うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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***話 15% ポケモン達

 

1日目 晴れ

 

今日から主様が起きるまで、日記というのを付ける事にしました。

さかきさんに、

 

『彼が起きた時、どれだけ心配させたかの見せしめにしてやるといい』

 

と、言われたので、そうしてみる事にします。

 

さかきさんとは、和解しました。

昨日あの後に、私はさかきさんに殴りかかってしまいました。

ダグ1さんや3さんも止めてくれたけど、抑えられなくて

そのまま彼らごと腕を振り抜こうとした時に、見てしまったんです。

 

さかきさんの顔から、覚悟と後悔が滲み出ている事に。

殴られても仕方が無いという覚悟を持って私の拳を待っていて

そして、巻き込んでいると知りながら今まで付き合わせてしまった後悔。

 

私がして欲しかった事を既にやられてしまっていたから

どうしても、殴る事が出来ませんでした。

 

本当に、私にも分かるぐらいに誠心誠意を持って謝ってくれて

私も、私達も。さかきさんがこんなことに引き起こすために

主様と一緒に頑張っていた訳じゃないのはわかっていましたから。

 

それに、ミロカロスさんが

 

『もしもご主人様がこの場に居たら、絶対にこの方を殴らせはしないでしょう』

 

といわれて、改めて考え直したんです。

 

1日経ってから見た主様は、とても穏やかに眠っていました。

昨日死に掛けていたなんて、まるで嘘みたいでした。

試しに声を掛けてみたら、起きてくれるんじゃないかなと思って

「あさですよー」って声を掛けてみたけど、主様は起きませんでした。

 

もしかしたら、すぐに動き出してくれるんじゃないかと思って

1日中、主様の前に居たけど、周りが暗くなった時にダグ2さんが迎えに来て

ポケモンセンターに帰らなきゃいけなくなりました。

出されたご飯はとてもおいしくなかったです。

主様のご飯が食べたいな。

 

はやく、起きてくださいね  主様

 

 

2日目 晴れ

 

帰った後に、ミロカロスさんとダグさん達3人に心配されて

気晴らしに何かをしたほうが良いと言われたので

元ぼうそうぞく?という人達と一緒に、またゴミ拾いをしてました。

たくさんの人から

 

『兄貴は……大丈夫っすよね? すぐに元気になりますよね?』

 

と、励ましの言葉をもらいました。

私の主様はとっても偉大です。こんな怖い人達に心配してもらえるんだから。

 

お昼までゴミ拾いをした後、病院に行きました。

主様は変わらず、穏やかに寝ていました。

今日はゴミ拾いをしてきたんだって、おしゃべりしたりもしました。

でも主様はずっと寝てて、涙が出てきたけど我慢しました。

 

また夜になって、ダグ3さんが迎えに来てポケモンセンターに戻りました。

出されたご飯は味気なかったです。

 

はやく、元気になってくださいね  主様

 

 

 

──────日記は、ところどころで涙の跡があるようだ。

 

 

 

 

我等が主殿が、お倒れになってしまわれた。

しかし全員が見ている『あの傷』である。命があるだけ儲けモノだろう。

 

姐御は毎日面会に行くつもりらしい。

昨日もⅢが迎えに行った時、涙を流しながら主殿に話しかけていたそうだ。

 

主殿が倒れてしまった日から、姐御の様子は見ていられないものがあった。

あの様子がずっと続くのでは、いつか姐御が壊れてしまいそうで心配だ。

 

医者から聞く話によれば、主殿には絶望しか残されていない。

現時点で判別するに『意識すらも維持出来ていない植物人間状態』との事。

 

我等が一日中傍に居ても一向に反応して頂けない。

体を動かす自由さえ与えられていない……いや、奪われた。

 

我等としては本当に、弾頭の連中が忌々しい。

我等が主殿を犠牲にして、日々ぬくぬくと生きている様は、憤怒を覚える。

 

しかし、あのさかきと呼ばれる人間は本物だ。

確かな感謝を内に秘め、主殿と接していたし

その下に付く弾頭の社員も、社会に馴染む機会を貰って

毎日主殿に感謝しながら日々を過ごしていた。

 

だが現実は非情だ。

主殿が身を粉にして働いたが故に、主殿は恨みの矛先となって─────こうなった。

 

だから、我等も我等也に動こう。

あの方に見出されたおかげで、今の我等は存在するのだ。

次に目を覚まし、我等を見てもらった時に驚いて頂ける様に

今を忘れて、次また話し合う日を信じて、ひたすら修行あるのみである。

 

それに、あの主殿ならこう言うはずだからな。

 

 

寝てる俺に構っている暇があるなら何かしら動け、と。

 

 

 

 

ご主人様が襲われて、倒れてからもう5日も過ぎようとしています。

アレから毎日ドレディアちゃんが見舞っているものの

ずっと穏やかに、眠り続けているだけなのです。

 

私もドレディアちゃんと一緒に、1日御傍(おそば)について様子を見てたのですが

やっぱり、起きてくれる事はありませんでした。

いつも泣きながら話しかけるドレディアちゃんを見て、私も泣きそうになってしまいますが

それでも、元レベル100という都合上……私まで泣いてしまったら

みんなの歯止めがなくなってしまいます。私は泣くわけには行きません。

 

ドレディアちゃんに気晴らしを進めた手前、私もお仕事がいくつかあったので

お仕事がある日はきちんとこなすようにしています。

お仕事をしている間は、難しい事を考えなくてもいいから。

ご主人様が起きてたら、今の私を褒めてくれるんでしょうか。

主様が倒れて以来、少し元気が無くなった弾頭の施設の中で

みんなを元気付ける歌を歌っている私を、誇りに思ってくれるでしょうか。

 

頭の中では分かっているけど。

絶望的だというのはちゃんと聞いたけど。

それでもやっぱり私は

 

 

貴方の声が、聞きたいです。

 

 

 

 

【つまらん。】

【ん……何がだい?】

 

私はミュウと、人間の街の地下施設で話している。

 

【つまらんのだ】

【だから、何がだよぅ】

 

先日ミュウは、あいつが倒れた際に自力で奇跡を起こしたは良いが

情けない事にそのまま力を使い果たして瀕死になっていた。

それでも我が血族か、貴様は。

 

【しっつれーな事考えてんねぇ、相変わらずー。

 あれ、本当に頑張ったし本当にきつかったんだよー?】

【……まあ、そこだけは褒めてやらんでもない】

 

真面目な話だが、街中を全力で疾走している弾頭の連中に付いていって

あいつの手持ちのやつらと遭遇し、頭の中を見させてもらったが

 

 

何故、人間如きがあれだけの傷を負って動けるのだ。

そもそも、何故アレだけの傷を負って、生きているのだ。

さらには、何故あれだけ小さな体で、全てを耐え切ったのだ。

 

 

理解し難い、度し難い……それが、あのタツヤという人間だ。

まあ、あの女の子供という辺りを踏まえれば

その事実を上乗せしてもお釣りすら来る気がしないでもないのだが。

 

【───……人間とは、なんなのだろうな】

【どしたのミュウツー、中の人でも入れ替わっちゃった?】

【いや、まあ……な。正直なところ、貴様にここに呼び出されてから

 人間という存在に対する価値観が、私の中で変わりつつあるとは思っている】

 

こちらに来てからそれなりに接した人間は

まずはこの地下組織を運用している者共、それに加えて組織の筆頭、サカキ。

呼び出した存在のタツヤに加え、あの女並の戦力を有していたどこかの会社の者。

 

それらは全て、私をこの世に生み出した腐れ外道共とは価値観も方向性も違う

良識……と断定していいのかはわからぬが……比較的、こちらの話も通じる者達だった。

 

 

【ふーむ、つまらん】

【変わる時って本当に変わるんだねぇ……ミュウツーみたいなあたまでっかちでも】

【ふん……貴様なんぞ常に暴走運転ではないか。聞いたぞ、シオンでは浚われかけたらしいな?】

【あーあれねー……あはは】

 

我等は学者という括りで考えれば非常に珍しい固体らしい。

故に、なりふり構わず行動を起こすものも少なからず居る。

そしてそういう者に限って記憶として頭の中にこびりつくのだから手に負えぬ。

 

【彼らと特訓した今なら、ミュウツーにも勝てちゃうかもね☆】

【……聞き捨てならんな。やるか?】

【へっへーん、僕が怖くないならかかって─────】

 

サイコショックを放つ。問答無用だ。

 

【ってちょ、おぉぉぉぉい!?

 

 

 ─────なんてね♪ あしゅらせんくうっ!!】

 

妙な掛け声を上げたと思ったら、なんとミュウは

多重かげぶんしんの様に横滑りで移動し、私の攻撃を回避した。

 

【一体なんだ、その不可思議な動きは。】

【これもあの子に修行をつけてもらった成果さー。

 とはいってもこれに関しては、その時に同じく修行してた子から

 教えてもらった回避技なんだけどもねー】

【……何処から突っ込めば良いのかわからん。そもそもいつ修行をつけてもらっていたのだ】

【さっき言ってたでしょ。シオンでさらわれた後だよ。

 自己防衛ぐらいすぐに出来るようにしなさい、って。】

 

気楽に言うが、聞いた事すらない技を実用出来るまでにするなど

どれ程の道のりなのかわかっているのだろうか?

しかもよく見てみれば部屋を飛び回るミュウの速度が若干速まっている気もする。

 

……もしや、あれは同時にすばやさまで上げるのか?

 

【まあ、彼には本当に世話になったからねー……

 少なくとも僕も君も、人間に関しちゃ良い思い出なんて殆どなかったでしょ】

【当たり前だ、あのクソ共と付き合って楽しい事などあるものか】

【でも彼とあってからは、人間なんて僕達以上に千差万別なんだなーって気付かされたよ】

【…………。】

 

ミュウの言う事は最もだ。

無理矢理すぎる形ではあるが、見解を広げられたのは納得せざるを得ない。

人間なんぞ所詮全部がカスとしか思ってなかったのが2ヶ月前の私だが……

此処に出入りしてからは、その基準から脱している者も数名居る。

 

加えて、あいつ自身が『人間なんぞカスばっか』とのたまっているからな……。

同族だろうとなんだろうと、あいつは思った以上は口に出すらしい。

だからこそ、同じ視点と勘違いして色々愚痴を零してしまったのかもだが……

 

 

───……ん? もしかして私はあいつに上手く乗せられてしまったのだろうか?

 

 

【…………プッ。】

【サイコキネシス。】

【うゃゃゃっ!? ちょ、ごめ、ごべんなさいっ!!

 ごめん謝るからねじるのはやめ、やめてぇー!?】

 

思考を上手く読まれたのが気に障ったので、とりあえずミュウを絞っておく。

しかし、それをやっても気が晴れることは無い。

 

また、あの社員を交えての熱弁談議をしたいものだ。

あの社員もなかなかな強敵だが、あいつ自身のイメージする可愛い画像は

本当に、洞窟から出てくる価値があると認められるモノなのだからな。

 

今現在、あいつが寝込んでいるため悪くは無い食事は食えぬ。

サカキに金を出させて食うモノもなかなかに良いが

私としてはやはり、あのポケモンセンターで食う食事が舌に合うのだ。

 

 

……全く、とっとと目覚めんか、タツヤめ。

 

 

 

 

 

        (ドクン)

 

 





元悪の団員や暴走族が11歳のガキをさん付けしたり、兄貴と呼んだりするのは
団員の方は弾頭設立演説時、暴走族は弾頭構成員になった後に
『あの子の中身は11歳どころじゃない、下手したら私より年上だ』
と、秘密裏にサカキに聞かされているからになります。

位置づけ的には男だけどロリババァな立ち位置です。相対的に言えばショタジジィ

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