「……そうですか」
「あぁ……それが必要というのは、認めたくはなかった。
それでも君に言われてから、認識だけはするようにしていたからね……決着は、ついたよ」
有限会社の弾頭を100%活かす為にどうしても歩かなければならなかった地雷原……
ロケット団の解散は、三週間目にして漸く一息ついたようだ。
「ちなみに、子供の名前ってなんでした? まさかグリーンとかじゃないっすよね」
「む、グリーンとは確かオーキド博士のお孫さんではなかったかい?
さすがに私もそれぐらいは知っているよ」
あー……まあサカキってこの世界限定だとかなり顔広いしな。
グリーンぐらいなら知っていても不思議はないか。
「まあ、それはどうでもいいか……最終的にロケット団の形はどうなりましたか?」
「……幹部達で話し合ったんだが、代役に関しては全員立候補してくれてな。
その一部が出頭して、嘘と本当を混ぜた事情を警察に述べて行くとの事だ」
「……本当に、部下に恵まれてるんですね」
「そんな彼らを、活かして管理出来なかった自分が憎いよ」
話をまとめてみたところ、意外な方向性で解散へ持っていったようだ。
幹部が全員立候補。
その上でボスの存在が外部に漏れていない。
ならばいっそボスは自分達の虚像で、下っ端を動かすための口実だったとしたらどうだ。
どっかの世界の武田信玄化、といったところである。てばさき部隊強いらしいねぇ。
そんな内容になり、初めからサカキがロケット団の内部に存在していなかったという方向性になった。
一応、俺も疑問が残ったので
「サカキさんは一度この基地で子供と戦っている。
その子供がロケット団とサカキさんの関連性についてリークしたらどうするんですか?」
と、問いただした所……
「その子供一人の発言と、最強のジムリーダーの私の発言……どちらの発言が、信じられるかな?」
といわれてしまった。
汚いなさすがサカキきたない。
確かに警察とかの捜査でも、子供の目撃情報とかは無効にする事が多い。
当たり前といえば当たり前なのだが、そういうところで常識を使ってくるとは……。
この世界のロケット団は組織としてレベルが高いようだ。
そんなわけで、ある意味代役を立てるという方法より
サカキの身の上限定で考えればかなり効率的にロケット団の解散は済んだ。
これから動ける幅も増えて行くことだろう。
弾頭の未来は明るそうである。
◇
「───つーわけでさぁ、もっとこう、な? サーナイトにウサ耳をつけたりしてだな」
【しかしそんな事をしてしまえば
ミミロルだかミミロップだかというのとキャラが被ってしまうのではないのか?】
「ばっかお前わかってねーなぁ。───可愛いもんには何つけたって可愛いんだよ」
【なんと、そういう発想か……】
「でもまあやっぱ小動物的な可愛さの方が人気は出そうだなぁ。お前は何か案はないかね」
【その場で言われてすぐ出せるなどただの化け物ではないか。
いくら私が優れているとはいえ無茶振りを出すな】
「良いモン考えられたら夜飯豪華にしてやるぞ」
0.3秒
【人間の行事に従ってポケモンが何か知らしているというのはどうだ。
バレンタインとかいうイベントも貴様達の間ではあっただろう。
その行事に従い、我等ポケモンが笑顔でチョコをだな……】
「お、それなかなか良いな。もうちょっと考えてみようか」
なるほど、行事か……初詣、七夕、運動会……?
……ッ!?
サーナイトに水着ッ!? やばい、これで勝つる。
【貴様の頭の中はピンクな発想しかないのか?】
「うるせー、価値観が違うんだい。ばーやばーや」
「君らは相変わらずよくわからない会話をしているな……」
「ミュゥ」
「お、サカキさん。リーグとの交渉はどうでしたか?」
基地でまたミュウツーと今後の写真集に関して話し合っていたところ
ポケモンリーグにロケット団の引継ぎ的な内容を詰めていたサカキが戻ってきた。
「あぁ、やはり君の言っていた方向性と、部下が見出してくれた道が
凄まじく形になってくれているらしい。
私が『残った連中が暴走しないように面倒を見よう』と言ったら
鶴の一声で会社規模の援助が確定したよ」
「おーぅ、まさかそんなにスムーズに行くとは」
やはり厄介者を引き受けてくれるのはありがたいと思われるようだ。
まぁ、確かにカントーとジョウトじゃロケット団以外に迷惑な団体って居ないからな。
悪の組織のでかいところが消えたら、クリーンなイメージを保てるとでも踏んだかな?
大人達ってなぁ、見栄と面子大切にするからねぇ……。
そして俺は、机に置いているサイコソーダを飲みつつサカキに尋ねる。
「そんで、お幾らほど見積もって貰えたんですか?」
「ひとまずの方向性として、2000万の融資を受ける事が出来たよ」
「ッッブーーーーーーーーーー」
【ぬぁっ?! 貴様、私に向かって噴き出すなァッ!!】
【wwwwww】
【ミュウッ!! 貴様も指差して笑い転げるなァッ!!】
「わ、悪いミュウツー……。に、20,000,000円っすか……」
「まあ、無理もない。正直私も端金を掴まされて尻拭いに回されると思っていたんだが……」
んーむ、これは嬉しい悲鳴と見るべきなのか厄介者として捉えるべきなのか……。
しかしこの金に安心して2000万をすり減らしていくよりは
このままの方向性で地道でも良いから金を稼げる道を探し続けた方が良いだろう。
何かあった時にどちらが対応出来るかと言ったら間違いなく後者である。
◇
とりあえず2000万に関しては、元々後回しにする予定だった開発部に回す事になった。
この金を元手として、研究費用と研究員を弾頭に招き入れて本格的にやるらしい。
まあそんなものは今はどうでもいいんだ。
「お前だってサーナイトが巫女服姿だったらすっげー興奮するだろ!?
正直に言え!! 嘘ごまかし一切無く言え!!」
【馬鹿者ッ!! 貴様の行く道は邪道でしかないのが何故わからぬ!?
時代はファンシーな方向に向かっているのだッッ!!
バチュルとかいう小さいポケモン20匹に囲まれてる姿を想像してみろッ!!
この私でも鼻血を出して一撃必殺だぞッ!?】
「……っへ、お前とは一度拳を交えて話さなきゃ駄目らしいな……!」
【ふん……可愛いモノへの愛に溢れ返った私を倒せるとでも思っているのか!?】
「ミュウ、よかったら一緒にお昼の食事でもどうかな?
たまにはタツヤ君が作った物でもなく、外食でもいいだろう」
「ミュッ!? ミュゥ~♡」
ガチャ、バタン。
「俺のターンッ! 初音ミク姿のミミロップを場に出してターンエンドッッ!!」
【私のターンッ!! 窒素ガスを詰められ飛べなくなって
横たわったフワンテを場に出してターンエンドッッ!!】
あーだこーだあーだこーだ。
俺らの命を賭けたよくわからない何かの会合は基地で夜飯が始まるまで続いた。
◇
良い時間になってしまったので、
なにやら帰り道の向こう側が騒がしい。
「なんだぁ……? ここら辺で騒ぎがあるなんて珍しいな」
【ふむ……? 確かにここら辺の地形は、我等が滞在している上部の階層にある
ゲームセンターとか言う施設のために警察組織とやらも治安に力を入れているようだが】
「確かにああいう遊技場ってのは風紀が乱れて何かしらの問題の種になるもんだが……
お前その詳細どっから引っ張ってきたんだ」
【そこらにいる制服を着た者達の頭の中を覗いたに決まっておろうが】
なにそれ怖い。こいつ野放しにしといていいのか。
【君、とことん俺様体質のままだねぇ……】
「まあ別に俺は困んねーからどうでもいいけど」
【君ももうちょっと危機感持ったほうがいいよ……?】
とまあ、そんな理由は置いといても騒がしいわけだ。一体どうした、ん、だ───
ちらりと見えてしまった光景に俺は思わず頭を抱えてしまった。
騒がしい理由は、だ。
サイクリングロード辺りに居る暴走族とかがタマムシに凱旋しているから、だと思う。
最後尾にはカビゴンも見えるな……。異常な光景だ。
そんで、だ。
そいつらがまあ、暴走とは言えない程度に群がって整列しながら道路を走っているわけなんだがね?
なんていうのかな、ちゃんと一車線を横三台で走ってる感じ。
まるで軍隊パレードをバイクで行進するみたいにさ。
でもって、なんでその団体の先頭がドレディアさんの運転するバイクなんだよ。
【お、おい……あの草の嬢は貴様のところの子ではないのか?】
【うん、ってか間違いなくそうだよね、あれ】
「もう帰りたい……」
どういう事なの……。
「ディッ? ディァ! ディァー!!」
「げっ、こっち気付きやがった」
見てみればあいつ、すっげーにこやかに笑顔向けて来てるし。
ん? 全員に指令を飛ばし始めたぞ。
キッ、キキッ、ザカザカザカザカッッ。
おぉぅ……なんとまぁ、統率が取れている。
全員が路肩に2台ずつきっちりと並べた上で停車し始めた。
「ディーッ! ドレディーァ!」
「うん、えっと、おかえり……。ドレディアさん、何してんのアンタ」
「ディァー、ディァ、ドレ、ドレーディァー。」
…………。
【今日、みんなどっか行っちまって暇だったから
散策してたら前に寝てたカビゴンが居る道に出て、邪魔だったからぶっ飛ばした。
そしたらなんか、姐御と呼ばせてくださいって言って着いてきた。
んでもってそいつが寝てた道の先に行ったらこいつらが居て
やたら絡んでくるから全員、手持ちのポケモンごとぶっ飛ばしたら
俺らのリーダーになってくださいとか言われて、バイクもらった】
…………。
「おい! ガキっ、てめぇ! 姐さんに対して頭が高ぇぞっ!!」
「…………。」
なんかごっついモヒカンが俺に絡んできた。
「この姐さんはなぁっ! 今まで誰も成し遂げられなかった
サイクリングロードの族の統一を果たした偉大な方なんだぞぉっ!?」
「カビッ! カビゴッ!」
カビゴンまで絡んできやがった。
「それがわかったならきっちり頭下げんかいコラァっ!!!」
「俺こいつの主なんだけど」
「すんませんっしたぁーーーーーーーーーー!!!!」
『すんませんっしたぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
「ゴッゴンーーーーーーーーー!!!」
全員一人として息を乱す事なく俺に土下座しやがった。
周りで見ていた人たちもドン引きしてすっごい良い迷惑である。
俺の平穏はどこにあるのー。
まぁ、とりあえず結果としてだが……。
弾頭の構成員が増えた、とだけ追記しておく。
~おまけ~
~ うちのポケモンがなんかおかしいんだが ~
BAD END 4 とりあえず滅亡
fin
ムウマージは相変わらず凄いなぁ