俺らの青春戦略   作:さんかくふらすこ

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8話目。短めです。


第8話 初戦略  ──毎日にアレンジを──

「テストってさぁ、ゴキブリみたいだよなあ」

 

「どうしたの急に」

 

「勉強してないで隙を見せるとテスト、終わったと思ったらテスト。

やっと終わったと思えば今度は模試っていう別のが出てくる。

 

1枚やったら100枚やることになる……ゴキブリと一緒じゃん」

 

「……うん。気持ちは分かるよ赤坂くん。テストのやり直し疲れたもんね。でもね赤坂くん、それご飯中に話す事かな」

 

「俺はそんな話で食欲減らない」

 

「私は減るのー」

 

 

 

 二人で机をくっつけてテストを広げ、ご飯を食べながら解き直す。

 今日はお互いパンだ。というより、ここずっとパン。ちょっと被りすぎだ。

 

 

 

「そういえば、最近赤坂くんもずっとパン食だね。なんで?」

 

 

 

 と思えば、ちょうど聞かれた。

 

 

 

「この前新しいスーパーが出来たじゃん?その……」

 

「「開店セール」」

 

 

 

 声が揃った。やっぱりか。

 

 なんと4枚切りから8枚切りまで、食パン一袋68円(税込み)。

 これは買うしかない。とはいえ母さんの5袋は買いすぎだと思うけど。

 

 

 

「楠木さんちもお母さんが食パン買いまくった感じ?」

 

「そうそう。うちはお父さんがいっぱい買ってきてー。……と、思ったらお母さんも買ってきて……家が、パンまみれに……」

 

 

 

 今日の楠木さんのお昼はオープンサンド。

 アボカド、トマトにツナマヨがたっぷり乗っている。もう一枚はレタスとハム、ゆで卵のスライス。

 

 どっちもおしゃれで美味しそうだけど、どう見ても食べにくそうだ。

 

 

 

「てこたぁ、毎日パン食?」

 

「そーいうことー」

 

「うわ……」

 

 

 

 さっきから進みが悪いのもそういうことだ。

 それは俺も一緒。手元の食いかけピザトーストを見やる。

 

 ケチャップを塗った食パンに、しなびかけのピーマンと冷凍タマネギ、薄切りにした徳用ソーセージを乗せチーズを山盛りに。

 そのままトースターで焼けば完成だ。

 

 もちろんピザトースト2枚じゃ足りないのでジャムサンドイッチも用意してある。

 

 

 一度ペンを止めて一口。

 

 冷えて固まったチーズとケチャップの簡素な味だ。でもこれでいい。ピザトーストはケチャップじゃないといけない。

 ピザとピザトーストは全くの別物だからだ。

 

 

 

「はー、終わんねぇな」

 

「両方ね」

 

「結果は終わってるけどな」

 

「それは言っちゃだめ」

 

 

 

 結局、テストの結果は芳しくなかった。

 

 中学と一緒。平均点プラマイ10点。

 良く出来たと思った世界史が91点と高得点だったのを皮切りに、返されるテストはどんどん点数が下がっていった。

 

 一体順位がどう出るか。母さんにはなんて言おう。

 

 

 

「ま、次頑張ろーぜ」

 

「そうだね」

 

 

 

 テストのやり直しをトントン、爪で叩く。それを見て、楠木さんは意を決したように口を開いた。

 

 

 

「ね、赤坂くん」

 

「あん?」

 

「提案なんだけど」

 

「何の?」

 

「勉強の」

 

「うん?」

 

 

 

 人差し指をピンと立てて、はにかんで言う。

 

 

 

「えっとね……Ⅱクラス目指ざしてみない?」

 

「Ⅱクラス!?」

 

 

 

 東雲付属は普通のクラス分けの他に、4つの学力クラスに分けられている。

 

 受験で上位の成績を残し、有名大学を目指すⅠクラス。1~3組までがそう。

 4~7組のⅡクラスはそのちょっと下。広く大学進学を目指す。

 そして俺たちがいる8~11組がⅢクラス。Ⅱの更に下だ。

 じゃあⅣはその更に下……ではなく、部活動特化のクラスになる。残りの12から14組が当てはまる。

 

 だから実質、Ⅲクラスは一番学校に期待されてないクラスってことになる。

 受験で順位が下だった人達のクラス。何とも私立校的な闇ってカンジ。

 

 

 ここから上のクラスに行くには、普段の定期テストの成績と長期休み明けの確認テストの成績が良くないと行けない。

 

 2年から上のクラスに行くのはほぼ無理らしいから、狙えるのは今年だけ。

 残りの定期テスト4回と、夏休みと冬休み明けのテスト2回。併せて6回のチャンスがある。

 

 

 

「マジ?」

 

「うん。何か目標があった方が良いでしょ?」

 

「ふーん、なるほど?」

 

「えっ、あっ、やだった?気乗りしない?」

 

 

 

 ちょっと悩む素振りをしてみると、楠木さんはわたわた焦り出す。

 

 

 

「まさか」

 

 

 

 ちょっとからかっただけ。アンド感心していた。

 

 楠木さんの方からこんな提案してくるなんてずいぶん変わったもんだ。友達冥利に尽きるってカンジ。

 

 

 

「いーんじゃねぇの?上に行って悪いことねぇし?」

 

「ほんと!?」

 

「でも楠木さぁーん、ほんとにできる?俺より低いじゃん」

 

 

 

 つんつん、点数部分が折られた楠木さんのテストを叩く。実は中の点数を知ってる。現代社会の61点。俺が10点勝った。

 

 

 

「だからやるの!それにあんまり変わらないでしょ。ボーっとしてると赤坂くん抜いちゃうから」

 

「えー言うじゃーん。んじゃ、順位負けた方がなんか奢りね」

 

「う……あんまり高いのはナシだよ?」

 

「負ける気満々じゃんかよ」

 

 

 

 高校生活を最高に楽しみつつ、勉強もやり遂げる。

 

 やりたいこと詰め込みすぎな気もするけど、これでいい。出来ようが出来なかろうが、挑戦するのが青春ってもんだ。

 

 

 まずは目標を一つ。Ⅱクラスに行くこと。

 

 どうやって勉強しようか。どうスケジュールを組もうか。下ごしらえを考えるように頭を回転させる。

 

 完成を考えて、細かく、でも手を抜いて。無理なくできるように。

 

 

 ちらっと手元のピザトーストを見る。

 なんだ。毎朝やってることじゃないか。料理と変わらない。

 

 俺たちの青春のための戦略(レシピ)、ってカンジ。

 

 

 パンをかじりつつ、解き直した回答に大きく丸を付けた。

 




食パンに味噌マヨを塗って焼くとおいしいですよ。おすすめです。
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