崩し、机に並べる度にため息が出ている。赤と緑の箱が綺麗に並んだ。

 

 

 

「ど、どうやって食べよう……」

 

「えー?まずここを開けてー」

 

「違う!一人じゃ食べきれないって話!」

 

「好きにしなよ。やったんだし」

 

 

 

 一人で貪り食っても、家族で分け合っても、食い切れないなら配っても良し。

 お好きにどうぞ?と笑えば、楠木さんは悔しいような嬉しいような顔をして、

 

 

 

「でも、ありがとう」

 

 

 

と言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楠木さんは良い子なので、ちゃんとご飯を食べきってからポッキーに手を出した。

 開けたのが真ん中に置かれる。俺も食べていいよってことらしい。ありがたく1本頂戴する。

 ……テストの答案を見ながら。

 

 

 

「……んー」

 

「……そんなに気になる?いい点数だと思うけど……」

 

「まあねー……」

 

 

 

 前回の地獄のような点数とは打って変わって、今回はちゃんとした点数を採れた。

 今日で全部帰ってきたけど合計点は1学期末よりも良かった。

 

 良かったんだけど……。

 

 

 

「順位がこえーなぁ」

 

「平均点高かったもんね」

 

「それー」

 

 

 

 テストってのは大体平均点50~60代ぐらいになるよう作られてるらしい。

 だけど今回は60後半が多くて、そのくせ数学2つは40代後半。

 

 先生が『テスト作り失敗した』なんて零すほど、2学期中間テストは荒れていた。

 

 

 

「楠木さんは気になんねーの?」

 

 

 

 今年度一番の目標として掲げたⅡクラス昇格。

 実際大学進学のための授業サポートもⅢクラスとは違うし、一応大学を考えている俺としては行きたい気持ちが大きくなっていた。

 

 大半平均点以上を出せるようになってきたし、そうやって結果が出てくれるのは嬉しいし面白い。

 これも、楠木さんが『Ⅱクラスを目指そう』って言ったからだし……。

 

なのに、当の楠木さんがあんまり点数を気にしていないから、そう聞いてみた。

 

 

 

「え……あー、気になってはいるけど。……。

終わっちゃったのをあれこれ言ってもしょうがないかなって」

 

「……へー」

 

 

 

 若干の沈黙で楠木さんが見ていたモノを見なかったことにして、ポッキーをかみ砕いた。

 サクッとした食感と、チョコレートの甘さが広がる。

 

 

 

「あー、俺のジンセイもポッキーみてーになんねーかなー」

 

「? すぐ折れちゃうよ?」

 

「……そういうこと言うな」

 

「大丈夫、赤坂くん頑張ってるもん」

 

 

 

 簡単には折れないよ、とポッキーを嬉しそうに食べる楠木さん。

 はぁ。まぁ、いいか。

 

 

 

「……こーんないっぱいあるんだし、アイツとポッキーゲームでもしてきたら?」

 

「……はぁぁ!?」

 

 

 

 楠木さんがくわえていたポッキーがぼぎっと折れる。

 相変わらず免疫ねぇなあ。俺はポッキーをぶんぶん呪文を掛けるように振る。

 

 

 

「いーじゃん。頼みゃあやってくれんじゃね?ほら金曜だって端からやってたじゃん」

 

 

 

 金曜、那賀川のグループはポッキーゲームで大盛り上がりだった。

 

 男同士のむさ苦しいポッキーゲームにグループだけじゃなくクラス全体が大爆笑だった。

 その流れに乗って、クラスの女子たちがゲームを持ちかけ、ポッキーゲームという名の女子の牽制戦が始まって一気にクラスがヒリついた。

 

 こえーこえーと思って見ていたけど、那賀川がバレー部の女子とゲームしてるとき、楠木さんの顔がやや曇ったのを俺は見ていた。

 

 

 

「えぁ、そんな……無理だって……」

 

「えー。ポッキーゲームぐらい大したこと無いっしょ。ワンチャンキ」

 

「ストップ!ナシ!その案ナシ!」

 

 

 

 熱くなった頬を冷やすように掌を当てながらポッキーを振り回す楠木さん。

 人ってこんなに赤くなれるんだなぁ、と半ば感心しながらニヤニヤ眺めていた。

 

 大声に視線が集まってきて恥ずかしくなったのか、楠木さんはポッキーを口に押し込みながら座り直す。

 

 

 

「悪かったってー。まー楠木さんポッキーゲームとかしたことなさそうだもんねー」

 

「……あるけど」

 

「…………は?」

 

「中学の時」

 

 

 

 今度は俺が叫ぶ番だった。

 

 この楠木さんが?ポッキーゲームの?経験アリ?

 意外すぎる事実に俺の頭は大いに混乱し、しばらく声にならない声を上げた後、

 

 

 

「誰と!?」

 

 

 

……なんてお前が聞いてどうすんだって質問を叫んでいた。

 

 

 

「え……部活の子たちとだけど」

 

「……えっ」

 

「クッキーとかでもやったよ」

 

 

 

 クズが零れちゃって大変で……とかなんとか言い出す楠木さんを俺は異様なものを見る目で見ていた。

 

 

 

「女子の距離感コッッワ……」

 

「そう?」

 

 

 

 どうやら、吹奏楽部という女子の帝国には俺には想像もつかない関係性が構築されるらしい。

 女は怖い。訳が分からないという意味で。

 

 

 

「んでそれで那賀川はダメなんだよ」

 

「ダメなものはダメなの!」

 

「分かんねぇえええ……」

 

 

 

 散々焚き付けたけど、俺はポッキーゲームなんてしたことが無い。

 どんだけ一気に食えるかゲームはしたことあるけど、例の端と端から食ってくヤツはやったことない。

 

 サッカー部の連中がギャハギャハ笑いながらやってるのを腹抱えて笑いながら見てたくらいだ。

 

 

 

「お、ポッキー?いまさらー」

 

「あん?悪いかよ」

 

 

 

 無言でポッキーを貪っていると上から声が掛かった。

 那賀川だ。顔も上げずに応える。

 

 

 

「一本くれよ」

 

「はっ、楠木さんに聞けよ」

 

「!!?」

 

 

 

 ビクゥッとする楠木さんが見えないのか慣れたのか、那賀川は、

 

 

 

「はは、んじゃー貰ってもいい?」

 

「どっ、どうぞ!!好きなだけ!」

 

「それは悪いなー」

 

 

 

とコミュ力を発揮して一本取っていった。へーへー爽やかな笑顔ですこと。

 

 

 

「んじゃオレもー!」

 

「あっこら」

 

「おい取り過ぎー」

 

 

 

 さらに、横から間中が出張ってきて一気に5本くらい取っていった。

 

 

 

「こんないっぱいあるんだしいーじゃん」

 

「だからってなぁ!……てか、楠木さんなんでこんなポッキー持ってんの?」

 

「えっと、赤坂くんがくれたの、誕生日に……」

 

「えマジ?おめでとー!」

 

「おめー」

 

「ああ違う!違うの!これ一ヶ月遅れで……」

 

 

 

 多少たどたどしさが取れた楠木さんは那賀川と間中と普通に話し始める。

 

 ポッキー食べつつ、自然に笑顔が浮かぶようになった楠木さんを見て、いやー良い買い物したなーなんて思っていた。

 気分良くラス1を取った俺は、ふと楠木さんの向こう側を見てしまった。

 

 

 密集した女子たちが目をらんらんと燃やし、こちらを見ているのを。

 

 

 ……マズい。忘れてた。

 

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