うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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シオンタウン交流 ドレディアさん

 

シオンの街へと帰ってきたはいいのだが……

広場での件でまた騒がしくなるかもしれない可能性を嫌い、今日も全員に自由行動でOKと伝えた。

 

褒められるのは確かに嬉しい事なのだが、下地は自分が訓練したとはいえ

弾いている曲は結局のところ、単なる丸パクリなものばかりである。

 

色々異世界に行ったーだのなんだのって作品はネットでも見ていたが、いつも思ってたんだよ。

お前らその能力、ただ単に特典として貰い受けただけだってのに

なんで努力してきて強くなって、その特典に一歩及ばず負けた人達を平然と見下せるの? と。

 

そういう気持ちと似たような物で、自分が作詞作曲した曲ならまだしも……パクリじゃなぁ。

褒められてるのは結局のところ俺ではなく、その作り上げた人への賞賛なわけだ。

 

故に俺が歌って騒がれてとして……それが再度発生するのは非常にめんどくせぇ。

どのぐらいめんどくさいかっていうと、外食に完全に慣れた一人暮らしの人が

一時間以上掛けて自炊を行うぐらいにめんどくせぇ。

 

ついでに言えばこれの後片付けが一番めんどくせぇわけでござるよ。

 

ま、そんなわけで……金稼ぎにも育て屋の客を引っ張る場所に行けないため

それらの認知度が薄まるまで、適当にブラブラしておこうと思ったのである。

 

「ディー……ア……?」

「……ん? どしたドレディアさん」

 

何も持たずに外に出歩いては、買い食いも出来ないので

色々と外出準備をしているところに、食堂で飯を食い続けていたドレディアさんが

飯を食って満足したのか、部屋まで戻ってきたようで扉から体を半分出して俺に問いかけてくる。

 

どうやら【何やってんだ?】と聞きたい様だ。

 

「さっき食堂でも言ったけど、今日はみんな自由行動だ。

 別に部屋で寝ててもいいし、なんかするってんならしてきても良いよ。

 俺は適当にどっかぶらついてくるから、外に出る準備してんのさ」

「アー……」

 

俺の返答に納得が行ったのか、【そうかー】と声を出すドレディアさん。

 

そんな感じに小銭を持って、服も着替え終ったので部屋を……───

 

 

くいっ、くいっ

 

 

「ん?」

 

 なんか服の後ろを引っ張られて……

 

「って、ドレディアさん……どしたん? なんか食いたいもんで金が足りないとかか?」

「アー。ドレ、ドレディァー」

 

ん……【たまにゃァ一緒にどっか行こうぜ】とな……?

 

珍しい事もあるもんだなぁ。いつもだったら我先にと飯屋か屋台に突っ込むのに。

加えて俺が居ると金額やらなんやらを制限するため、彼女からすれば鬱陶しいはずなんだが。

 

「別に一緒に来るってんなら構わんけど……

 俺、基本的に食い歩きとかしないぞ? 一緒に居ても暇になると思うが」

「ディァ」

 

ふーむ……【別にそれでもいいわ】と来たか。

一体何を考えてるのかわからんが、別に良いってんならまあいいか。

言質も取ったし、約束を反故にする様なら封印処理しちまえばいいし。

 

「ま、そんなら一緒にどっか行くか。ついといでードレディアさん」

「! ドレ~ディアッ!」

 

別に構わんという旨を伝えた所、ドレディアさんは何故か満面の笑みで了承を返してきた。

まあ喜んでくれるってんなら俺も別に悪い気はせんから全然問題無いんだが……

それだけでここまで喜ぶとは、一体どうしたのだろうか?

 

 

 

 

 

あぁ……そういえば……

 

 

仲間が出来てからは、二人きりになる事もなかったなぁ……───

 

 

 

 

 

 

「ディ~ァ~♪ ディアッディァ~♪」

「コラコラ、あんまし離れないでくれよ」

「ドレーディァッ」

 

(ひら)けた平原の10m先ぐらいを、ドレディアさんはハイテンションで飛び跳ねる。

対して俺はのんびりと歩んでいるため、どうしても距離に幅が出来る。

 

街中を歩くってのも普通すぎるので、現在はシオンの西へ訪れていた。

そこかしこでトレーナー達がシノギを削りあっている。

 

一方俺は戦う気もさらっさら無いので、先程のやり取りの通り二人だけで歩いている。

今バトルに発展したらドレディアさんで6タテしなければならない状況だ。

二人っきりで出かけるって事自体もかなり珍しいのだが

いつもは用意周到な俺が、こんな無防備で出歩くのも俺自身で珍しいと思ってしまう。

 

「ディーァ! ディァッ!」

「はいはい、わかったわかった。そんな急かさないでくれよ」

「~~~~♪」

 

【ほれ早く! 早く!】と手招きするドレディアさんに苦笑しながら声を掛ける。

見る限り、ドレディアさんの表情はとても笑顔であり

まあ、たまには無防備なのもいいかなとーと思ってしまったり。

 

って、あ。

 

「───……ッ!」

 

油断しながら歩いてしまったためか、そこら辺に居たトレーナーと目が逢ってしまう。

目と目が合うー♪ ってちゃうわ。そんなん美しいお姉さんとだけでお願いします。

 

「ンッフッフッフ……! 目が合いおったな、小僧ッ!

 さぁポケモンバトルだ……おぬしの手持ち、いかほどか見せてもらうぞッ!」

 

そんな風に絡んで来てしまったギャンブラーのおっさん。

序盤だと1000円オーバー所持しているこの人達はご馳走だった覚えがあるが

今、生身で接するとただの禿げ上がったオヤジでしかない。

 

そんなわけでやり過ごすために……お、あの人でいいか。俺の後ろに居るし。

 

「って、ちょ、小僧ッどこへ行くんだッ!」

 

ステステステーとおっさんを無視して、絶賛バトってる最中の人に話しかける。

 

「ねえねえお兄さん、なんかあそこのギャンブラーさんがお兄さんとバトルしたいって」

「……ハァッ? いや、俺バトル中なんだけど」

「でも、あのギャンブラーさん『目が合いおったな!』とか言ってましたよ。

 じゃあ俺はコレで失礼しますねー」

「ったく、人がバトルしてる最中にとはなんと非常識な……───」

 

仲介も果たしたので、俺はとっととドレディアさんと先へ……

 

「って違うわぁーーーッッ!! 小僧お前何考えてんだッ!!

 俺とバトルすんのはお前に決まっとろーがッッ!

 なんで俺がいきなり非常識扱いされんきゃならんのだッ!!」

「えーでも俺の後ろにこのお兄さん居たし、この人見てんのかと」

「いやそんなんどう考えても目ぇ合ってないだろうがッ。

 完全にバトル中じゃねーか! 人の邪魔してんじゃねぇってのッ!」

 

なんぞ俺と遭遇する人の中では珍しく正論で切り返してくるハゲさん。

いやんもう私面倒ではちきれちゃうわッ!

 

横で見てみたらドレディアさんが【俺等の邪魔すんじゃねーよ#】って

ハゲさんにすっげーメンチ切ってるし。

 

「ふふふふ……お前の手持ちであろうこの草のお嬢はやる気満々らしいぞ?

 さぁ、改めて俺とバトルだッ! あ、君すまんねなんか邪魔したみたいで」

「ああ、いや別に構わんすよ。よっしゃニャースみだれひっかきッ!」

 

俺と再び相対して、俺が巻き込んだお兄さんを元のバトルに戻しつつ

ドレディアさんとガチで張り合おうとするハゲさん。

 

どうでもいいけど完全に意味合い間違ってるよ。

バトルをやる気満々ってか、邪魔するんじゃねぇって感じで殺る気満々ですよ?

 

「さぁ、俺の相棒よ……あの草のお嬢に一泡吹かせてやれぃッ!

 いでよッ! ロコンッ!」

 

そしてハゲさんは俺との間にボールを投げ、その中からはロコンが出てきた。

 

「キューキャールルゥッッ!」

「ねぇ、ハゲさん」

「あん? どうした小僧」

「この子ちょうだい。もふもふしてて可愛い」

「キャルルゥッ?!」

「ア゛ァ゛ッ!?」

 

全員が全員それぞれの反応を返してくる。

いやだってロコン可愛いやん。進化したら可愛いが優雅になるし。

 

んー、でもまあ俺はどっちかってーとキュウコンの方が好きかな。

知ってるか? Pixivでのポケモンで最初に投稿された絵って

ピカチュウでもなんでもなく、キュウコンなんだぜ。

 

まぁとりあえず目の前の現実から目を背けても状況は余り変わらん。

ここまで発展しちゃったらバトルするしかないよなぁ。

 

「やれやれ、仕方ねぇか……悪いけどドレディアさんちゃっちゃとやっちゃって」

「…………#」

 

あれ、なんで俺がジド目で見られているんだろう。

今日のドレディアさんは、なんか久しぶりにバイオレンスまっしぐらだぞ。

 

「あー……まぁ、やりすぎん様にね」

「……ディ~ァ~」

 

【ぁ゛ーまったくもう……】とでも言いたげに俺に溜息とヤレヤレって動作をする緑の子。

ぼくが なにを したと いうんだー。

 

「ふん、仲睦まじい事だなッ!

 先手必勝だロコンッ、火の粉をお見舞いしてやれいっ!」

「キューキャッッ!!」

 

ハゲさんがロコンに対して命令を飛ばし

ロコンはそれに習い『くさタイプ』の弱点である『ほのおタイプ』で攻撃してきた。

 

「ドレディアさーん」

「ァー?」

「そのまま突っ切ってロコン捕まえてー」

「ァーィ」

 

正直火の粉なんて、現実でやられてみればただのへちょい火のカスである。

こんなんでくさが燃えるわけねーだろう常識的に考えて。

 

俺の指令をひょいひょい聞いて、ひのこの中を普通にズンズン歩くドレディアさん。

その図に流石のギャンブラーも驚愕を隠し切れないらしい。

 

いや、だって俺等も火の粉が掛かった程度じゃ

ちょっとだけ「アチッ!」ってなるだけだろ。そんなんダメージにもならん。

うちの自慢の子を火で倒したいならバハムートでも連れてこい。

 

「キューッ!? キューキャーォォンッ!!」

「ディー。」

「ああ、はいはい。んじゃドレディアさんそのロコンを地面に押し付けて寝転がらせてー」

「ァー。」

「んで、次はその背中にドレディアさんが馬乗りになってー」

「ァーィ。」

 

俺の指示に従い、組み伏せたロコンの体勢を次々と変えて行くドレディアさん。

一応はプロレス技の範囲で指令を飛ばしている。

技が体に染み付いている形でとられているのか、俺の指示をテキパキとこなしていく。

 

「ちょ、ちょおまっ、うちのロコンに何しやがる気だ!?」

「何って、技に決まってんじゃん。

 あ、そんで膝にロコンの両腕を乗せてだねー」

「ァィァィ。」

「キュッ……!?」

「んで、アゴを持ってギュイィィーーーって引っ張ってー」

「ディー、ァァァアアアーーーーッッ!」

「……ッ!? ッ?! ッーーーー!!」

 

そして発動、伝家の宝刀キャメルクラッチ。

喰らうロコンはひとたまりも無く、息が凄くしづらい状況になってしまっている。

 

「んで、さらにギュィィィィイーーーって」

「ァァァァーーーーーッッ!!」

「────ッ! ーーーーーーーーーーッッ!!」

「あ、あぁぁぁあーッ! や、やめてぇっ! やめたげてぇっ!」

 

見知らぬ技を仕掛けられてはいるが、見た目以上にダメージがやばそうなのか

ロコンの持ち主であるハゲさんは大慌てである。

 

んーまああのドレディアさんの力で3,4回も引っ張れば1発K.Oだよな。

さすがにもう無理だろ、あのロコン。

 

「もういいよー、ドレディアさん」

「ディーァー」

 

そうして組み伏せていたロコンから全て極まった状態を解除して

ポテポテポテ、とこちらにドレディアさんは戻ってきた。

 

一方やられていたロコンは堪ったものではなかったらしく、完全にグロッキー入ってる。

うーん、ドレディアさんやはり強し。

 

「お、ォォォォォォ……ロ、ロコォーーン……なんと、なんという……」

「んじゃ、俺等これで失礼しますー」

「ディァー」ノシ

「あっ、ちょ待てコラッ!! 俺の手持ちはまだ居るぞッ!!」

「えーまだやるんすかー。俺等も目的とかないけどバトルやるために来てるわけじゃないから

 とっとと別のトコ行きたいんですけどー」

 

あんだけコテンパンにして差し上げたのに、ハゲさんはまだやる気らしい。

そのやる気、是非あんたのハゲた毛根に注いで上げてくださいよ。

 

「う、うるせぇッ! 一度始まった勝負は完全に終わるまで負けじゃねぇッ!!」

「はぁ……ったくもう、ドレディアさんちょっと下がってて」

「……ディ?」

 

【なんだなんだ? 何するんだ?】という視線を背中から受けつつ

ハゲさんが次のポケモンを繰り出そうと懐からモンスターボールを取り出し

投げる準備に入ったところで俺は突っ立ってた場所からダッシュで飛び出した。

 

「行けぇーリザー……───ッドッ?!」

 

突然駆け出してきた俺に気付き、ボールを投げる手がつるっと滑るハゲさん。

無論手から離れ堕ちたボールはちょこっとスポーンと浮いて、俺の方へ。

 

そしてそこへタイミングを合わせて俺は───

 

 

「───ボールを相手のゴールにシュゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!」

 

 

すぺぇーーーーーん

 

 

こちらに飛んできたリザードのモンスターボールを、綺麗にシュートして差し上げた。

ボールは子供の脚力とはいえ、高々と上の方へすっ飛んでいった。

 

「───超ッッ! エキサイティンッッッッ!!」

「っちょ、おいコラお前何やってやがるッ!」

 

指でGJな握りこぶしを差し出した俺に、ハゲさんは非難の声を上げるが知った事ではない。

俺はゆっくりと蹴り放ったモンスターボールの方へと指を差し、ハゲさんもそちらを見る。

 

 

遥か高くまで舞い上がったモンスターボールから、リザードが出てくる。

しかしその場は地面の無い上空。リザードさん真ッ逆さまに落下。

その高さ、大体20~30mぐらいだろうか。悲鳴を上げながら落下速度が加速して

 

 

べちゃっと、地面に落ちた。

 

 

「あ、あああああ、ああああああああああああーーーーーー!!!」

 

 

その様子を逐一見ていたハゲさんは、大慌てでリザードのところへ走っていった。

 

「いってらっしゃーい。んじゃ俺等も行こうかドレディアさん」

「ディ~ァー♪」

 

ドレディアさんに【結構やるじゃねえかッ!】と賞賛を送られながら、俺はその場を後にした。

賞金? 別に要らんよ金に困ってねーし。

 

 

 

んーしかし、やはり俺の相棒っつったら……やっぱドレディアさんだなぁ。

ちゃんと行動もわかってくれてるし、認めてもくれるから全てにおいてやりやすい。

 

 

「じゃ、今日は原っぱにでも行って……のんびり二人で昼寝でもしよっか」

「ドレ~ディァ~♪」

 

その旨の快諾を得て、今後の予定が決まった。

今日は二人でのんびりと、そよ風でも浴びながら寝て過ごそう。

 

 

 

 

これからもよろしくな、ドレディアさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 部屋に置かれたまんまのポケモン図鑑

 

 

ててててーん♪

タツヤの レベルが 17 ていどに なった!

 

side out

 

 

 

 

 





リア充もげろ。


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