うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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時系列としては、襲われる前になります。



IF③ せかいの ほうそくが みだれる

 

「ふぅ、まぁ……午前中の捺印はこんなもので良いか」

「お疲れ様です、ボス」

 

タツヤ君が、我等のロケット団を改革し始めてから幾分経った。

彼は我等の組織に属した所で、以前と変わらず彼らしくこの施設の中を歩き回っている。

 

たまに施設の一部が破壊される事もご愛嬌と言ったところだ。

修繕費がバカにならないので、未来投資も含めて節約の為に既に建設関連の会社も立ち上げた。

 

ポケモンがそこらに溢れ返っている関係上、頑丈といえども破損は目立つ。

私達の出費も減るし、仕事も舞い込む。一石二鳥とはこの事なのだろうか。

 

「ボス、急ぎの案件は今日はまだ無い様です。

 最近この社長室に篭りっきりですし、簡単に気分転換をなされてはいかがですか?」

「気分転換、か」

「秘書として手伝ってくれているミュウも、色々と気分転換を図っているみたいですし

 案外仕事の能率が良くなったりするかもしれませんよ」

「まぁ、そうだな……私も、あくまで人でしかないからな」

 

ミュウの代わりに秘書として動いている弾頭社員の提案を前向きに受け止め

余裕があるうちに休むだけ休み、いざという時にガス欠を起こさぬために

午後からは、一応の自由行動の時間とさせてもらった。

 

 

 

 

社長室から出て、廊下を歩く事しばらく。

適当に社内の施設や社員の様子を伺いながらうろついていると

廊下の向こうから、訳のわからない図が差し迫ってきた。

何故かリュックが、床をスィーッと動いているのだ。

一体何事かと思い、そのリュックに近づいてみると正体が判明する。

 

「おや、サカキさんですか」

「あぁ、そうだ……というか、見えているのかね」

「いやーまぁねぇ、私って高性能ですからー?」

 

そんな風に軽口を叩くのは、タツヤ君のポケモン図鑑である。

彼のポケモン図鑑は、何故か自立行動をすることが出来るのだ。

そのような機能聴いた事も無いのだが現実でこうなっているので、どうしようもない。

 

「っと、そうだ、マスターを見ませんでしたか?」

「ん、タツヤ君か。今日は確か研究室で会議をしているといってたが」

「はーい、ありがとうですー んじゃちょっとひとっ走りしてきます」

「あぁ、前方に気をつけてな」

 

私からタツヤ君の居場所を聞き、そそくさーっとリュックは消えていった。

何か持ってきてくれと言われていたのだろうか?

 

「……む?」

 

ポケモン図鑑が走り去った後を見てみると、ディスク状の何かが落ちていた。

わざマシンか……? 袋の口でも開いていたのだろうか……仕方ない、渡しに行こうか。

 

 

研究室に辿り付く前に、地下施設全体に物凄い揺れが発生した。

地震……などではなく、いつも通りにタツヤ君とミュウツー辺りが暴れているのだろう。

やれやれ、若いものだ。

 

多分、どちらが意識の無いレベルであってもいつも通りの事だろうし

とりあえず拾ったディスクを届けに行こう。

 

 

 

やはりというかなんというか、研究室周辺にはコンクリートの塊が散らばっている。

研究員も適当な位置に死屍累々と積みあがっていた。3名しかいないが。

 

惨状を確認した後に携帯電話で我等の建設子会社に連絡をして、後程修理に来るように伝える。

さて、タツヤ君はどこ……

 

「……ぬ」

 

元・研究室の残骸を見てみると、部屋の中央にどでかい穴が開いていた。

下層にまで行って暴れているのだろうか。

 

ふと、横を見てみるとミュウツーが瓦礫の上でノックアウトしていた。

……となると、今論議しているのは最近彼が連れてきたゲーム関連の外会社の社員か。

 

穴を覗き込んでみると、ちょっとした高さはありそうだ。

フィールドワーク派でも無い私が、スーツでここから飛び降りるのは少し難しそうだ。

 

「ふーむ……明日にでも届け───む?」

 

穴から顔を下げ、一度出直しておこうと思い体を振り向かせた時に

四角い箱が残骸から顔を出しているのが見えた。

 

どうやら金庫らしく、部屋の崩壊の衝撃は耐え切ったようだが

鍵が壊れてしまったらしく、扉は開いてしまってる様だ。

 

「……なんだ、これは。透明な靴下……? にしては、なにやら感触が……」

 

触り心地としては、なにやらグニグニしているといった感じだ。

ふむ、靴下なら……履いてみようか。

 

私は革靴を一度脱ぎ、瓦礫に腰を掛けてその靴下を履いてみる事にした。

 

 

 

 

ピピ・・・ピピピ・・・

 

「───む? なんの反応でしょう?」

 

崩壊した研究室の穴に飛び込み、マスターを探している私になにやら反応がありました。

これは……わざマシンを使った時の反応でしょうか?

 

「んー、おかしいですねぇ? マスターがこんな状況でわざマシンなんて使うでしょうか……?」

 

そうこう考えているうちに、私のデータに使用完了メッセージが届いてしまいました。

 

 

 

 

 

 

サカキは

 そらをとぶ を おぼえた!

 

 

この日から、たまにタマムシシティで空を飛躍する人間が目撃されるようになったそうである。

 




真タイトル サカキ、空を飛ぶ

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