うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

6 / 129
5話 ひでえ

と、言うわけで。

 

シン兄ちゃんとの勝負のために

俺とドレディアさんは、家の外に出てきた。

さすがに家の中でバトれる程、この世界の家は頑丈ではないのです。

 

 

 

 

 

 

「つーわけで初バトルー」

「ディーァ~」

 

パチパチパチ

適当に拍手してみた。もちろんそれを見る者など誰も居ない。

さて、シン兄ちゃんはまだ下りてきてないわけだが

ひとつだけドレディアさんに確認しておきたい事があったのだ。

 

「ねぇ、ドレディアさん率直にひとつだけ聞いていい?」

「ァー?」

「俺の指示聞く気ってある?」

「ディァ」

 

まあそーだよねぇ。うん

 

俺はさっきからドレディアさんとは会話が成り立っている。

その上で、瞳から見るドレディアさんの意思は。

 

【知らん。】

と言っていた。

 

「あい了解。好き勝手にやっちゃっていいよ。

 俺も元々ドレディアさんが言う事聴いてくれると思ってないし」

「ディ!!」

 

指示を聞かない旨を、快く快諾する俺。

そしてそれを聞き、胸を張って自信満々に俺にえばり散らすドレディアさん。

さすがクレイジー。そこに痺れる憧れるとでも言うと思ったか。

 

 

まあ、なんていうか実は出会った初期から

指示を飛ばす事に関しては諦めていたのでしたとさ。

 

あくまでも感覚だからわかってもらえないかもだが

最初にもらうポケモンってLv5でしょう。

Lv100とLv5じゃ殆どの場合勝負にならん。

つまりはLv5はヒヨコなわけで。

ジュウシマツ住職がニャーンって言っちゃうレベルだ。

 

 

変な雑念が混ざったが、それはとりあえずトイレに置いといて。

もらった時点で初めてトレーナーとなる主人公勢も

駆け出しって意味じゃ、貰うポケモン達と立場が一緒なわけでしょ?

 

この世界、具体的な数字では現れないが

レベル表記だけは数字が表現として使われる。

信頼率は88%と言われている位には高い。

稀にLv30程度という表記だったとしても

Lv50相当の動きをする子もいるにはいるらしいが、それはあくまでも例外。

大体はマシンで評価されたレベル程度の動きをするそうだ。

 

そして図鑑で見た限りドレディアさんはLv15程度とのこと。

明らかにひよっこじゃねえだろこれは。

『一緒に成長していくよ★』とかそういう話はゼロに近いと思っていた。

 

こんな地味な考察を帰り道がてらにしており

ならばせめて、ドレディアさんの酷すぎる無茶振り以外は

許容していこうと、マイナス方向で覚悟を決めていたのだ。

 

多分瞳の意思見る限り間違ってなかったし。

 

 

 

「や、お待たせ。少し時間かけちゃったかな?」

 

─────っと。

少し考え込んでいる間にシン兄ちゃんの準備が整ったらしい。

玄関からのんびりと歩いてきた。

 

「待たせてごめんね、ドレディアにタツヤ。

 とりあえずLv15に一番近い子だったからこの子にしたよ」

「まあボール見せられても俺にはわからないんですがね?」

「あはは、まあそうだね」

「(フンスフンス)」

 

ドレディアさんは【誰であろうがぶっとばす!!】という感じに

荒い息を巻いて右腕に相当する草をグリングリン回している。

 

「それじゃ、始めようかぁ~」

「わかった、それじゃドレディアさん頑張ってね」

「アーッ!!!」

 

気合入った返しなんだろうけど……

その言葉は文章面だけだと、明らかにやられフラグですよドレディアさん。

 

まぁそんなこともあるまいな。

いくらシン兄ちゃんのポケモンとはいえ

ドレディアさん明らかにぶっ飛んだ規格外だし。

どこぞの世界のジョンス・リーさんの如くフラグなんてぶち折るんだろう。

おそらくは───これからも。

 

「じゃ、俺はそっちの隅っこで見てるから自由にやっちゃって」

「……えっ? いや、タツヤ何言ってんの?」

「いや、なんかドレディアさんさ~……

 俺の指示聞く気なんざネェヨーっつってんだよね」

「─────へぇ。 そうか……そうなのか」

 

おぉぅ、シン兄ちゃんの顔が歪んだ笑みに……。

まさかドレディアさんをぶちのめしてしまうつもりだろうか。

出来る確信があるのか兄ちゃん?

 

当のドレディアさんはシン兄ちゃんの笑みに気づいていない。

シャドーボクシングの様な動きをして万全の体勢だ。

 

…………多分、ドレディアさんは俺をそばに置かなかった事を後悔するんだろうな。

あの笑みは……あの笑みを浮かべたシン兄ちゃんは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あはははは。

アハハハハハハハハハハハハ。

 

そうかそうか、うん、オッケーだ。

フフフフフフ、タツヤは悪くないな、アハハハハハハ。

 

 

ドレディア……、それじゃぁ駄目だよ?

全ての人にそれを適応させろと言える程、僕は傲慢じゃないつもりだけど……

それだけは、駄目だねぇ~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、楽しいなぁ。

愉快だよ、アッハッハ。

ドレディア……、タツヤが居なくとも

僕程度になら余裕で勝てる、と思ったんだね?

 

 

僕を、ナメたんだね?

 

 

 

 

良いだろう、多分今後のタツヤのためにもなる。

その長すぎるプライドの鼻っツラ……

 

 

 

こわして

あげるよ

 

 

 

 

 

 

「さぁ、始めようかぁ?フフフ」

「ドレーディァッ」

 

ドレディアさんはよほど自信満々なのか右手を上げて

人間で言えば指でちょいちょいとする感じで不敵な表情をしている。

 

さて、シン兄ちゃんは何を出すのか……

 

「選んだのが君でよかったよ、僕は後悔しなさそうだ……

 さぁ、行ってくれ───

 

 

 

 

 

 ────バタフリー!!」

 

ポコン。とボールが地面に放物線を描いて落ちる。

ぺかぁああん

 

「──フリィイイイイイ!!!」

 

見紛う事なきバタフリーだ。

俺も彼は良く知っている。まあアニメでだけどもね。

ガキの頃に見てたアニメってのは良く覚えてるもんだよねぇ。

 

ドレディアさんは【どいつが来たって同じ事だぜ!!】と言わんばかりに

臨戦態勢を取り始めた……あれ臨戦態勢なのかな、多分そうだろうな。

物凄い低姿勢で、まるでクラウチングスタートの様である。

 

 

ん……あれ?

バタフリー、バタフリー……彼って確か念力使ったよね。

うろ覚えだけどこれは間違いないし、見た限りでも

むしタイプかひこうタイプか、その念力からしてエスパーだよね。

確か飛行って、かくとうタイプの弱点じゃなかったっけ……

エスパー属性もかくとうの弱点だったはずだし……

じゃなきゃ初代のヤマブキシティだっけ? の道場、ナツメさんに

ジムリーダー権限取られてなかったはずだよね。

その手の発想で考えるんなら、くさってむしの主食だよな?

 

 

……まぁ、負けたなら負けたで別に良いか。

上には上が居るって知るのもいい機会だと思うよ、ドレディアさん。

 

ついでだからバタフリーの情報見せてもらうか。

 

簡略情報表示、っと。

pipipip

 

バタフリー Lv18程度

 

簡略過ぎだなぁ。

まあゲームでも人のポケモンで見れる情報なんて

HPバーとレベルと名前位だよね。ある意味現実的だ。

 

 

さて、ドレディアさんはどうするのか……

お、動い───って、うわスゲェなんだよあれッ!?

 

ドレディアさん、さっき表現したクラウチングから

なんとロケットの如く凄まじい速度でバタフリーに突っ込んでった!!

ロケットずつきじゃないよねあれ!?

 

っと、さすがにそれは無いっぽいな。

ブレる位早いけど腕振りかぶってんの見えた。

あれはドレインパンチかがんめんパンチかな。

 

 

「ッレディアァァァッッ!!!」

「バタフリー!!自分の位置にしびれごなを撒いた後に『跳べ』!!」

「ッリィイィイン!!」

 

おおぉ、あのバタフリーも負けてないな。

見事にシン兄ちゃんの指示通りに動き切った。

跳べって指示は上に行けって事だったのね。

 

おかげさまでうちのドレディアさんは攻撃が見事にスカった上に

しびれごな地帯に一瞬突っ込んでいる、あれは麻痺が入ったのかな?

 

 

あ、入ってるっぽい。なんか若干動きがゆらぁ~ってしてる。

 

って、ちょwwwwwドレディアさんなんで顔に傷あるのwwwww

 

あれかな、凄い勢いだったし飛び膝蹴りみたいな自爆判定受けたのか?

人間で言えばすりむけてる程度の汚れが付いている。

ダメージ的にもちょっとって感じだろうか。

 

一手目は完全にシン兄ちゃんのモンだな、さすがリーグ頂点に立った人だ。

自慢出来る兄貴である。キャーシンサマー

 

 

「ッレディァァァァ……」

「バタフリー、次はドレディアの周りを中距離で回転しながらだ!

 ねんりき!!」

「フリィィィ!!」

 

どうやらドレディアさんは麻痺しているせいでうまく動けないらしい。

その間にバタフリーはなかなかに素早い動きで

ドレディアさんを円の中心にしつつ動き回っている。

 

「アッ……!ァァァ゛ア゛ア゛ッッ!!」

 

そしてねんりきも直撃したらしい。

ドレディアさんが頭を抑えている。若干痛々しくなってきた。

って……

 

 

「あれ……?」

 

 

見間違いだろうか?なんか……

ドレディアさんにものっすげぇ黒いオーラみたいなのが見える。

顔も半分位、陰っている。そしてその陰っている部分から目が怪しく光っている。

イメージでしかないが背景からゴゴゴゴゴゴゴゴとか聞こえてきそうだ。

 

シン兄ちゃんに目を移してみると……どうやら見間違いではないようだ。

若干驚いているのが見える。

 

それでもそこまで動揺していないらしい。

家ではドレディアさんがバイオレンスな動きをする度に怖がってたのに……

そういえばうちの兄貴に限らず、この世界の住民は

大体の人がバトルジャンキーが若干混じっているんだっけか。

グリーンとかうざったいほど酷かったし。

 

 

 

 

「…………ッレ、ディ───」

「ん?」

「え?」

「……フリィ?」

 

麻痺状態のドレディアさんが、またゆらりと動く。

その動きはとても緩慢で───

 

 

 

 

 

 

「───ァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

黒いオーラを纏いつつ、呟いた後雄叫びを挙げた。

 

と思った次の瞬間。

 

 

ズドンッ!!

 

 

なんとドレディアさんはその叫んだ一瞬で

バタフリーとの距離をゼロまで持っていった!!

 

「ちょっ、嘘ぉーっ!?」

「んなぁ!?」

 

 

ガッシィッッ!!

 

「フリッ?!フリィイイィィィィッ!?」

 

ドレディアさんはその期を逃さず、喉輪の如く片腕でバタフリーの首を捕らえた!!

 

おいおいマジかよっ……!? 麻痺しててあの速度か!?

既に完全にドレディアさんの距離だ。

バタフリーももがいてはいるが…これは無理だ。

ドレディアさんは逃がす気なんてこれっぽっちもなさそうだ。

 

 

そしてドレディアさんは掴んだ勢いのまま、バタフリーを地面に押し倒し─────

 

 

「─────ァァァァァァ、

 ァァァァ ア ア ア ア ア ッ !!

 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーッッッ!!!」

 

完全に殺し切るために、あの技へと移行したっ!!

 

       ゴスッ!!  ゴスッ!!

 

「リ゛ッ、リ゛ィッ、フリ゛ィッ!」

 

 ゴスッ!!      ガスッ!!

    ゴッ!!         ゴスッ!!

 

 

バタフリーが苦悶の叫びを上げてもドレディアさんは一切力を抜かず

うまのりパンチの応酬は無慈悲に続いて行く。

 

 

「ばっ、バカなッ……!

 耐えろバタフリー!! 頼むッ!!

 耐えてくれぇーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 

「リ゛ッ……!リ゛ィ゛ッー…

 フ、リ゛ィッ……」

 

 

「ァァァ゛ア゛ア゛ァ゛ァァァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーッッッ」

 

うまのりパンチが完全な形で入り続けているっ……!

一切手加減が無い、ひとつひとつが凄まじい威力だ。

 

    ガスッ!!

            ゴスッ!!

 

ま、まだ入るんかっ!? いつ止まるんだあれ!!

 

 

 

 

 

「ッ……────────」

 

あ、止まった。

やってる最中に麻痺が発動したのか……?

もしくはバタフリーを倒し終わって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バタフリーねんりきッッ!!!」

「……

 

 

 ─────フ。

 

 

 

 リ゛イイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おおお、止まった一瞬でバタフリーがねんりきやりだした。

バタフリーの上に乗っているドレディアさんがガクンガクンとゆれている。

つーかあの攻撃に耐えきったのかバタフリー。

 

確かにねんりきなら倒れながらでも集中すれば出来るもんな。

その隙を逃がさなかったシン兄ちゃんもシン兄ちゃんでやっぱり凄い。

 

「……ッ゛、アッ……」

 

そしてその一撃が致命的だったのか、ドレディアさんは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レ……ディ……─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬乗りの状態から……

 

 

 

 

 

静かに、横に崩れ落ちていった……




勝つと思ったの?
ねえ勝つと思ったの?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。