異世界結婚相談所!! ファンタジーにおける婚活アドバイザーは、婚活問題児たちを成婚退会させられるのか?(異世界にも結婚出来ない30代40代はいっぱいいるよ!!)   作:きしめん協会プレミアム会員(嘘)

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エルフの46歳は、ヒューマンの35歳位に相当します。


アリーサさん(女性・46歳・商会役員・年収950万)の場合

 生まれた時点で結婚出来るかどうかは決まっています。

 先ずは種族が下級(ギリ人間レベル)だと1out。

 次に家柄が悪いと2out。

 最後に個体値が悪いと3outです。

 

 年収や学力ですか?

 年収や学力なんて、これらが全部outなら、どうせ大したものではありません。

 

 正直、婚活は種族ゲーといったところはあります。

 種族による能力差は、個体差を遥かに凌駕します。

 最強のゴブリンでは最弱の人竜にさえ、何をしても勝てません。

 

 そして種族に恵まれていると、下位の種族と争ってもまず負けません。

 そうなると一族の実績が積み重なって、家柄も良くなります。

 ゴブリンに生まれた時点で、エルフに生まれた方とはその後に大きな開きがあります。

 ですが、エルフであれば必ず結婚出来るとは限りません。

 相手の種族をエルフ以上に限定して婚活すると、エルフの中でも下位の者はずっと結婚出来ずに終わります。

 エルフ以下の種族相手でも良いと妥協すれば、すぐに結婚出来るのですが…。

 

「ですからアリーサさん。ヒューマンの男性であれば、縁談はすぐに決まりますよ」

 

「どうしてそこまで妥協しないといけないのですか。純血エルフの劣化版(ハーフエルフ)として生まれてくる子が可哀想です」

 

 確かに、エルフとしての人生よりは、ヒューマンとの混雑種のハーフエルフは一段格下の人生を送る可能性は高いです。

 ですが、それはアリーサさんがエルフのお相手を見付けられてご出産された場合と比べた時のもので、それが見付からないからヒューマンの男性をご提案しているのです。

 

「不幸になる子供を産むなんてエゴよ」

 

 そうなるとヒューマンやゴブリンの両親は全員エゴイストですね。

 

「全くその通りね」

 

 ですが、より格上の種族から見るとエルフの両親から生まれた子供も不幸なのでは?

 

「全種族の平均値で見ると、エルフは平均より上なのよ。ヒューマンやゴブリンと違って」

 

 確かに。

 これは失礼しました。

 純血のエルフとして生まれた子供は、間違いなく平均よりは幸福になりやすいでしょうね。

 ですがエルフやそれ以上の種族ばかりの職場でお相手を見付ける事は、アリーサさんには出来なかった事実を受け入れる必要はあります。

 

 私としてはアリーサさんが未婚のまま血を絶やすよりは、ハーフエルフを生んだ方が少しでもエルフの優秀さが社会に残されると思うのですが。

 

「私と子供に犠牲になれと? 何をやっても私の幼少期を超えられない事が決まっている子供を育てるなんて退屈で恥ずかしくてゴメンよ。ハーフエルフではサクトリ商会*1の平従業員にもなれないわ」

 

 その通りではありますが、一応当相談所は公営でありますので、優秀な血が絶えるよりは薄めてでも残そうという国の方針にも従う必要がありまして。

 

「私がエルフとは結婚出来ない前提なのね。それでも有料で運営している結婚相談所なの?」

 

 有料ですが、入退会はお客様の御意志を尊重しております。

 

「嫌なら辞めろってことね」

 

 受け取り方はアリーサさんにお任せ致します。

 

「クッ………。まあいいわ。一応そのヒューマンの男とやらを見せなさい」

 

 はい。

 人間にしてはやり手の方なのですが、自身の子孫にはエルフの血を入れたいと希望している方です。

 

「だったら、私が他のエルフから種だけ貰ってきて、それを育てればいいじゃない。その方が優秀に育つわ」

 

 男性にとっては、自分の血が流れる子供というのが何より大切なのです。

 

「そう。で、どんな男なの?」

 

 エトロホ・ロードエクス伯爵34歳。

 個人年収は8億2000万ヴァリエ

 希望条件はエルフであれば何でも良いとのことです。

 

「悪くは無いわね。ヒューマンにしてはマトモよ」

 

 お相手も、行き遅れでもエルフだと言っておられました。

 

「こちらは種族的には下降婚しなければいけないというのに…!!」

 

 見方を変えて見ましょう。

 アリーサさんから見れば社会的には上昇婚。

 エトロホさんから見れば種族的には上昇婚。

 ほら、側面を切り取ればどちらも上昇婚にも下降婚にもなります。

 

「でも一滴でも泥水が混じったワインは、どれだけワインで薄めても飲めやしないわ」

 

 さて、子孫の方々は再びエルフの血筋に合流すると誰が保証してくれるのでしょうか?

 ハーフエルフのお子様がヒューマンと結婚してクォーターエルフのお孫さんが生まれる可能性だってあります。

 

「…ゾッとするわね。四分の三もヒューマンのクォーターに遺伝子提供者呼ばわりされるのは」

 

 

 

 そうかもしれません。

 ヒューマンで言えば、ほぼゴブリンの孫に祖父母扱いされるようなものですからね。

 ですが、ロードエクス伯の資産と影響力をもってすれば、エルフ以上のお相手をお子様に与える事は不可能ではありません。

 

「…もう一度聞くけれど、種だけ提供したい男性のエルフとの子供を、そのヒューマンが自分の子供として育てる可能性は?」

 

 彼とは個人的に付き合いがあるのですが、はっきり0%と保証出来ます。

 

 

「そうなの…。分かったわ。

私の血筋を売ってあげる。

そのヒューマンに合わせて貰って良いかしら」

 

 そう言って頂けると助かります。

 仕事抜きにしてお似合いだと思いますよ。

 お互いにトキメキや恋心なんて一切持たない妥協の婚活こそ、当結婚相談所の売りですから。

 

「あーあ、ごめんなさい恋に憧れていた昔の私…」

 

 人生なんてそんなものですよ。

 成功者の人生には眩い希望の光を。

 敗北者の人生には希望を夢見る昏き夜を。

 

 そこまで割り切ったアリーサさんであれば、きっと上手くいくはずです。

 自分の希望には目を瞑って、ハッキリと相手に望まれたご自分の役目を理解している方にこそ、結婚相談所は向いているのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数年後、友人であるエトーから手紙が送られて来ましたが、エトーは美しい種族であるアリーサさんに、アリーサさんは優秀なエトーに何時までも冷徹を貫くのは難しかったようで、幸せにやっているようです。

 

 最初から恋心は捨てた者同士だからこそ生まれる愛もある。

 そういう事ですね。

 契約以外に相手に求めるものがない二人はお似合いでした。

 しかし側室も取らずに、短期間で爵位継承者候補が三人も生まれるとは思いませんでしたね。

 生まれた時から明確に優秀な子供が出来た時には、その遺伝子の半分を与えた相手にも評価が上がるものですから、長男の成長と共に伴侶への評価も上がり続けたのでしょう。

 

 子供に能力的な問題があると、夫婦が離婚する確率は跳ね上がりますからね。

 その逆という訳です。

 エルフの血を半分しか引かない子供には期待しないと言っていたアリーサさんは、今ではロードエクス家の文献を全て記憶して子供達に熱心に教育しているそうです。

 

 ヒューマン如きが家柄を誇るなんて無意味と言っていた嘗ての彼女とは大きく変わりました。

 

 母親の不倫問題がサロンで大炎上したエトーには、ヒューマンの男相手には幾ら言い寄られても見向きもしないアリーサさんの潔癖さは相性が良かったのかも知れませんね。

 今のアリーサさんなら、エルフや人竜の男に言い寄られても靡く事もないでしょう。

 

 格下種族の種を受け入れる嫌悪感は、今ではエトー以外の男に言い寄られる嫌悪感へと変化したようですから。

 

 私は前々から思っていたのですよ。

 結婚相手には恋愛を求めないと明確に主張する人に限って、心の底では期待していてのめり込んでいくのだろうなと。

 そして最初の時点でお相手に期待しなければ期待しない程、お相手への評価は上がっていくものです。

 本当に恋愛感情が無い人間は、そもそも主張すらしないのです。

 彼らは実に可愛らしいものですね。

 そして────、羨ましくもあります。

*1
サクトリ商会:ハイスペーリア王国に存在する大商会。純血エルフ以上の種族でないと面接も受けられず足切りされるとの噂がある。

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