うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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名前が出せませんでしたが、シオンで関わったあの人の視点です。


***話 58% 部外者達1

 

 

「Hey VOLTYッッ!! でんこうせっかでGO CRASHッッ!!」

「ゴウキィィーーーッッ!! 竜巻旋風脚で迎撃だぁー!!」

「ッヂュゥゥゥゥウッッ!!」

「メッサツ……!!」

 

 

現在俺は、クチバジムにてジムリーダーのマチスさんと戦っている。

ここを取って、残るはグレン島! 最後にトキワでGET、ポケモンリーグだーー!!

 

……なんて思っていた事が、俺にもありました。

タツヤ君から聞いた話の通り、クチバジムが……

というかジムリーダーのマチスさんの手持ちが凄まじい魔改造を受けたせいなのか

バッヂを獲得する難易度がむっちゃくちゃ上がっていた、なんだろうこの魔境は。

本当に、どうなってんだ……タツヤ君に修行を施された人ってのは……!

 

ライチュウの他にもレアコイルが2体出てきたんだが

俺等が知るわけも無い、兵隊仕込みっぽい戦術を取られて

たったの2匹にこっちの手持ち5匹のうち、4匹も倒されてしまった。

そして満を持して登場、俺の切り札……黒の破壊者・ゴウキッ!!

 

鋼属性の方で弱点をつけたのか、2度ほど攻撃を叩き付けたら倒せた。

んで、最後に出てきたのが……現在噂を総攫(そうざら)いにしている、ライチュウ……!

 

正直、俺はナメていたと思う……いくら噂が凄いとはいえ、所詮ライチュウ。

あの強さのダゲキがさらに進化してパワーアップした俺のゴウキ。

どう考えても俺の方に軍配が上がると思った。

 

でも蓋を開けてみれば、噂は噂通りであり

幸いな事に即効撃破で俺のプライドがへし折れる事はなかったけど

凄まじい強さのライチュウ相手に、俺のゴウキも攻めあぐねている。

 

 

「ユー……スゴーイネー。ミーとここまでヴァーサスしたの、今までナッシングだったネー」

「こっちも秘匿扱いの相棒使ってますからね。そう簡単に負けるわけには行かないっすよ……!」

 

クチバジム前で腑抜けまくっていたトレーナー達……敗れた者達の末路……

それが物々しくジム入り口風景に転がっていて、ここで負けたら俺も彼らの仲間入り。

 

ここがこうじゃ、今年のポケモンリーグ参戦者は著しく少ないはず。

そしてその中でコイツを混ぜて戦うなら、上位入賞も有り得る……!

 

俺のおいしい条件のため……皆が出来なかった事をやってやりたいプライド……

 

 

必ず、このライチュウをここで下してやるッ!!

 

 

「Volty……VOLT(ボル) TACKLE(テッカー)!!」

「ゴウキ、前あしゅらせんくう!!」

 

凄まじい電撃を纏いながら、俺のゴウキへ突撃して行くライチュウ。

その速度はポケモンリーグ四天王ですら出す事が難しい威力と速度を持っている。

 

だが……こちらにはチートな回避技があるのだ……!!

 

「ゴウキッ!」

「……ムンッ!!」

「チュッ?!」

 

爪先立ちで深く腰を落とした状態から、突然かげぶんしんのようにぬるりと移動。

ボルテッカーを終えたライチュウの後ろへ素早く回り込───

 

「Tail Swingッッ!!!」

「ッラーイチューーーーーッ!!」

「ムンッ……!?」

 

この行動を読んでたとでもいうのか、マチスさんはライチュウに即座にアイアンテール?を指示し、

後ろに(そび)え立つゴウキに、ちょっとしたダメージを入れてくる。

 

 

やっぱり今のこの人は噂通りなんだ。ゴウキでも突破出来るか難しいぞこれは……!

 

 

「ゴウキ……まだ行けるな?」

「……オッス!」

「ミーもまだまだ負けないヨー! Volty Go Fight!!」

「ッヂュゥウゥゥ!!」

 

マチスさんの合図と同時にライチュウは電撃を飛ばして──……あれは必中技のでんげきはか?!

 

「ッッ……!!」

「くっ……大丈夫かゴウキ?」

「オッス!!」

「ハッハー! クチバジムはもうイージーじゃないネー! ユーもビリビリしびれなサーイッッ!」

「チュゥ~チュゥ~!」

 

余裕が出てきたのか、マチスさんはこちらを挑発するように言葉を投げかけてくる。

ライチュウも目を釣り目気味にして、ゆらゆらとした動きで神経を逆撫でしている。

 

 

……駄目だ、ここで焦るな。

こういう時こそ、ゴウキが彼から習った教訓が生きるんだ。

 

 

それはすなわち、『自分で考えてベストな動きを出来るポケモン』であること。

 

「ゴウキ……!」

「オッス……」

「お前が『勝てる』と思う方策で戦え……

 あのドレディアとの厳しい修行を乗り越えたお前なら出来る……!」

「ッ……!」

 

あるいは指示放棄、あるいは試合放棄。

そう取られてもおかしくない発言を、俺はした。

しかしそれは信用の裏返し、こいつなら絶対にやり遂げてくれる。

例えそれがどれだけ『外道』であろうとも……!

 

「ゴウキ! 行けぇーーーー!!」

「オォォォッス!!」

「Volty、VOLT TACKLEッ!!」

「ヂュゥゥーーーーーーーーーー!!」

 

再度、ライチュウにボルテッカーを指示したマチスさん。

そのボルテッカーに対し、ゴウキは───待ち構えた!

どういう手なのかはわからない、でも俺は、あいつを信じる……!

見ればマチスさんも驚いた表情を作っているが、ここから先はアイツの舞台だ!

 

 

 

ライチュウがまさにゴウキに交錯して激突する瞬間─────

あしゅらせんくうを用いて上がった素早さを駆使し、ゴウキは動く。

 

 

 

ゴウキは、ライチュウスレスレな紙一重の体捌きで激突直線からズレて

なおかつライチュウを横っ面から払うようにぶん殴ったッ!!

元々のボルテッカーの速度も有り、軽快に吹っ飛んだライチュウ。

だがまあその代わりに、威力の方は先程のアイアンテールの様に

全力全開の大ダメージ、とまでは至らなかったようである。

 

「ッヂュゥ……!」

「oh……Boyのダゲーキ、やりまーすネー……!」

 

そこそこ痛かったのであろうか、片目を瞑りながら立ち上がるライチュウ。

だが、ゴウキも───

 

「……ッ───ッッ!」

 

どうやら不幸にもライチュウの『せいでんき』が発動し、麻痺状態になってしまったようである。

 

ゴウキは一度だけ、俺の方へと目を向ける。

その目に返す俺の意思は一言だけだ。例え麻痺状態になってしまっても──

 

【信じてる……! 諦めるな……!】

 

俺の目から意思を汲み取ってくれたのか

状態異常を負いながらも、ゴウキの目はさらに活きた眼になっていった。

そして、ゴウキは『あの技』への準備段階へ入る……

 

「ッ! Volty Fast Attackネ!! アレはWarning! やられる前にノックアウッ!」

「ラァ~~~イ……ッヂュゥゥーーーー!!」

 

動かなくなったゴウキに対し、真っ直ぐ突っ込んで行くライチュウ。

ここで出すのも、今まで直撃が無かったが故に反動が一切なかったボルテッカー。

まともに喰らえばアイアンテール等のダメージがあるゴウキは、頑丈が発動せずに終わる───

 

 

と、思ったところでゴウキが突然ある行動を取った。

 

 

「……─────ッッ!? メッサツ……!?」

「ッ?!チュッ?!」

 

その取った行動とは───何故か、マチスさんの方へ鬼気迫って振り向く事。

まるで『何事だッ!?』とアクシデントがあったかの様にマチスさんの方へ顔を向けた。

そしてゴウキに突っ込んでいったライチュウもその行動を垣間見て

自分の主に何かあったと思ったのか、マチスさんの方に急いで振り向いた。

 

 

だがそこに居たのはポカンとした顔のマチスさん。

突然2匹のポケモンにこちらを見られて『Do You 事ねー?』という感じ。

 

 

と、思ったら

 

 

ゴウキがすぐ手近で止まってたライチュウを瞬時に掴み取った。

 

「オゥッ!?」

「ヂュッ!?」

 

まさかこれは……『擬態』の余所見!?

 

そしてゴウキは既にライチュウを掴んでいる……すなわちその攻撃は……

 

 

 

突然試合の場が真っ白に光り

 

眼を押さえる俺達に聴こえるのは

 

丁度、15回の打撃音。

 

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

 

 

 

光が収まり、その中にあった光景は─────

 

俺の目の錯覚なのであろうか

効果線が背景にびっしり入ったような光のエフェクトの中、仁王立ちするゴウキと

その足元で、だらしなく地面でノビたライチュウだった─────

 

 

いちげき ひっさつ!

 

 

「アッハッハー、ついに負けちゃったネー!

 ユー、ヴェリーストロング! これオレンジバッヂねー!」

「あ、ありがとうございます!!」

 

ついに、ついに難攻不落のクチバジムを突破出来た。

俺は外に群がっていた有象無象が出来なかった事を、やってのけたんだ!!

 

「フー……ミーのラストデイは華々しく飾れなかったネ……ちょっと残念ネー」

「え、ラストデイって……マチスさん、やめちゃうんですか?

 あんなに強いのにどうして……俺が勝ったのは麻痺で行動が止まらなかった運ですよ」

 

ジムリーダーはトレーナー間でも憧れの職業だ。強ければ強いほどその象徴も輝く事になる。

 

今なおサカキさんのような最強とまでは行かないが、それでもここ最近の旅のトレーナーの噂じゃ

むしろクチバジムの方が攻略難易度が高くなってるとの話だった。

それもこれもあの異常に強いライチュウが原因だな。

 

「んー実はネー。ちょっと前にポケモンリーグから通達来たのーヨ。

 ミーがストロングMAXだかラー、トレーナー困ってるー言うネー。

 だから、ジムリーダークビになっちゃったのネー」

「な……そんなん有り得るんすか……!?」

「アハーハーww なんかミーがFirst Targetらしいヨー。

 他でこんな事例はナッシングって、テレフォンでスピーチされたネー」

 

それは光栄な事なのだろうか、不名誉な事なのだろうか。

まあ確かにここの鉄板具合は色々とおかしかった。

ジムリーダーが代わればトレーナーも今まで通りに、のんびりここを突破出来るだろう。

 

「マーせっかくだかラー。ミーがアメリカに帰る前にー、リーグに参戦してやろー思うネー」

「うわ何その鬼門。明らかに優勝候補者になっちゃうじゃないっすか」

「OKOKww どうせ他にヴェリーストロンガー沢山いるヨー。腕試しに丁度良いネー」

「あ、はは……まぁ、俺も挑戦するつもりなんでお手柔らかにお願いします……」

 

確かリーグの開始は2ヵ月半後ぐらいだったよな。

1ヶ月使ってバッヂ集めて、チャンピオンロードに篭れば

日を無駄にしないでポケモン達も鍛えられるだろ……っと、そうだ。それだったら───

 

「あのー、マチスさん」

「オゥ? ドナイシタノー?」

「これからジムリーダーやめて旅に出るってんなら、俺と一緒に行きません?

 旅の途中で本人に聞いたんですけど、一時期タツヤ君と一緒になにかしてたんすよね」

「ッ!? ユー、リトルボーイの知り合いなノ!?

 Oh……道理で最後のあのワンシーンな訳ネー……

 あれまるっきり、リトルボーイのタクティクスだったね……」

「ええ、まあ俺が指示したんじゃなくてこいつがやってくれただけなんすけど」

「メッサツ……!」

 

隣に控えてたゴウキの脇を軽くポフンと掌で叩いて主張させる。

 

「yesyes! リトルボーイが何してたかーも聞きたいネー!

 旅は道連レ世はG59(ジゴク)! これからよろしくお願いシマース!」

「ま、マチスさん……そこ地獄じゃなくて情けですよ……」

 

 

とまあ、そんなわけで。

俺は現在のトレーナー間で最もホットな話題の、最難関ジムリーダーを

期限終了間際に突破に成功出来たのだった。

そして新たに男二人の旅日記が始まる。

 

 

話題に上がったけど、タツヤ君は今頃どうしてんのかなぁ?

彼もやっぱり、チャンピオンロード辺りで頑張ってるんだろうな!

 

 

 

 

          ドクン

 

 


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