うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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ポケモンとはなんなのか。





76話

 

 

さてまあ、WM(ダブルミュウ)を引き連れて基地に戻ってきたはいいのだが

俺は一体目の前の人物をどう取り扱えばいいんだろう。

 

 

 

「す、すまなかったタツヤ君っ!

 いくら体調が優れないからといって客人に全てを任せてしまうなどと……!」

「いやまあそれはいいんすけどね……それ、団員さんが着替えさせてくれたんですか?」

「ディーァ」

「え?」

 

俺が指差すはサカキさん。

サカキさんが目の前に居るのに『それ』と伝えサカキさんを指差す。

 

 

つまりは、サカキさんの服装。

 

 

 

ダッ!   バァンッ!!

 

 

 

それに気付いたサカキさんは、ダッシュで元居たと思われる仮眠部屋へと突っ込んでいった。

 

 

まあ、うん。

 

 

パジャマだったんだわ。あのおっさん。

しかもイーブイとかエルフーンとかポッチャマとか、可愛い系の柄。

あんなのが原作じゃシルフカンパニー占拠したのかよ……。

 

 

「す、すまなかったタツヤ君っ!

 いくら体調が優れないからといって客人に全てを任せてしまうなどと……!」

「いいえ~。体壊してその後使い物にならなくなる方が怖いっすからね」

「うむ、まあそうだねハッハッハッハ」

「ハッハッハッハッハ」

 

 

乾いた笑いが響く。互いに無かった事にしようとしている辺りが非常に白々しい。

 

 

「んで、サカキさん。助っ人としてこの二匹連れて来ました」

「む……? 一体何に対する助っ人かな」

「あーそういやサカキさんが出た後に勝手に思案して連れてきたんだっけか。

 こいつら頭良いんで、書類整理ぐらいならすぐに即戦力になると思いまして」

「ほぉ、そうなのか。見たところバトルも非常に強そうだが……

 少し難しいものを取り扱っているが、君達は大丈夫かな?」

【ふ、なめるなよ人間……書類なんぞというものでこの私が止められると思ったか……!】

「ごめんなさい、この子ちょっと厨ニ病なんです」

【おいコラ貴様ぁ!!】

「はっはっは、賑やかで結構結構。わかった……頼りにさせていただくよ」

 

反応から見る限りやはりこの世界はゲーム順所らしい。

アニメだかポケスペ? だかの設定じゃ

ロケット団がミュウツー作り出したとかってのもあった気がしたが

リーダーであるサカキが一切WMを存じていないらしい。

 

「ま、互いに顔合わせも済みましたし……

 なるべく早く片付けて、少しでも整理を進めておきましょう」

「うむ、わかった。では部屋へ向かおうか」

【はーい】

【ふん……】

 

 

 

 

【何故だ……! 何故私はここにいる……!】

 

 

ミュウツー使えねえ。駄目だこいつ。

まさか初代の文句なし最強ポケモンが事務に至ってはただの燃えカスとは思わなんだ。

 

【何故だ……! 何故私はここにいる……!】

 

 

ミュウツーは、さっきから懇切丁寧に教えている書類整理に関する知識が全然頭の中に入らず

さっきから白い頭が赤くフットーしかけている。今の発言から察するにもう帰りたいらしい。

 

そういやこいつポケモン図鑑でももっとも凶暴だか凶悪なポケモンって書いてたっけ。

戦闘に特化されたなんたらーってのも見かけたなぁ……。

 

 

つまり、脳筋。

 

 

「おいこらミュウツー、あんだけ大見得切っといてクソも進まないとか

 お前恥ずかしくないのか。おい。おい。返事しろ伝説(失笑)」

【う、ぐ……グギギギ……】

「てかお前等なら同時演算とかなんかそんなの出来そうだと思ったんだがなぁ。

 出来ないんか? そういうの」

【なんだそれは、そのなんとか演算というのは】

「脳みそで3つ4つのことを同時に考えて物事を進める超級能力の事だよ」

【ほう、それは便利そうだな……やってみるか】

 

 

 

プス、プスプス……

 

煙出てやがる……大丈夫かこいつ……?

 

 

【り、理解したぁーーーッッ!!】

 

プスプスプスプス……

 

頭から黒い煙まで出てきた辺りでやっと理解という言葉を聴く。

何個に分けて同時に考えたかわからんけど、それ使ってこの時間かよ。

煙たすぎてサカキさん換気扇回し始めたじゃないか。

 

 

「おつかれ、お前大丈夫か本当に」

【う、うるさいっ! 貴様の様な餓鬼に理解出来て……この私が理解出来ない道理など無いのだッ!】

「お、すんげー頼りになる言葉だなー。んじゃ次のステップに行くかー」

【なん……だと……】

 

 

ミュウツーのバックにイナヅマが走った。俺が教えたのなんざまだまだ初歩の初歩である。

なんでこんな、書類の種類ごとの整理でこんな事になるんだろう。

 

「ほれ、次は書類の中身まで見た上で判別しろ。

 上っ面の文面だけじゃたまに違う内容とかもあるんだからな」

【すまん、もうこの施設を完膚なきまでに破壊して全てを無かった事にしたいのだが?】

「ちょっとオーキド博士にミュウツーは脳筋(失笑)だったって連絡してくるわ」

【やめんかぁーーーーーー!!】

 

頭の中を軽く覗けるためか、オーキド博士というのが

ポケモン図鑑をいじくっている人間だとわかるらしい。

必死に繋ぎ止めてくるのは微笑ましいのか哀れなのか。

 

「つってもよぉ……あっち見てみろよ」

【あっち、だと?】

 

 

 

 

「プランA紙をを頼む」

「ミュ」

「次は会計項目の書類を」

「ミュ」

「諸費の合計金額の書類を頼む」

「ミュ」

「これらを纏めてあちらに固めておいてくれ」

「ミュミュ」

「よし、では次は施設関連の用紙を頼む」

「ミュー」

 

 

 

 

まあこんな感じである。

ミュウは部屋に着くなり、サイコキネシスを用いて紙の透視を行い

何処に何の書類があるのか区別がついたらしい。さすがの幻。

 

そしてサカキに頼まれる度、サイコキネシスをまた用いて

その内容が書かれた書類をズバッとサカキのテーブルまで引っ張り出し、そこに置く。

 

ものっそい効率的である。書類の残りが1/10位にまで減っているぞ。

さっきのパジャマサカキとはなんだったのか。

 

「…………」

【……なんだ?】

「…………」

【……なんだ、と聞いているんだが?】

(……はぁ)

【貴様ッ!? 今心の中で溜息をつきおったな!? な、何様のつもりだっ!?】

「はぁ」

【ぐぅぅぅぅわぁぁあっ!! むかっ、むかつくぅー!

 そこに直れっ!! 成敗してくれるわっ!!】

「あ、マジで? じゃあこの書類群の成敗よろしくお願いするわ」

【        】

 

 

こいつ、何しに来たんだろう。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで何とか書類整理は終わった。

 

ミュウが規格外レベルで有能だったらしく、全体の3/4は片付けてくれた。

サカキと息が合っていたのもあると思われる。

 

こっちも遥かに劣るものの

次第にミュウツーが効率を学び出し、なんとか1/4弱は片付けるに至った。

脳筋と万能の違いだねぇ……。

 

 

【あぁ……空が……空が落ちる……】

 

 

ミュウツーは完全に脳みそがパンクしているらしく正面から机に突っ伏している。役にたたねぇ。

ま、それでも全然働いてくれた方なんだけどな。

 

「ミュミュー♪」

「ん、おうお疲れ。飴ちゃん食うか」

「!? ミュ~~♡」

 

今回の功労者が近くに寄ってきたので、蜂蜜飴をひょいとくれてやった。

 

「うむ、ありがとうタツヤ君。

 まさかあの量が今日中に終わるとは……有能な子達なのだね」

「あぁまぁ、良い意味でも悪い意味でもここまでとは思ってなかったんですけどね」

「ディーァ」

「ホァー」

「ん、お茶か……すまないね。有能な秘書が居るようで、うらやましい事だ」

「お、あんがと。いやまあそんなもんじゃないすよ、ハハハ」

 

もし秘書って肩書きがついたとしても

元ルガールの秘書って感じだ、バリバリ戦闘向けの。

ミロカロスは秘書じゃなくて天使だし。

 

 

 

「さって、それじゃ……本会議と行きますか」

「うむ……よろしく頼むよ、タツヤ君」

 

完全にダウンしたミュウツーは一旦ソファーに転がせておいて

俺達はこれから先のロケット団に関する本会議に移ろう。

 

「んじゃまず、ロケット団は一旦完全に瓦解させます。

 あくまでもロケット団員の都合が、後々まで続く方向で」

「うむ、ちなみに案件は?」

「もしかしたらまだ来てないかもしんないっすけど……

 こう、帽子被ってて……ピカチュウか、バカでけぇドラゴン連れた子がここに侵入した事ありませんか?」

「あぁ……その子ではないかもしれないが

 よくわからんピッピを連れた子になら、一度侵入されたことがある」

「ピッピ……ですか? まあなんでもいいや、その子に一役買ってもらうかなって」

 

この世界じゃレッドさんが侵入したわけじゃないのか。

まー確かにポケモンタワーに居る時点でスコープも持ってなかったしなー……

 

「……なるほど、読めたよ。

 彼にヒーローとして立ってもらって、ぶつかった私達は力及ばず消えて行く、と……」

「そんな感じですね、あとは今の時点できつい資金運用の件ですが」

「!? 既に何か方法があるのか!?」

「どうせ一旦潰すわけですし、この地下基地を不動産に売りに出しませんか?」

「な、なるほど、いっそ守らず換金してしまえ、と……

 ッ、しまった……タツヤ君、それはおそらく無理だ」

「あれ、何故に?」

「この基地は法に基づいて作られていない……私達が密やかに作り出し、勝手に使っているだけだ。

 不動産として売り払うと色々と、問題が発生するだろう」

「あー」

 

俺もさすがにそこまでは詳しくないが

確かに法で考えれば明らかにアウトな気がする。

ッチ……これが普通に認められれば資金の元手、1000万は硬いと思っていたのだが。

 

 

「まあ目の前で用意する金はまだ何かしら方法もあるでしょう。

 ひとまずおいておきますか」

「わかった、やはり都合の良いものなど出てこないんだな……」

「人生と同じですよ」

 

さて、次は合理的な解散方法……かな。

 

「次にロケット団の解散についてですが……。

 ある意味ここが一番重要です。世間にロケット団がまだ生き残ってると捉えられると

 警戒だのなんだのをされて面倒な事になりかねませんからね……。んでもってここでひとつ提案が」

「ん」

「まだ世間じゃサカキさんがロケット団の頭目だという事はバレてません。

 なのでロケット団側のリーダーの役目で、替え玉を用意します」

「なっ!?」

 

サカキがなにやら憤ってソファから立ち上がる。

なんか反発っぽい雰囲気である。どうしてだろう?

 

「……他に何か手はないか?

 私としては、大切にしてきた団員を替え玉に……自分がのうのうと生き(ながら)えるのは無理だ……」

「そこは逆に考えてもらうしかないですね」

「逆とは?」

「ぶっちゃけた話、ロケット団は犯罪集団というよりサカキさんの私設軍団に近いです」

「うむ……? そうなのかな、自分では自覚は無いが」

「んで、その私設軍団からボスが居なくなったら?」

「……かなり危うい事になるだろうね」

 

まさに苺のショートケーキから苺を抜かれた状態になる。なんと無残な光景であろうか。

 

「というわけで、サカキさんが居なくなるって事はゲームオーバーにも近いため、これは必須です。

 逆にここで納得してもらわないと先々でどん詰まりになります」

「ぬ……」

「まあそこまで考えてしまうなら後回しにしてもいいでしょう。

 でも、決断しなければならない時はすぐそこですからね」

「…………ッ」

 

凄まじく苦い顔になってしまった。しかし整理した書類で確認する現状をを見る限りでは

このぐらい乗り切ってもらえないと、ロケット団自体があっさりと潰れてしまうはずだ。

なんとか涙を呑んでもらわねばならないのだ。

 

 

「ひとまずこんなところですね……

 まだまだ決める事は沢山有りますけど……正直ポケセンに帰ってさっさと寝てぇ。疲れた」

「気持ちはわかるが……もうちょっと我慢できなかったのかい?

 せっかくの見せ場だったろうに……」

「理想で寝心地は作れませんッッ!!!」

「ホァ~;」

 

 

だってさぁ、ほぼ丸一日興味すら薄い書類見ててさ?

誰が楽しいんだっつーの。俺なんてやってる最中眠くてヨダレ出しかけたぞ。

 

 

「まぁ……確かに重要な内容ではあるが

 下手に妙な体調のままやってると、変な方向に意見が曲がっていきかねないからな……。

 今日は、この辺りにしておこうか」

「うい、まあサカキさんも多少寝たとは言え眠いでしょう。

 お互い明日に備えてゆっくりしておきましょう」

「わかった、ではまた明日ここへ頼む」

「了解ー、それじゃ今日はこれで失礼します」

 

会議自体はそんなに進んでくれなかったなぁ。団の再生までいつまでかかるやら。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~おまけ~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

とりあえず全員引き連れてポケセンへ戻ってきた。

WMへの報酬については飯を考えているからだ。

 

ポケモンに金なんて渡したところで人間ルールでしかなく、つまらないだろう。

そんなら三大欲求で直接訴えかける、飯を作って食わせた方が満足度が高いんではないかと思ったのだ。

 

 

なおミロカロスとドレディアさんの飯についてはふりかけごはんです。

賭けの代償、ここで受けてもらってます。

ドレディアさんがふりかけごはんの前でガチ泣きしている。

 

 

「んで、結構頑張ったんだけどどうだ?」

【ふむ、悪くは無い】

「む……そうか、満足させれるほど良いモンではなかったか。

 となると、ミュウツーに手伝ってもらうのは今日でおしまいか」

 

一応みんなには美味いと言って貰えている飯だから

報酬としても良い物と捉えてくれるんではないかと思ったのだが。

 

「ま、大して美味いとも思わないもんのためには働かせないさ。

 今日頑張ってくれた分だけでミックスオレ分は帳消しにするから

 遠慮なく帰ってくれていいからな」

【悪くは無い】

 

 

ん、あれ?

 

 

「いや、それはさっき聞いたぞ? お気に召さなかったんだろうし、帰って大丈夫───」

【悪くは、無い】

 

 

なにこのオウムインコ。

白い上になんか腹が紫なんですけど。

 

 

【ターツヤー】

「あん? どした、ミュウ」

【その子、照れてるだけだよ★】

【なっ?! ミュウ、貴様ッ!!】

「はぃ?」

 

いや、どう考えてもそうは見えないんですが。すっげー仏頂面だし、別に頬が赤いわけでもない。

 

【同じような味覚持ってる僕がすっごいおいしいって感じてるんだから

 それが不味いわけは無───もがががががっ!!】

【くそっ、このっ、黙れッ!!】

 

なんとミュウツーはミュウの口を黙らせるためにサイコキネシスまで使い出した。

一応は、美味いという表現の裏返しって事なのだろうか……?

 

 

まあ、明日も普通についてきてくれたらそうだと思っておこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~おまけのおまけ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

あまりにもあまりな夜飯に、ドレディアさんが家出した。

 

 






飯ィーーーッッ


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