うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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29話 ついに

 

 

そしてポケモン図鑑から発せられる音楽が鳴り止み───!!

 

 

 

キュピィィィイインッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ドレディアーっ!!」

 

 

 

 

 

 

でーんでーんでーん♪     でででででででーん♪

 

[> おめでとう! ドレディアは

   おなかいっぱいに なった!!

 

でーんでーんでーん♪     でででででででーん♪

 

 

 

 

 

「知るかぁぁぁぁぁぁぁぁあああァァァーーーーーッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

俺は全速力でダッシュして、ドレディアさんの後頭部を狙い手刀を撃ち放った。

ズパァァァンと良い音と共に、ドレディアさんは目を回し地面に崩れ落ちた。

 

 

超期待させておいてなんだこれはッ!!

おまっ、おなかいっぱいになったとかどうでもいいわッ!!

なんで進化の音すんだよッ! Bキャンセルしたらどうなるんだっつーの!!

 

横でディグダが【あ、姐御ッ!?】と慌てふためいているが知った事ではない。

おのれドレディア、期待させておいてこんなオチとか!!

お姫様の次はもう王女様しかないと期待したのになんだよこれぇ!!

 

 

「アッハッハッハッハーーー!!www ユー、本当面白すぎーネー!!www

 エンターテイナーネーwwww ウォッフwwwwフォッwwwww」

「笑いすぎだこの野郎ッ! こちとら本気で期待したんだぞッ!!」

 

正直洒落になっていない。周りの人達もドン引きである。

 

 

あれ? ドン引きなのは攻撃した俺に対して? まあいいやどうでも。

 

 

「はー……ちょっとドレディアさんの気付けしてきますわ……」

「オーケィー。プリティーガール達には伝えておくネー」

 

ったく、まさかのオチだよこれ。とっととトイレに向かうか。

 

───…………。

 

「───そろそろ、か?」

 

時間帯的に、そろそろ事が起こってもおかしくは無い。

俺は思わず、一人で静かに呟いた。

 

 

さて、そんなこんなで全員連れて男子トイレ。

ドレディアさんは確実に女の子だが細かい事は気にするな。

 

軽く水をぱしゃっと掛けて、ドレディアさんを起こす。

 

「ディ~……ディァ~……?」

 

目を覚ましたドレディアさんは記憶が若干すっ飛んでいるらしく

俺に【なんだ、何が起こったんだ】と聞いてきた。

 

「うん、はた迷惑な事してすっごいガッカリしたからとりあえず気絶させた」

「#」

 

【なんじゃそれは】という意思が垣間見える。

 

「けどまあ、それも一旦置いておくよ。───俺の予想が正しければ、そろそろ何か起こるはずだ」

『ッ!!』

 

完全なタイミングこそ、わからないが……そろそろパーティー参加要員も全員集まりきるはず。

ここを逃せばむしろ空気を読め、とばかりの話になってしまう。

逆にここいらで何も起こらなければ俺も楽だなぁ。

船長さんに報酬もらって、適当な曲弾いてワーってなってもらえれば嬉しい。

 

 

しかし、事態をプラス思考に持っていき続けるのは得にならない。

最悪の最悪を予想して対処に回った方が、能率はいいのだ。

良い事の能率なんて放っておいても回転率いいしね。

 

「じゃ、とりあえず……作戦予定の為に、みんな悪いけど一旦ボールに戻ってくれ」

「ディッ」

「ッb」

「グーグ」

 

ピシュゥゥン。

 

「───これでよし……あとはほぼ想像通りに進んでくれれば、逆転の一手位はすぐに成るだろう」

 

淡い期待は削除しておく。もう一人当てもつけなきゃならないしな。

そして俺は皆の入ったモンスターボールをしまった。道具の準備も、万全だ。

 

 

 

 

「ただいまー。どうも変な時に抜けてすいませんね、マチスさんにアカネさん」

「かまへんよー、うちもあれは笑わせてもらったし。

 おなかいっぱいになったって、なんやねんあれwwww」

「フラワーレディ、クレイジーにも程があるヨwwwww」

「俺の期待は深い悲しみに包まれたっ……!!」

 

もう2人とも大ウケである。困った人達め。

っと───……

 

「すみません、アカネさん。良ければ仲介をしてもらいたい人がいるんですが……」

「ん、なんや?」

「ジョウトで格闘タイプに特化してる人って居ましたよね。シジマ……さんでしたっけ?」

「うん、あのおっちゃんなー。ポケモン並に強いけど、シジマのおっちゃんがどないしてん?」

「ええ、ちょっとお話させてもらいたくて」

「まあ、別にええんやないかな。ついてきてー」

「いってらッシャーイ」

 

マチスさんに見送られ、会場をとてとてと歩いていく。

そして上半身裸のおっさん、シジマさんが見えてきた。服着ろあんた。なんで下だけタキシードなんだよ。

 

「ぅーぉい、シジマのおっちゃーん」

「ん? おぉ、アカネかっ! どうしたー?」

「なんかよーわからんけどこの子が話したい言うてなー」

「どうも、こんにちわ」

「んぅ? どうした坊主! わしと一緒に鍛えるか?」

 

 

あかんこの人脳筋だ。バトルジャンキーとはまた違った厄介度。

 

 

って……そんなところでひるんでいる暇は無い。

 

「……少し、真面目なお話があります。こちらに来て頂けませんか」

「……? 本当に、どうしたんだ坊主?」

「ん……? うちはおらんほうがええかな。んならマチッさんとこに戻っておくわー」

「おぉアカネ、マチスさん見つけたのか! わしもよろしく言ってたって伝えておいてくれ!!」

「ぅいーぅいー」

 

そうしてアカネさんは去っていった。さて、と……

 

「こんな賑やかな場でお手数を掛けて申し訳ありません」

「いや、大丈夫だ。お前さんが纏ってる雰囲気で比較的真剣なのはわかるからな」

「ありがとうございます、実は……──」

 

 

「それじゃあ、もしもそうなったらお願いしますね」

「───わかった、もしそうなったら任せておけ」

 

最悪の事態に陥った場合の仕込みも伝え、シジマさんと別れる。

俺も手持ち無沙汰になったので、適当に腹が膨れそうなモンを食い歩いてみる。

 

そしたらまた知った顔から声を掛けられた。

 

「ん……? 君はタツヤ君じゃないか?」

「え、あ───」

 

……そう、か。一応こいつもジムリーダーだったんだっけか。

この場に居なければ、確かにおかしい話だな。

 

俺は声を掛けられた人物へと挨拶を返す。

 

 

「こんにちわ───サカキ、さん」

 

 

 

そこにはロケット団の頭目、サカキが居た。

俺と彼が何故知り合いなのか……それは母親に原因がある。

母親はトキワジム他の名誉トレーナーとなっており

ジムリーダー連中の一部にも母親を師事している人が何人かいる。そのうちの一人が、サカキなわけだ。

小さい頃にこれを知った時、冗談抜きでひっくり返りそうになった。

 

 

「久しぶりだね、元気だったかね?」

「ええ。手持ちのポケモンには何度か殴られてますが、比較的元気にやってます」

「な、殴られ……?」

 

ん、何か問題があったかな。

 

「レンカ師匠から話は聞いているよ。

 挨拶もなく旅立ったんだって? とても寂しそうにしてたよ(笑」

「あーなんてーんすかねぇ。機を見るに敏也って感じです」

「ハッハッハ! さすがはレンカさんの息子さんだ。

 まあレンカさんもここいらで君を探し回っているみたいだし、すぐにまた逢えるのではないかな」

「あ、そうなんですか?」

 

だからやたらフーちゃん見るのか。別に家に居ればいつでも逢えるだろうに。

……あれ? そういえば俺一度も家に戻ってねえぞ。

 

「ところで君は何故ここに?」

「なんかみんなにそれ言われるなぁ。演奏楽団として船長にとッ捕まりました」

「ああ……一度君の腕は聴かせて貰ったが……

 レンカ師匠を初めて見た時よりびっくりしたからな、ある意味では」

 

褒め言葉なんでしょうね、ありがとうございます。……なんか納得行かんもんがあるけどさ。

 

「サカキさんもやはりお忙しいんでしょうね。最強のジムリーダーって位だし」

「いや、そんな事も無いさ。下に付いて来てくれるトレーナー達がよくやってくれている」

 

この謙遜の仕合には余り意味はない。

ただ、俺がサカキを警戒している事を悟られるのだけは不味そうだ。

 

あのくるくるパーであっけらかんとした母親の事だ。

おそらく、俺がバーリトゥドゥ限定で強い事はちらりと話してしまっているはず。

今回の先の予想に気付いている様子を見せたら、下手すると別室に拉致られかねん。

 

「まあ、今日はゆっくりと羽を伸ばさせてもらうつもりだよ。君の演奏、楽しみにさせてもらうよ」

「ええ、ありがとうございます」

 

お……いい感じの話の区切りになったか、ありがたい話だ。

なんか悟られる前にとっとと逃げよう。

 

 

 

ってかこの人、この船の襲撃なんてことやらかして俺の母親にバレたら

フーちゃんの絶対零度を生身で喰らう事、理解してんだろうか。

 

でもこれでひとつ情報が増えた。

おそらくは───この情報は役に立つ(・・・・)

 

 

 

 

先のサカキとの会合をひと段落させて行く場所もないため、アカネ・ミカン連合のところへ足を運んだ。

マチスさんはどっか他のあいさつ回りに行った様である。

俺の本来の出番もまだまだ後らしいしな。メインとかやめろし。

バックミュージック担当でええっちゅーねん。

 

「───あ、そろそろパーティー全体の挨拶みたいなのが始まるのかな?」

「んぉ? そーみたいやなぁ」

「ですね」

 

会場の、壇上に一人の若い人が上がってきた。

 

───……。

 

「本日は皆様、お忙しいところをお集まり頂き、誠に有難う御座います。

 あまり全員が集まることが少ないジムリーダー様達ですが───」

 

主催者っぽい人の長ったらしい方便が続く。

こういうのってよくもまあ、ここまで文章になるもんだよねぇ。

 

「───交友を深めて頂きたく集まったこの場ですが、

 このような形にするのは非常に申し訳なく思います───」

 

……やっぱり、な。こうなったか。

 

そのおかしな建前文章に、俺と、とある2人を除いた全員がざわざわし始める。

 

「─────そういうわけで。全員大人しくモンスターボールをこちらに渡せ」

 

会場の扉が全て開き、黒ずくめのゴミ共が会場に入り込んでくる。

その横には全員ビリリダマとマルマイン、他にもヘルガーやグラエナに

凄いモノではドンカラスまで見受けられる。

 

「えっ、な……な、なに、これ……!」

「ど、どういう、どういう事なんですかっ!?」

「…………。」

 

今は俺の予想している事情を説明しない方がいいな。返って変に冷静になられて目立っても困る。

 

 

 

 

───この場は、これからのこの船は。

 

 

非情に徹しきれないヤツは、邪魔(・・)だ。

 

 

 

「おらッ!! とっととテメェラのポケモン出せやっ! どうなっても知らねぇぞ!!」

「う、うぅ……うーっ……!!」

「そん、な……、何も、何も出来ないなんてっ……!」

「……───。」

 

 

 

横に居る二人が悔しがりながら、相棒の入ったモンスターボールを差し出す中で

俺も荷物を下ろし、リュックの中からモンスターボールを相棒の数の分、提出させられた。

 

 

 

 

さーて。ここまでは完全にあの日からの予測通り。

この先も上手く行けば問題ないんだけども、な。……まぁ、せいぜい気張りますか。


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