さて、そんなわけでトキワの小屋で一泊する事となった。。
小屋でのんびりしている間、何かに付けてドレディアさんとバトルし
なおかつ敗北している間に、どうやったらこのトキワの森を回避出来るか考えていた。
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『案1』・強行突破
とりあえずドレディアさんにボールの中に入ってもらって
俺が一人で逃げながら突破すればいいんじゃね?って話。
しかしこれは俺が疲れるため、どうしようもない場合だけそうするつもりだ。
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『案2』・youモンスターボール使っちゃえYO!
前に図鑑のヒミツ情報が発動した際に色々あってもらったモンスターボールがある。
あ、ちなみにトキワではそっち系のは一切買いませんでした。
充実しすぎてて忘れてたんだわ。ドレディアさん1匹で十分と思ってたし。
きずぐすりですら最初の1個だけだぜ!!
ま、ともあれこれを使い、そこらのポケモンをgetするという方向性だ。
現状では可能な上で確実度が高そうなので要熟考。
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『案3』・火を使い森林破壊
…………。
おい誰だこんなの入れたの!!
ドレディアさん!! あんたかっ!?
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『案4』・完全別ルート開拓
実はこれに関しても宛てがひとつある。
俺の記憶が間違ってなければ、人によっては一切近づかなかったダンジョンの
ディグダのあなの入り口があるはずなのだ。
そっちから入り込んでニビ無視しちゃおうぜ計画である。
ただ、覚えている限りだとあそこってニビ側にあった気したんだよな……。
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『案5』・一旦実家に戻ってフーちゃんでアイキャンフライ
時間が掛かりすぎる。
ある意味もう一つの最終手段。
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『案6』・諦める。
ドレディアさんに殴られるので却下。
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─────案4、だな。これしかない。
今さらりと考えたけど他の案は、何も面白い事がなさそうだ。
俺個人としては別に案6でもいいんだが、まあ、殴られんの嫌だし。
「そーいうわけで、新規別ルート開拓となりました」もっしゃもっしゃ。
「ディァ。」もしょもしょもしょ。
「とりあえずさぁ、こっからここら辺に細い木があると思うんよ」もっしゃもっしゃ。ごくん。
「ンだからこの辺でそれを探して、あとは崖ショートカットみたいに」
「(コクコク)」もしょもしょもしょ。ごくん
もっちょい食うか。
「超えりゃ木を切る必要ないと思うんだよね」もっしゃもっしゃ。
ああ、漬物ねえのが寂しい。飯盒のごはんとってもおいしいのに。
この世界は魚とか肉とかないからご飯単品、パン単品も慣れきったもんであるが。
おっとやばい、大豆ハンバーグが食いたくなってきた……
「さて、腹ごしらえも済んだし」
「ディァ~」
「片付けて一眠りしようか。」
「レディアッ!?」
ん、なんですかその抗議の声は。旅なんてのんびりでいいんだよ。
あぁうっせぇ揺らすなドレディアさん、あぁん? なになに……? あ、なるほど。
【早く進んで早く強い奴と戦って早くあいつをぶちのめしたい】、と。
「まあまあ、ドレディアさん。急がば回れとも言うさ。
急いだところで何が変わるってわけでもないんだし、さ?
こう、のんびりまったり行ければ……って、ちょ、なにしてんすか」
「ディァ#」
あっ、いやっ、やめてぇぇぇえ。引きずらないでぇぇぇ。
ズボンが汚れちゃうぅうぅぅぅぅ。
あぁあああぁぁぁぁぁぁぁ……。
そんなわけで、俺はずるずるとドレディアさんに引っ張られていってしまった。
ジーザスっ!
◇
「んー、地図を見る限りはここら辺からは完全に獣道だね。
図鑑の地図にも掛かれてないから危険もいくらかあるかもな……」
「ディッ!! ディッ!! ディァッ!!」
なになに、【危険なんてたいしたことねえよ!!】とな。
「……キャタピー」
「……ッ!?」
「ビードル」
「ッ!?ッッ?!」
「スピアー」
「ディーーーー!?」
「あ、あっちにバタフリーが」
「アーーーーーーーッ!!」
……っと、やりすぎたかな。怖がって丸まってしまった。
まあ俺のズボンをギュッと掴んで震えているのは見る人によっては萌え要素だと思うが。
ごめんよドレディアさん。
「大丈夫だよ、もう行ったみたいだから。(元から居ないけど)
ほら、立って立って。早く行こうって言ったのはドレディアさんだよ?」
「レ……ディ……」
とっても弱気になってしまっているようだ。
「ふぅ、とりあえずまた虫系のポケモンが出てきそうだったら
一旦ボールの中に入ってくれていいからね。
少しでも先に行かないと、ずっとここで足止め食っちゃうよ」
「ディァ~……」
完全に涙目である。
シン兄ちゃん、今更過ぎだけどやりすぎだわこれ。
まあ一部の方には想像するだけで俺得のはずなので、良いか。
◇
で、適当に歩いてたんだが。
「迷った。どうするアイフル」
「#」
青筋立てんなコノヤロウ。
仕方ないだろう、獣道だぞコノヤロウ。
道っぽくねえんだぞ。どこ歩いてっかわかんねえんだぞ。
覚えている人は既に皆無かもしれないが
ポケモン図鑑には方位磁石システムがある。俺はこれを使った上で迷っている。
ん、何故だと? そんなもん決まっているだろう。
目的地のディグダのあなが東西南北どっちかわからんだけだ。
ついでに言えばゲーム的に、ニビシティは上に突き進めばいけるわけだが
この現実では上=北ではなかったのがとても痛い。
そんな調子でどこまで進んでも、最早周りに木しかあらへんがな。
木を隠すには森と言う。そして俺はぶっちゃけもう動きたくねえ。
そして横に居るのは森のプリンセスドレディアさん。
コイツ地面に埋めてそこら辺にテント立ててもう寝たい。
でも、この子埋めた所で普通に這い出てくるんだろうな。マンドラゴラかよ。
……まあ、うん。
こちらは仮にも10歳児である。いくら精神年齢が高くとも体まではついてこない。
ので───
「まあ、前見たくのんびり進めればなと思います」
「ディ#」
「抗議したって無理なもんは無理。
ドレディアさん、俺子供だよ? 体力持たないから」
「…………アッ。」
何初めて気づいたみたいな顔してんの貴方。あんたの中で俺は何者になってんの?
「ま、少し開けた場所を探そう。こんだけ草ばっかじゃ寝る場所にも出来ないよ」
「ディ~……」
ひっじょ~~に面倒臭そうに、ドレディアさんが肩を下げながら歩き出した。
テメェ劣悪な労働環境で労働基準監督署に訴えんぞコノヤロウ。
「…………このままじゃご飯も作れなさそうだな~(ボソッ」
「(ピクッ)」
「今日は晩ごはん無しかぁ……寂しいなぁ……」
「ディッ!! ディアッ!! レディアッ!!」
ご飯関連で攻めてみたら案の定、急にやる気を出し始めた。
最初はすぐそばでだるそ~に歩いてたクセしやがって、
それがいきなり30メートルは先です。今では私がおじいさん。
いやおじいさんちゃうぞ。ヴェルターズオリジナルちゃうぞ。
まあ……ともあれ、【早く!!早く探そうず!!】とあちらでうるさいので
2人でとっとと、キャンプに適した地点を探そう。
◇
そして探し当てたのは良いんだが。
現在俺らは大量のポケモンに囲まれてしまっている。
「っぐ……どうしてこんなことにっ……!!」
「ディ~♪」
そんな状況なのにドレディアさんはとても楽しそうだ。
まあ、仕方ないといえば仕方ないのだが。何故なら─────
寝るのには早すぎたので演奏してたら
音楽に釣られてポケモンが勝手に寄って来たからだ。
「ペラップー♪」
「──────♪」
「キリンリキ~♪」
「ドレ~ディ~ア~♪」
「ピジョット~♪」
「うっきゃっきゃっきゃ!!」ちなみに彼はヤルキモノだ。
「ナジョー♪」
「ミュゥ~♪」
「ハナハナ~♪」
「ピッピー♪」
すっごい数である。しかも中には野生で確認されてないのもいるぞ。
まぁ確認うんぬんは、あくまでもゲームの話だけどね。
しかもなんかすっごい幻っぽいのが居る気すんだけど……
まあいいや、音楽好きなヤツにいいやつも悪いやつも平凡も幻も無いな!
それに俺は幻の御方より2番目の全く鳴かないディグダのが気になるんだ!ダリナンダアンタ!
ピッピが穴久保ピッピじゃないのが少し残念。
ギエピー! って言って欲しかった。俺だけか?
ちなみにあの漫画、まだ連載してるんやで。15年やで。
世間でポケモンが有名になった一因、あの漫画にもあるんやで。
何気に影響力が計り知れない大御所様だったりします。
それはさておき、こういう野生動物とのふれあいも悪いもんじゃないよね。
個人的には前世で、小猿と仲がよかったおっさんのコピペとか大好きだった。
ていうか野生のクセに襲ってこないし。音楽は偉大だー。
「よーし、それじゃぁそろそろ暗くなるけどまだ行くぞー!!」
『うおぉぉぉぉぉぉぉお!!(意訳)』
小さな相棒達、再びスタンバイ!!
さぁ先手はオカリナ君、君だ!!
コンドルは飛んでいくとかやっちゃおう!!
「~~~~♪
~~~~~~~♪
~~~~~~♪」
「ドッレディッア♪ レッディアッ♪」
横では楽しそうにドレディアさんが踊っている。
ふむ、この子ミュージカル方面とかでの才能も有しているのかな?
でもポケモン図鑑はカントー版が基軸なので
イッシュ系列に入るミュージカル方面のステータスは表示してくれないようだ。
他のポケモン達も各々音楽に合わせて楽しんでくれているようだ。
うーむこのままブレーメンの音楽隊でも目指してしまおうか。
「すてぃーびーえーにろーん・・・・・・
あろーぅうぃーずあーうぅりゅぅーーー!
ほわぁぁーーいざんまーいさぷろぉーすつ……ゆぅー?」
「ディ?」
なにやら後ろの方でガサリと音がした気がした。また音楽に釣られてポケモンが来たのか?
ドレディアさんも音に気づいたのか、一緒にそちらに振り返って───
───あれ?なんか黒ずくめの人間が3人もいるよ?
「っチ!!気付かれたか!! 投網発射しちまえ!!」
『おうっ!!!』
いきなり黒ずくめ達が
って、投網? 投網って、あれか? あれだよな。つまり……──
「って、おぬぉー?!」
「ッディァー!!」
『リキィーミュゥーハナハナーペラップー!?!?!?!?』
各々が悲鳴を上げて、途端に森が騒がしくなる。
俺はびっくりしてそのまま動けなかったのだが
ドレディアさんは、クレイジーから来る野生のカンなのか
その神速とも言える持ち前の速度で、俺を抱えて網の包囲から脱出してくれた。
「んなぁっ!?なんっつー速さだ!!」
「不意打ちに近かったのに脱出しやがるなんて、面倒クセェ……!」
あっちでなんか戯言抜かしてるがこっちはそれどころじゃない。
具体的には抱えてもらって脱出したはいいのだが、体に来るG負担が結構きつかった。
「あ、ありがとう……ドレディアさん……ぐっじょぶだよ、うん」
「ディッ!」
ドレディアさんに支えてもらい、立ち上がる。
ああ、演奏を聴きに来てくれたみんなは網に引っかかってしまったようだ。
くっそ、こいつら……!
「あんたらなんなんだよ……!! 予想はついてるけどさっ……」
「クックック、その予想は多分正しいんだろうなぁ?
そうさぁ、俺らは泣く子も黙るロケット団さ」
「別件で人目につかない移動をしなきゃならんで面倒と思ってたが……
まさかこんなご馳走が転がってるたぁなぁ……笑いが止まんねぇぜ。ヘッヘッヘ」
「まあ、あっちのほうで聴いてたが、こいつらはお前の音楽聴きに来てたんだよな?
ありがとうよ、おかげでボスにいい手土産が出来たわwwww」
……こいつら
どうしてくれよう
うめるか? ばらすか? けすか?
「んだぁ……? ガキンチョ、てめぇ一人で俺ら3人何とか出来るとでも──」
あぁ、うるせーなぁこいつら
たりきほんがんだけどドレディアさんもいるしころして───
ぺしっ
「っ?! 何すんだよドレディアさん」
いきなり横っツラを隣に居たドレディアさんに叩かれ、俺は思わず抗議を───
「─────。」
「ッ! ……。」
しようとして、俺は抗議を停止する。
彼女は、ドレディアさんは──いつも通りに、目で俺に語りかけていた。
【ムカつくのはわかるが落ち着け。私も非常に腹が立っている。
トレーナーとして、今こそ私に指示する時だろう。】
と。
見れば顔にも普段とは比べ物にならない、濃い青筋が見える。
それだけ怒り狂っているのだろう。それでも留まっているのは───
───きっと俺の指示を、効率の良さを、信用してくれているのだろう。
「ハッ、友情物語は美しいもんだねぇ~。そら行けドガース!
とりあえずそんな草ポケモン1匹で何が出来るんだってのwwww」
「かわいそうでちゅね~wwwwww
まあこっちは3人で一気にやっちゃいますけども~(笑
おら行け!! ズバット!!」
「つーわけでぇ、さようならーってなぁ!! 出番だ、デルビル!!」
ボンッ!!
ボンッ!!
ボンッ!!
「ドガ~ス。」
「ギュギャァー!!」
「グルルルルッ……」
……、1:3か。
ああ、知ってる。大丈夫。こういう時こそ前世が生きるってな。
精神の落ち着きは大丈夫。1対多で戦場をひっくり返すにはどうするか。
ドレディアさんがチートクラスでも正面から馬鹿正直にやる必要はなし。
プライドなんざゴミと同じだ。必要なのは効率だけ。
あぁ、やるよ、やってやるよ。
てめぇら、俺を、ドレディアさんを舐めた事を後悔させてやる。
─────せいぜい、死ぬなよ?
人には、激昂する権利がある。