うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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43話 理不尽

 

 

 

とりあえず轢き潰れた気絶研究員を縄でふん縛り、事情を話して警察に回収してもらう。

ええ、あんな場所に警察が居るなんてのは流石にご都合主義すぎたので

面倒ですが引きずって警察まで連れて行きました。

 

しかし事情を説明するところで思わぬ苦労が発生。ミュウの取り扱いについてだ。

 

曰くこいつは友達であって、俺の手持ちではない。

つまりは表現的にイラつくがこいつは俺の所有物ではない。

さらには野生のポケモンであれば誰が回収しようと勝手、という内容だった。

挙句に捕まえようとしていた所を俺が邪魔したという形で俺がしょっぴかれかける。

 

俺がいくらこいつは友達だ、こいつを助けただけだと説明しても

婦警さんがその意見を一向に曲げようとしない。

 

仕方が無いのでこいつが幻のポケモンといわれている希少種で

人間の都合で生かすべきではないと説明したら

 

「そんなのは子供の都合でしょう」

「だったらあんたは伝承で伝えられるようなポケモンが友達になった時に

 同じ目に遭っても黙ってられんのかよッッ!!」

「その子のより良い生活環境を整えてあげるためでしょう? 喜んで同意するわよ」

 

どうやら本気でそう思っているらしく話にならない。

 

だが俺はこう考えている。

 

確かに研究施設に預けた場合、生態などが解明されてより過ごしやすくなるのかもしれない。

 

だが一匹目として研究され、犠牲になるのは最初のミュウだ。

薬品などを注射され、突っ込まれ飲まされ、色々と実験もされるだろう。

その後に、人にまともな感情を持てるとは考えられない。

 

その研究の結果、後に発見されるかすらわからないミュウのためになろうとも

今、俺の友達であるミュウは……こいつだけなのだ。

他の知らんミュウのために、何故こいつが犠牲にならなければならないのか。

 

 

確かに俺の危惧は予想でしかないかもしれない。

だが、あまりにもこの世界の大人の暴論が気に食わなかった。あの研究員だけじゃなかったのだ。

この婦警までそうだというなら他の大人もそうである可能性が高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で。

 

俺は今その警察署で拘留されてます。

 

 

 

 

 

ごめん、イラついてどうしようもなかったからミュウ含め超暴れさせた。盛大に。

 

 

 

「子供の持論なめてんじゃねぇぞオラアアァァァァァーーーーーーーッッ!!!!」

「ディァァァァァァァアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーッッ!!」

『ッ!! ッ!! ッ!!』

「ミュミュミュミュミュミュミュミュミュミュミューーーーーーッッ!!!」

 

 

といった感じである。ミロカロスは既に荒事担当ではないのでしまっといた。

 

具体的に述べるとドレディアさんが受付の長机を引っぺがし振り回し。

ダグトリオがタイルをぶち抜いて地面でもごもごしまくり。

そしてぶち抜いて出た破片やら土の塊を蹴り飛ばしまくり。

ついでに引き連れてきた研究員も蹴り飛ばしまくり。

ミュウに至ってはサイコパワー全力全壊である。誤字にあらず。

攻撃性ポルターガイストと化した観葉植物やらボールペンやらコピー機やらで

警察は一気に騒がしい状況を通り越して1階受付フロアが半壊に。

 

 

 

正直に言おう。

流石に反省してます。

 

いや、マジでな?

 

確かにミュウは大切な友達なんだけどもな。

俺が居た前世も警察の不祥事とか、日本に留まらず外国ですら凄まじかったよ?

でも暴れた後で考えたが、この婦警以外は

少なくとも「その時」は真面目に職務を遂行していた訳である。

そして婦警も少なくとも「不祥事を起こした」訳ではない。

俺は、個人の意見に反発してその人の職場をぶっ壊すというあるまじき行為に及んでしまったのだ。

 

俺はその瞬間不祥事をしているかどうかすらわからない状況で

考えもなしに子供の癇癪で許されると思い、盛大に暴れてしまったのである。

 

だからといって暴れたのはさすがにやりすぎた。

厨返しにすらなっていない上に「目には目を」の論を通り越し「目には死を」になっている。

……大人ぶっていても頭ん中は全然ガキだったらしい。

 

そんなわけ今数日、檻の中という扱いを受けてしまい投獄されている。

 

「……みんなすまん。さっき抑えてたのもあって、我慢し切れなかった……」

「ディーアッ!!」

『ッbbb』

「ミュィ~♪」

「♪♪♪」

 

しっかり反省してその意を伝えたが、逆に激励されてしまった。

ミュウとミロカロスに至っては巻きついてくる始末である。

 

【あそこで激昂しなかったら俺らの主人じゃねえ!!】

【忠義を果たすに十分なお人柄と再確認致しました×3】

【大丈夫だよ、君がやってなきゃ僕があの警察署丸ごとぶっ壊してたから♪】

【ご主人様~♪】

 

という感じだった。

 

君らなんかドレディアさんのクレイジーな性格伝播(でんぱ)してねえ?

 

 

 

 

あとついでに言うと……

 

此処に来るまでに水上に叩き落したトレーナーからもやっぱり苦情が届いていたらしく……

そこの点でも警察の方に迷惑をかけてしまった。拘留期間2日が3日に延びてしまいました。

 

「目と目が合ったらしっかり戦わないと駄目でしょうっ」

 

との事。

 

めんでーんだよその常識。

 

 

 

 

まあそんな経緯がありまして。

やっとこさ拘留を解かれた俺らですこんにちわ。

 

拘留されていた時に感じた現実と違う事は

 

・親に連絡が入れられていない

・ポケモンセンターのほうにも彼らを拘留する

 

という事が伝えられていた事だろうか。なんか親切設計だ。

多分親に連絡に関しては子供でも旅に出まくってるからだろうな。

入れたところで遠距離過ぎて来れない事のが多いと言う事だろう。

 

 (ポケモンセンター)の件は、旅荷物の処遇といったところだろうか。

 

 

出る前にお騒がせ以上のことをやってしまった後ろめたさもあり

受付フロアに出て暴れた事を謝罪して回った。

結構慰められはした。やっぱりわかってくれる人はわかってくれるらしい。

まあ許してくれた理由が

 

・君並に暴れる人もたまにいる

・少し昔にこの警察署を人間一人で更地に変えた伝説の人が居る

・半壊になったところでポケモンが頑張ってくれれば2日で元通り

・その日は休日だったので問題なし

 

という感じで、大丈夫かよシオン警察隊と思った。

特に最後。他人事過ぎだろ。

 

 

んで晴れて警察署から出てきた。シャバの空気うめぇー。

俺の手持ち+αも、全員すっきりした上で空気がうまいらしい。

ま、あんな狭ッ苦しい所に入れられてたら仕方が無いよな。

 

ダグトリオはいつも通りすぎる程にトーテムポールになり

しっかりと直射日光を浴びて気持ち良いらしい。

目を閉じて実に可愛らしい。顔だけ。

ドレディアさんなんぞ特攻と特防が上がっている気すらする。

 

あ、そうそう、ちなみにミュウは今回の件でも俺の手持ちじゃありません。

一緒に暴れた=こいつのポケモンだ、と思われたらしく

事情すら聞かれずに纏めてぶち込まれた。

事情を知っていた婦警は速攻で気絶していたため、まあわからんでもない対応だ。

 

 

「まあとりあえずは一旦 (ポケモンセンター)に戻ろっか。

 そこから動く動かないは別にしても、ひとまず腰を落ち着けよう」

「ディァー!」

『ッddd』

「ミュゥー」

「ホ~ァ~」

 

いい感じの同意だがダグトリオ、テメーは駄目だ。

トーテムポール状態から全員が腰から上をこちらに向かせ

親指をおったてている図は軽くホラーである。きめぇ。

 

 

 

 

「育て屋を始めようと思う」

『……ディホァミュ? ッ?』

 

突然すぎる展開だったか。説明が必要そうだ。

 

「まず今回の件で思ったことだが、暴れた事はやりすぎだったと反省してる。

 でも警察側の対応が俺にとって理不尽すぎたからその感情が(たぎ)った……これはOKか?」

『(コクコク)』×6

 

うむ。ここは良いか。

 

「そしてそこから考えるからに、俺と同じように理不尽な目に遭った人が居た可能性もあるわけだ」

『(うんうん)』×6

 

目の前に居たわけではない。だが、駆け入った一人である俺があんな対応をされた。

 

だったら他にも居てもおかしくは無い。

 

前世では少なくとも、ストーカーの被害が悪化し

警察に対応されず殺されてしまった人が後を立たなかった。

そしてこの世界ではポケモンという合法の防衛手段が存在する。

その防衛手段を、俺ら流で鍛え上げるという内容で

育て屋という結論に俺は至ったのである。

 

 

「で、原点を考えれば理不尽ってのは

 自分に防衛力があれば回避される事も、結構あるんではないかと俺は思った。

 今回で言えば、ミュウが悪いわけではないけど

 焦っちまって流されて、気絶されて……ってわけだろう?」

「ミュ~……」

「責めちまう形になって悪いな。

 でも現状はしっかり認識しておかないと後で躓くから……」

 

 

そう、結論に至った最終理由はここだ。

全体的に伝説に残るポケモンや幻といわれるポケモン達は

自衛能力が凄まじく高いからこそ人間に囚われ難いのではないかと思う。

その点で考えてこのミュウはあの一瞬だけだとしても、防衛を忘れる程度に自衛力が低かったのだ。

 

 

「んで、今回育て屋をするから

 ミュウはそれに引っ付いて俺らから自衛手段を学んじまえばいい」

「!」

 

と、言うわけだ。育て屋自体は正直、モノのついで。

だが現実に育て屋という人が居るのであれば、それは金になると言う事である。

んでもってミュウを鍛え上げている間は金にならない。

 

つまりは生活費が、さくせん:ガンガン減ろうぜ になる事を意味する。

 

んだったら合同訓練的な形にして、参加する事になるポケモンの持ち主から

合理的に生活費を頂いてしまえば、俺は金が減らずミュウは鍛えられ

ついでに預けた人のポケモンまで鍛えられ、と一石三鳥である。

 

 

「今回はミュウを育てていく方向性になるから

 他の皆は教官的な役割になる。心構えをしっかり持ってくれよ?」

「ディッ!!」

『ッ!!!』

「ホ、ホァ……」

 

ミロカロスが心配そうに俺に声を掛けてくる。

ま、既に戦闘能力もないし仕方が無い心配だな。

 

だがっ!!

 

「心配ご無用ッッ!!ミロカロスについては代案を考えてあるッ!!」

「ホァァ?!」

「お前には訓練が終わった後のみんなの慰安に回ってもらう!

 歌ってよし、タオル持ってきてよし、見てよしの三重奏だ!!」

「~~~~~~~~♪♪♪」

 

褒められたと受け取ったのかミロカロスは俺に巻きついてきた。

はっはっは、くるしゅうないくるしゅうない。

巻きつき加減もちゃんと調整出来ている、成長してるなー。

俺も頭を撫で返しておいた。

 

 

現在俺の所持金は大体75,000円よりちょっと下だ。

この金が減らぬうちに色々取り揃えてしまおう!!

 

 

あとは訓練地の拠点の確保だな。

それに客とかどうやって集めたらいいのかね、看板とか立ててもいいのかな。

 

 

無計画で行き当たりばったりだが、目的が何も無いよりは全然良い。

反省するところはしっかり反省して、その後はきっちり前を向いて歩こう。

 

 

 

 

 

 

「俺達の明日はこれからだッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 




         ~蜜柑~





右肘先生の次回作にはコタツが必要です。

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