うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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93話 あれー

 

 

 

「最近ここを管理するのが面倒になってきました。

 誰か日給1000円ぐらいでここの従業員でもやりませんか」

『『『『『『『『『嫌です。』』』』』』』』』

「ひどい」

「ディ……」

 

 

そんなジョーク……いや本音を飛ばしながら、男は一人静かに飯を作り続ける。

うん、なんかこう表現するとちょっと格好良いかな?

 

「ディ(フルフル)」

「うるせーバーカ! そんなのわかってたわ! 11歳のガキがなぁ!

 一人で大量の飯作ってる図なんてただの労働ドレーイでしかないのなんて

 とっくの間に気付いてたわ! バーヤバーヤ!」

『…………;;;』

「ええい泣くぐらいならテメーラ手伝いやがれ! ずっとバトルばっかしくさってからにッ!!」

 

早く終わったんだか力尽きたんだか知らんが

全員既に飯広場でそれぞれのお椀と皿を持ってスタンバってやがる。

金いらねーからココで働け貴様等、売り上げなんて薬の売上で十分だっての。

だがまあ、ダグ共だけは俺の言葉に一定の理解を示してくれたらしく

ドレディアさんと違って、多少の手伝いはしてくれた。

 

ちなみに緑の草姫さんは既にお椀とお皿と箸まで持ってスタンバってますよ。しねよもう。

 

「へいへーい、出来ましたよー。適当に持って適当に食ってください。

 俺疲れたから適当に中で横になってます」

「っしゃーごつ盛りGET!!」

「てめ、卑怯だぞっ!! 他の皆の事も考えやがれ!!」

「勝負なんざやったもん勝ちだー」

「おい明日全員でこいつボコろうぜ」

『了解。』

「ちょ、全員は酷いww」

「飯の恨みってなぁな……恋人の仇みたいなもんなんだよ……」

「先生、さすがにそれは恋人がかわいそうだと思うわ。」

「うるせー恋人なんざいなかったからそんなん知らねーよ!! リア充撃滅しろ!!」

「もう個人攻撃になってへんかそれ?!」

「こ、怖いよアカネちゃん……この人達怖い……!」

「アハーハー! 飯の恨みも三度までーってネー!」

「キュー!」

「どうでもいいけどあなた達ー、喋ってると自分の分なくなるわよー」

「あ、はーい」

「おっと、出遅れちゃ不味いな……マチスさん、俺等も盛りに行こう」

 

後ろでそんな会話を聞きつつ、俺は中で横になりながら

ダグトリオに仕入れてもらってきた週刊漫画誌に目を通して

飯の煮込みの間に出来る、束の間の暇つぶしを楽しんでいた。

 

何、火元から目を離すな?別にいいんだ、ダグ共が見てくれてるし。

 

 

とりあえず前回、カズさんとマチスさんが合流してから1週間程経つが

なぞのみせLv98の難易度と破壊活動は一層酷くなってしまった事をここに書き記しておく。

 

まずレベル的に、そしてトレーナー的にも抜群に優れている2人が

裏手に集まっているトレーナー達と戦うと、こっちが頑張って作った住居部分にまでダメージが来る。

主にゴウキがぶっ飛ばすポケモンのせいで。

 

ついには昨日、ゴウキのぶっぱなしたきあいだまが避けられ

その避けられた先にあったのは、俺等が頑張って建てた住居の壁。

そしてその裏に居てのんびり客を待っていた俺。

 

絶望フラグは全て片付いた。突然崩れる壁。下敷きになる俺。キレた俺。

 

なんか極限までイラっと来てしまい、ゴウキではなくカズさんをぶっ飛ばした。

そのせいで3Fから1Fまで転がっていったそうだが自業自得である。知ったことか。

 

マチスさんもマチスさんで、現在リーグ用にVOLTYことライチュウ以外を鍛えに鍛えている。

レアコイル2匹の後ろにスーパーサブとしてエレキブルが控え

終いにはライコウまで控えていたから驚きだ。

 

なんか旅の最中に突然草むらから出てきたところをタイミングよくVOLTYがシバいたそうで

そのまま捕まえて使ってみているそうである。

 

ま、そんなわけで基本暇であるVOLTYは

もう片方の存在で暇な俺と一緒に、よく店番をやって時間を潰している。

超ぷにぷにでモフいです。

 

ぶっちゃけここでアイテムショップを開いて、よかったなーって思うのはこの部分だけである。

そんぐらい暇だし盛り上がりにも欠ける。何度でも言う、この部分だけである。

 

いやまあ結構売れ始めてはいるんですけどね? 特に全体回復薬が、ぷち左団扇(ひだりうちわ)層に。

 

簡単に概念を説明するとだな、こうなるわけだ。

最終的に一日の終わりは、ここで飯食って安全に寝て癒す事が出来る。

しかしそれまでにK.Oされたらげんきのかけらを使わない限り1日ストップしてしまうわけであって。

 

そんな事になるなら、と……アイテムを使ってでも勝ちたいって人はやっぱり居る。

 

金が無い人はもちろんそんな事はしないし、その方向でお財布の厚みがやばすぎる人は

ディグダ搬入通路から外に出てもらっても良いので

一度お金を引き落としたりだのなんだのした上で、再びこちらに来て泊まる登録をしている。

さすがにATMまで完備してません。

 

金の力はその所持者の軍事力でもあるわけだが、よくもまあそんな発想に行き着くもんだ。

俺なんてエリクサーですら1個も使わずクリアしているのに。

 

ま、好みは人それぞれか……金なんぞ大事にしてたら何も得られんしな……

ぷち左団扇も、きっとそのうち気付いて慌てるだろう。

 

本来は、そんな人達こそ良い金ヅルなのだが……ここの世界は、ポケモンは当たり前の事として

何故か人間までもがそれなりに強いため、必要とされるシーンは余り思い浮かばない。

 

人間が強い理由はシバさんとシジマさんを参照してください。

あと逢った事は無いが、レンブさんとかスモモさんもそれに当たるのか? ※

 

そんなにタフな生物どもなのにそれなりに捌けているのは本当に謎である。

お前等自己治癒で十分やろ。

 

「おーいちょっとタツヤ君ー!! なんか飯足りないぞー!!」

「は?」

 

あれ? 

結構……とまではいかずとも、鍋の1/10程度余るように作ってるんだが。※

まあ余るように作っても大飯喰らいが何人か居る上に

泊まってる人のポケモンでも結構食う子が多いため、多めに作ったところで御代わり出来ないのだが。

 

それが行き渡らない程度に少ない……?

最初のごつ盛りフルボッコの人とドレディアさんにやられたんだろうか、飯の残量。

 

「足りないって、完全に行き渡ってないんすよね」

「見に来た方が早いんじゃねーの?」

「あいー、今そっち行きます」

 

ふーむ、場合によってはもう一度適当な鍋で作らないと駄目だろうな。

俺とした事が……しくじってしまっただろうか。

 

「あぁ、鍋はマジで空ですね……行き渡ってないのって何人分すか?」

「あ、はーい。俺んとこー」

「ミーのトコにもノットカミングネー!」

「チューゥ!」

「あ、あと私だわー」

「キュー!」

「ギャゴーン!」

 

ふむ、3PT分か。そんならそこまで手間も掛からんし作っておこうか。

 

「わりぃミュウとムウマージ、ちょっと芋の皮向きを手伝ってくれ」

「ミューィ」

「ドレディアさんはその山盛りポテト、マチスさんに渡しといて」

「ディァーーー!?」

「うるせーーーお前自重しろッッ!! しかもなんだよその量ッ!!

 とりあえずお客様優先だ、渡しておきなさいッ!!」

「アアァァァァ……」

「オーゥ……フラワーレディ、ソーリィ……。もらっちゃうヨー」

 

比較的穏便に山ポテの譲渡が成され、沈んでいるドレディアさん以外で調理広場へ向かう。

厨房? そんなもんあるかい。ここは天然の洞窟ん中やぞ。

 

まあむっさい調理場なんぞ見たくも無いだろうし、調理風景はスルーしておく。

 

追加の料理が完成し、全員が集まってるフロアへ普通鍋ごと持って行く。

ちょっと重いからダグONEに頼んでおいた、俺等もここから飯取って一緒に食うかねー。

 

「はーい、おまちどーでござーます。今度こそ足りてるだろうしとっとと食えぃ野郎共ー」

「はーい」

「ディァー!」

「おーう。」

「メッサツ……!」

「キュー!」

「ギャゴーン!」

 

当然の事として、鍋の一番近くに居た俺等はさっさと自分等で食う分を取り

飯が届かなかった人達も、俺等の後に続いて鍋から飯を持って行く。

 

「うむ、今日もそこそこ美味い。でもやっぱり誰かに作って欲しい。」

「アァァ~~~~ァァ~♡」

『──。──。──。』

「キュッキャー♪」

「ゴッ」

「ホァァ~~」

「おう、ほれミロカロス」

「♡♡♡」

 

うちの手持ちの子達は今日もいつも通りご満足いただけているようだ。

飯は日々のモチベーションを保つためにも大事な物だ。

これからも、出来るだけ手は抜かないようにせねばな。

 

「キューキュー!」

「ん? おぉ、なんか可愛いサンドパンだな。どうしたお前、頭でも撫でて欲しいのか?」

 

体を乗り出してきたので、ぐりぐりと手で撫でてやる。

 

うむ、サンドパンの割には頭の部分のトゲトゲしさも落ち着いており

トゲが無い分だけ、手の形にジャストフィットして撫でやすい。

目元も俺の記憶にあるサンドパンより鋭さが少なく、というか全く無く。

サンドの可愛いところを全て総取りしたようなサンドパンが───

 

 

 

「あれ?」

「キュ~?」

 

 

 

こんな、サンドの可愛いところを総取りしたサンドパンなんて……

もっさんの進化途中にいじったサンドだけなんじゃ……?

俺みたいな形で進化の方向性を捻じ曲げるなんて技術は聞いたことも無いぞ。

 

てことは……え、あれ?

 

「お前……もっさんのサンドパン、だよなぁ?」

【そうだよー?】

 

オウフ、首をかしげながら答えるな。鼻血が出そうではないか。

くそ、やっぱハナダの東でサンドGETすればよかった。行った事ないけど。

 

いや、まあそれは置いといてだ。

 

「なんでこんなとこにいんのよお前、ご主人様どうしたんよ、もっさんは?」

「私がどうかしたー?」

 

横手から声がしたので、そちらに振り向いてみるとなんかもっさんっぽい人が居た。

 

「…………。」

「…………?」

「キュゥ?」

 

とりあえず頭頂部から足元まで見下ろしてみる。どう考えてもガールスカウトさんですね。

 

「いや……何よ」

 

顔の作りを確かめてみる。

俺より少し年上なだけなのに若干化粧めいたメイクが見える。大人になりかけの少女って所ですかね?

 

「一体なんなのよ……私の顔になんか付いてる?」

 

もう一度足元を見てみる。あのサンドパンがいる。

 

「キュ~、キュ~」

「お、おう……」

 

サンドパンが俺の脚に寄ってきて、そのままガシっと抱きついてくる。

 

 

「……もっさんだぁぁぁぁあああああーーーッッ?!?!」

 

 

「姿やら顔やらまで確認してるのに

 なんで最後にサンドパンを見た上で認識するのよーーーーーッ!!」

 

な、なんでだ!? 何故貴方がここにいらっしゃるナリか!?

あんた確か逢った時点でバッヂひとつだけだったやん!!

 

「ん……?」

「……何よ、まだ何かあるの? タツヤ君」

「もっさんがここに居るって事は……?」

「いや、もっと早く気付いてくれないかしら。

 というか前にあった時も確かそんな感じだったわよね?」

 

もっさんの文句を受け流し、食事の場に目を向けてみると……

目立つピンクと公式でおっぱお丸出しのポケモンに

何気に見るのは初であるハ・ガ・ネィー!と、

横でちょっとずつモソモソと、俺が作った食事を食っている謎ツインテール? のミカンさんが居た。

 

……。

 

「えーと、もっさんで1。」

「は?」

「アカネさんで2……」

「……?」

「ミカンさんで3……」

「いや、だから何がよ」

 

いつの間にか居る3人。

 

足りなかった飯は3PT分。

 

いつの間にか居たのだから俺が人数に加味するわけもなし。

 

つまりは───

 

 

「犯人はお前だァァァーーーーーーーーーーーーー!!!」

「え、えぇぇえー?! な、何がっ!!」

 

俺が大声を2度も上げたため、必然注目がこちらに向いてしまう。

全員がなんだなんだと言わんばかりにこちらに注視してきた。

 

「おいおい、どうしたんだタツヤ君」

「なんかあったのかー? 子供店主さんよー」

「どしたネー?」

「なんやあったんかー?」

「あんた自然にガヤに混ざってんじゃねェ!!

 飯が少ない件での犯人が判明しましたッッ!! この人達のご一行様ですッ!!」

「え゛っ?! なんや、うちなんもしてへんよっ!?」

「いーや、間違いなく犯人は関西弁の人達の一行だっ!!

 ただ飯喰らいだぞーーーーっ!! 全員叩き潰せぇーーー!!」

「え!? アカネちゃん、払ったんじゃないの?!」

「え、えええー!? いやちょ、うちらちゃんとお金払ったで?!」

「なん……だと……!?」

 

 

     ざわ……                            ざわ…… 

 

ざわ……               ざわ……       だわ……

       ざわ……

                           おざわ……

   ざわ……

              やざわ……         ざわ……     ざまぁ……

 

 

「い、一体いつだっ!? さすがに顔見知りが訪れて反応しない程、俺も鈍くないぞッ!?」

「え、えーと、それ君が言っていいの?」

「過去は振り返らないッ!!」

「ええ加減にせんとしばくどホンマにっ!!」

『ていうか関西弁ってどこの言葉……』

 

あぁ、どうでもいいことだけど、この世界じゃコガネ弁ってなってんだっけ。

 

「で、お金だけど……なんでか知らないけど君が店内、でいいのよね? あそこは。

 そこに居なかったから、待機してたミロカロスちゃんに一人2000円ってことで

 渡しておいたはずなんだけど……私じゃなくてアカネさんがやったんだけどね」

「そやでー?」

「えっ」

「アッ」

 

事情を聞き、ミロカロスに振り返ると思い出したように店内に走って(?)行き

千円札を数枚、クチに咥えてこちらに来た。

 

「フゥォゥァー」

「無理して鳴かんでいいっつーに……うん、6枚ありますね。

 えーと……すいません、3人の誰かで100円玉は1枚無いっすか?」

「え、ああ、はい。」

「あ、どうももっさん。それじゃお釣りの4000円になります」

「え?!」

「ここはただ単に飯の提供料金程度しか貰ってないんで1泊700円になってるんすよ。

 今6100円頂いてたので余分な4000円を、ね?」

「あ、うん……

 はい、ミカンさんとアカネさん、1000円とりあえず返しておくわね。

 この1000円はどこかで小銭にすればいいわよね」

「うちはオッケーや~」

「私も大丈夫です」

「んじゃこれで問題はなくなったな、よし俺等も飯を───ん?」

 

 

─────……。

 

 

なんか周りからすっごいジド目で見られてる。

しかも誰も言葉を一切発しない、何これ怖い。

 

「えーと……つまりは……」

「え、なんすかカズさん」

「この騒ぎの犯人って……」

「リトルボーイネー……?」

 

 

ええー? あれ? これ俺なの? 俺が悪いの?

 

・お金はミロカロスが受け取っていた。

・普通に目立つ風貌とポケモンなのに、3人が混ざってて気付かない俺。

・よく考えたら飯がなーいと言っていた時に飯が来てない面子に混ざってたもっさん。

 

 

 

あれ、これ悪いの俺だ。

 

 

 

「てへぺろ★ミ」

 

とりあえず誠意ある謝罪をみんなにしておくことにした。

人間、悪い事をしたらちゃんと謝るのが大切───

 

『ふざけんなぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!』

「ギャァーーーーーーーーーーーーーー?!」

「ドレディァーーーーーー!?」

「ホァァァァーーーーーー!?」

『ッッッ─────ーーーー!!!』

「△▲☆★~……;;」

 

 

 

そうしてその場で全員からフルボッコにされてしまった俺だった。

飯の恨み、恐ろしすぎる……マジすんませんでした……

 

 

【相変わらずだねぇ、あの子達も、彼も……】 もぐもぐ

【……我、出番……なかった】 もぐもぐ

【どんまい、僕も殆どなかったんだから。】 もごもご

「メッサツ……」 もごもご

「僕もだね……」 ぱくぱく

「───……」 もむもむ

【あぁ、そういえばワカメさん達もだったね……ま、強く生きて行こうよ、うん。】

 

 





最後が誰々なのかは、想像にお任せします。


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