異世界結婚相談所!! ファンタジーにおける婚活アドバイザーは、婚活問題児たちを成婚退会させられるのか?(異世界にも結婚出来ない30代40代はいっぱいいるよ!!)   作:きしめん協会プレミアム会員(嘘)

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トリーバーさん(男性・混ヒューマン【ゴブリン】・36歳・準公務員・年収470万)の場合

 結婚相談所に在籍する人には、自由恋愛市場にいるような魅力的な人が少ないというご意見があります。

 恋愛対象として相手をお探しする場合、その意見は事実です。

 結婚相談所とは、身も蓋も無い言い方をすれば、敗者復活戦に他なりません。

 自由恋愛のドラフト指名から外れ続けた人達だけが集まったトライアウト。

 それが結婚相談所の実態です。

 誤解なさらないで下さい。

 それは、この世界で唯一の結婚相談所である当会の話であって、異世界の結婚相談所の話ではありませんから。

 

 大切な会員様達にこの様な事を言いたくはありませんが、廃棄前の割引シールを貼られた処分セールの側面を完全に否定出来るものではありません。

 

 敢えて敗者復活戦(トライアウト)から挑む方もおられますが、そういった方は敗者の集まりの中でしか輝けないか、そもそも婚姻相手に恋愛を求めていない事が多いです。

 

 そんな中、結婚相談所で恋愛対象となるお相手を探そうとすれば、これまで付き合った人よりは恐らく見劣りするでしょうし、好きだったけれど届かなかった相手には間違いなく見劣りするでしょう。

 

 きっぱりと恋愛を諦めて結婚しようとする方にこそ、結婚相談所は向いているのですが、結局、恋愛対象となる異性を選ぼうとしてしまう方が多い為に、自由恋愛市場(上位リーグ)と同じ様に、結婚相談所(下位リーグ)の中では上澄みになる方ばかりが入会と共に御成婚されて、平均以下の方々は沈殿物として残り続ける事になります。

 結婚相談所というフラスコの中で、駄目な人はずっと沈澱し続けて、上澄みは新たに人が注がれるにつれて、溢れる様に容器から脱出されるという仕組みですね。

 

 

 

 

 さて、結婚相談所(私の組織)における最も優先度が高い事項は種族ですが、その次に大切なのは若さです。

 …といっても、この世界においては単純な年齢の事を指す訳ではありません。

 

 世の中には実際に若見えする種族の方と、若いつもりの中高年がいます。

 現王妃様は、若見えというよりは…まぁ、アレ*1ですよね。

 五十五歳であっても若く見えるって言われるんですって、若作りしたおばさんの様な発言をしていますが、どう考えてもヒューマンが出来るレベルの若作りでは無いのです。

 第一王子の息子より若い第十王子が、五体満足の何不自由無い健康に生まれている当たり、生物としての母体の若さが証明されています。

 …昔、何百年も前、それこそあの世界大戦(・・・・・・)が開かれると決まる前の時代に、昼を歩き、血も吸わず*2、聖性を恐れないヴァンパイアがいたと聞きますが、恐らくはそういうことなのでしょう。

 流石に本人には聞けませんけれども。

 

 ただ、少し迷惑だなと思うのが、五十歳でも十代に見える若さを自他ともに認める王妃様のお陰で、四十代でも二十代に見えると自称する位なら良いと考える女性が増えた事です。

 

 これはヒューマンやゴブリンに多い感性です。

 デイウ■ーカーという埓外と、ヒューマンやゴブリンを一緒にしてはいけません。

 残念ながら、国王も王妃も王妃がヒューマンであると言い続ける以上、それがこの国の真実になってしまっていますが…。

 

 

 では、何故特に男性が若い異性を美しく、歳を取った異性を醜く感じるのか?

 それは、本能がより良い遺伝子を残せる相手かどうかを判別しているからです。

 歳を取ると、生まれる子供の遺伝的な質が劣化する傾向があります。

 それは卵子、又は精子が劣化する為です。

 そして、卵子、又は精子の劣化を、生物は容姿から読み取れる様に出来ています。

 身も蓋も無い言い方をすれば、精子提供者や母体としての性能は、生物は見た目で本能的に理解出来る、ということですね。

 一説によれば、見た目の崩れは遺伝子の提供者、受託者としての性能劣化時期と繋がっており、見た目が崩れるのが早い種族や性別は、それと同じ様に性能も低下しているのだとか。

 …ええ、あくまでこの世界での研究結果です。

 

 男性のほぼ全てが自分の子供を望んで結婚する為に、自分の子供を優秀に産める事を女性に求めます。

 そんな中、プロフィールだけでなく、視覚情報においても卵子の劣化が見て取れる異性が、唯一人の相手として選ばれようとしてきた場合は、多くの男性が抵抗を示すでしょう。

 勿論、これは男性と女性を入れ替えても通じる話です。

 これが幾らでも婚姻相手を作れる場合ですと話は変わりますが、一人しか相手を選べないのならば、選べる範囲で最高の相手を選びたがるのは当然の事です。

 

 実質二十代後半みたいなもの…という発言ですが、これを長命種や逸脱種が言うのなら分かります。

 下手すれば逆サバ読んでいる方もおられます。

 ですが、通常種や短命種でこれを自称する人には、何時も私は頭を悩ませています。

 

 また、自分に異性からの価値があると勘違いしてしまった三十代の平均年収男性にも頭を悩ませています。

 様々な異性に選ばれる人は、自分を選ぶ人達の中から最も良い相手を選ぶ事が出来ます。

 選ぶ側になるには、そもそも大勢から選ばれる側でもある事が前提です。

 しかし、これまでの人生で一度も選ばれて来なかった男性が、定職に就いて平均年収があるという当たり前の事を、異性に選ばれる魅力的な要素だと勘違いしてしまっている事が往々にしてあります。

 しかも、最も人口密度が高い首都中央区においては、国全体の平均年収では、首都中央区の平均年収に届いてもいません。

 

 人間は恋愛感情を切り離すのは難しいそうです。

 本当に人間とは、難儀な生き物です。

 だからこそ、恋愛という予選を持つ普通の結婚から滑って、結婚相談所に来たものの、結局自分の恋愛対象になる相手ばかりを探して、けれど相手には恋愛対象にはされなくて、結婚相談所でも恋愛敗者どころか恋愛の対戦にもつかせて貰えずに、婚活に失敗し続けるのです。

 恋愛の予選をスルー出来る事をメリットとして選ぶのなら、自分も恋愛対象にはならない女性を選択肢に入れるべきなのに、そこで二律背反を犯すから、結婚出来ないのでしょう。

 自分の恋愛対象として選べる女性は、他の男性からも恋愛対象として見られている為に、その女性も男性達の中から恋愛対象になる相手を選びます。

 恋愛で選ばれない男性は、誰の恋愛対象にもされない女性を選ぶ他ないと言えます。

 今後、この相手としかセックス出来ない事が苦痛ではないかという観点を第一条件に持ってくるのは、男性だけでは無いと心に刻むべきなのです。

 …もし、結婚したいのであれば。

 

 それも出来ないのならば、普通に恋愛してこれなかったこれまでの様に、これからもお見合いにも失敗していくでしょう。

 

 

 今回のお客様もそういった男性です。

 

 

 

 

「俺は今まで女性と付き合えた事が無いんです」

 

 

 

 内心では、見た目で分かりますよと思いながらも、私の仕事上はこう答える他はありません。

 つまりは、定番の答えです。

 

 へえ、意外ですね。

 とてもそうは見えませんが。

 

「いえ、本当なんです」

 

 このような茶番のやり取りですが、世界や社会が変われば、彼が結婚出来ていた可能性もあります。

 国民の九割以上が結婚しているような、結婚するのが当たり前の社会であれば、女性達も焦っていて、彼とでも結婚しようという方もいたでしょう。

 つまりは、社会が悪い…訳ではありません。

 国民の九割以上が結婚出来るなんて異常です。

 モテる男が結婚と離婚を繰り返して、女性の九割が時間差で結婚出来るとか、若しくは一夫多妻制で女性の九割が結婚出来るというのなら、未だ分からなくはありません。

 

 しかし、一夫一妻制で九割が結婚出来るというのは、本来異性に求められない人々の遺伝子が、社会の同調圧力によって残されてしまう事になります。

 それは、本来自由恋愛社会においては残されない遺伝子。

 結果、その同調圧力が無くなった途端、負債として一気に芽吹く事になります。

 発注ミスで十倍の注文をすれば、大量に在庫があまり、廃棄品が増えるのと何も変わりません。

 値引きしなければ、半分も捌く事が出来ないでしょう。

 

 野生動物では、子孫を残せる個体は二〜三割だと聞きますし、社会性生物ともなると、トップ層が大量に子供を生んで、トップ層以外はトップ層の子供を育てるだけになりますので、一割以下になります。

 人間も社会性生物ではありますが、それは置いておくとしても、この二〜三割というのが、生物としての人間の適正な婚姻率ラインであることは分かります。

 無論、人口増加率は経済に直結するので、他国に経済力で優越して、他国から搾取する側に回る為にも、国家としては自然に反してでも数を増やす事を推奨しますし、その為に世界唯一の結婚相談所(うち)が公営で存在するのです。

 

 ですが残念な事に、裕福になり社会が安定すると、国家の望みよりも個人の感情が強くなり、結婚して富国強兵の資たるべきという考え方よりも、恋愛感情が向く相手となら結婚したいが、そうでない相手とは結婚したくないという意見が罷り通る事となります。

 

 結婚が当たり前の時代に妥協で結婚していた親がおられる方がいるとします。

 しかし当人が結婚する頃には結婚が当たり前で無くなっていた時には、その方が選ばれる可能性はとても低くなるのです。

 元々同調圧力が一度も無かった社会であれば、そのような非モテ遺伝子はある程度淘汰されている筈ですが、結婚が当たり前の社会では、非モテ遺伝子は淘汰されず、次の世代に残されてしまうのです。

 恋愛で勝てないから、結婚相談所に来たというお客様が多いからこそ、当相談所ではお相手に容姿を求めるなど再三言っています。

 何故なら、結婚相談所でも容姿優先で活動されると、恋愛市場と同様に非モテ層が余ってしまうからです。

 しかし、非モテ層が余るのは、本来自然環境では適切な事でさえあり、その非モテ層が増え過ぎたのは、前の世代で婚姻しない層にまで婚姻圧力がかけられていた事を示します。

 

 そういった意味では彼も被害者かもしれませんが、これくらいの事で被害者ぶられると、何もかも他責にしてしまう人なのだと思われても仕方ありません。

 勿論、他責思考が許される人もいますが、トリーバーさんはそうではありません。

 当相談所に入会される時も、書類ミスはありましたが、トリーバーさんのミスなのに、面倒臭そうに処理しておられました。

 ですが、普通のスペックの人間ならば、そもそも書類ミスはしないのです。

 していたとしても、自分で作成した書類を読んだ際に、違和感に気が付けるのです。

 それが出来ない時点で、スペックに問題があるといえます。

 スペックに問題がある人が他責思考になると、お前に言われたくないと周囲に思われてしまうのです。

 

 

 私は彼に常日頃こう言っています。

 

 

 トリーバーさん。

 日頃、男性からあまりアプローチを受けていない女性に片っ端から申し込んでください。

 そして、相手からオッケーされたら断ってはいけません。

 選んだ相手全員に断られるのでは、実質的に『選ぶ側』として失敗しています。

 全員に申し込んで、相手の許諾に無条件に応える形で、『選ばれる側』にならなければ、『選ばれない側』で一生を終えますよ。

 

「でも、幾ら何でもこんな不良品在庫みたいな相手ばかりでは…」

 

 …貴方もその不良品在庫なのだから、不良品在庫の抱き合わせ処分ですよ。という真実は口には出しません。

 ですが、理解して欲しいなとは思ったり。

 

「例えばあのアシナさんは無理としても、その二割下とか三割下の相手では駄目なんですか?」

 

 このトリーバー・ンホーさんの発言には、正直頭を抱えたくなります。

 ガチトップ層の三割下でも、十分に上位層です。

 それは妥協ではなく、高望みと言います。

 寧ろ、ゴブリン・五十歳・無職の女性の二割上、三割上を狙うべきでしょう。

 

 ドン底よりマシな人を選ばない理由がある程、相手を選べるつもりですか?

 学生時代に一度でも彼女がいましたか?

 職場の男性の半分以上は既婚者や彼女持ちだそうですが、これまで付き合った事が無い時点で、職場の男性の中で下位にいると気が付けませんか?

 そう言いたくもなります。

 

 

 

 ですが、ここは結婚相談所。

 トリーバーさんの職場の中では、非モテランキング上位に位置していて、職場の女性からは異性の性能として下に見られていたとしても、嫌な言い方をすれば、トリーバーさんの職場よりも格下の職場の女性からすれば、職それ自体は格上の男性として扱って貰えます。

 ここに望みを託す他は無いのです。

 トリーバーさんは、人間性としてどうこうではなく、生物として、オスとしての魅力が皆無です。

 婚活にさえ恋愛感情を持ち出す人がそれなりにいる今、生物として、オスとして劣るというのは、とても不利になっています。

 だからこそ、公営嘱託職員としての立場を売り出す以外に方法はありません。

 

 

 

 

 トリーバーさんに婚活のやり方をお教えします。

 トリーバーさんがいいね(・・・・)ではなく、公営嘱託職員(トリーバーさん)でもいいや(・・・・・)というお相手を探すのです。

 それが願いを奇跡ではなく現実に変える手段です。

 

「…妥協して貰える相手で妥協するということですか?」

 

 流石です。

 理解が早いですね。

 それでは、こちらのバーコンさんと、ビーコンさんと、ブーコンさんと、他二名の方。

 この計五名の方から、四名を選んで頂き、それぞれ来月の地竜の日(土曜日)の昼からお会いして頂きます。

 

「……………はい」

 

 乗り気でないのは見て分かります。

 トリーバーさんは欲しい相手を選んでいるようで、実は一番嫌な相手を省いているだけの作業と感じているに違いありません。

 大正解です。

 ですが、そこまでは気が付けているのに、自分が相手にとって一番嫌な相手として省かれるか省かれないかの境界にいるとは気が付けていません。

 好きだから結婚するのではなく、絶対に結婚したくない相手ではないから結婚する。

 それが、結婚相談所における非モテ層の結婚です。

 トリーバーさんは、相手からどう思われるかという部分を正確に理解出来ていません。

 尤も、それは男女共に多いのですが…。

 

 

「嘱託職員なのに、自分よりも歳上女性だけを紹介される事ってあるんですか?」

 

 ええ、あります。

 トリーバーさんと同じ歳の女性は、トリーバーさんと他の方を比較して、他の方の側に比重を置くと、そちらに全力投球してしまいます。

 ですから、極端な話、トリーバーさん以外にはトリーバーさんよりも僅かに条件が悪い男性達しか選べない女性達に対して、お会いして頂く事で、お相手に乗り気になって貰う他はありません。

 当相談所で三年も活動を続けられているトリーバーさんに対して、真剣に結婚して頂く事を(・・・・・・・・)考えた結果です。

 

 …もう可能性がある在庫()がないと、言い換えた方が宜しいですか?

 

「……正直なところ、お相手に恋愛感情は働きませんが、恋愛結婚を諦めて、結婚自体を目的にこの相談所に来たのですから、丁度良いのでしょうね」

 

 ええ、その意気です。

 

 

 

 

 〜三ヶ月後〜

 

「「これまでありがとうございました」」

 

 トリーバーさんは、二人目にお会いしたピグマットさんと成婚退会される事となりました。

 トリーバーさんにも、ピグマットさんにも、選びたくても選べなかった人生への未練と諦めがあるのが見て取れますが、トップ層同士でなければ結婚なんて、多かれ少なかれ未練と諦めは残ります。

 妥協多目で、本気で好きになった相手でも無いからこそ、自分達の家庭よりも、実家の家族の方を優先したりなど、不満は出るでしょうが、きっとそれもお互い様でしょう。

 お幸せにというよりは、不幸を最小限にといったところですが、それでも私は心から(・・・)こう云わせて頂きたく思います。

 

 

 

 どうか、お二人の旅路に幸多からん事を御祈りしています。

*1
種族詐称

*2
但し、デイウォーカーが出来上がる迄には小国の全人口に匹敵する程の夥しい血が必要となる

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