異世界結婚相談所!! ファンタジーにおける婚活アドバイザーは、婚活問題児たちを成婚退会させられるのか?(異世界にも結婚出来ない30代40代はいっぱいいるよ!!)   作:きしめん協会プレミアム会員(嘘)

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弱男ランタン…


ジャックさん(男性・鬼火・35歳・夜間警備(準国家公務員)・年収450万)の場合

 人間は三種類に分けられます。

 選ぶ者。

 選ばれる者。

 そして、選ばれない者。

 

 これまで一度も小さな決断で異性を選んだり、異性に選ばれたりしなかった者が、結婚という最大の決断において、意中の相手を選んだり選ばれたりする事はありません。

 

 これまで何事においても第一希望を掴めなかった人間が、こと結婚においては第一希望を掴めるなんて事はありません。

 選んだものを望みのままに手にして来た人間が、婚活でも同じ様に望みの相手を手にします。

 そうでない人々には妥協が必要です。

 これまで歩んできた人生のように、己のスペックに見合った妥協が必要です。

 神に妥協なく作られた完璧な人間なら、その者自身も妥協しない人生を歩めるでしょうが、そんな人間は中々いません。

 それどころか、妥協し合った両親から生まれた人間が殆どでしょう。

 

 妥協されたスペックでこの世に誕生して、妥協した人生を歩んで来た人々が、妥協せず相手を選べるハズもありません。

 優れた僅かな人だけが多くの人々から恋愛対象となりますが、そういった人達は、当然の事ながら選べる範囲で一番良い相手を選びます。

 意中の人にとっての意中の人も一人だけ。

 多くの人にとって、運命の相手にとっての運命の相手は自分ではありません。

 つまりはそういうことなのです。

 

 

 

 

 

 分かりましたか? ジャックさん。

 私共は貴方が結婚出来る可能性を高める事は可能です。

 しかし、貴方が望む相手と結婚出来る可能性が高まるものではありません。

 

「…はぁ、はい……」

 

 私達結婚相談所のお仕事は、結婚したいけれど妥協が出来ない男女を、結婚したいから妥協が出来るようにすること。

 ジャックさんの種族は亡霊。

 詳細まで言えば、亡霊の中の鬼火種です。

 ジャックという名前は、鬼火種にはかなり多い多い名前で、ある地方の鬼火種の男性名は殆どがジャックオーさんで、ミドルネームも多くがオーというデータもあります。

 

 さて、そんなジャック・オーさんですが、一応仕事もしていますし、極端に短命でもありません。

 しかも食事がほぼ不要な種族です。

 しかし、明るい場所には出て来られないという致命的な欠点があり、昼行性の方と共同生活を送る事は難しいです。

 

 まあ、これだけなら問題は無いのですが…。

 

「ヴァンパイアとかでも良いんですが、駄目なんですか?」

 

 ヴァンパイアでも(・・)とは言いますが、ヴァンパイアは容姿端麗、高魔力、高生命力、実体アリなハイスペ種族です。

 本質が肉の器ではなく、肉の器に溜まった血液自体にある為に、タマネギや納豆やニンニク等の溶血作用があるものは極度に苦手ですし、血液サラサラになるお薬で死にそうになる種族ですが、基本的には高スペックな種族として扱われています。

 

 結婚出来ない方々には往々にあるのですが、長らく結婚相手が見つからない時に、「これからは歳下も視野に入れる」「今度からハイスペ種族も考えてみる」「次からは高収入な相手もターゲットに入れる」と言い出しますが、本人的には裾野を拡げて妥協した風に聞こえる様に話したつもりかもしれませんが、実際には要求の平均値を高めていて、以前よりも高望みしていることでお見合いが組めなくなります。

 あわよくばという望みを隠せていないのが、(あだ)となるでしょう。

 

 

 

 実はジャックさんの様な方でも結婚する事自体が目的なら可能です。

 低収入であっても働いてはいますし、ジャックさんは衣食住の生活費が掛からない方なので。

 ですが、男性と女性では大きく結婚条件が異なります。

 男性が女性に求めるものは容姿です。

 しかし女性が男性に求めるものは容姿と能力の二つです。

 

 

 

 …駄目でしょうね。不実体種族か短命種族の中から探す事をお勧めします。

 

 ジャックさんは年収は高くありませんが、貯金は七百万ヴァリエ程あるそうです。

 でしたら、短命な種族のお相手であれば、天寿を全うするまで貯金で持つのではないでしょうか?

 

 

「不実体はともかく、短命ってのはアレですよね?

ゴブリンとかそういうのですよね…」

 

 はい。その通りです。

 

 

 

 ゴブリンという種族は不人気です。

 容姿が種族として醜いという事が男性に不人気な理由で、能力が種族として低いという事が女性に不人気な理由です。

 

 

 

「はぁ…。お金、目当てですよね」

 

 はい。その通りです。

 

 

 ジャックさんはため息をつかれましたが、それは自分を理解出来ていないという証拠でしょう。

 

 そもそも、鬼火種というのは、貴族の方の中に寿命の延長を求めて死の間際に生きたまま鬼火種に変わった方がいるから、モンスター扱いではなく人間の枠組みに入っている状態です。

 何時モンスターとして扱われても仕方ない方には、短命種の方を宛てがう方が無難です。

 

 そして、結婚相談所というのは、結局のところ恋愛結婚のレースではゴールに辿り着けない人々が集まる場所です。

 恋愛結婚というのは、中々に高難易度なものです。

 恋愛結婚というのは、恋愛という予選を勝ち抜いた後に結婚という本選へと挑むシステムです。

 恋愛という予選を勝ち抜けない人には、そもそも結婚まで辿り着く事が出来ません。

 身も蓋も無い言い方をすれば、容姿が優れていて初めて予選に参加可能で、能力が伴うかを見極められてゴールするシステムなのです。

 

 その点、結婚相談所というのは、恋愛をしなくても結婚出来るシステムとなっています。

 折角恋愛予選に勝ち抜けない人々の為に、恋愛をしなくても結婚出来る仕組みになっているのに、結婚相手に恋愛感情を持てるかどうかという、彼等彼女等が恋愛結婚リーグで選ばれなかった理由を、態々結婚相談所に持ち込むのは、わざと自分の弱点を曝け出す行為ではないかと思うのです。

 

 恋愛感情が沸かなくても結婚は出来ます。

 とにかく結婚がしたいから、恋愛という予選を伴わない結婚相談所に来て頂いたはずなのに、結婚に恋愛を必要とするのなら、それは自分が勝てなかった戦いに再び挑む事に等しいのです。

 

 

 

 ジャックさん。キツい事を言いますが、結婚相手に恋愛感情を向けられる相手を選びたいのなら、貴方では当相談所でお力になれる事はありません。

 

 日常の接点が無い男女が、写真によく似た投影魔法…つまりはこの世界の写真において、お会いする前から恋愛感情を向けられる要素があるとすれば、それはもはや容姿以外にはありえません。

 相手も売れ残りとはいえ、一目惚れ出来る相手しか選ばないやり方で、学生時代に、そして社会人になってからも、選んだり選ばれたり出来ましたか?

 そう正直に言っても構いませんが、ジャックさんと薄々分かっている事を態々引き出して目の前に突き付ける事もありません。

 

 

 

 

 

 今から話す事は長いですがしっかりと聞いてください。

 ジャックさんの種族ランクはD、個体値ランクはCといったところです。

 ジャックさんの方から申し込めば種族ランクDのお相手まで選べますが、ジャックに申し込む女性は他種族ですと、良くて種族ランクEでしょう。

 女性で自分と同じランクの男性を選ぶ人は基本いません。

当初は最低でも自分のランクよりも二つ程上が希望される事が多いですが、それをどうにかして落とすのが私達の仕事ですね。

 また、個体値Cというのも微妙です。

 というのも、その種族内で選ぶ際に、男性にとってはCランクの個体値の女性は許容されますが、女性にとって許容出来る個体値ランクは最低でもB以上です。

 よって、個体値ランクがCランク以下の方は、実質的に種族ランクを一つ落とさなければなりません。

 ジャックさん、貴方の実質的な種族ランクはEです。

 本来、Eランク種族の男性と結婚を望む女性の種族はGランクですが、底辺がFランクなのでGランクは存在しません。

 普通なら不可能ですが、私達の方で頑張って女性側にも妥協させてEランク種族の女性とお見合いを組んでみます。

 

「そう、ですか」

 

 気の無い返事。

 これはショックだったでしょう。

 ジャックさんにとって、種族ランクがDであること、言い換えれば種族ランクで下にはEとFがあることが自尊心の根源であったでしょう。

 しかし、実質Eランクと言われて、Fランク女性にも妥協で選ばれるというのは、余りにも残酷な事実でした。

 

 

 

 

 ジャックさんには三つの選択肢があります。

 一つは婚活を諦める事。

 一つはジャックと結婚しなければならないような女性と結婚しなければならない自分を受け入れる事。

 一つは加齢により価値が落ちるよりも早く個体値ランクを上げて、個体値ランクをB以上にして種族ランクをDにすること。

 

「それなら…」

 

 最後の選択肢を選びたいのは分かります。

 しかし…、最後の選択肢は通常お勧めしません

 

「なんでですか!?」

 

 それはとても簡単な話です。

 

 これまで生きて来た結果が個体値Cランクだったのです。これまでCランクの成果しか出せなかった人がBランクの成果を出し続けるのはとても難しく、一年では間違いなく無理です。

 長い時間をかけて行う頃には、今度は加齢による価値の低下がやってきますから。

 ……普通なら。

 

「そう、ですよね。

負け組として誕生したと、この歳まで理解させ続けられていた筈なのに、勝ち組になれるはずもないですよね」

 

 その通りです。

 しかし、勝ち組だけが結婚している訳ではありません。

 結婚するだけなら、負け組同士が負け組な結婚をして、負け組な家庭を作る事は可能です。

 

 

 ですが、ジャックさんは不実体という利点があります。

 

「利点?」

 

 不実体というだけで、多種族渦巻く婚活市場では不利ですが、メリットはあります。

 

 ジャックさんは不実体ですので、加齢による見た目の劣化がほぼありません。時間をかけて個体値ランクを高める事が可能です。

 年齢の割に若く見られる()どころの話ではありません。

 実体に依存しないという事は、見た目が経年劣化しないという事ですから。

 

 

「そ、そうですか!!」

 

 ええ、ですのでコチラの自分磨き講座を是非。

 今ならキャンペーンで20%OFFの二万ヴァリエで……と言いたいところですが、ジャックさんのお仕事は試験による昇進もあるとの事。

 三年程休止にして、試験に全てをぶつけてみてはい如何でしょうか?

 休止期間は会費も90%OFFになっています。

 

 最初から、養われる事だけを結婚の目的にしていて、養わせる事だけを相手に与えるつもりと割り切れた女性にとっては、収入が高まる事は魅力です。

 最初から見た目においては、一定以下はボツと同意なので、見た目がボツでも構わない相手を狙うべきなのです。

 

 結婚相談所でトキメキを得られるのは、結婚相談所の外でもトキメキを得られる方のみです。

 誰からも恋愛対象になった事がない人は、恋愛対象となる相手を選ぶ事は出来ません。

 恋愛強者とは、生物として、男性若しくは女性として優秀な方の事であり、人間性というのはそれ以降に見られる要素です。

 プロポーズされても、感情ではなく条件で考えるので一日や一週間待ってもらう事も普通ですし、結婚式で流す涙も、私の人生の打点はこの程度が限界かな…といった諦めの涙や、昔美形相手の恋に憧れた幼い日の自分への謝罪の涙である事も大半ですから。

 

 恋愛結婚で予選も勝ち抜けないから結婚相談所に来た方は、結婚相談所で恋愛対象を探してはいけません。

 恋愛対象ではなくとも結婚相手になる方を探しに来たという考え方を捨てなければ、ずっとず〜っと婚活迷宮を彷徨い続ける事になるのです。

 天国にも地獄にも行けず、命消え去るまで己の足元しか照らさない灯りを頼りに、彷徨い続ける婚活迷宮を。




せっかく恋愛という予選をスルー出来たのに、本選でわざわざ恋愛を求めて負ける選手多過ぎィ問題。
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