うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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やっちまった……説明足らずだったか。

俺が前の話で言った『【しっかりと】評価をしてください』というのは
ポイントを入れろとねだった意味ではないのです。

あくまでも、これから俺の小説、もしくは別の小説でも入れる事があろう評価に対して
その数字の意味を【しっかりと】考えて入れてくれとの発言だったんです。
まあもう説明したところで手遅れだろうが。

変に促したような感じになってしまって申し訳ない。
今からなら遅くない。10を追加した人達、一度考え直してくれ。

もっと良い小説はあるだろう、好みに向くモノもあるだろう。
評価10は何度も入れれるものではありません。
完全に好みに合致した人が入れてくれれば俺は満足なんです。



60話 師弟戦

 

 

ポケセンでカズさんと話をして、飯を美味しく頂いた後は

先程のお話通り、ゴウキのプレリリースと相成りました。

 

その合間に使った食器を洗ったり拭いたり投げたりドレディアさんがキャッチしたりダグONEの顔面に直撃したり

ハカイオウが気合入ったり、ゴウキが波動(だん)で打ち落としたりと色々とあったりしたんだが

まあ余り面白くない描写になるだろうし割愛。

 

 

んで、ポケモンバトルのためにみんなで外に出たんだが

ここでひとつ思い当たる内容が浮かんできたので、確認を取る事にした。

 

「ねえねえカズさん」

「ん、なんだー?」

「今回俺はどういう風に対応しましょうかね。普通モードと本気モードがあるんすけど」

「え、と……? 本気モードって、あれか?

 各々のジムリーダーが挑戦者用とは別に持ってる手持ちみたいな?」

「あ、ちょっと違いますかね……俺の場合はなんていうのかなぁ……

 ポケモンバトルって形より、野良(のら)(いくさ)って形の方が俺の子達も極限まで強くなるんですよ」

「ほうほう」

 

その内容に耳を傾けるカズさん。

俺、基本的にポケモンバトルだと普通に負ける雑魚だからな。

 

「今回、ゴウキとハカイオウに教えている内容に関しても

 実際のところはこの状況で強くなるような内容が結構な割合を占めてます」

「……ほほう、そんならもうそれで戦うしかねえだろッ!」

「んっふっふっふ……さすがわかっていらっしゃる。負けても文句を言うでないぞー?」

「へっへっへ……上等上等ッ! 俺だって伊達にバッヂ5個も持ってねーよ!

 年下にきちんとモノを教えてみせてやらぁ!」

 

ガチバトルの方が良いとの事で気合が入るカズさん。チャレンジ精神旺盛だなぁ……クックック。

一回見た程度で完全に真似出来るサル芸ではないからな。せーぜー楽しみにしてくださいな。

 

「なーなータツヤん、さっきもっさんと戦ったのは普通モードなんか?」

「ああ、そうっすねぇ。

 見てないでしょうけど、船でやりあってた戦いが俺の本気モードの戦いですよー」

「ほほー……そら興味あるなぁ。うちらも着いてってええやろ?」

「私もちょっと興味あります……」

「そういえば私もそれは見た事ないわね……

 まあ私は一度講習に参加してるし、大体予想付くけれど……」

 

ギャラリーが三人追加されて、さらに盛り上がる。

まあ別に負けてもいいんだが……こちらの土俵に上げてしまったわけだし、負けるわけにもいかんよな。

ドレディアさんにゃひっさしぶりに頑張ってもらわねば。

 

 

 

 

ま、そんなわけで都合が良い場所と行ったら修行場位しか思いつかないので

全員で修行場に足を運んでもらった。まあ俺らはいつも通りダグ共の上に乗っかってたが。

 

 

「さて、何か設定したいルールはありますか?」

「んー……パッ、とは思いつかないけど……

 こっちは一応ゴウキのお試しって形だし、そっちも一人で頼んでいいかな」

「オッケーですよー。問題ないっす」

 

 

たいした提案でもなかったので俺は快諾(かいだく)で答える。

つーか抜けると思ってんのか、このドレディアさんを。

 

「さて、ドレディアさん……あの船以来の本場だ。心構えは十分かな?」

「ディ~ァ~^^」

 

俺の確認の言葉に、ドレディアさんは恐ろしい表情でニヤァリと笑ってくれた。

うふふ、頼りになる子やわぁ……いやらしい笑みを浮かべおってからに。

 

「んじゃ、さらに気合入れてもらいますかーね」

「ドレディ~?」

「勝てたら明日の朝ごはんにおかずを二品追加してあげよう。」

「ドォォォォォ……ッッ!!」

 

よし、目が爛々と輝き出したのを確認。試合前の気合はこんなものでOKだろう。

 

っと……そうだ。

 

「試合をするカズさんはさておいて……

 見学者の三人とサンドパンは適当な位置に下がって置いてくださいねー。

 下手したら巻き添え喰らいかねませんからー」

「えっ……巻き添えて……なんやッ?! りゅうせいぐんとかせえへんやろな?!」

「ある意味もっと凶悪かもー?」

「ぉぉぉぉおおおいッッ!!」

 

ま、本当に危ないってことはないだろうし……

なんかモノ飛んできたら庇ってやってくれな、サンドパン。

 

「じゃ、そろそろ開始しましょうか、カズさん。合図はミカンさんに任せていいですかね」

「あ、はい、わかりました」

「うっし、美少女が合図で始まる試合とか激アツじゃねえか。やったるぜーぃ!!」

「メッサツ……!」

 

あちらもなかなかに気合が入っているようである。

 

では開始前の指令と行きますか。

 

「んじゃドレディアさん。最初は、ね───」

「ディ。ドレディァ。(コクコク」

 

 

 

 

「で、ではただいまより……タツヤvsカズの試合を行います!」

「ディーァー!」

「オオォォオッスッッ!!!」

「は、始めぇ~!」

 

そして開始の合図として、ミカンさんは手を振り下ろした。

 

「よーっし、ゴウキッッ!! まずは……───」

 

 

 

 

「ドレディアさんッッ!! ───ソーラービームだッッッ!!」

「ディァー!!」

 

 

 

 

「───なっ?!いきなりタメ技だと!?」

「メッサツ……?!」

 

 

俺の突然のごり押しファイトに、相手方は大層驚いている。

そしてドレディアさんは溜めるような構えを取り始めた。

 

「な、なぁ……? タツヤんって開幕からあんな隙だらけで戦うんか?

 セオリーどころか完全に素人の戦い方やん……」

「う、うん……私もジムリーダーやってるけど……あれは悪手にしか見えないよね……」

「……あれ? ソーラービーム……? ドレディアちゃんって確か……」

 

観客の三人娘は、互いに開幕の内容を話し合っている。

 

「……チャンスだっ!! ゴウキ、今のうちに一撃入れちまえッ!」

「ッ……!? オ、オッスッ!!」

 

そうして、カズさんはもちろんの事、現在において隙だらけ状態のドレディアさんを見て

攻撃を溜めている最中に攻撃を仕掛けるよう、ゴウキに指示する。

 

 

 

 

 

だが、カズさんは一切気付いていない。

 

本来のトレーナーであるカズさんの指示に、ゴウキが戸惑いを見せたのを。

 

『戸惑い』というその内容が、カズさんとゴウキで違う意味があったのを。

 

 

 

ゴウキは指示に従い、かなりのスピードでドレディアさんに肉薄した。

 

 

 

そして拳が交錯する瞬間。俺はドレディアさんの顔がにやけているのを確認する。

 

 

 

  グ

    ォ

      ッ

        !!

 

「───なっ!?」

「……う、うっそぉッ?!」

「え、ええええええッッ!?」

「あー、やっぱり。」

 

 

凄い衝撃が巻き起こり。

 

 

 

ゴウキが、凄い勢いでそこらの木に吹っ飛んでいった。

 

 

 

ドキャァッ!!

 

 

 

そして同時に、木にぶち当たって止まる。

 

「メ、メッサツ……!」

「お、おい、大丈夫かゴウキ! 一体、一体何が───」

 

 

開幕の一手はこちらが獲得した。幸先の良いスタートである……これからも順調に進めば良いな。

 

「も、もっさん、あれどういう事や?

 なんで殴られとるドレディアちゃんがそのままで、ゴウキがすごい勢いでぶっ飛んでんねんな?」

「うん、ソーラービームを指示した時点で違和感感じててさ。

 今、ちょうど思い出したんだけど……」

「う、うん……」

「──あの子、特殊型じゃなくて完全に物理型なのよね。

 前に見せてもらったステータスで、特攻のステータスグラフ一本しかなかったし」

『え、えええええええええええええーーーーーー!?』

 

ん、なんかミカンさんとアカネさんが驚いていらっしゃる。

そういえばドレディアさんのステータス、彼女らには見せた事なかったっけか。

 

「だから多分だけど……あのソーラービームの指示は、打ち合わせ済みの擬態だと思う。

 ゴウキの攻撃にあわせて、ドレディアちゃんがなんか殴り飛ばしたんじゃないかしら」

 

もっさん、正解。

 

俺が指示した内容は、最初の一撃目から判断ミスを誘うために

有り得ない攻撃・有り得ない指示を出して、相手を釣る事だった。

 

もっさんはドレディアさんの特攻がカスなのを知ってはいたが

カズさんに見せていないというのだけは俺も流石に覚えていた。

故に隙だらけになる指示を飛ばし、ドレディアさんにはその指示を無視して

戸惑いながら攻撃をしてくるであろうゴウキに、なんかカウンターとか入れろと言ったのだ。

見た限りでは、アレは『プロレスわざ』のラリアットだろうか?

腕が鎌首をもたげている。カウンター気味だったし威力も素晴らしい事になっている。

 

 

ついでに言えば、戸惑いの種類は

 

 

・カズさん=俺の指示の稚拙さ

・ゴウキ=ドレディアさんにそんな技が無いのを知っている

 

というすれ違いである。

 

ゴウキは普段からドレディアさんと組み手をし合ってて、彼女がどういう存在か十分に理解していた。

故にそれが擬態か何かだと、ゴウキは高確率で察知していたはずだが

カズさんが飛ばした指示は聴かねばならず、疑問が解けないままに攻撃を仕掛けざるを得なかったのだ。

 

そして、結末はこれである。だが───

 

グ……ググ……

 

「だ、大丈夫かゴウキ、まだやれるか?」

「オ、オォッス!!」

 

これしきの事で終わるような鍛え方はしてなかったよなぁ。

 

「くそっ……開幕から一体なんなんだ……!

 タツヤ君、全然ソーラービームなんかじゃないじゃないかっ!」

「それがどうかしましたか?」

「なっ……ひ、卑怯と思わないのか!?」

 

「んー卑怯ですかぁ…… ───実に、素晴らしい響きですね」

 

「な……な……」

「カズさんも言ったじゃないですか、本気モードで良いって。

 俺の本気モードってのはこう言う事ですよ。

 

 ポケモンの実力だけが全て、ではない。

 

 トレーナーの指示だけが全て、ではない。

 

 生物として反応してしまう、信用してしまう全てを

 

 擬態と誤解で戦場を作り出し、それを嘲笑いながら攻撃する……───それが、俺の本気です」

 

 

 

奇麗事は要らない。

 

お約束も要らない。

 

定型句だって要らない。

 

 

 

「勝てば、良いんですよ」

 

俺は勤めて笑顔で、自分の(ことわり)をカズさんに伝えた。

 

「……はっ、ハハハ、そうか……これは……───やりがいのあるバトルだ……!

 俺もプライドってもんがある。……こんな卑怯者に負けちゃぁなんねえなッッ!!」

「ええ、そうですね。でもね……卑怯者って───とっても強いんですよ?」

「上等だァッ!! ゴウキッッッ、『しゃくねつはどう』だッッ!!」

「……メッサツ!!」

 

指示を聞いた瞬間ゴウキは気合を入れるような構えを取り

あの技を繰り出してきた。曰く、ヨガフレイムコマンドというやつだ。

 

 

もちろんの事、直線的にドレディアさんに迫るが……

ドレディアさんは構えている間に拾ったそこらの小石を握り。

 

 

ヒュッ

 

ッパァン!!

 

 

迫り来るしゃくねつはどうに小石を投げつけ、空中で激突させる。

当然の如く、しゃくねつはどうは散っていった。その周りには軽い火の粉が舞い遊んでいる。

 

「う、ぐ……」

「そんなもんか? ゴウキ。

 んなら……最初のダメージが抜け切らないうちにやってもらおうかね」

 

俺がそう言うのと同時に

ドレディアさんは相も変わらぬ凄まじいトップスピードで、ゴウキに迫り行った。

 

「げ、迎撃しろ! ゴウキッ!!」

「ディァァァアッッ!!」

「メッサ……ツ?!」

 

ギャルッッ!!

 

ッダァン!!

 

「ディァーッ!」

「ゴ、ゴウキィーーーー!!」

「ォ、オオォ……ッス!!」

「う、わ……なんやねんなあの動き……。

 並みの格闘タイプじゃまずあんな動きお目にかかれんで……」

「凄い……」

「やっぱポテンシャルが凄いのねぇ……ドレディアちゃん」

 

 

ドレディアさんは、迎撃のためにゴウキが繰り出した拳を打ち払いながら

その柔軟性溢れる葉っぱのような手を、ゴウキの腕に巻きつけ

巻きつけたその手を軸にして、体全てをハンマー代わりにした

横打ちドロップキックをゴウキにぶちかましたのだ。

イメージとしては、あのかぼちゃドレスっぽい部分で横からぶん殴った感じである。

 

拳を突き出している上に正面からの打撃でもないため

ゴウキはその一撃を綺麗に貰い、もんどり打ってしまった。

 

もちろんの事、ドレディアさんは吹っ飛ぶと同時にゴウキの手を離しており

スチャッと堂に入った形で着地する。

 

 

「うはー……ドレちゃんかっこええなぁ……」

「うん、あれは凄いねー……シジマさんの子達でも厳しそうだよ」

「あの子は本当に初見殺し過ぎるわね……

 誰もあんな可憐な姿で殴りこんでくるなんて想像出来ないわよ……」

 

うむ、ハッタリという点が非常に生きる、素晴らしい相棒であると思っている。

 

「けどあのドレディアちゃんが凄い割りには……タツヤんって一切堂に入った指示飛ばしてへんよね。

 ただのコバンザメって事?」

「あ、そういえば……全然ドレディアさんに指示を飛ばしてないですね」

 

 

ちゃ、ちゃうわいっ!!

ちゃんと行動する前に色々指示は飛ばしてんだいっ!!

 

まあ、ちょっと後ろで沈むような会話を繰り広げられているが、そこはひとまず置いておこう。

他に考えられるあちらの手は……波動(だん)連打とかだろうか。

 

「ドレディアさん、ホームラン準備」

「ッ! ディァ!」

 

俺の指示を聞き届けた後、ドレディアさんは

 

 

 

ドグォッ!

 

 

 

そこらの木に拳をぶちかまし、根元間近からへし折った。

 

 

『ええええええええええええええええええええええええええ!?』

 

 

カズさんと三人娘が一斉に驚く。……まあ、そりゃぁ驚くか。

俺も旅の始めにこれを見た時はありえねーと思ったもんだ。

 

そしてドレディアさんは、へし折った木を持ち───装備(●●)した。

 

 

「う、くそっ……一体何をするつもりだ……! 投げてくるのか……!?」

「んふふー、さーてどうですかね。ドレディアさんちゃんと準備しとけよー」

「ディ~ア♪」

 

うむ、気持ちにも余裕が感じられる返答である。

 

「くっそ……ゴウキ!! あの木を何とかするんだっ!!」

「ムンッ……!」 --==Ξ三 Ω ギューン

 

おっと、ここでまさかの瞬獄殺か……速攻で打撃を入れまくって木屑にする算段かね?

しかし木を装備したドレディアさんには大した内容ではない。

 

 

「それ、ドレディアさんやっちまえ」

「ディィィィィ……

 

 

 

 

 ァァァァアアアッッ!!!!」

 

 

 

ブゥォヮンッ!!

 

 

「ッ?!」

 

 

ドギャァッ!!

 

ッダァァン!!

 

 

 

 

まるで幽鬼のように迫り来るゴウキに対して

ドレディアさんは文字通り木をフルスイングし、ゴウキをまた別の方向の木へぶっ飛ばした。

またも背中から木にぶち当たってしまい、ゴウキにダメージが蓄積される。

 

「ゴ、ゴウキッ!! しっかりするんだ!! お前はまだそんなもんじゃ───」

 

「躊躇うなドレディアさんッ!! ゴウキに木を投げつけちまえッ!!」

 

「ディァーーーーーーー!!!」

 

『うえぇえええええぇぇええーーーーーー!?!?!?』

 

 

俺はドレディアさんに追加の指示を飛ばし

たった今バット代わりにしていた木を、全力でゴウキに投げつける様に指示を飛ばす。

 

無慈悲だろうがなんだろうが……攻撃出来る隙があるなら、その時その時に全力を注がせる!!

 

 

そして、投げられた木は……あんな小さなお嬢様の何処にそのパワーがあるのか……

下手な野球選手のストレートより早く、ゴウキに向かっていった。

 

 

だが───

 

 

ゴシャァッ!!

 

 

『っ!?』

「あ、あ……」

 

 

その木が辿り付いた地点には。

 

 

 

未だ拳を構え

 

その拳を用いて木をさらに真っ二つにぶち折り

 

ダメージをいくら喰らっても

 

なお戦場に佇む『黒い鬼』が居た。

 

 

その鬼を確認した上で、俺は鬼に語りかける。

 

「うん、いい感じだゴウキ……出来ることは全部やれ。勝つためにならなんでもやれ」

「……オッス!!」

「それら全てが全部出来なくなった後でなら、負ける事を許す。

 

 ───やれッ! ドレディアさんッッ!!」

 

 

「ァァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!!」

 

 

「ま、負けるなゴウキッ!! インファイトだぁーーーーー!!」

 

 

「ォォォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!」

 

 

 

 

ドガガガガガガガガガッッ!!!

 

            ズガガガガガガガガッッ!!!

 

 

 

ゴウキのインファイトに対し、ドレディアさんはマッハパンチれんだで相殺していく。

今の状況は、まさにあのマチスさんとの訓練の成果の現れである。

 

 

「く、くっそ……! あのドレディア強すぎんぞっ……!!

 なんなんだよッ……インファイトっつったら格闘でも最高峰の威力だぞッ……!?」

 

「ホンマ、あの子どんだけやねんな……!

 こんなんポケモンリーグどころかチャンピオン戦でも見た事ないでッ……!?」

 

「   (ぽけー)   」

 

「ミ、ミカンちゃんっ!? しっかり!! 今凄いところなんだから、見ないと損よっ!?」

 

 

それぞれがそれぞれの感想を述べる中、俺はぶつかり合う二人を冷静に見る。

ドレディアさんはパンチでインファイトを相殺しているが……

同時に一、二発攻撃を逸らしている。

そのタイミングの狂い故に、ゴウキは僅かながらに押し込まれていき……

 

 

「ォォォオオオオオオッ!!!」

「……────。」

 

 

ヒュガッ!!

 

 

「メ、メッサツ……!?」

「な、なぁっ……!?」

 

 

 

ついに。

 

ドレディアさんは。

 

そのインファイトをかいくぐり。

 

ゴウキの首元に、喉輪を打ち込んだ。

 

 

「メ、メッサ……」

「ドォレェ、ディァー!!!」

 

 

ズダァン!!

 

 

「……ーーーーーッ!!」

 

 

そのまま勢い良く、ゴウキを地面に押し倒し……すなわち。

 

 

「ァァアアァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!」

 

 

 

 

 

がんめんパンチの。

 

 

 

 

 

必殺の領域に杭を打つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……参った。完全に負けたわ」

「うむ、お相手ありがとうございました」

 

 

こうして、ゴウキのプレリリースは終わった。

まあ相手が悪すぎるというのはあるが、性能の把握としては問題もなかろうと思う。

 

流石に全部が全部、俺に都合が良い状況だったし

かなり本気でドレディアさんも動いてくれた。レベル差があっても結果は必然だろう。

 

 

「お疲れさんー。いやいや、ええもん見せてもろたわー」

「うん、オツカレー。ミカンちゃんの意識がまだ帰ってきてないけど

 私は十分に楽しませてもらったわ……あの時サンドが瞬殺されたのもよくわかる」

「   ぽけー。   」

 

 

観客さんの反応は三者三様といったところである。そして全く鳴き声こそ描写されてないが……

ずっと見ていたサンドパンにも、何か学ぶものがあれば幸いだったのだが。

 

「いやしかし、なんでそのドレディアってこんなに肉弾戦に強いんだ?

 俺の記憶じゃドレディアは特攻が強いってデータのはずだけど……」

「ま、色々あるんすよ。こっちも」

 

わざわざ突然変異だのなんだのとバラす必要もない。

ていうか説明面倒だから秘密のままにしておく。

 

 

「ディァー。」

「お、ドレディアさんもお疲れ」

 

 

がんめんパンチをやりきった地点から、気絶したゴウキを背負い

ドレディアさんが俺らの元へと戻ってきた。ゴウキ、完全にグロッキー状態である。

うーわ、うーわ、うーわ……

 

「まあ、こんな感じで育ってくれてます。

 あと二、三日で引き渡しになりますけど……現状だとどうっすかね」

「あぁ……負けたのを差っぴいても、これは凄いわ。

 正直木を投げつけられた時は完全に負けを覚悟したけど……

 自分の判断で無効化してたからなぁ、前のダゲキじゃあんな事は出来なかったと思うよ」

「ご満足いただけたようで何よりです」

 

進化したってのもあるかもだが、今の能力でも十分に満足してもらえているらしい。

実際今回の戦いで出てこなかった臨機応変なシーンもたくさんある。

返した後にさらに満足してもらえる事を祈りたいところである。

 

 

 

 

 

 

ま、こんな感じで今日の夜は更けていった。

明日も頑張るぞーい。

 

 

 


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