うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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ご閲覧いただきありがとう御座います。
適当なストーリーですが、よろしくお願いします。



タツヤの軌跡
1話 出会い


 

 

─────チュチュン……、チュン、チュン……。

 

 

 

 

今日の朝もいつもと変わらず、オニスズメの朝のさえずりが響く。

 

あぁ……うるさい……もうちょい寝かせてくれ……。

 

ピョンピョンと動いているのか、屋根の上からはさえずりだけでなく

トントンと、オニスズメが歩を進める振動も響く。

 

あいつらは地味にでかい。

あくまでも「スズメ」を見慣れていた俺からしたらだが……。

それだけの大きさで動けば、そりゃ屋根も揺れる。

眠いながら振動を感じる限り、ニ匹か三匹が屋根にいるようだ。

 

 

……求愛でもしてんのかねぇ────他でやってくれ、他で……。

 

 

自然と目を覚ませなかった事から、頭の中の考えが若干苛立ちが支配する。

やっぱ朝は自然と目を覚ましたいもんである。

苦し紛れに布団を頭まで被って、俺は二度寝の体勢に入った。

 

 

チュン、チュン……、チュンッ!?

─────ギャァ!!ギャァギャァ!!ギョァー!!

 

 

……バトル、始まりました。他の♂でも乱入したのか。

 

「─────ぬっぐ……ッ、ふぁーぁああぁ……」

 

こんな騒音だらけではこれ以上寝るのも不可能だろうし、素直に起きる。

今日も精神年齢30歳、肉体年齢10歳であるチグハグの俺の一日が始ま─────

 

 

 

─────朝っぱらからうるっさぁああいッ!タっくんの部屋の上で何してんのよっ!!

─────フーちゃん!!あの屋根のオニスズメどもふぶきでぶっ飛ばしなさい!!!

─────リーザァーッ!

 

ずごぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

─────ギャチュチュアギョァギャギョァーーーーー?!?!

 

─────ててててーん♪

 

─────あら?フーちゃん今のでまた強くなっちゃったのねぇ。

─────最近全然反応なかったし、もうちょっとだったのかしら。

─────フーちゃん、偉いわね~♪

─────リ~♪ リ~♪

 

 

「………………。」

 

 

…………まぁ、何も言うまい。

俺の部屋の窓が凍り付いている事なんぞ知らん。

さらに言えば母さんの手持ちがあの4段階の変身がある宇宙人と同じ名前なのも知った事か。

常識なんぞ今から行くトイレに、改めて流してしまえばいい。

 

 

 

 

───改めて自己紹介しよう。

俺の名前は『旧姓:田島 直哉』、『現:タツヤ』。

 

ああ、うん、そうなんだ。ありふれた例ですまない。

もうわかりきってる事だと思うんだが

 

俺は曰く、転生者とか憑依者というやつだ。

 

まあ別に俺の個人情報なんぞどうでもいいと思うから説明は飛ばす。

よくよく考えれば自己紹介とか必要ねぇなこれ。

 

とりあえず……上記のありふれた例ですまないのだが

何の因果か……ポケットモンスター、縮めてポケモンの世界に来てしまった。

 

この世界でニ歳位の時だろうか? 何故か「俺」の意識が芽生え始めた。

そのニ歳より前の記憶がないため、憑依者なのか転生者なのかは未だによくわからない。

ただまぁこの世界が、自分が居た平成日本ではないのはしっかりわかった。

 

だって、意識が芽生えた時に空飛んでたのが鳥じゃなかったんだもん。

あれはカイリューだったと思う、もしかしたら他にも似たのが居るかもしれないが

少なくともずんぐりした……薄茶色? の空飛ぶ爬虫類を俺は知らない。

さらにそこらに立ってた看板見たら「マサラタウン」とか書かれてっし。

その時は落ち着いて『マ』の左側に油性マジックで『イ』と追加しておいた。

 

意識が芽生えた直後で戸惑ってこそいたんだが

周りを見渡せばそれはもう、俺からしたら不思議な世界しか広がってなかった。

人がいるかと思って安心したら……その人の傍らとか、他の人のそばとかに

なんか見た事あるよーな動物ばっかで、ああ、これポケモンだー、って。

 

 

 

まあ、俺の回想はこんなところにしておこう、腹が減らなくても俺は戦が出来ぬ。

トイレでも既に用を足し終わってすっきりだ。

とっとと母さんに挨拶してメシを食おう。さすがにそろそろ台所に戻ってるだろう。

 

「おはよう~……って、あれ? シン兄ちゃん。母さんは?

 さっき外でオニスズメぶっ飛ばしてたのは聞こえたけど、まだいないの?」

 

リビングに入ってみると母親の姿は無く

日頃は家に居ない兄ちゃんの姿だけしか確認出来なかった。

 

「おはよう、タツヤ。

 母さんなら、なんかフーちゃん強くなってテンション上がったのか

 そのままはしゃぎながらフーちゃんにぶら下がってどっか飛んでったのは見たよ」

「母さん……」

 

だめだあの母親、早くなんとかしないと……。

 

「ま、いいんじゃないかい? 朝ご飯もあるし、そのうち戻ってくるよー  多分」

「なんかもう本当、なんでウチってこんなに常識からすっ飛んでんの?」

 

今目の前にいるシン兄ちゃんも去年、すっげぇ『やりこみ四天王戦』ぽい応酬があったが

わりかし極普通にポケモンリーグの頂点立ってたし。

まぁその後速攻でチャンピオン辞退して、また地方巡りに戻ってたんだが。

 

「あ、あはは……。

 まあ確かに母さんの手持ちポケモンも僕の立場も

 一般家庭とズレてるのは間違いないけど……それをタツヤが言うのはどうなのさ?」

「えー……」

 

苦笑いで返答してくるシン兄ちゃん。

どうやら俺もシン兄ちゃんから見たら十分異端らしい。

一応俺、ちゃんと年相応演じてる自信あったんだけどな……?

 

「小さい頃からやたら頭良いし、子供らしいわがままもないし……

 僕自身、タツヤが本当に弟なのかって結構疑ってるんだよ?

 タツヤと僕を知ってる人からはいっつも"君が弟だろw"ってからかわれてんだから……。

 僕だって結構しっかり者のつもりなのになぁ、みんなひどいよ……」

 

あっれぇー?

結構自信あったのに実はそんなことはなかったぜ。中身が既におっさんでごめんなさい。

 

「いや、まぁ……逆に言えば手の掛からない弟で面倒も少なかったしょ?

 それに、別に俺の事はどうでも良いよ。

 俺がなんだのこんだのより、俺のお腹がウボァーな状態である事の方が重要だし」

「久しぶりに戻ってきたけどタツヤは相変わらずだなぁ、ウボァーってなんなんだい」

 

相変わらずなのは仕方ない、人間簡単には変われないもんなのだ。

中身が既に熟達しちゃってるから、ね……

 

「それじゃ、頂きますっと」

 

ともあれ食わねば始まらない。

ひとまず大人しくご飯を食べましょう、朝の始まりは朝ごはんからである。

朝昼兼用はいかんぞ。一日の原動力である朝はしっかり食わないとな。

 

 

 

 

「そういえば……タツヤはポケモンもらいに行かないのかい?

 もう10歳の誕生日もしばらく前に過ぎてるんだし、そろそろ僕みたいに旅する頃だろ?」

「あーうん、それねぇ……。

 実は10歳になった時にオーキド博士に速攻でもらいには行ったんだけどさぁ」

 

そりゃぁやっぱ、ガキの頃の一大イベントだったから楽しみだった。

今までも母さんや兄ちゃんに手持ちの子を借りたりはしてたけどさ……

初めての自分のポケモンってなるとやっぱこう、特別なもんになるんじゃないの?

今では私がおじいさんってわけではないだろうけども。

 

んで、胸に期待を膨らませて研究所に行ってみたら……

留守番の研究所員さんが「博士、今講義に出かけてるよー」とか抜かしやがる。

ちくしょう、ポケモンの権威のクセに普段は引き篭もってやがるのに

何故こういう時に限っていないのだ、と素で思った俺は悪くない。

 

研究所員さんが「多分少ししたら帰ってくるよ」というから

のんびり所員さんと会話しながら待ってたら、その日一日全く帰ってこなくて。

 

で、研究所の電話がなって……電話先は警察。

「博士が講義の帰り道でロケット団に拉致られた」ってふざけんな。警察仕事しろ。

それからはもう、滅多に訪れないイベントだから研究所もてんやわんやで。

所員さんもてんやわんやだったが、とりあえず俺は関係ないので帰った。

 

「そんで、帰ってきたらなんかもうどうでもいいやーってなって。」

「聞いた事がない例だな、ハハハ。

 ……博士、あれだけ護衛つけろって……何してるんだよ……」

 

思うところがあるのか、シン兄もこれには思わず苦笑い。

 

「ぁーでもまぁそろそろもらいに行こうかなぁ、旅に出るかどうかはわかんないけど。

 別に手持ちが無いままで人生終わるわけでもないし……。

 ……まぁ面倒がってたらいかんよね、うん」

「何で10歳でそんなに達観してんのかなぁ、タツヤは本当に。

 レッド君とかグリーン君、なんかもっと可愛げあったよ?」

「まーじでー」

 

俺はポケモンに関してそこまで詳しくないんだが、ゲームとアニメの違いは大体わかる。

そしてこの世界はアニメよりはゲーム寄りらしい。

ちなみにレッド君とグリーン君は俺のニ歳年上である。

そして二人共、二年程前に旅立っている。この世界子供に冒険させすぎだろ……。

 

「まあ思い立ったが吉日かもしれないな。

 ご飯食べたら研究所に行ってみるよ、今日は拉致られてなければいいんだけど」

「すっごい皮肉だなぁ、地味にその時の事恨んでるんだね?」

 

はい。

旅立ってロケット団にあったら超ボコボコにする予定です。

まあ……犯罪組織がポンポン10歳児に絡んでくんのかって話なんだけども。

 

博士もあんなのに拉致られてんなよホント。

 

 

 

 

そんなわけでご飯も済ましたので、歩いて研究所前に来てみました。

別に立ち止まる意味も無いのでさっそく中に入ってしまおう。

 

「こんにちわー」

「おや、タツヤ君久しぶりじゃのぅ」

「オーキド博士、ご無沙汰してます」

 

入り口自体はフリーなので普通におじゃましたところ入り口に最終目標が居た。

『勇者のくせになまいきだ』現象である。

 

「いやー本当、3ヶ月前はすまんかったのー。まさか誘拐されるとは……」

「博士、一応ポケモンの権威なんですからもっとちゃんとしてください……」

「権威なんて言葉、よく知っとるのう……しかも一応とは。酷いもんじゃ」

「よく言えば親しみやすいですけど……

 悪く言えばそこらのオッサンと変わらないですしね、博士って」

「ま、まぁそんな小難しい事はさておいてじゃな!」

 

あ、話題変換しやがった。ちくしょう。

もっちょいネチネチ言って恨みを晴らしたかったのに。

 

「ここに来てくれたって事は、最初のポケモンを受け取りに来たって事じゃな?」

「はい、まあそうです」

「うむうむ、これでタツヤ君も一人前か。時が過ぎるのは早いのう……」

 

この世界のオーキド博士は、かなり一般市民に馴染んでいる。

白衣を着ていないとただのその辺のおっさんである。

俺もたまに研究所に来て、話を聞いたり突っ込んだ事を質問したりもしていた。

下手に厳格な雰囲気がない分、オーキド博士には少しだけ世話になっていたのである。

 

 

「 ! そうじゃタツヤ君。変わったポケモンに興味はないかね?」

「変わったポケモン……ですか?」

「わしも世界を色々飛び回ってポケモンを見て歩いておるのじゃが……

 どうも最近、外来種として持ち込まれたりでもしているんじゃろうか?

 別の地方にいるはずのポケモンも、普通にこっちに居たりもするんじゃよ」

「そうなんですか」

 

まあその方が、こっちとしては色んな子が見れるからそっちの方がいい。

でもそういうのって……生態系とか平気なんか?

日本の河川も一部の地域じゃ、色々状況が重なってグッピーが自生したりしてんぞ?

 

「で……まぁ、の? わしも最近、研究のためにもらった子が一匹いるんじゃが……」

「その子が、変わっている?」

「タツヤ君は本当に聡いのぅ……まぁそういうことじゃな。

 まぁそのポケモンの種族的には、普通は穏やかな性格の子ばかりのはずなんじゃが……

 もらった子はなんやら、やんちゃというかなんというかのう。

 ステータスも有り得ん方向に突出しておってなぁ……」

 

この世界では、一体どの辺りで技術革新を遂げたのか

ポケモン図鑑がゲームと比べて全体的にやたらハイスペックになっている。

なんとそれひとつでステータスはおろか性格と努力値まで見れるのだ。

 

ただまあ、ここはゲームの世界っぽくはあるが生きている俺らは間違いなく現実。

ステータスや努力値は数字化こそされていないが……

まあ棒グラフみたいに、目に見える形で表されるようになっているのだ。

 

「面白そうですね、その子」

「でも普通と違うから苦労するかもしれんぞー?」

「苦労を知らないで苦労するなら苦労と思う事も無いでしょうし、俺は構いませんよ」

「しつこいかもしれんが君本当に10歳かね」

 

違います。

 

「んーじゃあまあ……引き合わせてみようかの。こっちじゃよ」

「はい、お邪魔しますー」

 

そうして俺らは研究所の奥に入って行き、とある部屋の前に辿り付いた。

 

「ここじゃよ、この中に彼女がおる」

「……彼女?」

「ああそうじゃ、♀しかいない種族なんでの……そこだけは間違いなかろう」

「そんなのもいるんですね」

 

俺は実はポケモンに関しては本気で中途半端な知識しかない。

タイプぐらいならアニメもほんの少し見ていた事があるのでわかるが

アニメで効いていたが故に、どく属性がはがね属性に通ると本気で信じていた事がある。

その程度の付け焼刃でしかない。

 

「じゃあまあ(怖いから先に)入ってみておくれ」

「今なんか妙な間がありませんでした? まぁ、とりあえずお願いします」

 

了承して扉を開ける。

 

ガチャ……

 

開け放たれた扉から、部屋全体を見渡してみる。

まあなんというか研究所らしくは無い部屋である。

妙な液体が入ったガラスの筒にポケモンが浮かんでいるなんていう事も無く

一言で述べるなら応接間とか、なんかそんな感じだ。

 

そしてその部屋の中には、緑のコントラストが目立つ子が居た。

見た目が緑で占められている割合が多い分草っぽい感じがする。

まぁ……さすがにこの点は間違っていないだろう。

 

草を表す風体の他に、頭にちょこんと乗った花と見える部分も

その子の可愛らしさを強調しており、まるで草のお姫様の様なフォルムである。

そんな彼女に似合いそうなニックネームは、やはりストレートに「お嬢」……なのだが。

 

 

「い、いよぉ、ドレディア。今日の調子はどうじゃ~?」

「…………ァ゛ア゛?」

 

 

その子の姿勢と顔つきが全てのイメージをぶっ壊していた。

 

 

緑のお姫様は、博士が声を掛けた瞬間にダミ声を上げつつ振り返り

可愛い顔が台無しになるレベルでこっちを睨む……いや

額に青筋を立ててこっちにガン付けており、なおかつどうやったらああなるのか

下半身の膨らんだかぼちゃパンツのような部分が

若干平べったくなっていて、その上に腕と思われる部分の肘を両側に乗せ

うん、なんていうか完全にヤンキー座りのような体勢だった。

 

 

 

この出会いが

 

 

 

俺がこの世界でずっと付き合う事になる相棒との、初めての出会いだった。

 

 

 

博士、チェンジお願いします。俺にはこんな恐ろしい子は無理です。

 

 


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