うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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がんばって作ったミロカロスの話にほとんど反応がなかった。
もう帰っていいですか。


49話 育て屋!

 

 

ギャラドス進化事件から、数日が過ぎ去った。

事件が起きた現場では(おびただ)しい数の犠牲者が───

 

我々はこれ以上の犠牲を出さないために、更なる調査を

 

「ディ#」

 

べちっ

 

怒られてしまった。

 

「おいドレディアちゃんコラ。日常生活に変化は必要なんだぞ。

 時代は常にバイオレンスを求めているんだ」

 

べちっ

 

あふんっ

 

「へーへー、わかりましたよーだ。

 悪ふざけしてないで朝食でも作ってきますさかい、まっとりーな」

「ディァ♪」

「ハバネロフルコースにしておくね」

「アッ!?」

 

 

ひとしきりドレディアさんの辛味悶絶姿を堪能した後、全員集合して本日の予定を決めていく。

 

レッドさんは町に案内した時点で別れておいた。

原作の流れならポケモンタワーで今頃グリーンさんのケツを掘っている事だろう。

 

「んじゃ、多分無駄に終わるだろうけど……今日が育て屋予約の最終日だ。

 期待しすぎても碌な事は無いのが世の常だから、希望を持たずに頑張ろう」

「ディァー……」

「ホーァ……」

『………。』

「ミュィ~」

 

 

全員に『後ろ向き過ぎるぞ』と突っ込まれる。うるせーこちとら本気で悲しいんじゃい。

愛情の裏返しは無関心って言葉知らねーのか貴様ら。

世間様に無関心やられまくって俺のガラスのハートはテーブルから落ちる寸前ですよ?

 

 

はーぁ……まあどうせラストだ、気張らず行くべきである。

そうさ、俺はブロントさんの様に謙虚なナイトなのだ。

最初から居るべきではないと思っていることから後々の精神安定剤系の効果はばつ牛ンだ。

 

 

 

 

そんなわけで本日のラストDAYを無事に過ごすため、再度警察署へ来ている。

 

「こんにちわー、路上許可証お願いしますー」

「あら、今日で三度目かしら? こんにちわ」

「良く覚えてるもんですね、お姉さんも」

「そりゃぁ……普通路上許可証なんて取りに来ないし。

 そもそも知らない子ばかりだからね、それと比較しちゃうと君は偉いわぁ~」

 

ちなみに、確率は少ないながらも何かしら問題が起こったことはある、との事。

まぁ面倒くさい思いしたくねえし、その保険のための500円ってんなら安いもんさ。

 

「多分今日で最後になります」

「あらもう逢えなくなっちゃうんだ、残念」

「だって、来る人来る人俺が育て屋やる事に疑念しか持たないんですもん」

「君だってそこらの10歳の子が育て屋やります~^^って言ってたら信用しないでしょ?」

「まぁそうっすけどね~……」

 

そういうわけで許可証持って広場へGO to HELL。

 

 

そうして広場に着いたのだが……今日は何か人が疎らだな。

若干少ない程度だが、目に付く程度に少ない。まあこんなんならすぐに諦めも付く。

 

「ミュウ、看板頼むわー」

「ミュ~ウ」

 

この前と同じく、同人誌の売り子の如く看板を持たせてふよふよさせておく。

実に愛らしい見た目である。看板娘とはこの事だな。

 

 

「兄さん兄さん……ちょっといいですかい、へへへ……」

「え、な、なんだ……?」

 

暇だったのでそこら辺を歩いていたボーイスカウトを捕まえてみた。

 

「ジムリーダーのカスミ×エリカさんのエッチな本はいら──」

 

ごっす。

 

「あぎょぁっ?!」

「ディァ#」

「ホァァ#」

 

あかんうちの女帝にバレてしまった! こうなったら……!

 

「ならば俺×ボーイスカウト君でどうだっ!!」

「ディッ!?///」

「ホ、ホァッ!!///」

『─────!!///』

 

予想外の三匹まで釣れたっ!! やべえ!!

 

「え、えっと、その……

 カスミさんと、エリカさんのえっちな本があるなら……ぜ、ぜひっ……!!」

「おおう、わけぇのう兄ちゃん。実はそんなもんはないっ!!」

「え、ええーーー!!」

 

 

 

 

そんなこんなで暇つぶしにボーイスカウトの兄ちゃん捕まえた。

彼はイワヤマトンネルを通ってこちらに来たらしい。

名をカズ君と言うそうである。子供が出来たら『かずのこ』だね★ミ

 

「ほぉ~、君も面白い旅してるんだねぇ……

 コイキングにパンツを食わせてギャラドス、飯を食わせたら新種……

 ていうか、パンツってなんなんだ本当に」

「いや、それは本当俺も知りたいですわ。

 ちらっと気になって後ろ振り向いたらギャラドスになってたんすもん。

 しかもLv8でなってたみたいなんですよね」

「うっそ?! コイキングがギャラドスにってLv20程度からでしょ?!」

 

言うとやはり驚くカズさん。本当どういうことなんだよ。

 

「そちらは何か面白い事とかはありました?」

「んー、やべぇwwwwって思ったのはさっき通ったイワヤマトンネルであったよ」

「ほほう! そいつぁ是非聞いてみたいっすね!」

「うん、まああそこって土地柄やまおとこさん達の聖地なんだわ。

 んでもってそのうちの一人がさ、少年にばっかり勝負を吹っかけてたんだよね」

「うわ、それカツアゲみたいなもんじゃないっすか」

「そう、そう思うよね? でも実は違ったんだ!」

「え、なにが。」

「その人しばらく観察してたんだけど、戦うたびにハァハァ言ってたんだわwww」

「まさかの下ネタwwwwwww薔薇の園に帰れwwwwwww」

 

ちょっと通報してきたほうがよくね? イワヤマトンネルに犯罪者がいまーすって。

 

なんか後ろでドレディアさんとミロカロスがやたらほっとしているがどうしたのだろう。

 

「いやー、あれはやばかったね。もう付近を通っただけでやばいなにかが感じられた」

「ちなみに勝敗は?」

「やまおとこさん全敗wwwwwwwwww」

「オウフwwwwwwwオウフwwwwwwwwww」

 

ドMでしたwwwww いやぁ世の中面白ぇなぁ、暇しねえわこの世界。

 

「そいやハナダからイワヤマに行ったんすよね? ハナダのジムリーダーとか強かったっすか?」

「んーそうでもなかったかなぁ。とりあえず俺の場合はミルタンクが手持ちにいたってのもあったし

 適当にゾンビ戦術やってたら普通に潰せたよ」

「あー格闘技使えるようなのはさすがにいなさそうだなぁあそこ」

 

原作でもたまに属性が違う攻撃が飛んできてびっくりする事はある。

ナゾノクサで挑んでトサキントに突っつかれて絶望したのは俺だけじゃねえべや。

 

「カズさんてバッヂいくつ持ってんすか?」

「ん、カスミさんにもらったバッヂで5個目だねー。

 あとはクチバシティとグレン島行って、トキワシティは開くまで待機かな」

「ああ、サカキさんな……あの人忙しいからなー」

 

悪の組織運営してるし。

 

「え、知り合い?!」

「ああ、俺の母親の弟子なんですよあの人。その伝で俺も軽く顔を逢わせた位はした事あるんです」

「あ、あの最強のジムリーダーが、師事……!? すごい母親なんだな……」

「ああ、本当にやべえっすよ。

 なんせ本人曰く神話クラスのポケモンとマブダチっつってましたから」

「それはないっしょwwwww」

「ですよねーwwww」

 

あそこまでぶっ飛んでてもさすがにそれはあるまい。

神話クラスってなると、ディアパルにレシゼクとアルセウスか?

ユクシーとかアグノムも伝説に入るのかなぁ。

 

ああ、そういえば教えておこうか。

 

「クチバのバッヂが残ってんでしたっけ、そういえば」

「ん、ああ。そうだな。まあ近くにディグダのあながあるらしいし……

 そこでディグダ一匹ゲットして、鍛えて挑もうと思ってるよ」

「あーそれやめたほういいっすよ」

「……え? なんで? 地面の攻撃って電気の唯一の弱点だよね」

「街出る前に聞いた噂なんですけど……マチスさんのライチュウ今とんでもない事になってんすよね。

 ディグダ五匹とダグトリオ一匹持参したガチ対策PT、6タテしたらしいんすよ」

「           」

 

(゜д゜)←まさにこんな顔のカズさん。

とりあえずボルティの事をライチュウと呼んでいるのは

この場でマチスさんが知り合いと言うことを説明していないからである。

なんで名前知ってんのとか聞かれても説明めんどくせーし。

 

「え、ちょ……それ、マジ?!」

「ええ、なんでも俺に習った内容の応用で、地面に潜ったところをもぐら叩きを想定して

 出てきた瞬間にメガトンパンチぶっぱしてK.Oし続けたそうなんです」

「なんだそれやべえwwwwマジやべえwwww

 

 ……って、ちょっと待てぃ! 『俺に習った内容』?!」

「え、はい……って、あ」

 

やばい、めんどくさがって説明しなかったところが変なところで漏れた。

ていうかそこらの人も立ち止まるな。俺は変な事は一切言ってへん。

 

「その面子を一匹で6タテしたってのはマジ?」

「街に行けばわかると思います。人の噂は盾で防ぎきれませんしね」

「君が育てたってのは……どういうこと?」

「その時、俺のダグトリオ……ああ、その時はディグダだったんすけどね。

 こいつが果てしなく弱かったもんだから、戦える状態にするために技とか教えてたんですよ。

 昔はやばかったっすよー、こいつ」

「───///」

 

恥ずかしがってもじもじしながら、右手を後頭部に宛てて照れるダグONE。

その苦労話を聞き及んでいるのか、横からTWOとⅢがやさしく肩にを叩いてた。

 

「……どのぐらいやばかったか、聴いてもいい?」

「ええ。まずこいつ技覚えてなかったんですよね、一切。何も。」

「うそんwwwwww」

「いやこれがマジなんすわ。でもって必然わるあがきしか出せない状態になるじゃないっすか」

「まあ当たり前だよなぁ、そんで?」

「ディグダ自体もHPが低いわけで。

 ついでに言うと俺のディグダ、ってかダグトリオは二回攻撃出来るんすよ」

「うぉ、なんだその地味なチート」

「まあまあ、話はまだ終わってません」

 

 

ふふふ、本題はここからなのだ。

あの時は本当に逆の意味で笑いが込み上げてきてたからな。

 

 

「まず相手はキャタピーのLv4程度だったんすけどね」

「うん」

「使う技がわるあがきでしょう? ダメージ与えたらもちろん反動あるわけっすよ」

「そだな、そんで?」

「攻撃で反動ダメージ。キャタピーの体当たりでダメージ。

 そして二回目の攻撃は必然カウンター気味に入ります」

「───まさかっ」

「ええ、その通りです。

 合計のダメージでディグダ自身がキャタピー倒しきれなくて自分がK.Oなんです」

「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

やっぱツボに入るよなこれwwwww

二回攻撃なんて反則級の特性持ってんのにそれのせいで倒れるとかwwwwwwwww

 

 

「やっべ、ひっさびさにマジで腹いてぇわぁ。何そのオチ、最高じゃんよ」

「ありがとうございますwwwww

 まあそんなわけでディグダ鍛える必要性があったんすよねー」

「なるほどなー。んでマチスさんに教えたってのは?」

「ええ、街で偶然ぶつかって、その際になくしたものをその場で見つけてあげたんですけど

 その時になんか、よくわかんないんすけど捕捉されたみたいで」

「ほほう」

「んで、訓練に行くって時に街中で再度偶然会いましてね」

「うん」

「勝手についてきました」

「仕事しろよwwwwwwwwwwwwww」

 

 

やっぱ俺は正しいんだな。普通そういう突っ込み来るよね。

 

 

「で、俺が教える内容をマチスさんが横から聞いてて

 VOLTYっていうんですけどね? その相棒のライチュウが

 マチスさん相手に俺と同じような訓練を積み始めまして」

「その訓練の内容ってのも気になるけど……って、まさか……?」

「本人曰くそこから負け知らずになったって、おでん屋で言ってました」

「うわぁ、なんかおでん屋ってところがすっげーリアリティあるわぁ」

 

あの時のおでんおいしかったなー。

 

ん、後ろでドレディアさんが青筋立ててる。【しらねえぞ#】だと?

何言ってんだよ、みんなで食べに行ったじゃないか。ドレディアさん抜きで。

 

 

「んー……そこまでの話ってなると嘘って事もないよな……? 妙に現実感溢れまくってるし」

「別に嘘つく必要もないですしねー」

「失礼……ちょっとよろしいですかな?」

『ん』

 

俺とカズさんは2人して話しかけられたほうへ振り向く。なんか執事然とした人が立ってた。

さっき一瞬注目した人は殆ど立ち去っていたが、この人は残ったのだろうか。

 

「えーと、俺っすか?」

「ええ、そうです……今のお話は本当なのでしょうか?」

「どの辺りがですか? まあどこら辺だとしても全部マジっすけど」

「……少し、確認をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「な、何をっすか?」

「我々の伝を使ってマチス殿本人に連絡を取って、その事実を確認させて頂きたいのですが……」

「あーそっち方面での確認か、そっちなら構いませんよー。

 あの人やたらフランクだしすぐ会話の許可は出ると思います」

「───ッ! では……少々お時間を……」

 

俺がホラを吹いていると思ったから本人に確認を取りたかったのかな。

別に時間なんぞいくらでもあるけど、何がしたいんだこのキリっとした執事さんは。

 

「な、なぁ……?」

「ん、なんすかカズさん」

「俺、あの人テレビで見たことあるんだけど……」

「あれ、マジっすか。変態紳士とかそっち系?」

「それは流石に失礼すぎるだろwwww いや、多分間違いないと思うんだけど……」

「どんな番組っすか? 司会者で執事ってのはないと思うけど……」

「あの人、ジョウトのほうから行けるバトルフロンティアの施設のマスター代理じゃね?」

 

 

 

 

       えっ。 

 

 

 

 

( ゜д゜)       (    )←執事の後頭部

 

 

 

                     えっ。

 

 

 

 

あれ? そういえばなんか色合いをどっかで見た事が……

 

 

 

 

「───はい、はい。それは事実……である、と……

 つかぬ事をお伺いしますが───……ボルティ?! 確かにさっきそう言って……!

 あ、いや、はい、ええ、わかりました……ご協力感謝いたしますぞ、マチス殿。

 え? そこに居るなら少し会話させてくれ? ええ、構いませんが……」

 

 

会話結構駄々漏れだから聞こえてきてんだけどもう話終わりかけてんのかよ。

やはり執事は格が違った。事務やスケジュール管理のプロフェッショナルである。

 

「申し訳ありません、タツヤ殿でよろしかったでしょうか?」

「あれ? 俺、名前名乗って……って、あー。その電話のマチスさんに聞いたのか」

「ええ……会話が全て本当だとは流石に思ってませんでしたが……。

 ともあれ、マチス殿が『代わって頂きたい』と」

「あ、はい。わかりましたー」

 

そうして電話を受け取った。1,2週間ぶりってところかなー。

 

「えっと……ちょっと俺もいいっすか?」

「おや、わたくしでございますか?」

「あ……あの……間違ってたら申し訳ないんすけど……

 もしかして……コクランさん、でしょーか」

「ええ、そうでございますぞ。わたしの名をご存知とは、なかなか見聞が広いのでございますな」

「す、すいません!! サインくださいっ!!」

「わ、わたくしのでございますか?」

 

 

なんか後ろでうっせーけどいいや、とりあえず俺は久しぶりのマチスさんだ。

 

 

「どもー。マチスさんっすかー?」

『オォウ!! リアリィね!! リトルボーイね!!

 ヴォイスでわかるヨー!! アイムファイーンセンキュー!エンドユー?』

 

おー懐かしいわぁ、数日しか経ってないのに。マチスさんはいつもパワフルだなぁ。

 

「あはは、アイムファインセンキュー。

 そっちも元気そうっすねー、テンション全く変わってないじゃないっすか」

『アハーハー! ミーもチルドレンじゃないからネー!!

 色々チェンジ出来るシーズンはセピアカラーinフォトショップネー!』

「写真の中の思い出って感じっすかぁ。まだまだ若いんだから頑張りましょうよマチスさん」

『オゥ、ワンカウント取られたネー。そっちはどうなノー? 今どこネー』

「シオンタウンっすー。ちょっとあの時の訓練の効果もあったし

 育て屋でもやってみよーかなーって」

『そっちにアカネミカンMossanのガールチームがゴーしてたけどちゃんと逢えたノー?』

「え? あの人らこっち来てんすか? 見かけてないっすけど」

『オーゥ、そーなのネー。アンダスターンド。

 もしこっちに帰って来たら伝えてもオーケィ?』

「あー別に構わんっすよー。俺は俺で好き勝手させてもらいますけど」

 

協調性がないって言われそうだけど

俺は俺でドレディアさんを強くするって目的もあるからなー。

 

『オッケーィ! センキューネ! 落ち着いたらまたクチバにカミングネー!

 でもジムにチャレンジは勘弁ネー!!』

「わかりましたー! 全力全壊で立ち向かわせてもらいますっ!!」

『やめて言ウテルヤンケーwwww でもー、待ってるーヨ!!」

「あいっす、いつかまた寄らせてもらいますね」

『ワクテカして待ってるヨー!! シーユーアゲーィン!!』

「うっす、またねー」

 

そうして通話を切った。

やはり懐かしい知故との会話は自然と盛り上がってしまうものだなぁ。

電話代大丈夫かな、結構話し込んじゃったけど。

 

「えーと、さっき名前聴こえてたんすけどコクランさんですよね?

 電話終わりましたので、これお返しします」

「あ、はい、了解致しましたぞ」

 

手渡しで電話を返した。

 

「んで、一体どうしたんですか?

 別にマチスさんに確認が必要な何かがあるとは思いませんけど……」

「いえ……そちらの可愛いポケモンさんが持っていらっしゃるように

 育て屋をやろうとしていらっしゃるのですよね?」

「あー。そういえば」

 

話の内容が育て屋とか全く関係無いからすっかり忘れてた。

今の時点でもミュウがふわふわして看板を所持していらっしゃいました。忘れててゴメン。

 

「そ、そういえばって……」

「いやー全然お客さん来てくんねーもんだから

 正直もう諦めて、この子の訓練自費でやろうとしてたんっすよねー」

「……まあ、わからんでもねーと思うけど。

 どっからどう見たってただのお子ちゃまだもんよ、君」

「んまぁ、なんて失礼なんざんしょこのお兄さんは。

 こうなったらあなたがえっちな本を欲しがってたってカスミさんに伝え───」

「や、やめて!? なにその拷問っ?!」

 

 

うるせーもう決定事項だバカヤロー。

絶対いつかチクってやる。

 

 

「では、今の時点ではご予約も何も入っていないと言う事でよろしいのでしょうか?」

「ん、そうっすけど……それが何か?」

「いや、君気付いておこうや……

 この話の流れは「それならばわたくしのポケモンを……」って流れじゃんよ」

 

ん、確かに言われて見ればそんな流れ?!

 

「カズさん天才じゃね?!」

「あ、はははは……まあそういうわけなのですが……

 しかしですね、もし同意して頂けるのであればなのですが」

「え? なんすか同意って」

「ジョウトのバトルフロンティアの方にお越し頂いて

 施設で管理されてるポケモン達の指導に当たって頂ければと」

「あ、そういうのは無しで」

「えっ?! 君、これ超大抜擢だぞ……?! それ断っちゃうのか……!」

「そ、そうですね。わたくしどもとしましても、かなり譲歩した高待遇なのですが……」

「ちなみに月3ヶ月、そちらで管理、訓練した場合の給料は?」

「ええ、大体の概算ではございますが……おそらくは月額470万程度は御用意出来るかと……」

「ッブーーーーーーーーーーーーー」

「ああ、やっぱそれはやめておきますわ」

 

 

しらけた。

なんでこの世界ってこんなのばっかなんだろう。

 

 

「うぉぉぉぉおおおおい!!! なんでっ?! よ、470円じゃないんだぞっ?! 470万だぞっ?!

 買いたい放題の天国じゃねーか!! うちのおとんだって会社の月の給料22万だぞ?!」

「結構良い給料もらってんじゃないっすか、カズさんのお父さん。

 そんだけ稼ぐのにすっげー頑張ったんでしょうね」

「え、いや……うちのおとん、コクランさん程にバトル強いわけでもねーし……」

「でも立派にカズさんちっていう名前の立派な一個の城、守ってんじゃないっすか」

「あ……。」

「ほう……。」

 

カズさんは呆然として……コクランさんは俺を見定めるように、一声を出していた。

 

「会社なんて嫌な事のが良い事より沢山ある所なんですよ?

 仕事が大好きって人もいますけど、そんなの社会人の一割二割居たら奇跡と思いますよ。

 それを我慢しながら、月額22万稼ぎ出せるまで頑張ってんじゃないっすか。

 俺はそのお父さん、尊敬出来ますね。すっげー立派と思います」

「い、いや……ありがとう?」

「はは、どういたしまして」

 

まあ470万ってのはでけぇわな。金額だけ聞けば恐ろしい程の高待遇だ。

てか本当、10歳児にそんな金を渡そうとするんじゃねえ。

 

「ま、ともあれですね。俺もこうやって旅しながら街歩いてるわけですけど」

 

「ディッ!」

「ミュッ!」

 

「こんぐらいの身を維持するのなんて、10日間で考えても5,000円もあれば十分食っていけるんですよ」

 

「ホアァ~♪」

『ッbbb』

 

「そんな状態を作り上げてこれたのに

 横ッツラからいきなり価値観完全にぶっ壊される金額を提示されても、困るんですよね」

「……。」

「そ、そういう考えも出来るのか……」

「ミュ~……」

 

ん……俺の心の中、ミュウに若干覗かれたか。

まあ嘘偽りの無い話だし、思い出すの嫌かもだが勘弁してくれな、ミュウ。

 

「そんで価値観ぶっ壊されて。それが終わったら二度と手に入らないような大金を持って。

 なのに人間の欲望っつーのは限りなく肥大するんですよ。小さくならないんですよね。

 使ってもなくならねーwwwwって勘違いして

 遠い未来に身の破滅を巻き起こすのは目に見えてます。

 そういう高待遇は全てに置いて上を目指せる人がやれば良いと思いますよ。

 

 

 ───俺は、まだ自分を見失いたくないので」

 

 

ミュウはこの育て屋を立ち上げる前に

見事なまでの自分勝手な人間の欲望に一瞬振り回されたしな……

すまねえなホント、嫌な事思い出させちまって。

 

 

「…………了解致しました。

 タツヤ殿、出過ぎた真似をしでかしてしまい、誠に申し訳ありませぬ」

「や、謝らんでくださいコクランさん。

 それよりもこんな10歳児の戯言に付き合わせてすみません」

「いえいえ、わたくし感服致しました……そこまで考えた上での即答拒否とは思わず。

 あなたよりも人生を長く過ごしているのに、恥ずかしい限りですぞ」

「そうか……そういう考え方なのか……

 確かにそんな、月に俺の親父が年間で稼ぐお金なんて手に入れたら

 俺も価値観全部変わっちまうかも、な……」

 

そんな風に二人は口にし、一人ごちている。

 

はー、でもこれで客なし決定かー。

まぁテキトーにミュウ鍛え上げて、次はタマムシにでも───

 

 

 

 

 

「───バトルフロンティアの件は了解致しました。

 しかし、わたくし個人の育成依頼であるならお引き受け頂けるのですよね?」

「……え?」

 

コクランさんの……依頼?

 

「おや、お引き受け頂けないのでしょうかな?」

「いや……そりゃこっちとしても嬉しいっすけど……どうなるかわかりませんよ?

 そもそもブレーン代理なんて務めてる人のポケモン凌駕する育成なんて───」

「しかし既にクチバジムリーダーのポケモンを、無双化させるまでに至らせた証明がありましたぞ?」

 

あれ、ゲームじゃジムリーダーとフロンティアブレーンって格が違わないか?

グラットンソードry

 

「まあ……別に無理に断る理由もありませんけど」

「ではわたくしめの手持ちから、お願いしたく存じます」

「じゃ、じゃあ俺も!!」

「え」

 

なんでカズさんまで?

 

「だ、だってよ!! その育成過程に俺のポケモン突っ込んだらさ!

 それってコクランさんのポケモンと俺のポケモンが同期って事になるよな?!」

「あーまあ……そうなんじゃないっすか?」

「そ、それにフロンティアブレーンが認めた育成の手腕だろっ!?

 だったら、俺のポケモンもすっげー強くなるかもしんねえだろッッ!!」

「期待されても困りますよ? だって育てるのは所詮ガキだし」

 

つーか育ててるはずの俺が野試合で負けてることあるし。

正直強くなるってーよりその持ち主の腕だべ。

 

「でもいいんだっ! 頼むっ!」

「あ、はい。わかりました。まあ俺も適度に頑張りますよ」

 

どうしても俺に預けたいらしく、頭まで下げられてしまった。

まぁ期待されて気が悪くなる事もない。

俺は俺の方向性で問題なくやりゃいいってことだろう。

 

 

「んじゃとりあえずお互いに1匹ずつ預かるってーことで……

 あ、そうだ。お二人とも格闘タイプの子って居ませんか?

 多分俺の育て方、格闘タイプだとやたら強くなるかもしんないっす」

「格闘……タイプですか?」

「一応俺も一匹持ってっけど……なんでだ?」

「んー図鑑見れば一発なんですけど……

 ドレディアさんのタイプ、わかります? あとダグトリオも」

「え? ええっと……ドレディアはくさタイプで……ダグトリオはじめんタイプでございますな」

「そうっすよね、コクランさん。俺もそれで間違いないと思います」

 

 

ところがどっこい。

 

 

「この二人、何故かその二つに加えてかくとうタイプ持ちなんです」

『ハァーーーーーッ?!』

 

その驚く二人のカルチャーショックが気持ちよいのか、草姫と地面の騎士はふんぞり返る。

 

いつもの如く図鑑をぽちぽちーっと。

ドレディアさんはマジで外見だけなら完全にお嬢様だからな。むしろ見てわかる人が居たら怖い。

 

「はい」

「……うわ、マジだ……。突然変異とかついてる……」

「こ、これは……さすがに……わたくしどもも予想外でした……」

「んで、この二人と……今は戦闘力もなくなっちまったけど

 このミロカロスの前身のヒンバスで、サントアンヌ号って船でも無双してます」

「ふ、船で無双ですか……って、いや、ちょっと待ってください。

 ……船、船……───サントアンヌ号ッ?!」

「うわっ、なんっすかどうしたんすかコクランさん!?」

「俺もびっくりした……どしたんすか、コクランさん」

 

上がカズさんで下が俺です。

 

いきなり思い出したかのようにコクランさんに詰め寄られた。

男に詰め寄られるのは気持ちのいいモンではない。やや心臓に悪いぞコノヤロー。

 

「サントアンヌ号で無双って……まさか……あのロケット団が船を占拠した事件を……

 たった一人で人質を解放しつつロケット団を殲滅したと言うのはタツヤ殿の事ですかッ?!」

「あー……なんか語弊があるみたいですけど……

 俺は別に無双してませんよ。やったのは彼女達です。

 俺がしたのなんて、体勢崩したドンカラスを生身でボコっただけですよ」

『          』

 

 

あれ、なんか口をぽかーんと空けて2人が固まってしまった。おーい大丈夫かー。

 

 

「な、生身って……嘘ですよね……?」

「え、いや割とマジなんすけど。これがその時使ったもんっす」

 

そうしてメリケンサックを取り出す。

 

「……これは一体?」

「……なんだぁ? これ。投げるのか?」

「いえ、こうやって───」

 

下に向けて拳を打ち下ろす。

 

 

ガシュッ!!!

 

 

メリケンサックはそこそこの勢いで土を抉った。

 

『ッ……!?』

 

二人がその威力に再び驚いている。まあこっちの世界、こんな武器ってなさそうだしなー……

ポケモン頼りにも程がある。もっと肉食え肉。

 

「まあ、これで胸ぶん殴り続けて内臓イカれさせました」

「こ、コクランさん……どう思いますか……?」

「───これは、間違いなく事実ですね。ドンカラスといえば耐久力はそこまで高くない。

 この威力で殴り続ければ、骨はへし折れ中の肉まで衝撃が届きます」

「う、わ……」

「ちょっとー。ドン引きせんといてやー。結構死ぬ気で頑張ったんやからさー」

 

 

 

またヒソヒソ話を再開させちまいやがった。

 

俺一人でぽつねんとされて寂しいのでミロカロスに乗っかって遊んでよう。

お、ドレディアさんも上るかね。

オイダグTWO。何かに付けてミロカロスの頭の上に乗ろうとすんな。

ミュウはドレディアさんにくっついている。君ら微妙なところで仲いいねぇ。

 

 

ん、なんかコクランさんがこちらに振り向いた。

カズさんもなんか決心した感じだのう。

 

 

「あなたの発言、全て信頼させて頂きましょう。

 わたくしめの相棒の事、よろしくお願い致します」

「お、俺のも頼むな? でも出来れば常識からは逸脱させないでくれな」

「しらね」

「おいwwwwwwwwwwww」

 

 

常識なんざカスだ! 予想外からの攻撃が全てを制す!!

 

 

「えーと、とりあえず一週間コースで考えてます。

 その、えーと……お金が、ですね?」

「ええ、おいくらになるのでしょうか?」

「えーと、一人……15,000円ほど頂きたいなーと……」

「うっ……育て屋の相場よっかはかなり高いな。なんでだ?」

 

 

そう。ゲームなら10Lv上がっても1100円にしかならないが

この世界では育て屋に1回預けるとなると1匹で10000円は行く。

そうだとしても5000円の差異は、基本的に旅をしているトレーナーからすると

どうしても無視出来ない金額でなのである。

 

まあ多分育て屋さんの生活とかも掛かってるからなんだろーなぁ。

俺だってこれから生活かかるから問題はなかろう。

 

「では、カズ殿。ここはわたくしめが代金をお持ち致しましょう」

「……えっ?! いやそんな悪いっすよ! 確かに厳しいっすけど!!」

「いえいえ、良いのですよ。『同期』でしょう?」

「───ッ!」

 

その言葉に、カズさんは胸いっぱいになったかのように

一瞬硬直し、その後静かにコクランさんに対して頭を下げた。

 

「───ありがとうございます、先輩。ご好意に、甘えさせて頂きます」

「ふふふ、先輩、ですか。バトルキャッスルではよく聞いた単語ですが……

 こういう場で言われるのも、なかなか良いものなのですね」

「へ、へへへ……!」

 

うーむ、二人して嬉しそうだ。俺蚊帳の外じゃねえか。

 

「なぁドレディアさん、ミロカロス」

「ディ?」

「ホァ?」

「カズ×コクランってどうよ」

 

 

 

 

 

 

俺は二人にぶん殴られて犬神家状態になってしまった。

地面の中冷てぇーーwwwうひょーwwww

 

 

 

なんかすいません。

 

 

 

 

「じゃあ、俺のポケモンからはこいつを預けるわ。

 今もエース並に頑張ってもらってるからな……一週間後、期待させてもらうぜ?」

 

というわけで紹介されたのはダゲキだった。あの格闘家っぽいやつな。

 

「ピィョルォォォォン」

 

ダゲキから挨拶をされた。鳴き声カン高ぇwwwwww

 

「しかし偶然と言うのもあるものなのですね……

 まさか、わたくしの本来の活動拠点である地方にいるポケモンをこちらで見るとは……」

 

ああ、カトレアさんのお屋敷ってことだろうか?

なんか昔から世話してるようなイメージあるしなー。

住み始めて一年二年であの連携にはなるまいよ。

 

「と、いうわけで。わたくしからはこの子をお預けさせて頂きますぞ」

 

その場に現れたのはナゲキだった。あの格闘家ry

 

「ゥモン」

 

おっす。お前声低いな。

 

ふーむ……こいつら、か……おあつらえ向きに人型だし、色々教え込めるかな。

っと、そうそう。誠意のために先に伝えておこう。

 

 

「えーと今回、一人15,000円って高額を取りますけど

 その半額は使い切って、こいつらに良い飯食わせながら

 訓練に励んでもらうので、ご安心ください」

「ほほう……それは良い環境ですね。期待させて頂きますよ」

「うまい飯かぁ、何食わすんだ?」

「ああ、時間的にもそろそろ昼だしポケセンで俺が作りましょうか?

 大体俺の手作りを気合入れて食わすって感じッすから、丁度良いかと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コクランさんに専属コックとしてカトレア家に混ざらないかと言われた。

知らん。

 

 

 


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