うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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演出のためではありますが、おそらく改行が酷いので
納得行かない方はブラウザバックと言わず、窓からPCを投げ捨ててください。







37話  えぇぇ

 

 

一体俺はこの状況をどうしたらよいのだろう……本気で悩んでしまう。

あのディグダ一匹だけでも、キモい意味でいつも手を焼いていたのに

よりにもよってマジで増殖しやがった……お前等一体何者だ。いやどう考えてもディグダか。

 

 

タイヤキをお店で頼んで、こげたタイヤキが渡された位どうしようもない気分だ。

 

 

しかもこいつらはこいつらでさー。

【いかがなされたのだ、我らが主殿】とか語ってくるしよー。

何律儀に主君への誓いとかやってやがんだ。エビフライぶつけんぞこの野郎。

 

 

 

 

pipipipip

 

 

 

「───ぁん?」

 

例の如くポケズ(ポケモン図鑑)からアラートが聴こえてくる。

あれー? 元ディグダも元ヒロインも「ア゛ァ?#」……ドレディアさんも

終わったはずなのになんでまだアラートが鳴るのだ?

 

「ネクストねぇ……」

 

画面を見る限りは『 NEXT[>[> 』と表示されており

まだ何か情報が残っている事を示しているわけだが……

残っているのなんて、もう───ってことはッ?!

 

「──……まさかッ、ヒンバス関連かッ!?」

「ッグ!?」

 

いやいや、まさかまさか。こいつはLv100で確定だろ!?

なんで新規情報が今更出てくるんだ!?

 

 

慌てて画面を勧めてみた。

 

 

 

ててててーん♪

 

 

 

ッ……!? まさか……本当にそうなのかッ!? 俺は思わず画面を凝視してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[> タツヤの レベルが

   15ていどに なった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「って俺かーーーーーーーーいッ!!!」

 

 

 

思わず、ずっこけながら突っ込んでしまった。

隣でまさかまさかと見ていたヒンバスもまさかのオチに

無能コイキング状態に陥った。ぴちぴちしてやがる。

 

おいテメェドレディアコノヤロウ横で笑ってんじゃねえwwww

あ、ダグドリさん達すいません起こしてもらっちゃって。

 

「ってちょっと待ておいッ! 俺のレベルが上がるとか、ポケモン扱いかよっ!!」

 

どういうことなの……

 

そして念のために他画面も見てみるモノの……これと言った更新情報はもう無い様だ。

 

「……他に更新情報はないか。

 まあ『しびれごな』とか覚えたら、それこそ本当にどうしようの世界だけどさぁ」

 

まさか俺のレベルが上がるとは思わなかった。ダリナンダアンダイッダイ……

 

「……あー、もしかしなくてもこれ、あれか」

 

ドンカラスぶっ倒したやつですねこれ。

その後にもコラッタとか未進化のやつ二匹ぐらい、蹴っとばしてぶちのめしたしなぁ。

ていうか元のレベルいくつだよ俺。そしてドンカラスはどの位のレベルだったんだよ。

 

前にズバット倒した時にはレベルなんて上がらなかったがなぁ。

あれはもしかしてLv7とかLv9のヤツで、経験地がたいした事なかったってことかな。

 

 

 

そしてレベルが上がったってのもあってなんか体がちょっと成長した感じがする。

たくましくなった系とでもいうのだろうか? 心持ち筋肉が若干付いたような……

でも俺のレベル上がってどないすんねん、この世界体育祭とかなんてないし。

 

「あーもう……なんか一気に疲れたわ……とりあえずポケセン戻るべ……」

 

 

何も準備せずにディグダ……ダグトリオ? と一緒にディグダのあなまで来たために

金とかも全てポケセンに置きっぱなしである。

このまま町に繰り出したところでやれる事は、もっさんをからかって遊ぶぐらいしかない。

 

いつものように俺はダグトリオ、名称ディグダONEの頭の上に乗っかる。

ドレディアさんはディグダTWOに、ヒンバスはディグダⅢに。

 

 

あれ、これ個人に専用機付いた感じじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───……。」

 

 

 

 

そして各々がダグ123に乗っかった状態で街を練り歩き、俺らはポケセンに到着した。

周りの目がやばかったが今更である。常識なんて捨てちまえよお前ら。楽になるぜ?

 

昨日の襲撃にして今日の進化騒ぎ……何かするのも面倒だったが

食べるご飯に手を抜くなんぞ、俺の選択肢には存在しない。

買い置いていた材料を台所で調理し、全員で食べた。

ディグダが分裂しやがったため、買い置き食材は全部なくなるが

まあ、あまり認めたくないが新しい家族だしな……差別をするわけにはいかない。

もしディグダの性格を受け継いでんなら、そこまで金が掛からないのもおそらく同じことだろうし。

 

途中でもっさんが俺の部屋で寝てたはずのサンドを連れて一緒に食堂に下りて来た。

そういえばサンドはいつの間に俺のベッドからいなくなっていたのだろう。

 

俺等が食堂で食ってる飯を見て、俺が作ったもんだと説明したらまた若干へこまれたあと

分けて欲しいといわれたので御代わり分をまわす。

ドレディアさんがゴネて(ry、だがサンドが一緒だと強く出れないようである。

さすがは「私の子だからね」    (゜д゜)r<

 

 

「ん……さて、と」

 

一名この場に暗いモノを背負った子が居る。

大体予想は付いてっけど……慰めてやらんと、な。

 

 

 

 

俺に出歩くつもりが無いのもあり、今日は各自で自由行動にさせた。

一応述べておくがポケモンに自由行動をやらせるなんてのは、この世界では俺ぐらいである。

他の人はボールにしまったりして、個人行動を許すとまではしていない。

俺は基本、手持ちのこいつらの事動物とかそんな感じで見ていないので

同等の立場、立ち位置の存在として扱っている。

 

故に、基本的に他の人がやっていない事もよくやるようになっているのだ。

 

ドレディアさんはせっかくだから話が合うもっさんと一緒に。

ダグトリオは三匹揃って、一旦ディグダのあなに報告に行くそうだ。

 

 

何をだ?

 

 

で、残ってんのが。

 

「……。」

 

こいつなわけだが。

 

 

 

「よう、ヒンバス。どうした」

「ッ!?」

「別にそんなに驚く事もないだろ。俺の部屋なんだから俺が帰ってきて当たり前だ」

「グ。」

 

返事にも覇気が全く感じられない。普段は優しい感じの雰囲気で応答してくれるんだがね。

 

「なぁヒンバスよ。ちょっと一緒に波止場にでも行こうや」

「……。」

 

目を瞑って否定の意思を出すヒンバス。

 

 

 

 

 

もちろんしったこっちゃねー。

 

「はーい行くぞー。返事は YES か はい か OK しか認めませーん」

「ッグ!? グーーーーッ!!」

 

 

Lv100のじたばたを繰り出すヒンバス。

だがしかしLv15に進化した俺には、痛いやめて落ち着けこの野郎。

いくらHPMAXでもいてーっつーの。

 

「お前……いくらなんでも一応の主人に攻撃はないんじゃねえ?」

「ッ────」

 

言うとぴたりと収まった。

……やはり、前の持ち主の事はまだまだトラウマか。

上の発言から、ヒンバスは先を勝手に予想して……自分の不都合な事ばかり妄想した結果

じたばたするのをやめてしまったのだろう。

 

「よっと」

「───グ……」

 

【本当にそんな気分ではないのですが……】という感じに意思を返してくるが

構わずヒンバスを俺の頭に載せ、出発準備を整える。

 

 

「二人っきりの時なんぞ滅多になかったんだし、たまにゃあ付き合えよ」

「…………グ」

 

うむうむ、そうこなきゃな。

俺はサントアンヌ号でパクった『あれ』を持って、部屋を出た。

 

 

 

 

そうして俺達は、波止場までやってきた。ここはヒンバスを釣り上げた付近である。

 

「ここに来るのは2、3週間ぶり位かねー」

「グー」

 

【そうですね】と返してくるヒンバス。『笑っていいとも』かこのやろー。

 

 

海の向こうからやってくる潮風が涼しげに俺らを撫でていく。

季節柄とても気持ちが良い風だ。まあ部屋帰ったら風呂入るの確定だけどさ。

潮風ってしばらく浴びてるとべとつくんだぜ。やってらんねー。

 

 

 

「……んで? 何悩んでんだ?」

「ッグ!?」

 

こっちを見上げてくるヒンバス。

俺はあえてそれ以上何も言わずに見つめ続けるが……やはり、目を逸らされた。

 

「言い当てて欲しいのか? お前、俺の事舐めすぎだろう」

「───。」

 

ヒンバスは俺のあまりの物言いに無言になってしまった。

色んな感情が渦巻いてんだろうなぁ。俺には経験がないからわからんけど……ね。

 

「……グ」

 

その鳴き声を皮切りに、魚クンの瞳との会話でしかないが

ヒンバスはとつとつと語りだした───

 

 

【私は……あの場での皆がうらやましかったのです。

 全員が全員、レベルという概念が凄まじく上がり……

 果てはご主人様までレベルがあがってしまい……】

 

うん、大丈夫。それは俺も予想外すぎた。

RPGじゃねーんだぞ。俺が今居るここは現実だバカヤロー。

 

【その上、ディグダさんはついに進化をしてしまいました……

 ご主人様には思うところがあるかもしれませんが……私から見たら、やはりそれは眩しすぎた】

「うん、そーか」

 

眩しい云々ってのは、もちろん進化の際に発する発光量の話ではない。

 

 

だって こいつは Lv100だから。

 

その光を、自分で発する事は……無理だから。

 

 

【何故私はこのような身になってしまったのでしょう。

 何故私はこのような身にされてしまったのでしょう。

 どうして私はこのような状況になってしまったのでしょう。

 ───……私は、何故こんなにも……弱いのでしょう】

「…………。」

 

……まあ、弱いって所は認めないでもない。

 

多分だが、多分の話だが。

このパーティーでの、ヒンバスの現状であるLV100の利点であったはずの

周りと比べてのステータスのぶっ飛び具合も既にそれほどではなくなっているはずだ。

 

ドレディアさんは一気にLvが31にまで上がり、なおかつ彼女は努力値が完全に振られていた。

まだ見ていないが、おそらくヒンバスの数値は大きく上回っているだろう。

 

ダグトリオはおそらくステータス自体は全部平均的かもだが

持ち主が俺である限り、戦闘においてそのステータスは全て跳ね上がる。

目に見える数字が少なくても、戦闘になれば

ダグトリオはドレディアさんより活躍する可能性もあるのだ。

 

そしてその二人は……つい最近まで、本当につい最近まで

ヒンバスが修行に付き合っていた、格下の存在───

 

この状況で劣等感が芽生えないのなら、生き物として失格な気すらしてしまう。

 

【この状況で私が出来る事などあるのですか?!

 今の状況で私に出来る事とは一体なんなのですか?!

 私は───もう、要らない存在なのですか……!?】

 

完全に不安と焦燥のデフレスパイラルを起こすヒンバス。

その体の中に宿す負の念は、とても大きい。既にこちらに向ける瞳の中には涙が見える。

出来る事なら閲覧者諸君、「でも魚だろ」とか言わないで欲しい。

 

 

 

【私は───もう、野生に戻った方が良いのでしょうね……】

 

 

 

 

「なんでだ?」

 

 

 

 

俺は一言だけ添えた。

 

負のスパイラルに陥っているヒンバスは

いきなりの発言にこちらに顔を向け、驚いた瞳で俺を見た。

 

「お前は確かにお前自身がこのパーティーに要らないと思ったんだろうさ。

 ───聴くが、俺がいつお前なんぞ要らんと言った?」

【ッ!! ─────……】

 

そう。

 

言っていない。

 

そして。

 

「俺はお前と初めて逢った時に言ったはずだ───」

 

 

 

 

───お前が、俺を必要とする限り。

────俺も、お前を必要としよう。

 

 

 

「お前にとって、俺は必要としない存在か?」

【で、でも───】

「───実は、な」

 

俺は、お前をまだ必要としている。

だから、本来なら……墓場に持っていかねばならない事を、お前に伝えよう。

 

「俺はお前が進化出来る方法に心当たりがある」

【ッッッ!?!?】

 

ヒンバスの目が驚愕の色を浮かべて剥き出しにされる。

 

……気持ちはわからんでもない。客観的に考えれば、似たような形はいくらでも考えられる。

 

 

───利き腕を事故で切断せざるを得なかった人が居たとしよう。

その人が絶望を浮かべている所に「君の腕を再度生やす方法がある」と言われたら

 

その人はどう思うだろうか。

 

───末期がんで余命半年と言われた人などいくらでもいるだろう。

その人が絶望を浮かべている所に「貴方を完全に治療出来る人がいる」と言われたら

 

その人はどう思うだろうか。

 

 

「但し。この方法を述べる前に───お前にはひとつ伝えなきゃならない事がある」

【……───。】

 

……話の流れでとてつもなく重要な事とわかったか。

さすがはヒンバス、俺のパーティーの保護者的存在と言ったところか。

 

【言ってください。私は、その方法が存在するなら……藁でも良い、(すが)りたい……】

「わかった。とても簡潔に伝えると、だ。俺は『この世界の人間じゃない』」

【─── は ? 】

 

ま、さすがにこれだけじゃ意味もわからんか。

 

「もうちょっと詳しく言うと、だ。

 俺にとってのこの世界は、前に送った人生の中で……ゲームとして存在していた世界だ」

【そ、そんなバカなッ!?】

 

……言わんとした事にはまだ気付けてないか。

どうやらヒンバスは【もしそうだとしたら私達までゲームの一部か!?】と

そんなことを思ったんだろうな。

 

「まあそこはある意味どうでもいいんだ。

 実際俺の世界でもLv100から進化させる方法なんて

 あるにはあったが殆どのヤツは無理だったから」

【なら私の進化の方法だって無いに決まっているではないですかッ!!】

「言っただろう。あくまでも……心当たりがあるだけだ」

【ッ……!】

 

やはり突然見せてしまった蜘蛛の糸に、ヒンバスは我を見失っているらしい。

 

……あまりじらすのも良くないな。

要は、この世界の人間じゃないと言う事を伝えられれば良かっただけなのだ。

 

【よく考えれば心当たりはいくらでもあります……

 貴方が修練と呼んだあの修行の方法、技に……

 あの船上の戦いで取った貴方の戦法、指示は

 この世界では全て発想される事すらないものばかりだった───

 言い換えるなら、悪の組織ですらそこまでやらない方法ばかりでした。】

「そいつぁ有難い褒め言葉。俺ぁ合法の中なら……勝ちゃなんでもいいんだよ。

 勝てば官軍、───負ければ賊軍だ」

 

 

この真理はいつだって[俺]と言う存在をしっかり認識させてくれる。

これがなければ、俺は俺ですらない。

 

「さて、大体考えてもらえたわけだが……

 俺の居た世界ではな? ポケモンなんてのは一切いなかったんだ」

【はい……そんな世界が、あるのですね】

「でもって、ポケモン達が持っている力も借り受ける事が出来ない。

 当然の事だな。だって存在すらしてないんだからな」

 

むしろ俺らからしたらこの世界のほうが異常だ。

 

あっさりと体の作りやおそらく内臓までもがレベルやら石という概念であっさりと「進化」する。

どこのインベイダーであろうか。宇宙生物と言われたら素直に信じるレベルである。

 

「そして、そんな便利が存在がいないなら───

 当然人は、自力で歩かなければ発展も出来ない」

 

そう、現代日本は「人類」が自力で発展してきたからこそ

俺が生きていた平成の世まで繁栄していたのだ。

 

「その発展に関して、いろいろなものが調べ尽くされててな?

 中には同じ生物である「人間」をいじくり尽くして、データを取ったりもしたわけだ」

【なっ───!?】

 

よく考えりゃ残酷な世界だ。弱肉強食なんて遥かに劣る。

鬼畜外道の跋扈(ばっこ)していた世界なんだからな。ヒンバスもそこに気付いたからこその驚きだろう。

 

「さて、俺が心当たりがあるといったところは───ずばりこの、人間のデータだ」

【え……? 何故ヒンバスである私の進化に、

 貴方がいた世界だという人間のデータが関わるのですか……?】

 

素直な疑問を、ヒンバスはぶつけてくる。まあその疑問は当然といえば当然だな。

 

「俺が見た情報の中にな? 生物……もしかしたら人間だけかもしれないんだが。

 通常時は、全力と比べて30%の力しか出して生きていないって統計があったんだ。

 今話した『全力』ってのは、思いっきり走るとかそういった意味で発揮されるわけじゃない」

【───私にはまだ答えが見えません。続けてください。】

「要はさ。どれだけ全力で走っても。どれだけ頑張って戦っても。

 30%っていうリミッター、限界地点が設定されてたわけだ。

 残りの70%は生きているうちに殆ど出る事無く終わる」

【はい。】

 

 

さて、結論を述べよう。

 

「ヒンバス、お前はLv100だよな。なら俺は改めてお前に問いたい。

 それがお前の限界だと、誰が決めたんだ?」

【え……そんなのはこの世界の───】

「常識、だよな? 誰かに決められたわけではないんだろう?

 だったらさぁ、一体誰がヒンバスはLv101になれない、と決めた?」

【ッ!?】

 

まさかそんなところの発想か、という感じのヒンバス。

まぁ暴論すぎるのは理解している。だが───

 

「もう一度言おう。『誰が決めた?』

 だったら、今から101になれるかどうかを試してみるのも有りなんじゃないかって思ってな」

【───そんな、夢物語があるわけないじゃないですか……】

「やってみないとわからないし、多分今までこの世界でそうなったのは居なかったんだろう。

 なら───お前がこの世界の一番最初になればいい」

【───。】

 

もはや言葉すら出てこないヒンバス。

 

「お前も俺と一緒に居て常識なんてもんがカスなのは知っただろ。

 だったらやるだけやってみてから諦めろ。

 俺はここに手段を提示した。お前はお前で今、自分の中で限界を超えろ。

 見果てぬ夢なんだろう? 夢は───叶わない限り、悪夢のままなんだよ」

 

 

なれるわけもないのにずっと夢見る進化した姿。その姿には、自分は絶対に届かない。

 

 

 

これほどの悪夢が、他にどこにある。

 

 

「さて、ここにふしぎなアメがある」

【え……、そんな貴重品一体どこからっ!?】

「なんか船内の部屋に落ちてたからパクった」

【ぁ…………。】

 

こんな良い流れで、使うのが盗品ですみません。でも一番手っ取り早いのはこれなんだ。

 

「で、これをヒンバスに使おうとすると」

 

pin

 

[> つかっても こうかが ないよ

 

「と出るわけだ。ポケズではな」

【当たり前の事ですね】

「ではヒンバス、今だ。───今、この時を持って、己の限界を超えろ」

【ッ!? 今ですかっ?!】

「そうだ、今だ。

 ───今まで、お前はどれだけの理不尽に遭って来た?

 ────今まで、お前はどれだけの絶望に遭遇してきた?

 今この瞬間を持って、その負の連鎖を断ち切れ。

 ここに存在しているお前の限界はLv100なんかじゃないッッ!!」

 

 

俺も正直こんな方法が成功するとは思っていない。

だが、可能性はきっと、0ではない。だから───

 

「お前自身で進むしかないだろッ!

 もし駄目でも俺はお前を必要としてやるッ! だから───」

 

 

お前は、唯ひたすらに自分の壁をぶち壊せばいい。

 

 

「───だから、『お前』も今ここで『お前』を乗り越えろッッッ!!」

 

【───ッ!!! お願いしますッ!!】

 

そう言われ、俺はヒンバスの口にふしぎなアメを投げ入れた。

レベルを1上げられるなんて便利なアイテムを、こんな形で使う阿呆など居はしないだろう。

 

だが、俺はやってやる。

 

仲間のために。家族のために。消費するのなら───

 

 

 

 

これに勝る本望など……世界に存在しない。

 

 

 

 

 

そして───

 

 

 

 

 

ててててーん♪

 

 

 

 

 

あの音が、なった。

 

 

 

 

 


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