うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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***話 95% 身内の人達

 

「くっそ……間に合わなかったか……!!」

「ギィォァアアアアアァッ!!」

「ギュガガァァァァァァァッッ!!」

「さぁ、ディアルガ、パルキア……お前達の力で新しい銀河を作り上げるのだ……!

 私は、その世界で……新世界の神となるッッ!!!」

「さすが伝承に伝わるポケモンね……! 凄まじい力を肌で感じるわ……」

 

一足遅く、テンガン山にディアルガとパルキアを呼ばれてしまい

僕とシロナさんの前で、新たな銀河が作り出されてしまった。

 

「どうすれば良いんだ……こうなったら力ずくであの2体を止めるしかないか……!?」

「……それしかないかも知れないわね、私も一緒に戦わせてもらうわ。

 伝承クラスのポケモンにやすやすと勝てると思わないけど、ね!」

 

軽口を叩きながら、シロナさんは自分のエースであるガブリアスを繰り出す。

 

「ククク……この2匹を前にして、戦おうという気勢は褒めてもいいだろう。

 だが、世界を作り出すような力を持つこの2匹を相手に出来───」

 

──────────

 

「……あれ?」

「……む?」

 

今、妙な何かが聞こえたような。

その音に目の前の男、アカギも気づいたのか同じく不思議がる。

 

「……お前にも、聴こえたのか」

「え、どうしたのよ2人共……」

「ふ、だがそれがなんだとしても宇宙の───」

 

──────────ャッホォォォォォォ..............

 

──────────てい── かー なん─のよー、─の空の色はー............

 

「……ええ~?」

「……一体、なんなのだ?」

「あ、今のは私にも聞こえたわね……」

「ギィォァ?」

「ギュガガ……?」

「グギォォ……?」

 

一体何なのかはまだわからないけど、どうやら全員が異常? を感じ取ったらしい。

結構シリアスな場面だから出来れば邪魔しないで欲しいんだけども。

 

「……く、このような訳の分からん事象に気を引かれる私ではないッ!!

 今こそ、こころという愚かなものに縛られた世界に終わりを与えるのだッッ!!」

「そんなことは……させないッ!!」

 

そして僕のエースである、フシギバナのボールを投げ───

 

 

─────ってちょっとぉぉぉーー…………あんた達、邪魔ぁぁ…………......

 

 

「って、もう、なんなんだよ本当にッ! 何気に良いシーンなのになんで人の声が聞こえ……」

「…………──ッ!? シン君、上ッ!! 空よッ!!」

「は?」

「何?」

『ギュギィォガァ?』

 

シロナさんがどうやら何かに気付いたらしく、上に何かあると示唆してきた。

その言葉に僕やアカギ他、場に居るポケモン全員も、ふと上を見上げて───

 

 

────だヵら邪魔だってばぁぁぁッッ!! 死んでも知らないわよぉぉおおぉ!!

 

 

絶叫と共にここに、凄まじい勢いで突撃してくる何かが来たっ!?

って、速過ぎる! このままじゃ僕ら全員巻き添えに───

 

 

「───ガブリアスーーーーッ!!!」

「グッギォォォォオーーーーッ!!」

 

 

シロナさんの合図にガブリアスがいち早く我に返り

僕とシロナさんを素早く持ち上げ、速攻でこの場から離れる。

 

「な、なんっ、おいっ!! ディアルガ! パルキアッ!!

 あれをなんとか、なんとかッ───うぉぉおおおおおおおおおおおおッッ?!」

「ギュガガガァァァァァアアッッ!?」

「ギィォァアァァァァッッ!?!?」

 

 

そして音速、いや光速でその場に飛来した何かは

ダイナマイト、とでも例えられるような破砕音を上げ、このやりのはしらに突撃してぶち当たった。

 

ぼくらもその衝撃波に襲われたのだが、ガブリアスが距離を取ってくれたおかげで

せいぜいその衝撃波に乗って小石がこちらにぽこぽこ当たる程度であり

アカギ側の様に酷い事態にはならなかった。

 

そして今述べた通り、あちら側の惨状は酷い。

なんていうのかな、うん……マルマイン3匹の同時だいばくはつ?

トリプルバトル真っ青の現状になってしまっている。

 

あ、よく見たらディアルガのとげとげしい部分がはしらに刺さって宙に浮くオブジェ化してる。

さらにその棘とはしらに挟まれるように、まるでも●もじ君のような形で隙間にアカギが挟まっている。

よかった……グロ画像にならなくて……。

 

「い、一体……何が……?」

「わ、わからないわ……何かが凄い速さで飛んできたんでしょうけど……」

「っふー……ありがとうガブリアス、君のおかげで助かったよ。大丈夫かい?」

「グギォォン♪」

 

自分達が無事である事の証明と感謝として、ガブリアスの鼻先をやさしく撫でる。

ガブリアスもくすぐったそうに笑顔になっている。

結構凶悪な顔してる子だけど、やっぱりポケモンは笑顔になると全員可愛いよね。

 

さて……何がこの場に落ちてきたんだろう、人の言葉が聞こえたような気もしたけど……。

 

煙が晴れて行き、その爆発地帯の全容が明らかになっていく。

風が一瞬強く吹き、土埃が取り除かれたその先に居たのは───

 

 

なんか首長で金やら黒やらとゴテゴテした、なにかのポケモンが

爆心地の中央にある、亜空間っぽい所から顔を出していた。

しかもこめかみ辺りに2個の青筋が見える。

瞳の形を見るに、明らかに「てめぇらうっせぇんじゃコラ」と物語っていた。

えっと、あれ、ポケモン……だよね。あれが落ちてきたのかな?

 

 

「そんな……あれは伝承に隠されるように伝わってたギラティナ……!

 ディアルガとパルキアの力が新しい世界を引き起こそうとした事によって

 最後の防壁の役目を果たすために出てきてしまったのね……!」

「いや、えっと、待ってシロナさん。

 僕も弟ほどポケモンの意思が読めるわけじゃないけど

 あの目を見るからに絶対そんな感じじゃないよ。

 今起きた騒音を非常にうざったく思って、悪ガキ懲らしめるために出てきた顔してる」

「…………ええー?」

 

 

僕がそう述べると、シロナさんは

 

『せっかく格好良く説明が出来ると思ったのに……私歴史学者なのに……』

 

と、地面にいじいじと『ののの』を書き始めた。

 

「ギラァァァァ……#」

「あ、えーと……ごめんなさい?

 いや、このだいばくはつ現場自体は僕らじゃないんだけど……」

「……。」

 

ふー、やれやれ。とでも言いたいような感じで、ギラティナ? は首を振る。

どうやら僕らが騒がしくしていたわけではないのはなんとなく分かるらしい。

って、あれ。今会話してて妙な違和感が。

 

僕らはこのだいばくはつの惨状を作り出したのがこの子だと思った。

でもこの子はそのだいばくはつ自体を怒っている。

 

つまりこの子がこの惨状を引き起こしたわけではない? となるとこの爆発を作った原因は──

 

 

「ったたた……んもー、一体なんなのよ……

 空はなんか気持ち悪い色になってるし、発着場はなんか人がいて危ないし……

 タツヤもいきなりいなくなっちゃったし……もう散々だわ~;;」

 

 

え、あれ。今なんか、すっごい聞き覚えのある声がしたよ?

なんかこう、具体的に言うなら弟の名前まで出てきたよ?

 

首を少し巡らせてみると、シロナさんが爆発によって出来た瓦礫を見て唖然としてた。

僕もそちらの方に首を動かすと、『僕達』にとってはそこそこ常識的な風景があった。

 

 

そこには、色々と愚痴を垂れながら周りを埋め尽くしていた瓦礫を自力でぶん投げ……

あ、投げた瓦礫がパルキアに。

 

「フーちゃん大丈夫~? やれやれ……私もまだまだ若いと思ってたけど

 あの程度の勢いを相殺出来ないんじゃ、トレーナー引退して正解だったわねぇ」

 

 

そしてその常識的な風景の中にいたのは。

 

世界が間違って生み出した存在である、僕らの母親が瓦礫をぶん投げ続けていた。

 

 

「な、なんなの、あれ……。ねえガブリアス……私、さっきの爆発で死んじゃったのかしら」

「グッ?! グギォン!?」

 

僕らの母親を見てシロナさんは全てが信じられないかのように呆けている。

これも僕らの中ではある意味常識と化した風景だ。

 

旅に出てから、そんな風景が日常ではない事を知った。

 

「ちょっと母さん、一体どうしたんだよこんなところにッ!?」

「え、母さんッ!?」

「ん、あら? あらー? やだちょっとシンじゃないのっ!

 久しぶりねー! 元気してたの? そういえばシンオウに行くって言ってたわよね!!」

 

僕の言葉にドン引きするシロナさんと

再会を本当に、そこら辺のご近所のおばさんと変わらないノリで喜ぶ母さん。

 

「いや、うん久しぶりだけどさ?

 って、フーちゃん! すごい怪我してるじゃないかっ!!」

「フ、フリィ~~~……」  ぱたり

「あぁ、フーちゃんしっかり!! ちょっと母さん、かいふくのくすりとかないの!?」

「え、いや……大吟醸なら5本ぐらい持って来てるけど。

 あとおつまみ。えへへー、いいでしょ。柿の種だぞ! 柿の種!!」

「ああもう話にならないやっ! シロナさん、かいふくのくすりないかな!?」

「え、あ、はいっ!!」

「ありがとうっ! さ、フーちゃん……これを……」

 

 

シロナさんから奪う様にしてかいふくのくすりを借り、僕はフーちゃんに薬を与えて行く。

高級品なのも相まって、フーちゃんの体はどんどん回復していった。

 

「フリィ~~♪」

「あーよかったー……大丈夫かい? フーちゃん。

 ちょっと母さんッ! もっとフーちゃん大切にしてあげなきゃ駄目じゃないかッ!!」

「え、えっと……てへぺろ☆」

「ガブリアス。あれに地割れしてくんないかな」

「グギォ!?」

「えへへ、ご、ごめんなさい?」

 

もう話にならないから、僕からゲンコツをプレゼントしておいた。

久しぶりのゲンコツだったからちょっと手が痛いけど

この母親、少し痛い思いをしないと学習してくれないから困る。

 

「えっと、その、シン君のお母様、ですか?」

「え? あら! あらあら! 何よ~シン、この可愛いお嬢さんは!

 貴方も普段はぼんくらっぽい態度なのにこんな可愛いお嬢さん捕まえて!!」

「それ朴訥(ぼくとつ)じゃないの? なんだよぼんくらって、酷いなぁ」

「んもぅ、あなたなんてどうでもいいのよ!

 こんにちわ! 可愛いお嬢さん! 私はこの子達の母親のレンカっていうの。

 こんなところで奇遇だわね~!」

「あ、はい、えっと……シロナ、と申します。よろしくお願いします……?」

「あら~礼儀正しいわぁっ! これは将来が楽しみ……ウフフフ」

「いやもうそんなんどーでもいいからさぁ。一体こんなところに何しに───」

 

問いただそうと思ったところ。

先ほど埋まっていたギラティナという子が、バサリと空から降りてきた。

おっと……それでなくとも騒がしいとして怒ってたのに

母さんと僕らの邂逅でさらにうるさくなっちゃったから、それに怒ってしまったのかな。

 

「えっと、ごめんねギラティナ。すぐに退散─────」

「あら、貴方って……タクト君のポケモンかしら?」

「ギラッ!」

 

母さんの言葉を聴いて、ギラティナは僕の母親に(こうべ)を垂れる。

なんだ、なんだろう、なんだこれ。

なんでシンオウ地方の隠れ伝説的な存在と母さんが既に知己(ちき)なんだ?

 

「タクト君が『修行に行ってきます』って言って

 その前段階で、手持ちの殆どを逃がしたのは知ってたけど……

 あー、既にタクト君と一緒だったから

 貴方ってアルセウスと逢いに来た時にここにいつもいなかったのねー」

「ギラッ?!」

 

ギラティナは【何故そのお方の名をッ?!】とでも言う感じに仰け反っている。

いや、僕はタツヤ並にポケモンの洞察に優れてるわけじゃないから違うかもだけど。

 

「んっ♪ まあいいわぁ。あ、そうだ! シンとシロナさん!

 私これからお友達に会いに行くんだけど、よかったら来ない?」

「え、友達……? ここに来たのって間違って墜落したんだよ、ね?」

「は? いや、違うわよ? ここから友達んちに行けるのよ」

「友達のおうち、ですか……?」

 

僕もシロナさんも会話がよくわからない。なんだ、友達って……ポケモン、なのか?

でもディアルガはあそこでオブジェになってるし……

あ、アカギが何処に消えたかと思ったら、パルキアの下敷きになってる。

つまり風景として認知出来るパルキアも友達ではないよね……。誰の事だろう?

 

「んじゃまぁサッとお邪魔しましょっかね。えーとあれがここだから……あ、ここね」

 

僕らの疑問をおいてけぼりにして母さんは何かを見つけ出し、懐から取り出した笛を吹く。

なんでこんなところで笛を……?

 

と思った次の瞬間。

 

「あ、出てきた出てきた♪ ほら、みんな行くわよー♪」

 

なんやら天を突き抜けるような透明な階段が出てきた。

 

「          」

「……シロナさん、行こう。僕んちの母親がイカれてるのは今に始まった事じゃないんだ」

「え、ええ……」

 

シロナさんは僕の声で再起動に成功し、ひとまずガブリアスをボールに終い

ずんずん上がって行く母親に付いて行く事になった。

 

 

「……結構、長いね」

「ええ、私達は元々フィールドワーク派だから問題ないけど……ちょっとこれは、怖いわねぇ……」

 

 

そう、今も母親はズンズンと上に進んで行ってるんだが

それが初体験な僕らとしては現在進行形で寿命が縮みそうである。

階段自体が透明に近くて、その透明の下はもちろん広大なシンオウが広がってる。

 

僕もシロナさんも基本的に歩いて移動をしているため、スタミナはある。

というか一番バテてるのがついてきてるギラティナってのはどう言う事だろう。

 

「ギ、ギ、ラ……」

「あの……ギラティナ、大丈夫かい?」

「ギ、ラー」

 

んー、大丈夫って感じに返答してるけどなんかちょっと危なっかしいんだよな……

まあ、20分以上も上がり続けてるし、大丈夫かな?

フーちゃんも普通に母親の後ろをぴょんこぴょんこって1段ずつ上がってるし。

 

「さーてついたついたー! おーいアルセウスー!! ひっさしぶりに来たわよー!!」

 

母さんが頂上に辿り付いた的な発言をした後

ポケモンの名前だろうか、それを口にしてまたズンズン突き進む。

 

確かにその先は階段がなくなってる、どうやら本当に頂上のようだ。

 

「さ、ギラティナ。頂上みたいだよ。あと一歩だから、がんばろう?」

「ギ……ラァ」

 

まさに、ふーやれやれと言う感じに溜息を付くギラティナ。

こういう態度だけ見ると、ゴツくて格好良いけど、可愛く見えるなー。

 

『また来たのか……レンカよ。

 最近は、子育てがとても楽しいと述べておったのではなかったか』

「いやーそれがねー聞いてよもう……

 一番可愛がってる次男が私に何も言わないで出ていっちゃってさー。

 あ、コップとかお皿とか出してくるわねー。」

『好きにすると良い、それは元々妾のモノではない。

 汝が勝手に置いて行ったモノだろう』

「細かい事は気にしなーい。ほら、今日は良いお酒持ってきたんだから!

 大吟醸よ、大吟醸!! 今日は一緒に飲み明かしましょ!!」

『ふむ、酒の良し悪しは妾にはわからぬのだが……

 汝が良いというモノなら、少しは期待しても良いのか?』

「何言ってんのよー。このお酒はね……

 勘違いの日本かぶれアメリケン共を1発で意識改革出来る位おいっしーお酒なのよ!!

 超奮発したんだからねっ! 味わって飲みなさいよ!!」

『ふふふ、そうだな。1年振りの邂逅である。楽しく過ごさせてもらうとしよう』

 

なんだろう。一体何が起こっているんだ。

 

母親と一緒に、すっごいフレンドリー? な感じに喋ってるポケモンがいるんだけど

ぱっと見ただけで分かる。あれは伝説なんて生易しいもんじゃない。

 

明らかに創造神クラスの、偉大な御方である存在だ。

 

「あ、そうだ。ちょっとアンタあの子達3匹とも呼んでよ。

 可愛い子にお酒を注がれるのはたまらないのよ~♪」

『む、泉の守護者達の事か? 汝がそう望むなら呼びかけておこう』

「あ、ほらほら、シンにシロナさん♪ ギラティナちゃんも!

 そんなところで突っ立ってないでこっちこっち!

 一緒に飲みましょ! あ、でもシンはサイコソーダで我慢してネ☆」

「……えっと、うん、わかった」

「えと……いい、のかしら?」

 

ここまでになったらいつもの事だ。

思考を放棄した方が色々楽なのは昔からの事なんだよね。

母親がどこからか取り出したちゃぶ台の周りに僕らは座る。

ギラティナがアルセウスさんと目を合わせ指示をもらったのか

ちょっと奥に行って、座布団3枚を口にくわえて持ってきてくれた。

その座布団を僕らは貰い、座る場所に敷いて行く。

 

そのぐらいの頃合に、3匹のポケモンがここにテレポートしてきた。

ってちょ。泉の守護者って辺りで若干予想してたけど

さっきまでギンガ団に囚われてたユク・アグ・エムリじゃないか。

 

「はーい♪ 久しぶりねーみんな……あら? なんか心持ち弱ってる感じがするわね」

「あ、母さん。彼らは───」

「そーんなんじゃ駄目じゃないのー!

 ほら元気出して元気! 病は気からって言うんだから!!」

 

バシィー

 

「アグゥーーーーーーーーー!?」

 

あ、母さんが気楽に叩いたらアグノムが吹っ飛んでいった。

母さんも「あ、やっちゃった」って顔をしてる。

 

とりあえず仕方ないからゲンコツしてアグノムに謝っておいた。

 

「本当にごめんね……ってか君達、母さんと知り合いだったんだね」

「アグゥー……」

「ダメダメ、あんなので吹っ飛んでるようじゃサカキ君にも勝てないわよ?」

「母さんみたいな規格外と付き合える人たちと一緒にしたら駄目だよ!」

「あ、なにそれひどーい。ぶーぶー。アルセウスぅー、息子が酷いのよぉー……」

『……息子よ、汝も苦労しているのであるな』

「あ、わかってくれますか」

「ちょっとアルセウスまで!? シロナさん~;;」

「あ、えーと……よ、よしよし~」

 

場の殆どが敵に回った事で、余り自分を知らないシロナさんに救援を求める母さん。

 

「ええーーーーい! こうなったらもう自棄酒よッ!

 ほらほら、アルセウスもどんどん飲みなさい!!

 今日は無礼講よ! そこの守護者ちゃん達もたっぷり飲みなさいー!!」

『ユクアグムーッ!!!』

 

アカギ達にしてやられた鬱憤が溜まっていたのか

母親のその声に3匹は勢い良く乗って、配られたコップに注がれたお酒を一気に飲む。

ぶっはーーーーと口から出す息はとても親父臭いと思った。

一緒に旅したいなって思ったけど、彼らを連れて行くのはやめておこう。

 

「……せっかくだから、私たちも飲んじゃいましょうか」

「まあ、考えるだけ無駄なのは間違いないからね……

 注ぎますよシロナさん、普段からお世話になってますし」

「あら嬉しい、よろしくお願いしちゃおうかしら? フフフ」

「ほらちょっとギラティナちゃん!!

 あんたそんだけ体大きいだから一升瓶一気ぐらいしてみせなさいッッ!!」

「ギ、ギラァッ?!」

『ふふふ、ギラティナ……今日は無礼講だ。妾が許す故、存分に飲むが良い。』

「ギラ……ギラァァァァァァアアアアアッッ!!」

 

アルセウスさんの許可が出て覚悟が決まったのか

ギラティナは一升瓶の注ぎ口を自らの口でくわえ

ビンを逆さにしてゴッキュゴッキュと飲み干していった。

 

「お、いいわねーギラティナちゃん!

 ほれ一気! 一気! 飲んでのーんで飲んで! 飲んでのーんで飲んで!!」

 

母さんは既に酒が回り始めたのか、いやこれ元からだっけ?

手拍子を叩いてギラティナを応援し始める。

 

そして1分後、そこそこの度数を持つ大吟醸を1本一気飲みしたギラティナが

ふらふらに目をまわしつつも任務を達成。場が盛り上がる。

 

僕は酒を飲めないので、母さんが持ってきた柿の種を

ピーナッツ選別を繰り返しながらぽりぽり食っていた。

 

「一番ッ!! レンカッ!! シンオウにメテオを放ちますッッ!!」

『やめよっ?!』

「やめてっ!?」

「えー。ぶーぶー。」

「じゃ、じゃあ2番ッ! シロナ! ポケモンと一緒に歌いますッ! おいで、ミロカロス!!」

 

ペカァァァァンッ!!

 

 

「ホアァァァァァァァァーーーーーーー!!」

「さ、ミロカロス……準備は良い?」

「ホアァァーーー!!」

「へーい!!」

 

母さんが掛け声と同時にリズム良く手拍子を打ち始めた。

周りの守護者やアルセウス、ギラティナも

軽くちゃぶ台を叩いたり、飲んでいるビンを小突いたりしてリズムを取り始める。

 

 

「わたしはー! こんなにー! あなーたをーあいしているのーにー!

 あなたはーちっとも 気付いてくれなーいー!

 焦る恋心にー! くすぐるあなたの指先はー!!

 とても切なくてー! 目を逸らせないー!!」

「ホァ~~!! ホーアアァーーー!」

「なーぜー、いとしいあなたはー! わたしをー置いて その道を行くーのー!!

 こんなにもー、共に歩きたいーとー願ってやまないー、貴方の傍にー!

 寄りそう願いを、この手にー!!」

「ホーーーーァーーー!!!」

 

『良いぞー!』

「ヒューヒュー!」

「アッグゥーーー!」

「ギーラーーー!!」

 

 

こうして宴会は時と共に更けて行く。

 

タツヤ、こっちで出会った常識人のシロナさんまで僕たちの母さんのノリに染まっちゃったよ。

せっかくだから君もここに巻き込まれてしまえばよかったのに。

 

 

君は、元気にしてるんだろうね。

今日はどこの空の下にいるのかな?

 

 

 

 

       ド         ク          ン

 

 





一口メモ。シン16歳、シロナさん21歳。

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