うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

120 / 129
幕間4 教え技

 

「はぁ? 技を教わりたい……?」

「グガーォン!」

 

なんかやたら久しぶりに、何にも巻き込まれず店番をしていたら

しばらくしてからゴーリキーが一族の一部(ワンリキーとかメスのゴーリキー)を引き連れて俺の元に来た。

そして、上記の内容を俺に求めて来たのである。

 

「お前何言ってんだ、俺はお前等みたいな屈強な生物(ナマモノ)ちゃうねんぞ。

 お前等に教えてやれることなんてせいぜい四則演算ぐらいしかないだろ」

「グガッ!」

 

横に居るミロカロスの頭のテッペンをクリクリしながら否定すると

なんとゴーリキーはダグトリオの前身・ディグダの例を出してきた。

誰から聞きやがったコイツ。

 

 

そして話を聞いてみると、一族全員がここに滞在するトレーナーの手持ちに全然勝てなくなったらしい。

確かに四六時中バトルしているやつらだ、恐らくゲームデータ的には平均Lv70とか行っているだろう。

 

その中でも一際大暴れが目立つドレディアさんに、土下座して話を聞いたそうだ。

確かに彼女は、トレーナー戦といえど一般ルールと掛け離れているここでの試合において

かなりの確率で無双を行なっている、最早ドレディアとは呼べないナニカであった。

ゴーリキー達の希望の星になるのも無理は無い。

そして今、この瞬間面倒事を持ち込んだ元凶として今晩の飯無しが決まった。

 

「…………はー、なるほどねぇ~まぁそのプライドもわからん訳じゃないけどなぁ」

「グガーォーン!」

 

正直面倒でしかない……しかも彼女に話を聞いてこちらに来たということは

彼らゴーリキーワンリキーはこの体格と姿でありながら、プロレスわざを習得出来なかったという事だ。

 

基本的に俺は、ポケモンに技を教えている時には大体姿形から入っている。

スマートな体格が目立っていた旧・ディグダはあの漫画から技を教えた。

そしてこいつらの姿で最も近しいプロレスラーの技が使えないとか、俺は何を教えればいいのだ。

 

「ホーァ、ホァ~」

「ん……逆に考えて、姿から想像出来ない技を教えこんでは、とな」

「ホォァー!」

 

ふーむ、つまりミロカロスにからてチョップとかそらをとぶとかってことか。

それで教え込んでいる最中に適正があればそれを、ということなんだろうな。

 

今も尚、目の前にはダンジョンのマッスル(筋肉)のポケモン達が土下座をしている。

ここまで頼み込まれて断るのも、確かになんというか、なぁ…………

 

「んー、ぶっちゃけ覚えられなくても面倒見切れんぞ。

 それでもいいなら俺も暇つぶし程度に頑張ってみるけど、大丈夫か?」

「!!!」

 

ゴーリキー一派が一斉に顔を上げた。

その顔と言ったらそれはもう輝いていて、古腐った俺の精神ではその時点で心が折れてしまいそうな程だ。

 

横で話を聞いていたミロカロスが、笑顔を浮かべてゆるりと巻き付いてきた。

んー、少し前が懐かしくてこいつも嬉しいのだろうか。

 

 

 

 

「と、いうわけで。特別講師のミュウさんとミュウツーさんですー」

『よろしくねー♡』

『宜しく頼む…………って、なんで私はこんな所に連れだされているのだッ!!』

 

突然開催された『タツヤの肉体言語教室』に呼び出されたミュウツーはかなり不機嫌だった。

相変わらず安定のタダ飯喰らいである。この子の将来、大丈夫だろうか?

 

「まぁまぁ、そう言わんでそう言わんで。

 ほら、ゴーリキーもお前の事頼りにしてんねんで。

 今こそ、ポケモンとして一枚上手のステータスを使うべきと思わないか?」

『う、む…………ぬぅ』

『いいじゃんミュウツ~、君もまんざら悪い気してるわけじゃないんでしょー?

 ハナダの洞窟でもリーダー張ってるんだから、ここでもそれを証明しないとー』

 

話を聞いている限り、心底嫌がっているわけでは無い。

ゴーリキー達も目を爛々と輝かせて二人を見つめている。

俺が呼び出したという事実に、否応なく期待が高まりまくっているらしい。

よって、俺が巻き込む基準クリアと見なす。

 

『ま、まぁ私も貴様らに教える事は吝かではない。せいぜい感謝するが良い』

「「「グガーォーン!」」」

『んで、タツヤくんは僕等を呼び出して何するつもりなんだい~?

 ドレディアちゃんがここにいないって事は殴り合いではないんでしょ?』

「うむ」

 

うちの暴れ草姫は、今も元気にトレーナーフロアで絶賛大暴れ中である。

そのうちポケモンずかんから勝手に「ててててーん♪」となりそうな気がする。

 

で、俺が何をするかというと…………

 

「見て、お勉強をする」

『見る?』

『お前等2匹揃ったら、なんか頭ん中のイメージを現実に焼きだせんだろ?

 それを使って、俺の頭の中を映像化して映画の上映会をします』

『…………あの頭の中を?』

『…………あの頭の中を、か?』

「な、なんだよ……人の頭の中がおかしいみたいに言うなよ」

『戯言を抜かすな、あんな人外魔境を想像出来る貴様の中身なんぞ

 機会が訪れないのなら二度と見たいと思わん』

『僕等は、君の頭の中身を一度見てるけどさ~……

 君があっちでは普通の一般人とか、こんなの絶対おかしいよ』

「もう何も怖くないってか。まあその意見は受け止めておこう」

 

多分なんか食生活とか食材事情とかその辺が隔絶しすぎてて

こいつらの頭では情報がパンクしてしまうとか、多分そんなのだろう。

この世界も少数ながら新幹線っぽいのや車にフェリーとあるからな。

 

 

と、いうわけで現実のゲームやら漫画やらアニメやら……

そういうものを俺の頭に思い浮かべて、2匹が映像化という作業をしていた。

ゴーリキー達は人間がロボットが斬新な技を使う映像を見て、ひとしきり関心を持ち

一番納得していない風を装っていたミュウツーも、一部の内容を見て泣いたり猛ったりしている。

ミュウは元々色んな物を楽しむ感性があるのか、全部が全部を楽しんでいた。

途中でダグトリオまで上映会に参戦し、全員体育座りで大人しく観覧していた。

 

他にも概念の酷似性やパクり気味な状態を作り出す事において知識を出し

きあいだまを自力で習得した末に、そのきあいだまを打ち出さずに手足に纏わりつかせ

いわゆる「気」を使える状態まで持って行かせた。

 

 

その結果……

 

 

「よし……ゴーリキー、お前たちの想いが創りだした技を魅せつけてやるぞ!!」

「グガーォーーーン!」

「フフフ、俺だってここでエリートトレーナー張ってる人間だからな。

 そんな簡単にゃやられてやんないぜ、店長!」

 

俺が擬似トレーナーとしての役割を受け持ち、編み出した技の数々をやってもらう。

相手はここの宿泊客のゴローニャさんである、硬さに定評のある子です。

 

「あれ、こども店長今日は闘うの?」

「てかあれここによく来てる野生リキだな、モンスターボールでゲットしたのか?」

「いや、違います。なんか彼らがあなた達に負け続けるのが甚だ我慢出来ないとかで

 新技教えろー言われて、それの模倣演技みたいなもんですよ。バトルはガチですけど」

「へぇー、ちょっと興味あるわねぇ…………こども店長はどんな技を──」

「お、なになに? タツヤんバトルするんか?」

「ほぉ、君がバトルをするのは久しぶりに見るね」

「あ、グリーン君、タツヤ君がバトルするみたいですよ」

「おぉ、それは珍しいな」

 

と、対戦が決定してから何やらギャラリーが集まりだした。

というか内容が「俺がバトルすること」に関して一番注目集めてるとか、この世界的にどうなのよ。

なにやらアカネさんとかタクトさんまでいらっしゃっとるし。

 

まぁ、いいか。

 

「ではまぁ、始めましょうか。よろしくお願いしまーす」

「おう、負けねぇぜ!」

 

元々野良試合みたいなものだったので審判らしき人間もおらず

とりあえず攻撃を仕掛けようとした所で、相手のゴローニャが指示を受けて突撃してきた。

 

「ゴローニャ、まずは ころがる で様子を見るんだ!」

「グーゴォーン!」

 

ズバッとちっちゃくジャンプをしたと思ったら、即座にズゴゴゴゴとすごい勢いで大回転。

その回転の先にはもちろん我らがパンツマンのゴーリキーが居る。

 

しかしこの世界、ころがる自体がクソ技だとしても結構油断ならないから困る。

そのクソに何かしらを二乗して掛けるととんでもない技が完成したりするのだ。

相手を掴んで転がれば、生身ロードローラーとか普通に有り得る訳で……人外魔境すぎる。

 

というわけで、そういうのは交わすに限る。

 

「ゴーリキー、ジャンプ」

「グガッ!」

 

俺の指示に従い、ゴーリキーは垂直にスターンとジャンプをする。

そのジャンプ力たるや、スマブラDXのファルコに優るとも劣らないジャンプだ。

しかし相手のトレーナーも、ひこうタイプを持っていないポケモンが『飛ぶ』事の意味は知っていた。

 

「ゴローニャ! 着地を狙って突っ込め!」

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」

 

狙いどころは素晴らしい、常套手段である。

だが、彼らはこの世界に住んでいるからこそ、忘れている事実がある。

 

ポケモンに常識なんぞ通用するわけねーだろ。

 

「ゴーリキー、二段ジャンプ」

「ゴッ!」

「「「ええええええええーーーーーーーー!?」」」

 

指示通りに、ゴーリキーは空中で再度ジャンプし、その勢いを使って体勢を整える。

一方周りは不可思議な現象にブーイングの嵐だった。

 

ちなみに二段ジャンプは、「気」の応用である。

足の裏に纏わせた気を小爆発させて、Gに逆らっているのだ。

 

着地地点を正確に狙ったゴローニャのころがるは、もちろんスカってしまう。

その勢いをなんとか殺し、壁に激突することもなく体勢を整えて「着地」しようとしている。

 

つまり常套手段である。

 

「ゴーリキー! サンライズ・ボンバーッッ!!」

「グガァアァァァァーーーーーッッ!!!」

「いっ!?」

 

相手が着地した瞬間に当たるタイミングで、ゴーリキーは足を光らせながらゴローニャに突っ込む。

その勢いたるや、まさに電撃・イナヅマレベルの速度である。

 

ゴーリキーの持つ体重、フィジカル、速度、そしてトドメにきあいだまを纏った脚。

ゴローニャの体重300キロを持ってしてもその場で耐える事が出来ない威力が発生した。

 

「ゴ、ゴローニャ! なんとか体勢をッ───」

「とあぁぁぁぁぁーーーーーーーーッッ!!」

「ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴッッッ………」

「うわぁぁぁあーーーーーッッ!? そんなんアリかぁーーー!!」

 

俺のCv.井上和彦に似せた掛け声と共にゴーリキーは瞬時に駆け寄り

きあいだまの気を纏わせた拳で体勢を整えようと頑張っていたゴローニャに

無情にもパンチラッシュを繰り出し続ける。

 

練習しといてよかった。ゴーリキーだと「グゴァー!」としかならんからね。

さぁ、トドメの演出だ!

 

「奥義を受けろッッ! ゴットハンド・スマッシュッッ!!」

「ガァァァァァァーーーーーーーーーッッ!!」

 

ドッグォッッ

 

その硬い岩肌に生えている顔の下に

俺の掛け声と同時に気合の入ったボディーブローが突き刺さった。

その手には元ネタがご存知の人が想像出来る通り、気合を纏わせている。

パンチラッシュよりも破壊力を秘めた、完全な溜めパンチであった。

 

いくら硬いとはいえ、属性的には二倍攻撃のかくとうである。

しかもゲームとしてはそれってどうなのという位の連続攻撃。

一撃一撃にもちろん威力が恐らく100は行っているような一撃であり、なおかつきあいだま入り。

むしろこれで耐えれたらタダのバケモノ(ドレディアさんに似たナニカ)である

 

さすがに爆発させるわけには行かないため

オーバーキルによって完全にグロッキーのゴローニャが地に伏せるのに合わせ、決め台詞を。

 

「 成 敗 ッ ! 」

「 グガォーン ! 」

 

勝利ポーズとして、二人で同時にゴローニャと相手のトレーナーさんを指差す。

厨二病だが、これは完全に決まった……俺、意外とコイツと相性いいかもしれん。

 

「………………」

「ゴォー……ン……」

 

相手のトレーナーさんも、あまりの展開に呆然とその場に突っ立っている。

ゴローニャの小さな呻きが、静かになった戦場に響き渡った。

 

ん、あれ。静か?

 

周りを見渡してみると、ギャラリーが全員静まり返っており

元々戦っていた人達(ドレディアさん含む)までこちらをガン見していた。

あれ、俺もしかしてやりすぎた? ポケモン虐待に入っちゃう?

 

「な、なにあの動き…………」

「空中で軌道変化してたぞ」

「ていうかなんか手と脚が所々で光ってたんですけど」

「相変わらずねぇ、タツヤ君は……」

「なんであんなのを人間が教えられるんやろなぁ、ホンマに」

「あれ、ちょっと待てよ……僕のダークライも彼から何か教わればもっと強く……?」

「ドレディアー!」

 

ギャラリーからの囁きを耳で探ってみたところ、どうやらそういうわけではないらしい。

というよりやっぱり、俺の変態的な立案をそのまま全部吸収してしまったゴーリキーに

周りの話題はもちきりという感じだった。ドレディアさんはなんかこっちに笑顔で挨拶しただけだけど。

まぁなんか本当、火力だけで言えば雨カイオーガにも優るモンありそうだしなぁ。

カイリキーに進化して手が4本になったらどーなんのよこれ。

 

「んじゃ俺店番に戻るわ。頑張れよゴーリキー」

「グガォンッ!」

 

そこに居直るとなんか面倒な事になりそうな雰囲気を感じ取り

店番という正当な理由を持ちだして、その場からそそくさと立ち去る俺だった。

 

 

 

 

もちろんの事、他の全員が技を教えろ教えろと立て込んできて

周りが一層うるさくなってしまったのは、言うまでもない事だ。

とりあえず他のワンリキーとかゴーリキーには心山拳を教えておいたので

そいつらに教えてもらえ、とまるなげしておいた。

 

ダンジョンにやたら割れた大岩が設置されまくってしまい

後続の人間が、岩を落とせず詰みかけたのも余談である。

 

ダグトリオは旋牙連山拳まで覚えてた。

 

 

 

 





ゴーリキーの使った技については、スパロボ バイカンフーとでも検索してください

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。