うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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さて、一応はタマムシについてからネタもすっごいぐらい入れまくってるんだが
ダグの印象が強すぎるせいで完全にスルーされて終わりましたよの巻。

まあ、おっさんにしかわからんネタもたくさんあるし、いいか。


74話 会談中

 

 

「……駄目だ。それを許容するわけには行かない」

「む、そうですか……」

 

残念な事にあっさりと断られてしまった。

 

「我々は一応、世間様で言う悪事をやらかしてしまってるんだ、その関係上で君のような子供に……

 君が考えている『管理』の範囲が何処から何処までなのかはわからないが

 管理させるとなると、『今までの私達は何のために動いていたのだ』とかの

 組織全体からの突き上げが、随分ときつい事になってしまうと思う」

「ん~俺が管理したいって部分は、そここそが一番重要なんですが」

「……? どういう事かね」

「ちょっと表現が難しいんですが……ロケット団は根元の先から腐りかけて来てるんですよ」

「……末端が、という事かな?」

「そうなりますね、話している限りサカキさんはそこまで悪い事を自分からやるように思えない。

 でも、世間で一通り聞く酷い事件は、どこかしらでロケット団が関わっています」

「例えば、と聞いたら?」

 

聞くまでも無いと思う内容だったのだが……

まあ、それなら現実を教えた方がいいのだろうか? 見て見ぬ振りなら尚更だな。

 

「少なくともシオンでガラガラが殺されてます」

「ッ……」

 

聞きたくなかった、といった感じに呻いて顔を苦くするサカキ。

 

やはり組織の方向性として、命のやり取りまでには手を出していないのか。

そうでなきゃあんなに崇拝されてるなんて事、あるわけ無いよな……。

 

「極力簡単に述べるなら……ですが。

 悪事というものを軽く考えてる愚か者達を、今切り捨てられるなら

 ロケット団はまだ健全化する事が可能だと思ってます」

「───切り捨てられた者の末路は?」

「切り捨てられる理由があるから切り捨てられるだけです。

 俺はそれに関しては、自業自得としか言えません。

 さっきの顔色でわかりましたけど……ガラガラ種からの骨の強奪は

 ロケット団では合法ではないんですよね?」

「……あぁ、その通りだ。その件で私が弁明したところで何にもならないだろうが……」

 

そう言うと、サカキは椅子に座りままうなだれて、深く深く溜息をついた。

 

どうやら禁止事項としていたのは本当の事らしく

サカキは額に手を当て、本当に残念そうに首を振った。

そして、ひとまず落ち着いたのか俺に再度目線を合わせて来る。

 

「正直に話そう」

「ん……何を、ですか?」

 

サカキがなにやら、突然決心したかの様に話しかけてきた。

 

「私は君がここを尋ねて来たと、内線で聞いた後にだが……

 今日がロケット団の命日になると、私は思っていたんだ」

「あれ……俺なんて存在が来るだけで、そこまで切羽詰るぐらいにやばい事なんて俺やってたっけ」

「ハハハ、なかなか愉快なジョークだね。

 あのサントアンヌ号で、私のロケット団人員が1/4は乗り込んでいたんだよ?

 それを計画ごと完膚なきまでに粉砕するのは、私達に取っては危険極まりない事だよ」

 

……なるほど、客観的に考えればそうもなるか。

 

俺からすれば道端にあった巨木が邪魔くさいからダイナマイトを仕込んで爆破した印象でしかない。

しかしやられた側からすれば、綿密に練っていた組織の命綱に関わる作戦だったらしいし

そんなもん一回でもぶっ壊してたら、組織に指名手配されてもおかしくなかったなぁ。

 

「なんかすんません。でもまぁ……

 あれはそちらも悪事とわかってたでしょうし、お互いイーブンでお願いしますね」

「あぁ、わかった。むしろあれは子供一人を止められない私達の作戦に

 落ち度があったと思っているから、その件については大丈夫だよ」

「はい、了解です」

「それに……君はひとつ、何かを忘れてないかい?」

「……この会話の流れなら、やばい事に繋がる事ですよね?」

「あぁ、そうだ」

 

 

んんー? 俺がロケット団に対して印象付けるような何かをやらかしたのは……

やはりサントアンヌだけだよな。うん。

 

トキワ近くの三人や、ポケモンタワーの三人は

連絡が取れないという所までは調べられているかもだが

さすがに司法取引やら何やらを混ぜてもそこから『俺がやばい』とはならないよな……?

 

「お前等わかる?」

「ディーァ(フルフル)」

『(フルフル)』

「ホァ(ブルンブルン)」

 

うんまあ、そうだよな。お前等ずっと一緒に居たしなぁ……

 

「ギブっす、サカキさん。答え教えてください」

「本気で気付いていなかったのか……w

 

 ───ならこう言えばわかるかな?

 

 ……私は、『誰の弟子』だい?」

 

「あーそこか。そういう事か」

 

 

素で忘れていた。

俺自身、母さんの事をそこまで意識して無いからな。

しかし、うん……確かに、そうだな。

自分の弟子が悪の組織を運営してましたなんて母さんが知ったら

多分6秒で、この基地が蒸発するんじゃないだろうか。

 

 

俺って存在をつっついて、母さんって存在がしゃしゃり出てくるのが

サカキにとって一番都合が悪い事だったって事か……案外紐無しバンジーで生きてんなぁこの人。

 

 

「もうわかってもらえたようだね。

 もしもあの人が報復なんてことで動いたら、下手したらこの基地どころか

 タマムシシティひとつが丸ごと崩壊してしまう。

 その人から最大の愛を貰ってる子供が目的も告げずに私の前に現れたら……。

 まぁ、そういうことさ……あとはもう、言う必要もないね?」

 

「ええ……すっかり失念してました。

 まぁ俺にとっては母親っていう、傍に居るのが当たり前の存在ですから気付けませんでしたよ……

 その血縁上、常にイカれた存在が後ろ盾になってるのを」

 

まさに灯台下暗しと行ったところか。

周りが明るく見えていても、案外自分が持っている力に関しては気付けないもんらしい。

 

でもタマムシシティ消し飛ばすとか正気か? そこまで酷い存在じゃなかったと思ったんだが。

うちの母親の構成物質はタンパク質と血液ではなく、プルトニウムや放射能とかなのか?

 

「その様子だと信じていないようだね。

 君がシオンにいた時に噂話で聞いた事が無いかい?

 警察署を更地、または廃墟に変えた『人』がいる、って」

「    」

 

 

あれかよ。

ポケモンを大暴れさせて更地に変えた、と思ったら人一人で暴れまわって更地にしたんかい。

俺の母親は宇宙物質で出来ていたらしい。アルセウスさん、なんとかしてください。

 

 

「ハッハッハ、やはり現地じゃまだ噂として根強く残っていたか」

「てかそれもう伝承の類じゃないっすか」

「師匠なら語り継がれても何も問題なさそうだ……」

「うちの母親がなんかおかしいんだが……」

 

 

二人して頭を抱えてしまう。

 

「まぁ……サカキさんの言いたい事はわかりました。要するに俺の存在が不気味すぎたってことですね」

「ご存知、いや……ご覧の通りといったところか? ……会計も不在で非常に切迫していてね。

 この施設から、何かを持ち出そうとしているんではないかと疑っていたのさ……」

「……んー、サカキさん。そこまで酷いんだってんなら……

 この基地、当然隅から隅まで探しましたよね?」

「 ? それは当然だが……不要な嗜好品なんて金の無駄だからね」

 

あー、これやっぱ気付いてねえな。

まあ原作でもダウジングマシンですら反応してなかったし無理もねえか。

 

「少しだけ席外してもいいですか」

「え、ど、どうかしたかね。何か不備でもあったかい?」

「不備っちゃ不備ですね。ちょっとカードキー貸してもらってもいいですか? B1Fに戻りたいんで」

「あ、あぁ……では、これを」

「ええ、確かに。すぐに戻りますんで安心してください。

 お前等もここに居てくれ。多分5分あれば戻るから」

「ディ」

「ホァ」

「△~」

『───b』

 

そういって俺は部屋を出て、団員の人と顔で礼をし合ってエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

 

B1F、とある空き部屋近く。

正面の階段入り口から見て、左の空き部屋手前である。

 

 

「おい。今なんかボスの知り合いって子供が入っていかなかったか?」

「あぁ、ボスを放っておいて何してんだろうな」

「……見てみる、か」

「まあこんぐらいなら何も言われんよな」

 

 

そうして、二人の団員がタツヤの入っていった空き部屋を覗く。

幸い隠すつもりも一切無いのか、タツヤは扉を開けっ放しだった。

 

 

そして当の本人は、部屋の中をごそごそしている。

 

 

「……くしょー、ゲームだとモノもなんも一切なかったのにな……

 さすがに現実じゃ物置程度にゃなっちまってるか……」

 

どうやら地面をごそごそと探り当てているようだ。

他に乱雑に置かれているものがあって、効率としてはあまりよくないようだが。

 

「……なにやってんだ? あれ」

「わかんねえ。確かこの部屋ってダウジングマシン使っても反応なかった部屋だよな」

「だな、間違いねえ。そんな部屋で一体何して───」

 

 

 

 

 

 

「あったぁーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

タツヤは きんのたまを てにいれた!

 

 

 

「「嘘ぉーッ!?」」

 

覗いていた二人は、当然ながら驚く。

ダウジングマシンとは、基本探しているものに対して敏感に働く。

ここの部屋に探りを入れた際にはもちろんの事『金目の物』という指定だった。

 

そしてその機械に反応が無かった所から彼は金の玉を引っ張り出したのだ。

驚かれるのも当然の事である。

 

 

「っと、すいません奇妙な行動してて。

 この金魂も、元々この基地にあったのは理解してますんで

 サカキさんにちゃんと渡すから安心してください」

「え、あ、はい。了解っす」

「じゃあ、俺ちょっとB4F戻るんでこれで……」

 

言うが素早く、シタタタターと軽やかに立ち去ってしまった。

 

 

そして取り残された団員は思う。

 

 

『なんなんだあの子供……』

 

 

 

 

というわけで。

サカキさんの、えーと、ボス部屋? いやなんか違うな……まあいいやどうでも。

さっきまで話し合っていた場所に戻ってきた。

 

ガチャ。

 

 

扉を開けたらそこにはカオスが広がっていた。

サカキが椅子から離れて土下座に近い体勢でへこんでおり

その周りではダグトリオが三人して、サカキに対して慰めをしているようである。

なにしてんだお前ら。

 

「そ、そんな……君達は……君達は特性として……!

 タツヤ君の元でなければ、真価を発揮出来ないのか……!!」

『;;;』

「くそっ……地面タイプを主に使うジムリーダーとしては

 君達がどれだけ素晴らしいのかよくわかるというのにっ……!」

『─────。』

 

なんとサカキは手のひらで目頭を掴み、割とガチ泣きしていた。

……なるほど、戦力として考えれば確かにこのダグ共は地面タイプでは最強の一角だ。

それが特性上、未来永劫自分の手で使えないのはきついものがあるのだろう。

 

ポンポン。

三者三様に、サカキの肩を叩いている。

 

「……あぁ、すまないダグトリオ。ありがとう。私としたことが取り乱してしまったか……

 いや、君達がとても素晴らしいのは確信している。

 誰も理解者が現れずとも、私はいつでも君達を認めるからな」

『ッbbb』

 

ビシッとサムズアップで答えるダグ共。

 

まあ、ここらでいいか。

 

「ただいまー」

「ッ!? うっ、お、おかえり、タツヤ君。……まさか、見られてしまったかな?」

「サテナンノコトダカ。

 ま、それはさておいて……サカキさんこれどうぞ。なんかの足しにでもしてください」

「ん、これ、は……!? ……今君は、話し合いの最中でありながら部屋を出て行った。

 そしてなおかつ私にカードキーを借りて……ッ!? まさかこれは基地の中にあったものか?!」

「そうです。ちゃんと探さないと駄目ですよ」

「い、一体何処から……既にめぼしいものはダウジングマシンで拾い上げたはずだが」

「B1Fの、えーと……入り口から見て左の物置ですよ」

「そこもしっかり探している……うむ、間違いない。

 資料でもチェックマークがついているな」

 

サカキはデスクに積み上げられていた書類のうちからバインダーに挟まれたものを引っ張り出し

自分達が探したであろう場所をしっかりと示したページをガン見している。

 

しっかし、そこまでしてんのか。どんだけやばいんだよここ……。

 

「ま、そういう事です。俺は『知っていた』んですよ」

「……『生まれた時から』という話の、アレかい?」

「そうです。あくまでも情報でしかないですけどね」

「……君を私の団の管理者にした場合は?」

「あ、そっちは完全にイレギュラーです、すみません」

「う、む、そうなのか。なるほど……確かに予知夢やら先見予測とはまた違うものだな」

「ま、そんな所ですね……都合のいいもんじゃありません」

 

 

未来なんて切り開いてナンボである。

決められた未来ほど詰まらんものはないだろうなぁ。

 

 

「とりあえず……改めて聞いておきますか。俺に、色々任せてみませんか」

「…………。」

「サカキさんも、薄々気がついてんでしょ? 俺が普通の10歳児じゃないって事ぐらいは。」

「……やはり、それを置いても君の存在を許してしてしまうと

 ロケット団として……団体として体裁を保てなくなる。そうなってしまっては元の木阿弥だ」

「んーむ……」

 

 

まぁ……確かに団体としては、団体で動けなきゃむしろ一緒に居る事がデメリットになるな。

一応はアタマ張ってるこの人が言ってるんだから、そこら辺は間違いない内容なのだろう。

 

むしろもう母さんにチクって更地に変えたほうが早いだろうか?

俺はあくまでもロケット団に張り付いてる膿が気に食わないから掃除しようとしてるが

別に悪の組織がひとつ滅んだところで俺は痛くも痒くも……って、駄目だ。

 

 

留置所のあいつらと、約束したばっかじゃないか。

いかんいかん、ロケット団の体裁を……ん、母さん、体裁……更地、潰す……?

 

 

 

「あ、閃いた」

 

 

 

そうだ、そうしてしまえばいいじゃないか。

 

「どうしたんだね、今、閃いたと言ったか……?」

「ええ、サカキさん。とてもいい事を思いつきました。

 ロケット団、一旦潰しちゃいましょう」

 

潰した後で再構築すればいいじゃないか。

 

潰す前に膿を取り払って、んでもって再度別の形で結成して

中の面子は旧ロケット団から動かず同じ面子……これならいろいろなところにも顔出せんじゃないかな。

 

「つ、潰すって……そんなに簡単に行くものではないよ?

 もし仮に潰したとしても反発は必須だ、それをどう抑えるつもりだ?」

 

んっふっふ、そんなものは閃いた際に既に考えてある。

 

 

ビッシッ。

 

「!?」

 

失礼ながら、サカキに指を差させて頂く。みんなは人に指なんぞ差しちゃいかんぞ。

 

「サカキさん」

「な、なんだね……?」

「御輿に、なってください」

「……すまん、意味がよくわからないんだが」

「要するに、何から何まで解散方向で全てでっちあげたり、勘違いさせます。

 その後の説得やら、構成やらをサカキさんの威光でなんとかします」

「……ハハハ、そんな事出来るわけが」

「出来る。」

「ッ……」

 

実際この人は稀有な立場にいるのだ。

表のトレーナー代表格でありながら、裏の悪の組織の首領。

これほど都合のいい肩書き、使わずしてどこに用いるか。

 

「サカキさん、内情的には俺が貴方を操る事になっちまうでしょう。

 それでも、信頼してみてもらえませんか?」

「───……信頼、か」

 

その一言に反応し、サカキは一人自然とつぶやく。なにやら思い至るものが有ったらしい。

 

「答えを聞く前の最後の質問です、サカキさん。

 

 貴方は───プライドと自己保身を取るんですか?

 

 それとも──みんなで楽しく飯を食べていける道を取るんですか?」

 

「……。」

 

「前者になんの意味があるんでしょう。なんの価値があるんでしょう。

 そんなモノなら……大事な、大切な人達と一緒に歩んで行くために捨てる事ぐらい、出来ますよね?」

 

「そう、だな───」

 

……なるほど、そういう事か、

 

今のサカキの様子を見てわかった事がひとつ増えた。

団員達は盲信と言える程にサカキを信頼しきっている。

 

そして、同じく。

 

サカキも、自分の組織の構成員であるロケット団員に対して全幅の信頼を寄せていたのだ。

 

……本当にやるもんだな、サカキ。この組織は完全に一枚岩らしい。

 

 

「───さて、サカキさん……あなたは、どちらを選びましたか?」

 

「ふ───当然…… 後者、だ。」

 

 

 

 

その言葉を聴き、俺はソファーから立ち上がる。

 

同時に、サカキも対面のソファーから立ち上がった。

 

 

お互いに何も言わずに、手を前に出し。

 

 

そしてお互いの手は交差をして……互いの手を握り合ったのだった。

 

 

 




さて、あさきゆめみしまで頑張ろう

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