俺らの青春戦略   作:さんかくふらすこ

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遅れを取り戻そうと投稿頑張っております。
しばらくしたらゆっくり投稿に戻るでしょう。


第22話 甘さと刺激は表裏一体  ~刺激物にはご注意を~

 私って、何で那賀川くんが好きなのかな。

 

 そう、今まで何回も思ってきた疑問が頭に浮かぶ。

 

 

 しんと静まり返った図書室の中。奥まった参考図書の本棚に挟まれて、私は隣をちらりと見た。

 

 

 射し込む日に照らされて、那賀川くんの黒髪がキラキラ光ってる。

 顎に手を当てて、目をちょっと伏せて、文章をなんとなさげに追っていた。そんな仕草に不思議と目が奪われる。

 

 頭がふと動いて、私は慌てて視線を手元の図鑑に戻した。

 那賀川くんは私の視線に気が付いたんじゃなくて、ただ首を回しただけだったけど、バレたかもと思って暴れた私の心臓はそのままだった。

 

 図書室に響く時計の音と心音がどんどんずれていく。

 

 

 六時間目の情報の授業で作ってる資料のために、今は図書室で情報収集中。

 大半の子がネットで調べてたけど、私は気分転換も兼ねて図書室に行くことにした。

 赤坂くんは相田くんや片岡くんと話してたし、谷中ちゃんと田中ちゃんはネット派だったから、一人で来た。

 

 

 図書室は好き。

 本はあんまり読まないけど、特有の匂いと雰囲気が好き。

 

 そうして落ち着いたいい気分で本を探していたら、隣に那賀川くんが来たというわけ。

 

 

 隣といっても、本棚二つ分くらい離れてるんだけど、それでも那賀川くんのため息や衣擦れの音が聞こえるくらいには近い。

 この静けさと相まって、本棚二つ分はもっともっと近く感じた。

 

 

 あぁ、やっぱりかっこいいな那賀川くん。

 

 光に縁取られた横顔も、片手で図鑑を広げてる大きな手も、ゆったり体重を預けた長い足も、全部にドキドキする。

 テレビで見る俳優さんだってかっこいいしスタイルも良いんだけど、見ていてもこんなに胸が高鳴ったりはしない。 

 

 本当、何でなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、そこいつもオレらが使ってるとこなんだけど」

「え?」

 

 那賀川くんを好きになった日。

 あの日は図書館で勉強をしていて、丁度現代社会のワークに丸付けをしていた時、急に乱暴な声が掛かった。

 

 まさか私に言ってるとは思わなくて顔を上げると、いかにもガラの悪い中学生3人が立っていた。

 

 

 

「え?じゃねぇよどけっつってんの」

 

「邪魔なんだけど」

 

「……」

 

 

 

 何か言い返すべきなんだろうけど、驚いたのと怖かったのとで私は全く声が出なかった。

 こういうときに一番役に立ってくれそうな赤坂くんは、さっき下に行ってから帰ってくる気配がない。

 

 

 

「え………えっと」

 

「早くどけよ」

 

「ほら!」

 

 

 

 男の子が勝手に赤坂くんの荷物に手を掛ける。「やめて」とはっきり言えないまま、私は赤坂くんのカバンを抑えるしかできなかった。

 

 

 

「あれ、楠木さんじゃん。何やってんの?」

 

 

 

 その時、横から声が掛かった。見ると、見覚えのある背の高い男の子が立っていた。

 

 誰だっけ、と呆然と顔を眺める。

 

 

 

「あ、え……」

 

「んだよオメー」

 

「こいつがオレらの場所に勝手に座ってんだよ」

 

「ち、ちが、違います!」

 

 

 

 思い出した。那賀川けんとくんだ。

 同じクラスの、確かバスケ部の人。

 

 曲がりなりにも知ってる人が来て心の余裕ができたのか、私はようやく否定の言葉を言うことができた。

 

 

 

「ああ?」

 

「まあまあ、待ちなって。先に座ってたのはどっち?この子の方が先にいたっぽいけど?」

 

「そりゃ……」

 

「でもここオレらがいつも使ってんだよ」

 

「あー、なるほどねー。あるある。そりゃ残念。

でもさ、ここ一応共用の場所じゃん?自分の場所なんて勝手に決めるもんじゃないだろ?」

 

 

 

 私の代わりに那賀川くんは中学生3人と話してくれていた。下手に口を挟めず、私はこっそり赤坂くんのカバンを取り戻すだけ。

 

 

 

「いやだって……」

 

「おっ、見てみて。あっち良くない?日当たりも良いし自販機も近いしさ?向こうの方がいいんじゃないかな?」

 

「ええ……」

 

「今日は気分転換も兼ねて向こう行ってみたら?中3でしょ?受験勉強で大変そうだしさ!」

 

 

 

 ほら、行った行った!と3人をなだめるように背を押し、別の席へ追いやる。

 3人組はちょっと不服そうにしながらも、その席に向かっていった。最後リーダーっぽい子に睨まれちゃったけど。

 

 

 

「あ、ありがとう。那賀川くん……」

 

「どーも。変なのに絡まれて大変だったね」

 

「うん。大変だった……」

 

 

 

 赤坂くんのカバンをそっと戻すと、那賀川くんはそれを見て、

 

 

 

「あれ、赤坂のカバンじゃん。アイツ来てんの?」

 

 

 

 とめざとく聞いてきた。

 

 

 

「あ……うん。夏休みの宿題終わらせようって、今日……。

 

今は気分転換で下の階にいるよ」

 

「はぁー?さっきみたいな時こそアイツの出番だろ。何やってんだよ」

 

「あは……ほんとだね」

 

 

 

 数ヶ月前まで遠目で見てた私の赤坂くんの印象はさっきの子たちと一緒なんだけどな……。

 とは言わず、私はなんとなしに笑った。

 

 

 

「……ま、何か変な事とかされないで良かった。図書館であんなんいるんだな。怖かった?嫌な事は嫌って言いなよ」

 

「うん。そうする……頑張る」

 

「そーそー!頑張れ頑張れ」

 

 

 グッとガッツポーズをして、そう言って笑う那賀川くん。ニカッと歯を見せて、爽やかに。

 

 そして、細められた優しそうな瞳と、目が合った。心がびくっと跳ね上がるのを、どこか他人事のように感じていた。

 

 

 

「…………」

 

「にしても赤坂おっそいなぁ。え、うわ数Ⅰの自主プリントじゃん、マッジメー」

 

 

 

 そこから赤坂くんが来るまで、なんて受け答えしたか良く覚えてない。

 

 なんだかさっきまで合わせられてた顔が急に恥ずかしくなって、だけど那賀川くんの笑う顔は見ていたくて、私はその笑顔に見合ってるのか急に不安になったりして、ずーっと心臓の音がうるさかった。

 

 『おも花』の展開が嫌だったことなんて忘れるくらい、那賀川くんの事ばっかり思い浮かんだ。

 

 

 

「……もっと他の服着てくれば良かったな」

 

 

 

 そんな風に思ったのも、初めて。

 

 その後赤坂くんとアイスを食べに行って、その帰り。普段は見向きもしなかった服屋さんになんだかとても目が引かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分を落ち着かせるように、髪を撫でる。

 髪、下ろした方がいいかな。そう思ってヘアゴムを解くけど、自信が無い。

 どっちが似合ってるのかな。

 

 

 ふう、とため息をついたら二重に重なって聞こえた。ビクッとして辺りを見渡すと、目が合う。

 

 

 

「……!!」

 

「っはは、ぐうぜーん」

 

 

 

 那賀川くんはにこっと笑って、図鑑を閉じた。

 鉱物辞典。

 本棚に押し込まれた本にはそう書かれていて、意外に思って思わず目で追ってしまった。

 

 

 

「……えっと、好き、なの?石」

 

 

 

 勇気を出して、聞いてみる。『話題があるならガンガン喋れ!』って赤坂くんが言ってたし。

 

 

 

「あー、これ?オレはあんまり。……、妹が好きでさ」

 

「へえ……、妹さんいるんだね」

 

「まあ……。お、楠木さんは何調べてーんの?」

 

 

 

 ふいに那賀川くんが近づいてきて、びっくりした私は盾のように図鑑を見せた。

 

 

 

「へー、花?好きなの?」

 

「あ、うん、結構……。よく家に飾られてるし」

 

「マジ?家に花??優雅ー」

 

「そんなんじゃ、ないよ……。お父さんが最近、良く買ってくるだけ」

 

「へー。なんかいいね。そういうの」

 

「……うん。でしょ」

 

 

 

 那賀川くんは男の子がいないと、ちょっと口調が柔らかくなる。

 あと笑い方も、『ニヤッ』じゃなくて『にこっ』て感じになる。

 

 その『にこっ』が、私は好きだった。

 

 

 

「えー、じゃあオレも花にしよっかなー。全然テーマが思いつかなくてさ」

 

「急に言われても、困っちゃうよね」

 

「それー。調べて終わりじゃないしさ」

 

 

 

 授業のテーマは何か興味あることについて調べて、パワーポイントで資料を作ること。

 評価にもなるし、期末テストの内容もパワーポイントに関する事が含まれるみたいで、皆なんだかんだ言いつつちゃんとやっていた。

 

 

 

「お、星か……。これにすっかな」

 

「わぁ、いいね。……あ。赤坂くんも星って言ってたかも」

 

「マジ?じゃあアイツの情報貸してもらっちゃおっかなー」

 

「あはは……」

 

「えーっと……?」

 

 

 

 星の図鑑を探して、那賀川くんがちょっとずつ近づいてくる。

 こもった足音と一緒に、私の心音もまた大きくなる。

 恥ずかしくて逃げたい気持ちと、ここで頑張ってもっと話したいという気持ちがせめぎ合って、足が動かない。

 

 

 

「お、これいいかもな……」

 

 

 

 良い感じの本を見つけたのか、那賀川くんが図鑑をパラパラめくる。

 

 どうしよう。目当ての本を見つけたら帰っちゃうし、話せなくなっちゃう。

 これだけ2人で話せてるのは初めてなのに。こんなにいいチャンスはそうそうない。

 

 私はバレないように大きく息を吸った。

 

 

 

「……そ、れ、それ、どんな本?」

 

 

 

 裏返った声で言って、私からも近寄る。

 手元の本を覗き込むと、那賀川くんは私にも見やすいように広げてくれた。

 

 冬の夜空の写真で、次のページにはそれを線で繋ぎ、星座を分かりやすくした図も載っていた。

 

 

 

「ほら、星座とか……。うーん、オレ、オリオン座しか分かんねぇ」

 

「一番、分かりやすいもんね」

 

「そーそー。今結構見えるよね。部活帰りによく見る」

 

「あ……そっか。バスケ部って終わるの遅いんだっけ」

 

「そう。マジ遅いよ?8時とかザラだし」

 

「えぇ!?それは大変……!」

 

「ほんとだよー、楠木さん代わりに練習出てくんない?」

 

「そっ、それは無理だよ!バスケ下手くそだもん!」

 

「あっはは、冗談だよ」

 

 

 

 那賀川くんが肩を揺らして笑い、肘と肘がぶつかった。

 私でも図書館でもない匂い……那賀川くんの匂いが鼻をくすぐる。顔がパッと赤くなるのが分かった。

 

 

 

「……っふふ」

 

 

 

 急に那賀川くんが笑った。驚いて顔を上げると、那賀川くんはちょっとバツが悪そうに更に笑った。

 

 

 

「楠木さんってさ、すぐ顔赤くなるよね。なんで?」

 

「ええぇ、あ、なっ……!?」

 

「いや、悪くないけどさ。ふ、ちょっと面白いなーって」

 

 

 

 顔が余計に熱くなる。手に図鑑を持ってなかったら、今すぐに顔を手で覆いたかった。不明瞭な呻き声が漏れる。

 

 

「ああぁぁ……」

 

「あー悪かった悪かったって!ごめんごめん。ちょっと言い過ぎた」

 

「えぁ、いや、そんな、……」

 

 

 

 謝らなくて良いし、普段はこんなことないし、そうなっちゃうのは那賀川くんが……とか言いたいことが分からなくなって全然言葉にならない。

 

 そうなる私にごめんごめん、と手を合わせて那賀川くんは謝った。

 

 

 

「もう面白いとか言わないからさ。それに、そんなに悪くないって。カワイイ癖じゃん」

 

「か……!?」

 

 

 カワイイ。そう言われた。頭が追いつかない。頭真っ白を通り越して、脳が消え入りそうだった。

 

 

 

「そんな恥ずかしがることないと思うな」

 

 

 

 そう言って、那賀川くんはにこっと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あんまりの衝撃にあたふたしていると、クラスの女の子達がやってきた。

 

 

 

「あーいた!那賀川くーん!そろそろ先生が戻ってきてだって!」

 

「え、マジ?うわマジじゃん!」

 

「もー、お陰で呼びに来ることになっちゃったんだからねー」

 

「ごめんごめん!帰ろ!」

 

「あ……」

 

 

 

 星座の図鑑を閉じて、那賀川くんはすぐに女の子達の方に行ってしまう。さっきの時間は夢だったみたいに、私は取り残されてしまった。

 

 

 慌てて皆の後を追って、図書館を出る。

 8組の子たちがまばらに帰る中、那賀川くんは先頭で女の子達と一緒にどんどん歩いて行ってしまっていた。

 

 

 

「さーっき何話してたの?楠木さん」

 

「……三山さん」

 

 

 

 その女の子集団から1人離れて、三山さんが私に話しかけてきた。

 

 三山さんは女バスの子で、クラスでも結構賑やか。赤坂くんと付き合ってるか聞いてくるいつもの子たちでもあった。

 

 

 

「調べ物の話……」

 

「へー。一緒に図鑑見てたしね。なんにすんの?」

 

「花にしようかなって……」

 

「ふーん。いんじゃない。楠木さんらしーよ」

 

「うん……」

 

「え、つーか健人と何してたの?結構距離も近かったしさー」

 

「図鑑を一緒に見てただけだよ」

 

「えー?そうなんだー。ま、アイツけっこー距離近いもんねー。んでカンチガイしちゃう子多いんさ」

 

 

 

 赤坂くんとの仲をからかいに来るときみたいに話してるけど、その口調にじんわり見下しが混じる。

 嘲笑が光る目で見られると、心まですくんでしまう。

 

 

 最近一部の子は毎回こんな感じ。何でもない、からかいに来てるだけ、オウエンしてるよ!って雰囲気を出しながら、うっすらと嫌味が漂う。

 吹奏楽部の好きじゃなかった先輩にそっくりだった。

 

 

 

「……そうなんだ」

 

「そ、アイツも毎回困ってんだよねー。自分のせいなのに。あ、楠木さんのことじゃないよ?だーって楠木さん赤坂と仲いいもんねー」

 

 

 

 身の程知らず。

 

 

 前を歩く女の子たちの背がそう言っていた。

 

 私は何にも言い返せないで、ただセーターの裾を掴んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ゛ー、もうマジねぇわー!資料づくりとかめんどすぎだろー!」

 

「あっはは……私も全然進まなかったや」

 

「俺もだよー、ったくテストが近づいてるって言うのによー」

 

 帰りのホームルームが終わって帰ろうと赤坂くんの所に行くと、開口一番そう叫ばれた。

 来週になったらテスト1週間前。のんびりしていられない。

 

 

「なぁどーする?今日残って進める?」

 

「ああうん、それもいいね……」

 

 

 

 先生に言えばパソコン室で残って作業して良いらしく、既に真面目な子たちは数人パソコン室に向かっていった。

 

 

 

「んーだよ楠木さんテンション低いなー」

 

「そんなことないもん」

 

「ふーん?」

 

 

 

 赤坂くんが机に突っ伏したまま、私をジトッと見つめる。こういうときは、私も負けじとじーっと見つめてみる。

 

 しばらくすると、赤坂くんは照れたように一瞬目を逸らして、今度はかっこ付けてニヤリと笑うのが常だった。

 

 

 

「ま、パパッと終わらせよーぜ」

 

「うん。早く終わらせちゃお」

 

 

 

 那賀川くんの『ニヤッ』とも『にこっ』とも違う、ガラの悪い笑顔。

 中学の時は怖かったこの顔を見ると、私は少し安心するようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして、まーた何か言われたんだろ?」

 

 

 

 賑やかな部活の声を遠くにパソコン室へ歩いていると、そう言われた。

 

 

 

「う……」

 

「ほら。あーあー、女子ってのはやっぱり怖いねー」

 

 

 

 ちょっと大袈裟にやれやれ、とかぶりを振る赤坂くん。

 

 三山さんたちの言葉の棘には赤坂くんも気が付いていて、最近は物理的にも睨みを効かせていた。

 実際赤坂くんがいるとそういうことは無くって、やっぱり女の子は怖いなぁと私も思っていた。

 

 吹奏楽部では自分に向けられることはなかったから、端から見てるのと体験するのではまるで違った。

 

 

 

「そんなに気ぃ落とすなよー。あいつらだって那賀川の彼女でさえねーんだからさ」

 

 

 

 ダッセー、と意地悪く笑う赤坂くん。釣られて私も笑ってみせる。

 

 赤坂くんがこんな風に悪そうにに言うときは、心配と照れ隠しなんだと知ったのも、高校生になってからだった。

 

 

 

「……今日ね、図書館で結構那賀川くんと話せちゃって。多分、それで」

 

「えマジぃ!?すげーじゃーん。クソ順調」

 

「……ふふ、そうかな」

 

「そうそう。あーんな女子らの話とか無視ってどんどん調子のってこーぜ」

 

 

 

 赤坂くんはポジティブでいいなっていつも思う。

 口は悪いけど、そう言われると何だかやれちゃいそうな自信が湧いてくる。

 最近は何だか(言い方が悪いけど)もっと協力的になってくれて、もっともっと頼もしくなってきていた。

 

 

 

「んなわけでー、超頑張った楠木さんにこれやるよ」

 

「ガム?じゃあ、貰うね。ありがとう」

 

 

 

 いつの間に取り出したのか、銀色の包み紙が赤坂くんの手で光る。ありがたく受け取って、口に入れた。

 

 

 

「んがっぁあ!???」

 

「ぶはっ、引っかかった!!あはは!!」

 

 

 

 甘い殻を噛み砕いた瞬間、口で何か爆発したんじゃないかって思うほどの清涼感があふれ出した。

 

 息をすると鼻まで刺激が来るぐらいスースーして、口の中は爽やかを通り越して痛いが勝っていた。

 

 

 

「何これえぇ!?」

 

「あっははは!いやー、『圧倒的目覚め』ってあるから買ったらとんでもねぇ味でさ!」

 

「そんなの食べさせないでよ!」

 

「食べさせてねーしー、やっただけですー」

 

「ちょっと!」

 

 

 

 赤坂くんは廊下に響き渡るくらい大きな声で笑った。

 

 

 

「いーじゃん、ヤな気持ちも吹っ飛んだろ?」

 

 

 

 相変わらず笑いながら、そう言われる。

 こんなもの食べさせられたのにそう言われると、むずがゆい嬉しさが湧いてきて怒りが吹っ飛んでしまいそうになる。

 

 ちょっと悔しい。

 それでもやっぱりムカついたから、渾身の力を込めて腕を叩いてやった。

 

 

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