うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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97話 リーグ

 

 

「それじゃ、頑張って来るぜ!」

「私だって負けないんだからね……!」

「ミカンさん、試合が終わったらアドバイスください!」

「ンッフッフッフー、今回どーなるのかネー?」

「ライチュッ」

 

こちらは大会参加組、気合も入って十分である。

参加人数もシード選手の俺を抜いて127人居るらしいし、この面子が初戦で当たる可能性は少ないだろう。

 

「マチっさんもカズやんもえーとこ見せてくるんやでー!」

「みなさん頑張ってくださいねー!」

「対戦相手ボコりすぎんようにねー。」

 

こっちは大会不参加組、もちろん最後の発言は俺である。

適当に観客席に居れば場内でも不戦勝アナウンスが流れる事だろう。

何が悲しくて名誉なんてくだらんモノの為に戦わねばならんのか。

賞金100万とかならまだ、テレビ的なノリでやる気も出ますけどね?

 

 

 

 

と、言うわけでいよいよ本選が始まる時間だ。リーグ会場は人でごった返している。

 

席らしい席は全て埋まってしまっており、俺等が入る隙は無さそうだ。

なお、ミュウとミュウツーはそれぞれが祭りで楽しく、ポケセンでのんびりって感じだ。

 

どちらも大会自体には全く興味が無いらしく

【遊んできたーい♡】

【この人込みの中うろつくのも面倒だ、寝る。あとでしっかり私の食事を持ってくるのだぞ】

と好き勝手に述べていらっしゃいました。ミュウツーそのままハナダに帰宅してろよ。

 

 

「ディ~ァ~……」

「はいはい、君も【だりぃー】じゃないからね。

 多分良い試合内容とかも沢山あるんだから、しっかり見なさい。」

「ァ~~」

 

そしてこちら側のドレディアさんも、やる気の無い事やる気の無い事……

まぁ、ドレディアさん的にゃ戦いたいのがでかいのかもしれんがね。

そんなもん一人でやってくれという話である、それが出来ないなら諦めてくれ。

 

「ほれ元気出せ元気。ポップコーン買ってきてやるから」

「ッ! ディッ!」

「やっぱ買わないわ」

「アァァァァァァァ……」

「タツヤん……上げて落とすとかえげつない真似やめよーや……」

「そうですよっ、ドレディアちゃんが可哀想じゃないですかっ!」

「普段殴られまくってる俺は可哀想ではない、と?」

「えっ!? え、えっと……自業、自得?」

「俺の心は深い悲しみに包まれた」

 

 

いつも通りの日常が、騒がしい会場の中にあった。

でっけぇ大会の最中でも俺等はそこまで変わらんらしい。

 

 

「さて、結局何処で試合見ましょうかね?」

「うーん、もうこれ……上の方に行って立ち見ぐらいしか手ぇ無いんとちゃうか?」

「そうですね……上だったら試合が終わった4人も、多分見つけやすいと思いますから……」

「ま、使える椅子が無いなら仕方ないですよね……のんびり上で立ち見でもしますか」

「そやね、どうせ一回戦は1:1で勝負決まるし手早く済むやろ」

 

こんな事なら茣蓙(ござ)かパイプ椅子のちっこいやつでも買っとけばよかったな。

ま、今更悔やんでも仕方が無い……のんびり階段に胡坐でも掻きながら試合を見よう。

 

 

 

 

「───選手宣誓ッ! 我々参加トレーナーは! 正々堂々と戦い抜く事をここに誓いますッ!!」

 

 

パチパチパチ

       パチパチパチ

 

 

大会の開始によくある挨拶が代表選手によって行われ

いよいよ持ってして、会場のボルテージが上がって行く。

 

「今年はどうなるんやろねー!」

「やっぱり前年優勝者の人が順当に勝ち上がって行くのかな?」

 

横の2人も会場と一緒にボルテージが上がりまくりである。

トトカルチョ、とかやってたら結構真剣に考えたんだけどもなー。

 

ちなみに前年優勝者は、リーグ勝ち抜き戦で勝った人である。

シン兄ちゃんは開催時期とは違う時にチャンピオンを下した為、こういう場には呼ばれない。

 

「では、これよりAブロックの試合を執り行います! Aブロックの人は前に出てきてくださいっ」

 

係員のその呼び声に答え、何十人も控え室に繋がっているであろう通路から出てくる。

どうやらトーナメントの前に、会場の殆どを使って乱取り的にやるようである。

人数が8人なのは、おそらく開催側が用意したシード選手枠の関係なのだろう。

 

 

 

「おっ! ほら2人共あそこあそこ! マチっさんおるで!

 マチっさーーーーん!! がんばれーーーー!!」

「まーちーすーさーーーーーんっ!!」

 

何気に気合が入った応援だ。

特に大人しいはずのミカンさんまでどう言う事だこの声の張りは。

 

「ほら、タツヤんも応援しぃな!! しっかり声出さな届かへんでっ!!」

「えー喉痛くなるからダリぃ」

「ちゃんと応援してあげなきゃ駄目ッ!! ほらっ! ほーらっ!!」

「おぉう……そんなプッシュせんでもいいじゃないですか」

 

やたら気合が入ってきた2人の押しに負けてしまい、とりあえず一声叫ぶ事へと相成ってしまった。

どう喋ってやろうかなー。……うん、もうこれでいいや。

 

 

「ボルティィィィーーーーーーー!! 愛してるぅーーーーーーーーーーー!!」

 

 

いきなりの愛の告白に横で聞いていた2人とドレディアさんやミロカロスまでずっこけた。

あ、でも試合会場で気付いたボルティとマチスさんがこっちに手を振ってくれてる。

 

「タツヤん……ふざけるのも大概にせんとあかんで」

「なんでここでボルティに告白してるんですか……w」

「えーだってむさいおっさん応援してもなんかこう、アレじゃん。

 だったらペアで可愛げがあるライチュウの方を応援したくなって……」

 

その論を聞いた全員が、深く深~~く溜息をつきやがった。

何これ軽いイジメ? 俺もう帰っていいかな?

 

 

ま、試合結果の方は順当にマチスさんが勝ちあがった。

マチスさんの使用ポケモンはライコウだった。あいつもチャドで結構訓練してたしなー。

順当勝ちといったところであろうか。貫禄もあったしなー。

 

Aブロックの試合終了時間はアナウンスの限りでは歴代最速だったようである。

まぁ、あのマチスさんだし。うん。リーグもとんでもねぇ刺客を放ったもんである。

 

残念な事に、さすがに宿泊組同士でぶつかりあってしまったブロックは

相性で軍配が上がっている試合が2、3個あったが……

 

みんなでマチスさんが勝利したのを喜び、Eブロックの試合が始まる。

ほう、こちらはグリーンが出場しているのか……。

 

 

「まあ、グリーンさんなら順当に勝ち上がるでしょうね。ウザったいけど腕は確かですし」

「まあそやねー、グリーんが早々と消えるような内容でもないしー。

 ミカンちゃんも一安心やねー? クフフフ♪」

「え? えっと……私のアドバイスもちゃんと聞いてくれてたみたいだし

 よほどのミスをしなければ勝ち上がってくれると思ってるよ?」

 

…………。

 

「あまり、脈はなさそうですね」 ヒソ

「んー、線薄そうやな」 ヒソ

「えっと、2人でなんでヒソヒソ話をして───」

 

 

ッパァァァァァァン!!

 

 

『ん!?』

 

音に反応して会場に振り向いてみると、凄まじいジェット水流が高々とリーグの空へ舞い上がっていた。

あー、あの勢いは……多分グリーンのカメちゃんのハイドロポンプだろーなぁ。

 

喰らったポケモンが試合会場の方へ ひるひる~~、ぽてり。

広告掲示板の上部に丁度着陸した。無論ぴくりとも動かない。

チャド宿泊施設参加組もぽつぽつ混ざっていたが、見せ場もなくリタイアとはいと悲し。

 

グリーンは順当に勝ち上がったようである。原作パワーってチートダナー。

 

 

「ひゃー……相変わらずごっついハイドロやなぁ、グリーんのカメっちゃん……」

「これなら良い順位まで行くかもしれませんね!」

「まー行くんじゃないっすかねぇ?」

 

ゲームの方だとこういうリーグ形式じゃないものの普通に主人公より早くチャンピオンになってたしなー。

俺の中では優勝候補の筆頭、その中で№1である。

 

 

さて、続いてはFブロックか……ここは……

お、カズさんが居るなぁ……しっかし皆、上手い具合にブロック分かれて──

 

「ッ!?」

「ん、どしたんタツヤん?」

「ど、どうしたんですか?」

「あー……これは、カズさん運悪いなぁ……」

「えッ!? 何!? ど、どういう事や!?」

 

 

 

カズさんのブロックにいる相手の中には……───

 

 

 

原作主人公の、レッドさんが混ざっていたのだ。

 

 

 

「このブロックは、かなりやばいです……」

「え、えー? そんなにヤバイ相手って……あれ?

 あの人、シオンで逢ったレッドさんやないか?」

「レッドさんっていうと、あの……ポケモンタワー破壊事件の主犯だよね?」

 

 

嫌な方向に覚えられているwwww

まあ、そのレッドさんである。そういえばこの2人もあそこで逢ったんだっけ。

 

「んーでもここでセイリュウちゃんは無いんやないか?」

「そうだね……あの子で逃げたのは警察にも連絡行っていると思うし

 この狭い会場じゃ、2回戦からの1:1にならないと配置的にも無理が……」

 

 

2人は見当違いな方向で心配しているが、俺は知っている……彼は、この世界の───主人公だから。

きっとご都合的なものや、世界の強制力やらが働いて……必ず勝ち上がる筈だ。

 

 

そして彼等は、互いにポケモンを試合会場へと登場させる。

カズさん側はもちろん、エースのゴウキ。

 

「メッサツッ!!」

 

『おぉっと! 選手の一人が見慣れないポケモンを登場させているぞー!?

 ニビシティ出身、カズ選手ッ! 使用ポケモン、ゴウキッ!』

 

公式の大会では、やはり一切姿が確認されていないのか

雑多な戦いであるはずなのに、わざわざアナウンスが流されている。

 

会場も自然とアナウンスが行われた人物に注目して、ざわざわと喧騒が立ち始めている。

目新しいものはやはり注目の的なんだな。

 

 

「……どんなポケモンが出てきても関係ないさ……さぁ、行ってくれ……俺の相棒──!」

 

 

ん、レッドさんは、ピカチュウではないのか……?

いつも連れ歩いている(気がする)ピカチュウが一切出てきてないが。

 

 

 

 

「ゴリチュウーーーーーーー!! 君に決めたぁーーーーーー!!」

 

 

 

 

ペカァァン

 

 

 

 

光が収まった後、そこに居たのは……ある意味有名度がとても高いポケモン。

 

 

ピカチュウが完全に懐くと、進化系に新たに登場するポケモン……

 

 

可愛いピカチュウの顔を維持しておきながら

 

 

その首から下の、ただの黄色いゴーリキーでしかない逞しい体を所持し

 

 

可愛らしさを全て台無しにした上で、至上の強さを身に着けたポケモン。

 

 

 

 

「ゴォォゴォォゥオォオオオォーーーー!!」

 

 

 

ゴリチュウが、そこに居た。

 

 

 

 

『『なにぃーーーーーーー!?』』

 

ゴウキの件で、良い意味で注目が集まっていた試合会場の片隅にさらなる核弾頭が投下され

会場の参加者、観戦者全員の気持ちが一つになったような、そんな叫びが響き渡った。

 

『こ、これはなんという事でしょうか……!

 まさかのまさか、レッド選手まで新種のポケモンを繰り出してきました……!

 し、しかし、その……あれは……なんと言うか……』

『この場合は、気持ち悪い……で良いのかな?』

『あ、解説のサカキさん、代弁どうもありがとうございます。

 手持ちの資料の登録名では、ゴリチュウとされています……

 顔に残るピカチュウのあどけなさからして、あれはピカチュウの進化系なのでしょうか』

 

俺は有る意味ダグ共で見慣れているから問題ないんだが

横の二人もあまりのキモさに戸惑いを隠せないようである。

 

「ちょ、ちょ、な、なんなんあれ……」

「い、いやっ……! 存在がもう……、えっちなのはいけないと思いますッ……!」

「てーか、しれーっとサカキさんがアナウンスに混ざってたなー。全然気付かなかったわ……」

 

アナウンスなんぞどうでもいいしなー。

耳に入ったところで右から左でございます。

 

『さ、さぁ……この新種同士のバトルは一体どうなるのでしょう!

 意外な期待を膨らませてくれるFブロック、スタートです!』

 

アナウンサーの声に釣られたのか、試合会場内に居る審判兼係員の合図が行われる。

Fブロックの戦いが、今始まった───!

 

「ゴリチュウ、まずは様子見だ……ビルドアップッ!」

「ゴォオォォォォッ─────」

 

 

「─────ゴウキィィィーーーーーーーッッ!!」

「ムンッ……!」

 

ギャォッ!

 

ッ!? あれは……瞬獄殺だが───動速度が凄まじく速いぞッ?!

いや、早いなんてもんじゃない。あれは……RareAkumaのッ!?

 

 

会場全員がおそらく、その瞬間にゴウキを見失った事だろう。

次に彼を見た姿は、誰しもがゴリチュウを後ろから掴む彼の姿。

 

そして会場は───一切の予兆すらなく、真っ白になった。

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

 

白い風景の中、響き渡る打撃音……この時点で既に決着が付いているに等しい。

予想通り、次に風景が直った時には───

 

 

ただ一文字、背中に天と光り輝く文字を背負い───仁王立ちするゴウキ。

その足元には、完全にノックアウト状態のゴリチュウが倒れ伏していた。

 

会場は何が起こったのかわからず、シーンと静まり返っている。

 

そんな中、俺は……場違いな事を考えていたりした。

 

 

 

 

 

(なーんだ……黒い画面と同時に愉快な音楽が流れて

 999hitの後に巨大化して踏み潰すK.Oじゃないんだ……)

 

 

 

 

 

ついでにちっちゃいゴウキが出なかった事にも不満がある。

期待させやがって……スピードだけRareAkumaかぁ。

 

 

 

マサラタウン出身、レッド───予戦、敗退。

 

 

 




RareAkumaというのは、mugenというネットの格闘ゲームで
豪鬼をベースに作られたおふざけキャラです。
知らない人は一度ご覧になってください。マリオのキノコ食べたりして楽しいですよ。
何を言っているのかわからねーと思うが、見ればわかる。

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