異世界結婚相談所!! ファンタジーにおける婚活アドバイザーは、婚活問題児たちを成婚退会させられるのか?(異世界にも結婚出来ない30代40代はいっぱいいるよ!!) 作:きしめん協会プレミアム会員(嘘)
ここは異世界『
私はこの世界で結婚相談所を開いており、朝八時から夜八時まで、平日だけでなく
最近の実績としましては、大きな声を出せない事がコンプレックスなセイレーンのご令嬢と、神経過敏気味のヴァンパイアロードの伯爵をお引き合わせしたところ、この度無事成婚退会となりました。
まことにおめでとうございます。
それ以前では兄が多く家を継げない魔族の貴公子と、入り婿必須な人気老舗旅館を営むエルフの御二人のケースもありましたね。
こちらにも心からの祝福を。
さて、この様な私ですが、婚活アドバイザーとして最も疲れる仕事は、マッチングの可能なお二人を引き合わせる事ではありません。
マッチングの出来ない方々を矯正する事なのです。
私が行っている行為は、自己満足のボランティアではありません。
これを仕事にして収益を得て、生活の糧にしている以上はビジネスとして成り立つものでなければなりません。
ですがそれは広告として、費用や労力以上の成果が約束されているからですよ。
当然、多くの一般顧客からは高額な入会金と年会費を頂いており、当相談所を通して行われるイベント毎に費用を頂いております。
そして、それらが当相談所の主な収益という訳ですね。
勿論、高額な入会金は適当な気持ちで入会される事のないように意図して設けられたハードルとしての側面もありますが。
入会金さえ払えない様なお方
結婚相談所に限らず婚活は、これまでの不満だらけの人生を一発逆転させるものではありません。
出逢いに下駄を履かせる訳ではなく、出会いの回数を増やすだけですから。
低得点の方に高評価を付けるのが仕事ではなく、未だ評価されてもいない方に評価を与える場です。
お相手が自分に見合った方にしかならない以上、婚活とは未だ評価された事が無い方に対して、将来性も含めた自身の評価認定を受ける場所ですね。
結婚相談所はあくまで、出会いの機会を増やす場所でしかありません。
例えるなら、戦闘回数を増やすだけで高価な装備を与えるわけではないようなものです。
機会を得て勝負に勝てば結婚となりますが、負ければ当然経験値は入りません。
そして短命種の場合は、老化という治せない状態異常が進行していきます。
本当に、機会を増やすだけの場所なのです。
つまり…、自分に釣り合うお相手としか結婚は出来ません。
相手への評価とは、周囲からの己の評価そのもの。
ですから、不満だらけの人生しか歩めなかった人には、不満を持たれる様なお相手しかご縁は無いのです。
例えば、今いるお客様なんてその好例と呼べるでしょう。
「ちょっとっ!! 余り者みたいな男ばかり紹介して!! 少しは普通の男を紹介しなさいよ」
典型的な結婚できないムーブの発言をしてくださったのは、イエローゴブリンのゴブミィさん(38歳 パート 年収150万
…普通の男。もしくは普通の女。
この発言を行う人にとっての普通とは、統計情報上の『普通』ではありません。
理想の異性を100点として、そこから20点も妥協してあげたのだから、十分普通でしょう?
という認識をお持ちなのです。
理想より下げたから普通…?
現実的な理想から条件を下げたのでしたら、普通になることもあるでしょう。
ですが理想とは、現実からかけ離れているから理想なのでしょう。
イケメン&高種族&高収入(1000万ヴァリエ)の理想から、8割掛けに妥協しましたといっても、そもそも元の理想が高過ぎるのです。
そもそも、その5割掛けの異性とすら釣り合わない方が恋愛結婚出来ずにウチに来ることが多い訳で…。
別に高い希望に見合うだけの価値をご自分も持っていれば、釣り合いも取れるのですが、往々にして価値がない人程一発逆転を望むものです。
高難度の試験で合格点80点以上なのに、30点取れるかどうかの人が、もしかしたら幸運で受かるかもと期待しているようなお話ですね。
他人の助けなく生きていけない弱者からすれば、今貰っている助けは40点程度でしかなく、更に60点分助けて欲しいのでしょうが、助けを必要としない人から見れば40点分も助けて貰っている時点で感謝して当然というのが普通なのです。
妥協したから普通だと思っている方には、更に妥協するかそもそもの理想を下げるかをご提案していますが、それが受け入れられる事は極めて稀です。
貴方の普通は普通ではないし、貴方自身も普通以下なのですと幾ら伝えても、低確率でも施行回数を重ねればいつかは成功する。ハイスペック男性と結婚出来れば、元が取れて余りある────というギャンブルもいつかは当たるという思考を捨ててくれないのもこの類です。
ギャンブルではなく試験であれば運だけではどうにもならないし、ギャンブルだとしても無為無策で続ければ最終的には負けが溜まって破産します。
婚活市場で言えば女性は若さが、男性は貯金が失われるのは大きく不利益ですよね。
さて、結婚相談所に限らず恋愛どころか人間関係全てに影響する事ではあるのですが、結婚相談所ではとにかくスペックが重要視されます。
家柄(爵位)・年齢・年収・学歴・職業・身長・容姿・婚姻歴・戦闘能力値・家族構成及び同居の有無・そして────種族。
この中でも最も重要視されるのは種族です。
率直に申し上げまして、スライムやスケルトンなど、性行為や子作りが難しい種族は不人気ですね。
種族によっては大きさや身体構造など、基本的なものが大きく異なるものですから…。
お見合いとは云えど、やはりパートナーと愛し合いたい、子孫を残したいという目的は達成したい方が多いですので、余程他の要因で利点が無ければ、当結婚相談所では入会をお断りする事も多いですね。
また、寿命が短い種族や、統計学的に見て能力が低かったり犯罪率が高い種族も敬遠されます。
今回のゴブミィさんの種族であるイエローゴブリンは、この王国『ハイスペーリア』では
ヒューマン、エルフ、セイレーン、ヴァンパイア、魔法生命体、機械生命体など様々な人種がこの王国には存在しますが、人間として認められる条件は
人間であるものは誰であっても価値がある…というよりは、価値があって初めて人間と認められるのがこの王国の特徴ですね。
必然的に、王国民は誰もが生きる価値があるという事ですよ。
(価値がない者は人間扱いしないから)全ての人間は生きる価値を持つというのが、ハイスペーリア王国の理念です。
とはいえ、その価値にも客観的には優劣が発生してしまうようで、誰しもの需要が均等とは限りません。
特にゴブリンは……お察し*1ですしね。
種族に貴賤はないという人はいますが、種族ごとに容姿も能力も異なる以上、事実上の貴賤は発生しています。
特定の種族を馬鹿にしない人も、自分のパートナーとしては
ですから、ゴブリンの中からお選び下さいと言っても駄目、ヒューマン換算年齢(通称:ヒ換齢)で38歳以上からお選び下さいと言っても駄目、年収500万ヴァリエ以下も駄目…。
正直、このゴブミィさんは結婚の見込み無しです。
まずゴブリン種自体の評判が宜しくありません。
評判どころか実際に問題だらけです。
ゴブリン全体の生涯における前科・前歴の獲得率については脅威の90%。
といっても何度も犯罪を重ねたり、同時多発的に犯罪を犯す者もいるので、実際に生涯に一度以上、故意的に犯罪を犯すのは全ゴブリンの内30%程と言われています。
加えて全ステータスが低く、家計への提供者としても、子に対する遺伝子提供者としても、期待値は著しく低いです。
絶対に成功者が生まれないという訳ではありません。
あくまで、統計や傾向の話です。
そして、ゴブリンは多くの種族の中でも醜いとされています。
このゴブリンという時点で致命的ですが、機械やスケルトンと違って、子供を持つ事は出来ます。
その点は子孫を残したがる男性相手には有効ですね。
よって38歳のゴブミィさんなら、年収350万ヴァリエ・年齢40歳のヒューマンかゴブリンの男性なら釣り合うのではないかと思慮致します。
ですがゴブミィさんは納得されないご様子。
ゴブリンもヒューマンも嫌だと申されます。
ですので、35歳で年収370万ヴァリエのコボルトの方を御紹介させて頂いたところ、先方からまさかのクレームが入りました。
その内容は、お見合いそっちのけでGLM*2活動に勧誘されたそうです。
一応真偽と理由をゴブミィさんにお伺いしたところ────
「あんな低身長の人間は男じゃないし、コボルトで35歳なんて売れ残りも良いところ!! 男として価値がないなら私の生活が向上する活動に参加させるくらいしか生きてる意味ないわよ!!
あんな男を紹介するなんて私のことを馬鹿にしてるっ!! ニーダウアウア!!*3」
色々ツッコミどころはありますが、確かにコボルトで35歳ですとヒ換齢でいうところの45歳ですからね。
身長も120というのは、ゴブリンから見ればやや低いのでしょう。
だからといって、ゴブリン以外にGLM活動勧誘するなんて、明らかに男としてはもう見ていないのは即バレですよ。
それではKLM*4についてどう思うかとお聞きしたら、低スペ種族のコボルトなんてどうだっていいとお答えなさったのはゴブミィさんです。
コボルトは根気強く病気になりにくく手先が器用なので、低収入な仕事が多いですが食いっぱぐれることもない、エッセンシャルワークには適性があります。
勿論コボルトでも服飾デザイナーや特殊技能で高給な
中央値を見ると、下級とされる種族は幸せにはなれません。
…ところでゴブミィさん。
もし、エルフやヴァンパイアのイケメン高年収なお相手がお見合い相手だったら、GLM活動の布教をしたのですか?
「そんなわけないじゃない。お見合いでそんな話をしたら上手くいかないなんて馬鹿でも分かるわよ!!」
別にコボルトとのお見合いは上手くいかなくても良いという考えからの、活動布教というわけですね。
真面目さ以外に武器を持たなかったお相手側には、問題が全くない…という訳でもないのですが。
まあそれは置いておきましょう。
ゴブミィさん。結婚する気はありますか?
ゴブミィさんの価値は…失礼、ゴブミィさんの需要は正直に言って低いです。
ゴブミィさんは、お相手にはヒ換齢で歳下を熱望されるとのことですが、それは何故ですか?
5歳程上の方でなくとも、同年代を希望されるだけでも勝率は上がりますよ?
「だっておじさんばかりじゃない」
同年代がおじさんなら、ゴブミィさんも……いえ、やめておきましょう。
ゴブミィさん。
本質は歳上か歳下かでは無いのでしょう?
私も多くの婚活者を見てきたから分かりますよ。
もし仮に貴方が20歳でお相手が8歳上の28歳なら問題は無かったでしょうし、貴方が50歳でお相手が8歳下の42歳ならご不満でしょう。
結局、貴方より歳上か歳下かではなく、
ですが、それは男性から見た女性にも当て嵌まることなのですよ。
38歳・非正規・年収150万ヴァリエのゴブリンの女性を選ばないといけない層って、ゴブミィさんはどんな方だと思いますか?
いえ、ここまで来ると言ってしまいましょう。
実際のところ結婚したら仕事をやめて専業主婦になるつもりですよね?
四十手前の無職のゴブリン女性って、どんな男性に選ばれると思いますか?
ゴブミィさんは、四十手前の無職のゴブリン男性と結婚したいですか?
「男と女は違うでしょ!! 女はねぇ、色々大変なの!! それを分からない男が悪いのよ!! アウニダーウアウア*5」
男と女は違う。
まあ、それはごもっともです。
ゴブミィさんが出来るかどうかは別として、女性には料理や裁縫の技術が求められ、それらも評価点になります。
ですが、それらが評価されるのは選ばれてお会いした後のお話なのですよ。
ついでに言っておきますが、癒やし系とは肥満の事ではありませんからね。
38歳・非正規・年収150万ヴァリエのゴブリンでもお会いしてくれる相手に感謝することはあれど、こちらから品定めなんて以ての外です。
それと結婚相手には、自分磨きに理解がある人を求めますというプロフィール。
これはなんですか?
自分は無職になって、自分磨きとはどういう了見でしょうか?
「でも、ネイルサロンとか化粧品とか、旅行とか、自分磨きにはお金がかかるし、その方が相手の男性も喜ぶはずよ!!」
爪の手入れや化粧や旅行。
それらの自分磨きとやらは、パートナーである男性に望まれての事ですか?
違いますよね?
パートナー以外の不特定多数に自分を良く見せる為の自分磨きですよね?
パートナーの為に自分磨きを強いられている訳ではないでしょう?
それより、もっと磨くものはあるでしょう。
例えば年収を少しでも増やすとか。
「私の価値はお金しかないっていうの!! アウアウワッチョイスップ*6」
求められているのが、結婚相手を選ばない事と
男性でこの条件なら、本当に選ばれないですよ。
良かったですね、男と女は違う環境で。
「被り物してる奴に言われたくないわよ!!」
ゴブミィさんの爪が私の被り物を引き剥がしてきました。
もう退会させてしまおうかと思ってしまいます。
でも我慢しましょう。
異性として凡そ下限のケースというのを保有する事は、結婚相談所としてはそれなりに意味はありますから。
「へぇ…、イケメンじゃない…。それに独自技術で結婚相談所を始めた経営者。悪くはないわね」
お褒め頂きありがとうございます。
「だったらアンタが結婚しなさいよ!! 責任取って私と結婚しなさいよ!! 被り物してる変な奴でも結婚してあげるわよ!!」
いえ、すみませんが私、これですので。
左手薬指に着けた指輪を見せる。
「ムキーキィー!!*7」
この発狂具合を見ていると、他のお客様があの女より今仮交際している女性よりマシだとか、あんな女にはなるまいと思ってくれていると嬉しい…………というレベルを超えている気がしますねぇ。
流石に退会させましょうか。
「じゃあ離婚しなさいよ。どんな女か知らないけど私の方が────」
「私よりも────何を言うつもりかしら?」
やあ、ベル。
丁度良いところに来てくれました。
「竜姫アーベルティーヌ!? どうしてアンタ…いえ、あなたが…」
無言で左手の薬指を見せ付けるベルに、ゴブリン(38・女)さんは言葉にならない発狂をして逃げ出した。
「ベル─────
ベルたち人竜族*8は千年前に発生した、人型の竜であり、最新の竜種。
人間とも子孫は残せますが、その遺伝子は人間より他の竜に近いです。
そしてこのハイスペーリア王国では、ステータスが高い者は低い者を殺す事も認められています。
ベルは人竜族の純血種であり、その実家は代々優秀な血筋を重ね合わせてきた事から、ハイスペーリア王国における公爵の地位を得ていますから、下級国民のゴブリンを殺しても無罪となるでしょう。
そして彼女は、人竜族を主なターゲットにしている
人竜族では、自ら結婚相手を見付けられない者は生物として格下という考えが非常に強いので、それならばと人竜族で最上位である彼女に、結婚相談所の管理者になってもらい、印象を上から払拭しようとした訳ですね。
管理者になってもらう際には色々と苦労しましたが…。
「ゴブリン如きが私のものに手を出そうとはね」
ベルに限らず竜種は気に入ったものへの執着が凄まじいです。
私がベルのものかどうかは別として、助かりました。
「お前が私のものであることを自覚するのなら、じゅんけつを断つ事程度苦でもないというのに」
純血or純潔、どちらの意味であっても重たいですね。
どちらの意味か聞くつもりもありませんが。
私が人竜族でない以上は、どちらも両立してしまいますからね。
私の経歴ですが、以下の通りです。
ヒューマンを取り繕う、前世ヒューマンの転生者で天使種のドッペルゲンガー族*9。
この
人竜の姫を直接対決で下す戦闘能力。
爵位は王国から授与された一代限りの公爵位。
アカデミーの最年少卒業者。
既存のステータス表示魔法から、それらを登録するギルドシステムを独自に改造して、前世でやっていた結婚相談所のシステムを
独自技術の独占により、この世界唯一の近代型有料仲人業を経営。
箇条書きマジックというものでしょうか。
こうしてみると私も中々の高物件で、ベルを始めとして多くの好条件な女性にアプローチは頂いているのですが、私────結婚する気は全く無いのですよね。
前世と違って高位かつ特殊な種族に生まれ直した為か、子孫繁栄の願望が無いというのもかなり大きいですが、何より────結婚をビジネスとしか、思えなくなってしまったのが、最たる理由でしょう。
…それでも、私はこの仕事を天職だと思いますよ。
ゴブリンは皆様が想像されるゴブリンですよ!!
高評価とお気に入り宜しくお願いします。