うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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※ガチ注意※

今回の話は本気でポケモンという要素がほとんど関係ありません。
ついでに言ってしまえば技もほぼ一切出てきません。

が、しかし……元々どうでも良い部分を特に強調して書いているのが俺のスタイルです。
実際訂正前も15000字前後あったはずなので、見応えは多分あると思います。

それでは……おそらくにじファン連載時代に最も力を入れた61話、どうぞ。



61話 修行?

昨日の模擬激戦から一夜明け、翌日の朝。

 

 

眠い。

俺また寝るわ。

 

 

 

 

61話、完。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます。

二度寝してたらドレディアさんに飯作れって腹にダイビングされました。

俺の腹は大海原ちゃうぞ。水のフィールドでダイビングをしろ。

 

 

 

「さて、今日はいろいろな意味を込めて、『連携』を学んでもらおうと思います」

「連携かぁ?」

「連携、ですか」

「連携、ねぇ……」

「ディァ~」

『─────。』

「ホァー」

「ミュゥー」

「キュー」

『オッス』

 

 

こうやって表現すると本当に初期に比べて面子が増えてんな……ぶっちゃけ描写しきれんわ。

前の話なんてミロカロスとダグ共、鳴き声すら上げてないぞ。

ダグ共は鳴き声と言っていいのかどうかわからんが。

 

 

ん、何? メタんな? メタングがなんだって?

俺はそんなモン持ってないぞ。

 

正直ゲーセンのUFOキャッチャーは全部メタグロス化すれば良いと思うんだ。

それが出来ないなら1日15分ハンドグリップをキャッチャーの腕に握らせる法令を作れ。

 

ちなみにカズさんは今日も元気にトレーナー戦に出かけている。

「ゴウキの仕上がり、楽しみにしてんわ!」と言い残して

俺の飯をついでに食わせた後、元気良くシオンの西に出て行った。

 

ついでになんで三人娘が修行会議に参加しているかというと

今日は修行場まで移動していないからである。

加えて聴かれても大した問題でもないと判断し、邪魔者扱いするのもあれなので許可した。

 

「うむ、連携である。

 昨日ポケセンに帰ってきた時にこんなものが目に留まった」

 

昨日のうちに受付の人から許可を貰い、ポスターを一枚もらっている。

それをテーブルに広げ、全員に見せる。

 

「ん……?」

「えーと……」

「んっと……?」

 

 

『……ポケモンタワー修復作業、日勤アルバイト募集???』

 

 

その通り。

 

レッドさんがぶっ壊したあのポケモンタワーだが

なんらかの事情で、修理に大活躍するポケモンが不足しているらしく作業が進んでいないらしい。

故に一般からの公募で、力のあるポケモンをアルバイトで雇い入れる方針に出たのだろう。

 

「このアルバイトに俺も含め全員で入ろうと思う」

「うーわ、これって一人頭の扱いやから……

 日勤5,000円だとしたら、10人で50,000円かぁ?

 えっげつなー。人のポケモンに野生のポケモンまで混ざってるのにー」

「ふん、なんとでも言え。俺は使えるものなら寝転がっている親でも使う」

「タツヤ君、それはちょっと……」

「キュー」

「私のサンドパン、まさかそれに入れないでしょうね? 入れたら本気でぶっ飛ばすわよ」

「金に困ってんならもっさんも作業に入ればいいじゃないですか」

「私はトレーナーとしてお金を稼ぎますっ!!

 バイトはバイトしたい人だけしてればいいじゃないのよ」

 

そんな風に息巻いて、大否定に走るもっさん

この人将来ぜってー苦労するだろうなー……視野が狭いのはイカんぞ。ゲソ。

 

 

ま、こういう作業ってのは連携がよければ作業がスパスパ進むものなのだ。

 

俺が教えている修行内容は基本的に野良限定といっても過言じゃない。

その場に何があるか、何が居るか、その辺りは全部不明瞭である。

 

故にその場に居る人と一緒に戦う場合、即席の連携すら必要になるかもしれない。

そこら辺の模擬テスト的な感じで、このバイトへ赴くのだ。

 

 

「んー、うちもミルタンク連れて参加してみよかなぁ?」

「私の手持ちの子は……ちょっと、役に立てない子ばかりかな……」

 

ふむ、ミルタンクか。

モーモーミルク振る舞い放題ってのは確かに参加者も喜びそうだが。

 

「今回は別に見られても大した情報の流出も無いだろうし

 参加するってんなら俺は全然構わんっすよ」

「あんがとタツヤん! そんならうちも参加で行くわ!」

 

 

こんな感じでトントンと話は進んで行った。

 

 

 

 

というわけでポケモンタワー前。作業者を簡易面接する待機小屋に登場in俺ら。

 

「んー……? 君らが修復工事に参加するってのかい?

 力作業に体力作業だから、パワフルな子じゃないと困るんだが……」

「あーまあ見た目に関してはあまり役に立たないってのも認めます。

 でも確実に作業の中でなら主役級に動けるのが何人もいますよ」

「確かに、後ろのえーと、格好は若干おかしいが……ダゲキとナゲキだな?

 君らは頑張ってもらえそうだが……」

「確かにうちも一人の人間として見たら

 工事現場ではエースにはなれんなぁ……ポケモンバトルとはまたちゃうやろし」

 

作業現場の監督さんにちょっと難しい顔をされてしまう俺ら。

ちなみにこれは当然といえば当然である。監督さんの立場になればよくわかる事だ。

 

 

 

まず修復する作業に掛かる費用、給料はどこから出るか?

これは当然ポケモンタワーを施設として所有しているシオンタウンである。

 

でもってここが重要だが、新たに費用が必要になったとしても

余程の事が無い限り費用の追加がされる事はない。その費用やら見積もりやらも最初に出して

会社に請け負ってもらうのがこの世界の工事における最初の手順なのである。

 

俺が元居た現実世界は知らん。

 

 

そして、その一回の見積もり+費用を計算した結果、シオンタウンから出されるお金。

こっから材料費や人件費を全て出すわけである。

 

『工期が間に合わない』だの『材料に不手際があった』だので

余計な費用が掛かった場合でもここから捻出される。

 

んで最後に全部終わって、残ったお金が会社の利益として挙がる訳だ。

つまり……余計な人件費だの、工期が延びるだのが発生すれば利益は下がってしまうのである。

 

最終的にそのお金ですらまかないきれない何かが発生した場合は

施工会社がお金を出して工事を完了させなきゃならない。

 

『お金がないからもう無理です』で済む世界ではないのだ。

そんなことをしたら最後、その後に仕事が舞い込むことはまずなくなる。

社会全体から爪弾きにされて会社が終わってしまうのだ。

 

故に、会社としては戦力になる人だとしても安く雇わなければならない。

赤字現場にするわけにはいかないのだ。

 

 

だからこそ監督さんも人選びは慎重にやっている。

故に俺らは難題と取られてしまうわけである。ここを恨むのは筋違いというものだ。

 

 

「……仕方ない、今は本当に猫の手も借りたい程だ。君らも作業現場に入ってもらおう。

 但しッッ!! 君らに関してだけは日給ではなく歩合制にさせてもらう!

 それが認められないなら、すまないがお断りさせてもらおう」

 

ほー……歩合と来たか。むしろとてもいい提案である。

 

「歩合制ですね、いくつか質問があるんですがいいっすかね」

「……? 歩合って言葉がわからんかったか? 歩合ってのは───」

「ああ違います違います。大丈夫っすよー。

 その歩合に関わる仕事の内容の良し悪しは、個人の出来になるんですかね」

「ん……そんなのは当たり前じゃないか」

「じゃあそこをちょっと換えて欲しいです。

 一人一人の仕事の良し悪しじゃなく、俺ら全員をチームとして見て

 そのチーム全員の作業の進み具合で、最終的な歩合を決定して欲しいんです」

 

正直俺やアカネさんの腕力なんぞたかが知れている。俺らが活躍するのは力仕事の方ではない。

だからチーム全体で考えてもらって、影響力とかを考えて

その分を評価に入れてもらったほうが良い結果が生まれるはずだ。

 

「……チームでの歩合、か。

 その場合、トレーナーの君達が活躍しない分のデメリットは

 動けるポケモン達の活躍した分と相殺される可能性のが圧倒的に高いが……

 それでもいいのかね? ポケモンだけ貸し出すほうが効率的だと思うが」

「俺らはそっちのが有難いっす、お願いしていいですかね?」

「わかった、そちらがそれでいいならそうさせてもらおうか。

 それじゃあ……んー今回はこの子らのトレーナーである君達二人のサインでいいか……

 こっちの紙の必要事項を書いていってくれ、書き方の例はこっちの用紙だ。

 間違えた内容を書かれると後々面倒な事も発生しかねないんでな、しっかり頼む」

「了解っすー。」

「りょっかいやー。」

 

俺らはそれぞれ、監督さんから紙二枚とボールペンをもらって必要事項を埋めていく。

 

「え……なんで働く側のうちらが300円取られるん?」

「ん? ああ、これですか? これも結構重要ですよ。

 これは保険ですからね、必須事項の一つです」

「保険て……何、どーいうこと?」

 

 

※長文をうまく区切れなかったため

 見易さを重視してここから先の一部、一人一人の発言毎に1行あけております。

 

 

「この現場で作業している際に俺らが何かの間違いで怪我するとするじゃないですか。

 それがどうしようもない大怪我とかだった場合を例にしますけど……

 ポケモンバトルをしに、交戦地に行く事も出来ないし

 仕事をメインに生活している人達は、仕事を休まなきゃならない。

 その間、当然自分の給料は0円ですよね? 下手したら入院費用だけで大きいマイナスです」

 

「そやね」

 

「そのためのこの300円です。

 もし俺らが怪我をしなければこの300円は丸々保険会社のモノなわけですが

 俺らが怪我をしてしまった場合はこの300円以上の保証を保険会社がしなきゃならない。

 そんな感じにうまい具合に成り立っているわけですね」

 

「……坊主、お前よくそんな事知ってるな。説明する手間が省けたぞ。

知らんヤツは大体ここで文句を言うからな」

 

「いやなに、俺らの住んでた家とか

 それこそポケモンセンターとかだって、全部が全部監督さんが直接担当した現場ではないだろうけど

 監督さんと同じ業界で頑張ってる人達の産物でしょう?

 そこに感謝を感じられるなら、少し考えればわかる事ですよ」

 

「うーむ、坊主みたいに知恵があるヤツが日雇いで来たのは初めてだな……

 お前さん……別にこんなところで働かなくてもいくらでも稼ぐ手段あるんじゃないか?

 一体ここに何をしに来たんだ」

 

「実はポケモン達の連携の訓練だったりします」

 

「ちょっ?! それ言わんほうがええんちゃうかぃ?」

 

「……ははぁ、なるほど。やっぱお前さん知恵モノだな。

 基礎を戦いじゃなく日常から引っ張ろうとする辺り……

 変化系をメインにした戦いとか大好きなんじゃないか?」

 

「うーむ、さすがですね監督さん。俺の言葉だけでそこまでわかるか」

 

 

何故日常から引っ張るなら変化系が大好きか?

 

脳筋……つまりはパワーファイト主義なら、基礎をそのまま戦いから引っ張り出すからである。

戦いじゃないところから引っ張ろうと考えるのは大体が、偏屈か変態か変人か俺だ。

 

 

「そっちも私生活だと結構良い戦いしたりしてんじゃないすか?」

 

「ふふん。これでも一応トキワジムのトレーナーだ。ガキに舐められない程度にゃ頑張ってんぜ」

 

「うっわぁ……トキワジムて、あれやろ?

 そのジムに所属してるトレーナー全員が

 別の街のジムリーダーやっても問題ない実力持ってるってジムやろ?」

 

「おーそうだなぁ。他のジムに行って戦ったーってヤツの話は良く聴くが

 接戦繰り広げたって話はほぼ全員から聞いてたなぁ」

 

「ちなみにこのアカネさん、ジョウトのコガネシティでジムリーダーやってますよ」

 

「おぉ!? マジかぁ、こんな小さい嬢ちゃんがなぁ……

 コガネ……コガネ……ノーマルタイプだっけか?」

 

「せーかいー。なんや、うちんとこ結構有名やん♪」

 

「俺が聞いた中じゃかなり有名な方だぞ? 大体のヤツがミルタンクを突破出来ないっつってたなぁ」

 

 

……おい、これ見てるやつら。

一度はミルタンクに負けた経験があるやつ、正直に手を上げろ。

俺は一度負けたぞ。レベルあげまくってごり押した。

 

 

「ふふーん、うちの可愛(かわ)えぇ子を舐めるからやな!」

 

「……まさか、今回現場に参加するのはそのミルタンクなのか!?」

 

「んふふー♪ 結構力持ちやからな! 期待しとってー★」

 

「そいつぁ頼もしいな、ハッハッハ。

 坊主、お前もミルタンクに負けねーように頑張ってくれよ!」

 

「うーぃす。まぁ失望させない程度に頑張りますよー」

 

 

俺、細かい雑用以外は指示飛ばすだけだし。

 

 

 

 

つーわけで、現場状況などを聞かせてもらった。

まずは8:30から作業開始。作業前に全員で現場ミーティングなんだそうだ。

一応ミーティングは既に終了している。

 

現在、監督さんの会社でなにやら立て込んでいるらしく

重量のある作業を負担してくれるポケモン達が殆どこちらに来ていないらしい。

故に工期は5、6日を見積もっているそうである。

 

しかもその重機代わりの子達が居ない故に、資材とかもタワーの外にある状況だ。

これは並みのポケモン達じゃ時間掛かりそうだなー。

 

ま……やるからにはきっちり、綺麗に。手抜きは許さん、頑張っていこう!

 

 

「全員ヘルメットは被ったかー!!」

 

『おぉーーーーう!!』 ※意訳

 

「安全第一ッ! 全員突撃ぃー!!」

 

『うおおおおおおおーーーーーー!!!』 ※意訳

 

こうして連携修行の一日が幕を開けた!!

 

 

 

 

 

 

作業指示・力作業編。

 

「よしっ、じゃあまず資材を一気に二階に運んじまうぞ。

 

 担当!!

 

 ドレディアッ! ダグトリオッ! ゴウキッ! ハカイオウッ! ミルタンクッ!」

 

『サーイエッサー!!』

 

「一気に持って行こうとするなッ! あくまでも自分が出来ると思う範囲で持って行けッ!」

 

『サーイエッサー!!』

 

ドレディアさんは自慢の怪力、ダグトリオは三人での連携作業。

元ダナゲキは元々の馬力が強いポケモンである。

アカネさんのミルタンクは、パワー作業に関してはこの面子に若干劣るので

これに向いていない俺、アカネさん、ミロカロス、ミュウで補助する。

 

つーかドレディアさんの馬鹿力がすげえ。

元ダナゲキ合わせてもおそらく250キロ程度の重量なのに

一人で400キロ位持ってってるぞ。しかも平気な顔して往復してやがる。

 

ダグトリオのほうは完全に効率重視だ。一回一回の搬出は小出しだが

チャッチャッチャッと、見ていて気持ちが良いほどに外の資材が減っていった。

 

ミルタンクは一回に持っていける量も25キロ程。一般人って感じである。

こう比較をすると少ない気もしてしまうが十分である。

俺ら一人一人じゃ、二階に上がる労力を考えても5キロ……またはそれより下が限界だ。

 

ミロカロスもレベルダウン効果で重量物はからっきしである。

それなのにダグトリオ達が頭に乗っかっても涼しい顔なのは何故なんだ?

どういう感じに作用してんのよ、ミロカロスの筋力って。

 

ミュウは俺ら小粒達がふらついたりしてモノを落としそうになった時に

サイコキネシスで資材が傷付かない様に補助してもらっている。

 

 

こんな感じで頑張っていたら二時間程度で全ての資材を運び終える事に成功。

監督さんが唖然としていた。まあ確実にドレディアさんに驚いてんだな。

 

 

そんなこんなで全ての資材を二階の入り口部分へ運び終えた。

 

 

 

 

 

 

作業指示・現場作業AM編。

 

 

資材を一通り運び終わり、現在10:40ほどである。

お昼にはまだ早い時間帯といったところだ、10分ほど小休止をした後に全員を集める。

 

「えーと、監督さんからもらった作業指示は……

 瓦礫の撤去と壊れた壁に新しい資材を使っての修復だな」

 

間取り図を見る限り、ときたまバトルが発生してしまう関係上

排水管とかもしっかりと床に配置されているようである。

 

「よし、じゃあまずは修復しやすい形に持って行こうか。

 ついでのサービスで、壊れた壁のレンガは先に砕いて形を整えよう」

 

『サーイエッサー!!』

 

「んー、これの担当はミュウ一人居ればいいかな。指示は俺が出そう。

 小さい瓦礫は非力組全員で、このでっかい袋に入れて行ってくれ。

 大きい瓦礫は豪力組で、穴の開いちまった壁のちょっと外側においてくれ。

 すぐ近くだと俺とミュウが躓いて危ないかもだから」

 

『サーイエッサー!!』

 

「ついでにアカネさん、俺らはポケモンじゃないからさ。

 きつい事はやらんようにしておいてね」

 

「了解やっ!!」

 

と、いうわけで各自散開。俺とミュウは一緒に穴の開いた壁へ向かう。

 

「とりあえずここは(高い所から足を)(滑らせても体重を)(支えきれるベルト)つけれるような場所もねえし……

 もし俺が足滑らせて落ちそうになったら、補助頼むね」

「ミュゥー!」

「んじゃ、えーと……ふむふむ。

 よし、ここをこんな形で、このブロックが正式な形ね?

 この形じゃない崩れているブロックの外枠をだな……切り取るようにサイコキネシスをやっていってくれ」

「ミュゥミュー?」

 

【こう?】

 

ガガガッ。

 

小気味良い破砕音と共に、どんどんと階段状に壁が削り取られていく。

 

「うんよし、そんな感じー。

 んじゃここを開始地点にして、あそこの穴の終わりまで削って行こう」

「ミューミュー!」

 

ガッガッガッガッ。

まるであみだクジのようにガスガスと90度に削れて行く壁。

文字の形的には凸凹←こんな感じである。意味が全く真逆だ。

周りではみんながせっせと瓦礫を集めている。削り作業自体は30分程度で終わってくれた。

 

ふと周りよりちょっと奥を見てみると……さっそく豪力組が華麗な連携を見せていた。

 

ハカイオウ→ドレディアさん→ゴウキの順に

 

ぽーい → ぽーい → バカァゥッ、と。

実際何キロあるかすらわからん程のドデカイ瓦礫が

バレーボールのように浮いている様は末恐ろしいモノがある。

俺は今、ポケモンが重機を越えた瞬間を見た。

 

ゴウキが最後に瓦礫を砕いているのは、一通り運びやすいようにするためであろう。

 

 

ふむ、よし……こんなところか。

 

 

「よっしゃ、俺らは一旦ここで作業をやめるぞー。

 飯だー。全員一階に降りろー」

 

『ォオオオオオオオオオウッッ!!!!』

 

 

仕事時間では、飯の時間に一番気合が入るのが社会人の常識です。

 

 

 

 

作業指示・昼食編。

 

 

昨日寝る前に仕込んでおいた大量提供向けの安い素材で仕上げたご飯とおかずを、休憩室から引っ張り出してくる。

かなり重たかったのだがドレディアさんが手伝ってくれたおかげで飯の準備もさほど時間は掛からなかった。

頭の花に弁当箱を載せてバランスとりながら歩く様は結構かわいいぞ。

でも食べ物で遊んだらだめでしょっ。

 

今日は待機小屋で食わず、せっかくなので青空の下食べようと言う事に。

 

「なぁ、ミュウ。α波って知らん?」

「ミュ?」

「んーやっぱ知らないか……なんかこうさぁ、熱線みたいな……

 ご飯を温められるビームみたいな……」

「ミューミュ?」

 

【こんなの?】と言って、冷えたご飯に謎ビームをかけてくれた。

その結果出来たのは、ぬるいご飯。

 

ポケモンやべえ。

 

「さすがだな……これをちょっとご飯とおかずにかけてほしいんだ。

 冷えた飯よりはあったかいご飯、これだけでやる気も違う!」

「ディァーッッ!!」

 

その会話内容に即座に反応する我等がドレディア大帝。即反応とかさすがですね。

 

ミュウに頼んで順々に熱量を調整し、食べ物を温めて行ってもらう。

やりすぎたモノに関してはちょっと具を広げて、自然に冷ます。

 

「あ、アカネさん。ミルタンクのお乳飲ませてもらってもいい?

 水筒代わりの入れモンあるから、これに入れてほしいんだけど」

「ってことらしいわ。ミルタンク、イケる?」

「ンモォォォァン!」

 

ドリンクの方も、ミックスオレより回復効果が高いモーモーミルクを確保。

とってもおいしい昼飯になりそうでござる。

 

 

「お、なんだなんだ。お前さん達は外で食うのか」

「あ、どうもっす」

 

 

監督さんがポケモンタワーから出てきた。

後ろには今日のお手伝いさん+元々の監督さんの手持ちであろう子が連なっている。

 

「あ、おっちゃん。そっちの作業はどうやー?」

「まぁ……ボチボチってところだな。

 元は人のポケモンだし、力が強いっつってもこっちが本業じゃないからな。

 変な事しないように補助すんので精一杯だ」

「監督さん達は飯どうすんすか? なんだったら俺らの昼飯食ってきます?」

「 ! いいのか? んならお邪魔させてもらおうか。

 匂いからして食欲そそっちまう様な気合入ってる飯みたいだしな」

「あいあい、かなり作ってきたんで多分大丈夫っす。君らもこっち来いーみんなで食うべー」

『オオオオオオオオゥ!!』

 

と、現場合計で20人程の青空大宴会となりましたとさ。

監督さん並びに、本日監督さんの下についている力自慢ポケモン達も

『うーーまーーいーーぞーー』と言っていた。お粗末さまです。

 

なおミルタンクはさすがに20人分のお乳はきつかったらしく

昼飯が始まる前にアカネさんにポケセンに向かってもらって回復してきてもらった。

 

二人共ご飯に入るのは若干遅れたが、ミュウのα波でホカホカ状態での提供に成功。

おいしさを堪能して頂きました。

 

 

 

 

作業指示・現場作業PM編。

 

 

「よし、昼の作業を説明するぞー。

 まず穴の外は、上から落とす瓦礫の撤去役にドレディアさんとダグトリオ。

 二階からぶん投げる作業はハカイオウとゴウキだ。

 非力組は引き続き袋に小さい瓦礫を詰め込んで行ってくれ」

 

『サー、イエッサー!!』

 

俺はひとまず、担当人数が多い二階のほうへと上がる。

そして作業位置に問題が無いのを確認。作業に移った。

 

「じゃ、怪我しないようにドレディアさん達から少し離れた場所に投げてくれ。

 ドレディアさん達はー、落ちた場所に取りに行ってー。

 そんでー、拾い上げたらそっちのトロッコに乗っけてってー。

 ダグONEはトロッコが満杯になったら、動かして瓦礫置き場に持ってってー」

 

二階から穴の下に居るみんなに対しての発言なので、若干大声です。

 

『サーイエッサー!!』

 

そして豪快に始まる大瓦礫乱舞。

 

ひゅーん。どーん。ひゅーん。どーん。

 

その後ろでは非力組がちょこちょこと袋を完成させていく。

一時間後、大体キリ良く大きい瓦礫が始末し終わった。

そして袋の作成も5袋作りこちらも移動する。

 

ガッシ。

 

「あ、ハカイオウにゴウキ、ちょっと待った」

『オッス?』

「こっちにあるのは袋だからね。袋自体に耐久力があるんだ。

 んだからでっけぇ瓦礫と同じように投げると

 あっちで袋が遠心力と重量に耐え切れなくて、破けて散らばって面倒になる。

 手間かけて悪いけど、一個一個ロープで持つトコを縛ってゆっくり下に降ろすよ」

『オォッス!!』

 

そうして非力組で、ぶっといロープを持ち手に括りつけ

ハカイオウに袋の移動を、ゴウキにロープを引っ張り落下制御を指示する。

 

「そうそう、いきなりずーんって落ちないようになー。

 いい感じいい感じー。よーしドレディアさんにダグ達ー。

 ロープを解いて、袋をトロッコに持っていってくれー」

 

『サーイエッサー!!』

 

結構硬めに、そして複雑に縛られたロープの部分に多少苦戦しているのがここから見える。

ここばかりは手を抜くわけに行かない。ロープの縛り口が重さに耐えれなくて

解れて袋が落下したら下手すりゃ死ぬからな。

 

そして外れたロープを再度二階部分へ引っ張り上げ、次の袋に括りつける。

これを繰り返す事四回。袋も無事に下に送り終えた。

全部瓦礫置き場に移動したのを確認した後、ドレディアさんとダグ共を二階へ戻した。

 

「よっし、それじゃ次だ! ミロカロス、出番だぞ!」

「ホーァ?」

「砂利と埃を出来るだけ一気に取り除く。

 床に水をぶち当てながらうまくあの穴に持って行って排水してくれ」

「ホァー!」

 

そしてミロカロス、気合一発みずでっぽう。威力はせいぜい蛇口のホース。

 

ドバーーーーーッと。びちゃびちゃと床に水が浸透していく。

いつも思うがその水はどっから精製されているんだろうか。

 

まあ細かい事を気にしてはいけない。

そんな事を考えていると、どんどん綺麗になっていく穴の周り。

10分ほど水圧での瓦礫撤去を繰り返し、ひと段落が済んだ。

 

 

 

 

作業指示・現場修復編。

 

 

「よし、本日最後の作業だッ! この壁の穴の修復に取り掛かる!!」

 

『サーイエッサー!!』

 

「修復する材料は、朝に全部二階の入り口に持っていったな?

 あれ、一応他の担当区域のヤツも混ざってるから

 ここを修理する分と間違えないで持ってくるようにしてくれ」

 

『サーイエッサー!!』

 

「じゃ、担当区分けなー。

 まず豪力組、ドレディアさん、ゴウキ、ハカイオウ。

 君らはレンガと石材をメインにこっちに運んでくれ。

 但し! 極力レンガとかも欠けさせない様に運んでくれ」

 

『サーイエッサー!!』

 

「一応豪快な上に繊細な作業とか、訳のわからん内容になるから

 ミュウは豪力組について、危ない箇所がありそうだったら補助してあげてくれ。

 持つための隙間をサイコキネシスで少し持ち上げて作るだけでも違うから」

「ミューィ!!」

「んじゃ、とりあえず人間二人の俺とアカネさんで

 レンガのつなぎになる……これ、この溝ね。これを塗って作っていくよ。

 監督さんから作り方の指南書もらって来てるから、これを一回読んでおこう」

「っしゃぁ! 腕の見せ所やな!」

「んでー、ダグ達は高い場所に、これを塗りこんでいってくれ。

 ついでにそこにレンガを置く際には頭に乗っかるから」

『ッbbb』

 

一応監督さんに高所用の機材がある場所も教えてもらってるんだが

元々このダグ達、三人で速攻でトーテムポール作れる程バランス感覚に優れている。

故にそんなもん使わなくてもこいつらが居れば事足りる。

 

 

 

ぬーりぬーりぬーり。

 

レンガを並べ、レンガを並べ、レンガを並べ。

 

ぬーりぬーりぬーり。

 

レンガを並べ、レンガを並べ、レンガを並べ。

 

 

「っふぅー……こっちは結構しんどいなぁ……

 ミルタンクー、うちにミルクちょーだいー」

「ンモォォン」

「あ、俺も頼むわ。喉渇いた」

「ンモォォン♪」

 

水筒に乳を搾り出してもらい、ぬるいまま一気に飲み干す。

ゴッキュゴッキュゴッキュ。

 

『うーーまーーいーーぞーー!!』

 

たまんねぇッ! マジうめぇッ!

 

「あ、アカネさん、そこちょっと歪んでますよ」

「ぅお、マジか。気ぃつけるわー……ぬりぬりっと……」

 

 

ぬーりぬーりぬーり。

 

レンガを並べ、レンガを並べ、レンガを並べ。

 

ぬーりぬーりぬーり。

 

レンガを並べ、レンガを並べ、レンガを並べ。

 

 

「ふぅー……ちょっと疲れてきたなぁ……」

「ん、そうっすねぇ。今は14:30ってところか……おっしみんなー、小休止取るぞー」

 

『サーイエッサー!!』

 

 

 

 

「いやーこういうのも楽しいもんやなー!

 バトルばっかしてる子らにもさせてみたいわー!」

「モノを作るってのはそれだけで楽しいもんですしね。

 ずっとやり続けてるとさすがに飽きが来ますけど……悪い事でもないでしょう?」

「うんー。もっさんが言う事もわかるにはわかるけど

 うちはこういうのも結構好きやな。『有り』やと思う」

「実際んとこ、作業も結構な勢いで進んでますからね。

 これはかなりのハイペースだと思いますよ」

「まあ、明らかにドレディアちゃんの質がやばかったなぁ。

 朝のあれがなかったらもーちょい時間掛かってたんちゃうん?」

「そっすね、ドレディアさん一人でパワーポケモン4、5人分働いてましたし」

「ホンマに、可憐な癖によぅ頑張りよるのう、ドレディアちゃん!

 くのっ、くのっ♪」

「ディ~ア~///」

 

アカネさんに肘でつんつんとされて真っ赤になるドレディアさん。

褒められてまんざらでもないらしい。

 

 

んで、休憩が終わった後も同じように繰り返し。

後半はダグの頭に二人で乗っかって、高い部分を埋めていく。

高い部分で歪んでしまった所は、ミュウのサイコキネシスで微調整を行ってもらった。

 

 

 

 

そして16:00頃───

 

 

 

 

「かーーーんせーーーーいッッ!」

 

『イエェェェェェェェェェイッッ!!』

 

 

一応内部が完成した後、外側からも見てみたが

まだ溝の部分の材料が乾ききっていないため、外から見ると色合いにムラがあるが……

多分ここまで仕上げちまえば、素人作業で考えるなら及第点と思われる。

内側から見て気付ける(ゆが)みも、ミュウが居たおかげで違和感はしっかり取り除けている。

これにて担当工区、作業終了である。

 

「よし、そんじゃあみんなで監督さんに報告に行くぞー」

「ドレディアー!!」

『ッッッ!!!』

「ホァ~!」

「ミュゥー!!」

「オッケーやー!」

「ンモォーン!」

『オォッス!!』

 

 

 

 

「あ、監督さーーん」

「お、どうした坊主! そっちの作業はどんぐらいまで行ってる?」

「無事に終わりました! 最終チェックお願い出来ますか?」

「おう、終わったか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……終わったの?」

 

「え、はい。」

「(゜д゜)」

 

あれ。

 

「……まあ確かに考えてみれば、あの朝の作業の早さがあればわからんでもないか。

 んじゃぁ、ちょいと仕事の出来栄え見せてもらうかね。

 こっちもプロだからな、残念な部分はきっちり残念って言わせて貰わんとな」

「あい了解っす、それじゃこっちにお願いします」

「んっふっふー、おっちゃん驚いたらあかんで? うちらチョー頑張ったんやで!」

「ハッハッハ! なーに大丈夫だ。大人を舐めちゃいけねえぞ?

 あの仕事の速さで……なおかつ坊主は『終わった』ってきっぱり言ってんだ。

 しっかりと終わったって目安の見える範囲で仕事をしたんだろ?」

「ううむ、まあそうなんですけど。

 もうちょっと子供がやった事的な扱いをしてくれても

 いいじゃなかろうかと思ってしまいます」

「ハッハッハ、なーに。

 坊主が達観してんのはあの朝の会話でしっかりわかっちまってるしな!」

 

工事帽の上からぺしぺしと軽く叩かれる。まあ悪い気もしない。

 

そうして俺らは作業を終了させた場所に向かう。

 

 

 

 

「うーむ、まさかここまで仕上げてくれるたぁなぁ……

 瓦礫の撤去も完全に終わってるし……」

「いい感じっすか?」

「おう、ここまでやってくれりゃ上出来だ。

 ただまあ、さすがに全体的に見れば素人作業っぽい箇所はあるがな」

「んーむ、結構頑張ったんすけどそういう点はやっぱ目立ちますか」

「んだぁな、でもここまで形が出来てんなら、あとは俺一人で微調整出来るしな。

 きっちり戦力として働いてくれたようで何よりだ」

「ういっす。ありがとうございます。

 みんなー、お褒めの言葉を頂いたぞー!」

 

『イエェェェェェェェィ!!』

 

こんなわけで、作業終了予定から二時間ほど早いが

俺らのポケモンタワー修復作業は完了したのだった。

 

ちなみに現場監督さん曰く、予定ではここまでの内容に至るまで三日を予定してたそうな。

改めて自分達の面子がどれだけ化け物なのかよくわかる結果である。

 

 

 

 

そして場面は作業待機小屋……俺らは監督さんと一緒にここまで戻ってきた。

今日の給料の手当ての件である。

 

「うっし、それじゃ今日の手取りだ。えーと……ちょっと待ってくれなー」

「はーい」

 

監督さんがそろばんを用いて、緻密な計算を始める。

 

まあ素人考えではあるが、今している計算はおそらく日数的なものだろう。

これから5、6日かけてやる作業が一気に短縮された分、人件費の浮きを計算しているのではなかろうか。

 

もちろんの事、その浮き全てが全部俺らに入って来るほど社会は甘くない。

 

例で考えて、5日で掛かる人件費が300万、1日60万掛かるとして。

今回俺らがやった作業が丸々5日分だとしたら240万浮いている事になる。

 

しかしその金額が浮けば浮くほど会社の利益が増えるわけで

ここでその240万全てを功績者に渡すお人よしな会社は

他の悪い事を考える会社にあっさり飲まれているはずだ。

 

それこそ、浮いた240万から60万を差っぴいて俺らに渡したとすると

俺らは一日でもらえる給料が60万だったはずが120万。

 

※厳密には俺ら全員で60万では無い。

 今日監督さんの下に付いて働いていた子も含めて60万の計算である。

 加えて今回の説明全てが『あくまでも』例なので事実ではない。

 

会社側は元々の工程で300万掛かる費用が120万で済み、浮いた金額が180万。

どっちも得をするWin×Winが成立する。

全部よこせよ、と思う人も中には居るだろうが……それなら俺は逆に()(ただ)す。

 

 

貴様は。

 

自分が監督さんの立場に立って。

 

浮いた会社の利益を全部貢献した相手に渡せるのか。と。

 

 

要は妥協が大事なのだ。ちゃんとした線引きをするのが大切である。

 

 

そして監督さんは計算が終わったようである。

 

「ふー、待たせてすまなかったな」

「わくわく、わくわく♪ うちらはいくら貰えんやろねー♪」

「まあ俺は別にいくらでもいいっすわ。修行の場所提供してもらってるよーなもんですし」

「お、いいのかッ!? じゃあ給料がっつり減らしても───」

「ドレディアさん、今から二階行ってきて壁半分壊してきて。」

「だーーーーーーーッッ!! 無し無しッッ! 今の無しッッ!!

 俺が悪かったッッ!! 勘弁してくれッッ!!」

「うむ、よし。ドレディアさん、キャンセルでお願いします」

「ディーァー」

 

繰り返す。妥協は大事なのだ。みんなはこんな脅しやらんように。

やったらクビどころじゃ済まんぞ。最悪の最悪で裁判にも発展しそうである。

そんな実例あるかどうか知らんが。

 

「ん、ゴホン……そいじゃ、チーム全体での歩合だったよな?

 今日の作業場での完成度を見て───全員合わせて40万とさせてもらおう、問題無いな?」

「……タツヤん、これって多いん?」

「すっげー多い。」

「おぉ、やっぱ坊主はしっかりと相場わかってるか。

 有難い話だ、こっちも社長に良い報告返せそうで嬉しいぞ」

 

 

元々、一人頭が5,000円と見積もっていた。

俺、ドレ、ダグ、ダグ、ダグ、ゴウキ、ハカイ、ミュウ、ミロ。

アカネさん側が、アカネさんとミルタンク、これらで11人。

一人5,000円だってんなら当然11人で55,000円である。

 

つまり40万って事は、一人頭で考えて、適当に計算しても日給36,000円前後である。

 

社会人は大体の人が週2日の休みで働く。

一月(ひとつき)が30日で大体4週間。22日働いたとしよう。

22日×36,000円。月の給料が約780,000円である。

 

どれだけ多いかわかって頂けただろうか。多分人気ホスト並であろう。

まあ、中身が年相応のアカネさんにこの計算を速攻でしろってのは無理な話。

俺は俺で価値観がわかってればそれでいいのだ。

 

 

「そんなわけで、っと……よし、40万きっちり入れたからな。

 坊主に嬢ちゃん……今日は本気で助かった、飯もえっらい旨いもん食わせてもらったしな。

 明日にはこの現場も引き渡せそうだ」

「おお、そんなに早いっすか」

「それだけの仕事をお前さん達はしてくれたって事さ」

 

やはり褒められるのはくすぐったいが、気持ちが良い物である。

 

「それじゃあ、今日はどうもありがとうございました」

「おっちゃん、ありがとうなー!」

「おう! こっちこそありがとうな!

 また機会があったら是非頼みたいもんだ」

 

 

 

こうして、連携修行は終了した。

 

 

 

 

 

 

「はい、それではー。

 今日もらった給料の分配に入りまーす」

「やたー!!」

「アカネちゃん、お疲れ様」

「ちゃんと修行は出来てたの?」

「ええ、ばっちりですよー」

 

とりあえずは封筒の中から現金を引っ張り出し、ズァッと横に広げる。

 

「え───」

「な───」

 

ミカンさんともっさんはその光景に非常に驚いているようだ。

まあ40万なんて大金なかなか見ないだろうしな……無理もない。

 

「さて、と。計算は結構ざっくばらんにやります。

 そいじゃアカネさんとミルタンク。

 二人の参加で一人40,000円。計80,000円でOKですか?」

「んっふっふー、駄目に決まってんやろ? その倍はもらわんと───」

「了解ー、それじゃ2人合わせて20円で。

 はいこれ、お疲れ様」

 

俺はポケットから10円玉を二枚出して、二人に向かって放り投げた。

 

「ごめんなさいごめんなさい。こんな場所で欲長けてごめんなさい。

 一人4万でいいです。訂正します。ごめんなさい」

「それでよし。じゃ、これ収めてください」

 

ふざけた事に対してふざけた内容を伝えて黙殺完了。

4万でも若干多めに手渡してるのにそれに文句をつけるとは何事か。

 

「う゛わ……ミルタンク……8万やで8万……

 これ地味に凄くない? やばいでこれ。」

「ンモォオーン!」

「う、うらやましい……! こっちは1500円しか稼げてないのにっ……!!」

「すごいねっ、アカネちゃんっ!!」

「んふーふーふーふー♡」

 

プリキュア達が寄り集まって結果に関して色々話し合っている。

もっさんはお金よりプライドを選んだんでしょーが。文句を言うでない。

 

そして残金は32万。

 

「ゴウキ、ハカイオウ」

『オッス?』

「お前達は一人頭5万だ。修行が終わった後にそれぞれのパートナーに渡してやんな。

 きっと喜んでくれるぞ」

『オォォォッス?!』

 

【いいんすか師範!?】と投げかけてくる2人。

何……問題は無い。俺だって人のポケモン酷使して得た金使うほど、人間捨てちゃ居ないからな。

 

「お前等が頑張って稼いだ金だ、まあ建前は修行って形だけどな?

 ほら、大事に持っておけよ」

『オォッス!!』

「まぁうちらと比べて完全に疲れる作業、一手に担ってたしな……

 うちらより高くなるのも当然やなぁ」

 

こうして5万5万と手渡し、残金22万。

 

「ミュウ、お前も4万だ」

「ミュゥー!」

「お前はまだお金の価値もそこまでわかっちゃいないだろうけど

 4万もあればお菓子とかも沢山買えるからな、でも一気に使いすぎちゃだめだぞ?

 残ったお金がドレぐらいの価値のものかとかってのは、その都度聴きに来ていいから

 無駄に増徴して一気に使いすぎないようにな」

「ミュウー♡」

 

そうして、ミュウにも4万円入りの封筒を渡しておく。

 

「んで、これの残りが俺らの取り分だ。

 合わせて18万だな、このお金は俺が管理する」

「ディーァ」

「ホァ~」

『ッッッbbb』

 

特に否定もなく、俺の手持ちの子からは同意を得た。

元々しっかりと堅実に金を使っていた実績を認めてもらえたのだろう。

もちろん全額生活費に回さず、半額位はそれぞれの贅沢に使わせてあげるつもりだ。

 

「よっし、これで今日の修行は完全に終了だッ!

 旨い夜飯食って、また明日も頑張るぞー!」

 

『イエェェェェエエエイッッ!!』

 

 

 

今晩のご飯も盛り上がりそうである。

 

 




工事現場ルールは殆どうろ覚えです。
適当にオリジナルも入ってますのでこれが全てではありません。
ついでに言えばこういう解体作業は埃が舞いやすいため防塵マスクは必須です。
でもここはポケモン世界なので、見た目の想像し辛さからつけさせてはおりません。

とりあえずな、ネットの情報だけを鵜呑みにして
工事現場の人達をドカタ程度のヤツだと卑下するヤツは一度考え直せ。
彼らは確かに気性も荒いし、すぐに怒ったりもする。

けど俺らが住んでる家の一つ一つだって彼らが存在しなければ
ひとつとして出来てないんだぞ。
学校で全部習えるもんとは訳が違う。馬鹿にしてるやつは思い直せ。

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