うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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短い+厨二病



多くは言わん。気に入らないならPCを投げ捨てろ。


63話 鳴く声

 

「……なんだかんだで、まあ……うん。

 一週間なんてすぐだったな、2人とも」

「メッサツ。」

「ッシャァ」

 

 

学力テストの結果発表を終え

俺は二人を連れ出しポケモンセンターの裏、施設の外に出てきている。

 

 

「お前等は、どうだったかね?

 俺も『育て屋』って名を出して、人のポケモンを育てたのは初めてだったんだが……」

 

「……オッス」

 

「オッス!!」

 

 

ゴウキが

【正直、色々な意味で世界が変わったとしか表現出来ません……

 師範には、食事から我の暴走の制御、概念の進化に我自身の進化……

 様々なもので世話になったと自覚しておりますし

 自分自身の正当な評価として、間違いなく主人の一番槍を目指せる力を

 獲得出来ていると判断するに至れる一挙一動を得ました】と述べ。

 

ハカイオウは

【己は今まで、バトルに出ることも無く、ボディーガードが主の日陰者だった……

 しかしこの一週間、色々と考えさせられる事ばかりだった。

 そして日陰者だからこそ出来る戦い方がある事も、知るに至れた……。

 まっこと、感謝の極みに御座います。例えこれからもバトルに出れずとも

 我が主の護衛にメインメンバーの訓練、やれる事に全力で携わる覚悟が出来申した】と述べる。

 

 

評価としては最上級のものをもらえているようだ。おっかなびっくりだった部分もあるし

ゴウキに関しては一度全力でフルボッコにしてしまっているため、怯えさせてしまったかと思ったが

あいつもあいつで、あの時の状態は暴走であったと自覚していたらしい。

 

ハカイオウのほうは、今回初めて聞いた話になってしまうが

やはりメインメンバーにも混ざっていない事から

コクランさんと一緒に居る機会も、試合外での常用といったところなのだろう。

しかし今回の修練でカウンターなる投げのバトルスタイルの開発にも成功した。

下手をすれば、バトルフロンティア入りも夢ではないと思っている。

 

 

良い結果だ、本当に良い結果だ。

持ち主二人は、俺にどう言ってくるか現状わからないが……

カズさんに至っては今の時点でもそこそこ好意的な受け取り方だったし

俺は俺で、本人自身が満足してくれている事のほうが重要だ。

彼らが俺の修練の内容に納得出来ていなければ

俺が教えた事だって、100%を実戦に活かす事は無理なはずだ。

 

 

 

「───そうか、うん、そっか。ありがとう二人共」

『オッスッ!!』

 

 

 

手応えはしっかりとあった。今後の旅でもこれが活きるかもしれないな。

 

 

 

さて、最後の特別授業だ。

 

 

 

「……では、二人共───これより、俺の最後の修練を始める」

「「!?」」

「大丈夫だ、今回の修練は今日やった学力テストに近い。

 体を動かすもんじゃなく、あくまでも概念って感じだな」

 

最後の最後だ。

あくまでも俺の理念でしかないが、最後の一押しとして

一本、ブレない軸を持ってもらおう。

 

「これから話す内容をしっかり聞いてくれ。

 お前等がどう捉えるかにもよるが……聞いて損な話でもないからな」

『……。』

 

 

 

 

「───いいか。

 

 

 今、ここに存在している自分を、常に、最強の存在と思え。

 

 我の他に敵は無し。我に攻め入る者に壁は無し。

 

 想像する自分の姿は、常に最強。

 

 想像しなくても存在する姿は、常に最強。

 

 飛行だ、エスパーだ、草だ、虫だ、そんなものは───……一切関係無いッッ!!

 

 例えどんな戦いでも、どんな状況でも───

 

 自分が立つ山の頂は。常に王者ッッ!!

 

 自分が立てる唯一の場所は、常に最強ッッ!!

 

 自分が辿り付いたその場所は、常に敵無しッッ!!

 

 

 ───どんな時であっても、これを、絶対に、忘れるな。」

 

『───……。』

 

自分を信じる事。

その強さの裏は、自分が努力をした事。

その実力の表面は、自分が成し得て辿り付いた傑物。

 

自分を信じる事を怠れば、自分が自分である事すら不安に感じてしまう。

 

 

だから、俺は。

 

この二人に対して、常に思う事を最後に指示する。

 

 

「……これで、全修練行程を終了する───二人共、今までお疲れ様」

「─────。」

「─────。」

 

俺が修了を宣言した後、正座していた二人は立ち上がる。

そして───

 

 

【【師範、今までお世話になりましたッ!!】】

 

 

そんな意味の眼を俺に向けた後、斜め45度の礼を俺にしてくれた。

 

 

二人と最後の修練を終えて、俺ら三人はポケモンセンターの中に戻ろうと

ポケモンセンターの裏から、ポケセンの入り口に向かい───

 

 

 

 

「──ャー……キュキャー、──ォーンー;;」

 

 

 

 

「……んぁ?」

『オッス?』

 

なんやら、鳴き声が聴こえた。

加えて音の質から鳴き声であり、泣き声だったらしい。

 

「……お前等も、今聴こえたよな?」

『オッス』

 

二人にも、先程の泣き声は耳に届いたようである。

 

「……確か、こっちのほうから声がしたな」

 

俺ら三人で、裏手の横にあった林に足を踏み入れる。

途中途中で聴こえる鳴き声を頼りに、足を進めてみた結果……

 

 

そこには、悲しい鳴き声を上げ、目元を手でこすりながら歩き回る

カラカラの姿があったのだった。

 

「おい、どうしたんだ。大丈夫か?」

「キュキャッ?!」

 

俺が突然声を掛けてしまったが為なのか

カラカラは酷く驚き、足をもつれさせながら逃げ出そうとしてしまう。

しかしそのもつれが致命的だったのか、足に足をひっかけ転んでしまった。

 

「お、おい……大丈夫か?

 俺はお前に何もしないから……安心してくれ。

 それに俺はお前の言葉もきっとわかる、大丈夫だ」

「───。」

 

俺は言葉をかけながら近寄り、傍に腰を下ろした。

 

「なぁ……お前、どうしてあんなに切ない声を出しながら歩いてたんだ?」

「…………キュキャーォン」

 

そいつの言葉に俺は若干動揺してしまった。

 

【おかあちゃんが、いないの。どこにも、いないの。】

 

その意思を目から汲み取り、少し思案してみる……そして一旦辿り付いた結論。

 

「ポケズ、ちょっとカラカラの図鑑データを出してくれないか?」

「あ、はい、了解しました」

 

ポケットからポケズを取り出し、頼み込む。

そして無駄に3Dの立体映像パネルのように、図鑑説明での詳細な文面を確認する。

とりあえず自分の記憶がそこまで間違っていなかった事を確認した。

 

カラカラは、初代の図鑑説明でも他のポケモンに比べて

やたら物悲しい設定を持っているのだ。

全体的に子供向けのファンシーな仕上がりに出来ているポケモン世界の中では

比較的異質な役割を、ゲーム製作者から与えられているわけだ。

 

んで、こいつが話す おかあちゃんがいない の話……

ここは、『シオンタウン』だ。つまり─────

 

 

おそらく、ゲームにも登場していた……あの保護されたカラカラはこいつなんだろう。

 

 

「カラカラ、質問させてもらっていいか?」

「キャォーン……?」

「お前、母ちゃんと別れる前に黒い姿したやつらに追われてなかったか?」

「キュキャー……」

 

その返答からは同意の返事をもらえた……確定、であろう。

 

心の中で、無駄に健全だった前世の日本人らしい倫理が渦巻く。

こんな子を放っておいていいのか。こんな理不尽が許されていいのか。

あの黒い連中を───暴挙を、許してもいいのか。

 

世界的に見ればこのカラカラはあくまでもカラカラだ。

図鑑説明にすら乗る位の不幸要素、つまりはこの世界に居るカラカラが

全員、今目の前に居る子のような境遇なのかもしれない。

 

 

もしそうでも、そうだとしても───

 

「カラカラ。」

「キュ……?」

 

俺はそっと、そーっと自分の手をカラカラの前に持って行く。

そしてゆっくりと、カラカラの目の前を通過させ───

 

カラカラの頭の上に、骨の上に手を置いた。

 

 

「安心しろ、カラカラ──……」

「キュー……」

 

慰めるように、カラカラの頭を撫でてやる。

少しばかりでしかないが、カラカラは落ち着きを取り戻して行った。

 

その上で俺は述べる。

 

 

 

 

 

「───俺が、お前の母ちゃん、見つけてやるよ」

 

 

 

───目の前で泣いてるコイツ一匹を救う位は、許されてもいいだろう?

 

 






大多数の困っている連中の中で、一人だけ贔屓にすれば
他の困っている連中はその一人に嫉妬を抱きます。

だが、それでも。
手を出してしまうのが日本人であろうと思います。

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