うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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8話 バイト

 

 

ここはトキワシティ。

先日、ドレディアさんとの旅路……あれ旅路かな? とりあえず旅路の果てに

人が住む町へとようやく辿り付いたのだ。

 

 

「ディッ! ドレディァッ!」

 

そしてここはトキワシティ内にある公園的なスペース。

ドレディアさんはそこら辺に出ている露店の食べ物を俺にねだっている。

 

「ドレディアさん」

「ディ~?」

 

 

 

「金が、尽きた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───?」

 

首をかしげられた。どうやらどういうことかわかってないらしい。

 

「金が無い。うまい飯が食えない。俺ら貧乏。俺の財布がストレスでマッハ、OK?」

「??????」

 

ドレディアさんが右手?を顔の顎に当て、可愛らしく首を傾げる。

 

……もしや金の概念がわかってないのか? もしくは俺の説明が悪いのか?

いやまあ、お金なんて人間が勝手に作り出したもんですからね。わからんでも無理ないけど。

とりあえず確定事項はひとつだけあるので、それだけ述べておく。

 

「つまりそれは買えません」

「レ、レディァーーー!?」

 

後ろにズガーンとイナヅマが落ちたようなイメージと共にドレディアさんは仰け反ってしまう。

 

「いや、マジ。これマジ。インド人嘘つかない。マジでインド人を右に。

 試しにそこで売ってるお兄さんに聞いてみたら? 俺今17円しかないよ」

「レ……レ~ディア~……♡」

 

こんなところで可愛らしくキャラを作る安上がりのドレディアさん。

しかし現実は非情である、直後にドレディアさんは深い悲しみに包まれる。

 

「あー、はははは……さすがに17円、じゃね……

 ごめんね?ドレディアちゃん、こっちも生活のためだから……」

「ァ、ァ……アアアァァァァ……」

 

l!li ○rz !lil

 

まさにこんな状態のドレディアさん。

うん、まあ自業自得といえばそこまでだ。だって……

 

 

 

 

 

 

 

 

もうこの街に来てから5日は過ぎてんだもん。時既にトキワシティ。

そりゃーその間ずっと飲み食いしてたら、俺の3000円なんてあっという間に無くなる。

しかも8割ドレディアさんの飲食代である。

 

※宿泊と最低限の食事はポケモンセンターで出来ます。

 ただし最低限。おいしくはない。

 

 

 

「そんなわけで、お金を稼がなきゃなりません」

「レディッ!!」

 

うまいもののためなら、と気合十分のドレディアさん。

 

「しかし、ここら辺のトレーナーはみんな、100円位しかのお金しか取れません。

 ドレディアさんはお金の価値がわからんと思うけど……

 そうだなぁ……100円だと、1回勝ってもお店で何かを買う事すら出来ない位かな」

「ァァァァ……ァァァァ……」

 

またorz状態になり、どんどん失望の色に染まっていくドレディアさん。

なんか今日の彼女、見てておもしれぇな。なにこのかわいいいきもの。

ともあれ、ここで前から俺の考えていた腹案をついに公表する!!

 

「そんなわけでゲーム概念をぶち壊せ・第3段!

 

【別にトレーナー倒すだけが金を得る方法じゃなくね?】

 

 を実地したいと思いまーす!」

「ディーアーッ!!!」

 

一緒に腕を振り上げるドレディアさん。しかしこいつ絶対俺の言ってる内容わかってねえ。

 

まあそんなわけで。

ポケモンセンターの職員さんや、フレンドリィショップの店員さんがいる。

ならそこで使われる機材、道具はどっから生み出されてる?

どこから生み出されてようと、俺にとっては激しくどうでも良いのだが

その答えの先には、ひとつだけ見逃せない点がある。

そう、『生み出されてる』なら生み出す人がいる。つまり働いている。

さらに突き詰めれば『働ける』のだから、これを使わない手はない。

いちいち虫取り少年の70円目当てに相手なんぞしてられん。

 

「と、言うわけで特別ゲストをご紹介したいと思いまーす!」

「レーディー!」

 

ぱちぱちぱち。

ドレディアさんもノリノリである。

まぁ背景がうまい飯のためという、非常にたくましい欲望が渦巻いているのが若干傷だが。

 

「ではご登場頂きましょう、さっきの露店のお兄さーーーん!」

「ドレーディァー! ドレーーーディァーーー!」

「え、ええっと……こんにちわ?」

「はい、こんにちわ!!」

「ディッ!!」

 

つーことで特別ゲストは、さっきドレディアさんが食べ物をねだった露店のお兄さんでした。

 

「な、何の用、なのかな……?

 僕も屋台で売らないとならないから、ちょっと遊んではいられないんだけども……」

「あ、説明全くしてませんでしたね、ごめんなさい。

 率直に言えば、ドレディアさんをお兄さんの店で1日アルバイトに入れて欲しいんです」

「えっ!?」

「ディ!?」

 

ドレディアさんが【私に何やらせる気だ!?】という意思を込めてガン見してくる。

うるせぇ、働かざるもの食うべからずじゃぁ。

俺は働いてなくても消費された3000円は、元々俺の小遣いだから俺はいいんじゃぁ。

 

「もちろん無理に押し付けようとはしてません。

 あくまでも、構わないという感じであればお願いしたいので……」

「そうは言っても、うーん……僕のお店もそこまで儲かってるわけじゃないし

 もし働いたとしても本当に安いお金しか出せないよ?」

「あ、じゃあお仕事の終わり位にお兄さんのお店の食べ物を

 3つぐらい包んでもらえませんか?それがお給料で良いです」

「ディァっ!?」

「えぇっ!?」

 

俺の提案にドレディアさんとお兄さんの声が上がる。

まあ例えポケモンとは言え日給450円とかどこの身内中学生バイトだよって話だよな。

 

「いやっ、それは……安すぎない、かな?」

「いいんです、正直なところお金目的ではないので」

「そ、そうなの?」

 

ぶっちゃけた話だが、クレイジーな性格の癖に

環境故に仕方なかったのもあるが、世間様の扱いで引きこもりでしかないドレディアさんに

社会経験を積ませる事が出来るのならば、今回はそれでいいのである。

ちなみにドレディアさんが驚いているのは【3個もくれんの!?】って感じ。安い奴め。

 

まあこれで少しでもお金のありがたみや、その金はどっから出てきているか。

その食べ物ですらどこから生み出されるか、を知ってもらいたいのである。

 

そうじゃないとこの世間知らず、俺の財布を常に食いつぶしやがる。

 

「っと、そうだ、お兄さんちょっといいですか?

 そんなに安いのにも訳があるのでちょっとこちらに……」

「あ、うん……」

「ドレディアさんはちょっとそこにいてね、大事な話だから」

「ディ。」

 

ドレディアさんが軽く手を挙げ、おそらく同意してくれた。

そうして2人で若干距離を離れ、ひそひそ話を開始する。

 

「まああの子、早い話が世間知らずなんですよ。

 だから出来る事より出来ない事のほうが多いと思うんで……」

「そういう事か……こっちが任せる仕事はなんでもいいのかい?」

「はい、好きなように使って見てください。

 それと、何をやらせても店に被害を(こうむ)りそうな場合は

 可哀想だけど店の横に置いてマスコットでもさせててください。

 見た目だけは素晴らしいはずなので」

「わかった、まあ確かに彼女が集客してくれてるだけで人は寄ってきそうだね。

 他の地方のポケモンは最近は見るけどまだまだ珍しいしね……

 もしも完全に役立たずって事になっちゃったら、そうさせてもらうよ」

 

そうして話し合いも終わり、2人でドレディアさんの元へ。

俺はドレディアさんをお兄さんに任せ、街中のほうへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────って、ちょっと待ったぁーーーー!!

 ど、どこ行くんだ?! 君も一緒に店を手伝うんじゃないの!?」

「ディアァーーーー!?」

「えっ?」

 

あれ、言ってなかったっけ。

 

「いや、俺は俺で別の何かでお金の稼ぎ方を探します。

 普段一人でお店を回してるんなら+αが居るだけで十分ですよね?」

「え、あ……うん、そうだけど」

「ディーー!! ドレディーアー!!」

 

【私を置いてどこ行く気じゃモルスァ!!】と肩をぐらんぐらん揺らしてくる。

やめてやめて、せかいのほうそくがみだれる。

とりあえずドレディアさんの手を掴んで揺れを止め……うおーぷ、やばし

 

「ふ、ふふぁ……ドレディアさん揺らしすぎ……

 まあ、ちょっとあれです。街中で弾き語りでもしてみようかと思って。

 大金を稼ぎたいわけでもないし、大道芸的なので丁度いいかなって」

「ま、まぁそれなら止めないけど……

 正直それならバトルしてたほうがいいんじゃないの?」

「あ、いや、さっきも言ったけどお金が目的なわけじゃないんです。

 (この世界に来てから)ずっとやりたいなーって思ってたので」

 

現代日本では、その手の事をするには周りの目がきつくて恥ずかしかったから出来なかった。

しかしここでは他人との距離が結構密接なわけで。そこまで恥ずかしくないはず!!

 

「なんか若干会話に間があったのは気になるけど

 そこまで言うなら止めはしないよ。楽器はちゃんとあるのかい?」

「はい、旅に出るときに3つほど軽いヤツを」

「そっか、わかった。それじゃあこの子は責任を持って預からせてもらうよ」

「ディ……」

 

若干寂しそうに俺の袖を引っ張ってくるドレディアさん。

うーむ、今日は本当に色んな表情見せてくれて可愛いのうコヤツめ。

 

 

 

 

 

 

ってわけで。街中に到着ー。

 

ここは トキワシティ です。

うるさい知っとるわ。

 

ゲームだとトキワシティは、一度戻る事こそあるものの

家の軒数も3つか4つ程度しかない(しかも施設込み)の

シティなんぞ呼べるかぃ、といった規模でしかなかったが、この世界では違う。

 

つまりは、ゲームと違ってそこそこ近代的になっているのである。

ちょいと小さい列車の駅のショッピングモール程度はある。ビルっぽい建物も結構立ってるしね。

 

「さて……」

 

俺は人通りの多い道を選び、そばにあった街路樹の隙間に位置する。

周りを見ても、ポケモンを使った大道芸がちらほら見え

暇つぶし目的でここに訪れている観客さんも結構いるようである。

あ、エルフーンがおる。可愛いなぁ。ちょっとモフらせろコノヤロウ。

 

 

 

さて……俺の家から持ってきた楽器だが。

 

・小さめのギター(子供のおもちゃがちょっとマシになった程度。音はしっかり出る)

・音が3段階位のちっこいピアノ(小さい子供向けのがマシにry)

・オカリナ(アイリッシュ系の音楽が前世で好きだったから結構練習した)

 

の3種である。これだけあればある程度は前世の音楽が再現出来るのさ!

残念なのはドラムの担当が居ない事、居ればもっと幅を広げる事が可能なのだが……

 

 

この世界、とにかくポケモン以外での娯楽が少ない。

一応俺んちにもファミコンはあるんだけどさ。

だがファミコンだけやってても、いつかは飽きる暇潰しだ。

 

故に、俺はこっちで周りから怪しまれないレベルで

こっそりと楽器の練習をしていたのである。

 

ちなみに前世では音楽なんぞ素人なので

例え前の世界の記憶があれど、一から音感を鍛えるハメになった。

 

だが素人とはいえ中身が大人なもんだから、ある程度の合理性があり

母さんに対して練習の成果を出してみたら、拙い演奏にも拘らず最高評価を頂いてしまった。

 

つまり、「一桁の子供である俺」の成長率が異常だという事。

これは周囲の人間にバレてしまえば、いつかの危惧のように淘汰されかねない。

あくまでもただの子供であることを演じなければいけなかったわけである。

何度、もうゴールしてもいいよねと呟いたか判ったモノではない。

 

が、それでもこの世界には無い(または、『まだ』無い)音楽を知っている手前

娯楽の少なすぎるこの世界の音楽では物足りなすぎたんだ。

音ゲーとかびっちりやってっと、本当にもうあれだ。ダメなんです。うん。

公式の曲じゃないけどAngel Dust Abyssとか聴きたくなってまうねん。

 

 

ともあれ、頑張って演奏していこう。

ちらっと周囲を見ると、まだ演奏もしていないのに

10歳の子供がごそごそしているのが気になるのか、結構視線を感じる。

 

やべえwwwwちょっともう今の時点ではずいwwwwwやめてwwww

 

ちくしょう、自分の顔が赤いのが自分でわかる、やばし。

だがここで緊張していても始まらない。

 

俺はおひねりを入れてもらうためのザル籠を自分の前に設置し街路樹の石垣の上に腰を下ろす。

ゲームの常識なんてぶち壊してやるぜ! 俺の飯の種の音楽(現代音楽のパクリ)を聴けぇーーーー!!

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※詳しく歌詞やらなんやら描写すると規約に引っかかるのでカットさせて頂きます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

─────2時間後─────

 

パチパチパチパチパチパチ

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やっべぇ、何この人だかり。いつの間にか俺の周囲がひどい事に。

これ40~50人近くいるんちゃうか。現代音楽の力強し。

なんか大道芸してた人達まで俺んとこ来てるし。あんたら仕事しる!!

 

「すげーなボウズ!!」

「とってもいい歌だわ!!」

「あ、ありがとうございます……」

「歌の無い曲もすげー良かったよ!」

「あのオカリナっていう楽器の音色も素敵ね!!」

「え、ええ……はい……」

 

 

もうこれべた褒め。この世界は音楽のジャンルの層が薄いのか?

それとも現代のアーティスト、作曲者達が凄いのか?

 

 

今回演奏した曲と歌った詩は、全て現代ではかなりの人気を博した曲である。

音ゲーという単語を知らない方は、とりあえず音が鳴るゲームと考えてくれればいい。

でもってその手のゲームは音を主軸としてゲームを製作しているわけで……

当然のことながら『そのゲームでやる音が素晴らしくなければゲームとして成立しない』のである。

 

当然ユーザーだって毎度毎度評価をする。その評価が最低なら打ち切られる。

そんな厳しい条件の中で打ち切られず、自分があちらで生きていた時には

なんと19まで出ているのだ。これをこちらで流さない手は無い。

 

一般人は知らない曲ばかりでも、蓋を開ければ大衆向けの曲も沢山あるのだ。

やっててよかったBeatmania。ありがとうコナミ、ありがとうdjTAKA。ありがとうNAOKI。

 

いつかエビワラーの前で『アリス』のチャンピオン歌いてぇwwww

 

ともあれ……

 

「と、とりあえず今日はこれで終わります」

「えーまじかー!!」

「もっと聴かせてー!!」

「歌ってくれー!!」

 

うるせぇこっちはありがたすぎるけどストレスがやばいんじゃ!

俺が歌って、演奏してんのは全部パクリと同じなんじゃ! こんな大観衆の前で歌い続けられるかーー!!

 

「ごめんなさい、僕も予定があるので……」

 

別にないけどな! ドレディアさん迎えに行く位だ。

 

「ちぇー、仕方ないなぁ」

「坊や、また曲聴かせてね!」

「きっと聴きに来るからな!!」

 

ありがたいんだ、本当有難いんだけど、俺元々小心者なんです……

2,3人立ち止まって聞いてくれればそれでよかったのにっ。

 

そうして人ごみは散り散りになり、みんなが俺から離れていく。

 

「ふぅー……」

 

出した楽器を片付けながら俺は一人溜息。

これやばいなー、下手したら恥ずかしさで黒歴史化しそうだ。

 

「さて……と。おひねり回収用のザ……ル……」

 

ザル籠を見る。

別に取られたわけではない。一度目をぐしぐしして、もう一度見る。

ちょっと信じられないのでもう一度深呼吸して見る。

何が起きているのか理解出来ないのでザルを別の角度から立って、見る。

 

…………あるぇ? なんか小銭が山盛りですよ?

山盛りな上にお札が何枚か紛れ込んでますよ?

 

 

 

 

総額、14,216円でした。なんだこれ。

 

 

 

 

 

 

いくらガン見しても現実が一向に変わらないので、現実を前向きに検討し

とりあえずお金はたくさん得られたのであると、なんとか現実を認めた。

 

そんなわけで小銭が若干重いものの、全てリュックに仕舞いこみ

ドレディアさん達の様子を見に行く。うまくやっているだろうか?

 

 

 

 

「はーい、お待たせしましたー!! こちら3つですねー!!

 ドレディアちゃん、これあっちのお客さんにお願いー!!」

「ドレディアー!!」

「はい了解しました、2つですね!! 少々お待ちください!!」

「あらあら、ありがとう♪ 貴方可愛いわねぇ~♪」

「ディァー!」

 

 

やべえ、なんかめっちゃ繁盛してんねんけど。今日は大当たりの日なのか?そうなのか?

 

このまま手伝いに入ってもいいかと思ったんだが、面白そうなので適当なところに座って見学開始。

 

 

「ほいこれ!! これはあそこのお客さんね!! 頼んだよドレディアちゃん!!」

「ディー! ……ァ? ッアァァァッッ?!」

「あっ!?」

 

 

あ、つんのめった。って、あー。

売り物がドレディアさんの手を離れて、ぽーんとアイキャンフライ。

体勢立て直すのも間に合わないだろうなー……って。

 

 

「───ッレ、ッディ、ァァァァァアアアアアッッ!!!」

『ぉぉおおぉぉおーーーーっ!?』

 

なんと俊足ロケットダイブで放り出された売り物をキャッチ。

そしてガッシリと獲物を腕の中に入れつつ錐揉みしながら華麗に着地。

 

「ッ、ドレディァッ!」

 

オオォォォォォォォオオオオッッ!!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 

「ディ……、ディァ~♪」

 

おや、照れている。珍しい。

頬を若干赤くしつつ、目が優しい感じの笑顔である。

 

そうしてドレディアさんは無事守り抜いた売り物をお客さんに届け

お礼を言われてまた照れて、お兄さんの所へ戻っていった。

 

 

うむうむ、非常に良い傾向である。

 

 

 

 

「───やっ、お疲れ様~」

「お、君か。おつかれさま。そっちはどうだったんだい?」

「ディッ!!」

「あ、はい。こっちはぼちぼちです。当初の予想収入よりは格段に上でした」

 

 

ここは意味も無く謙遜しておく。

いや、だって恥ずかしいやん。「パクリで大金得た」なんて。

 

「こっちもこっちで凄い忙しかったよ。

 多分今日1日だけで3日分は売れたんじゃないかな」

「ディァ!!」

 

ぅぉぅ、遠目から見てても凄まじい繁盛っぷりだったがそこまでか。

ドレディアさんもえっへんと胸を張っている。胸無いけど。

 

見てたからドレディアさんがどれだけ働いていたかは知っているが

一応は、本人が働いたという自覚のために聞いておこう。

 

「ドレディアさんは、どうでしたか? お邪魔じゃなかったですかね」

「いや、そんな事全くないよ、本当に。おかげでとても助かったよ。

 今日来てくれたお客さんは、やっぱり彼女目当ての人が多かったからね」

「……ディァ~///」

 

ドレディアさんがもじもじしておる。本当にこの子性格クレイジーか?

 

「それならよかったんですけども」

「いや、まだ街に居るならこれからもお手伝いに来て欲しい位だよ。

 今日みたいな売り上げならもっとマシな給料は出してあげられるからね」

「だってさ。

 ドレディアさん、褒められてるよ。よかったね」

「ディァー///」

 

片手を頬に当てたと思ったらべしっとはたかれた。何故だ。

照れ隠しだろうか、多分そうだろう。じゃなきゃ理不尽だ。

 

「それじゃぁ、今日の給料だ。

 はい、これ3つと……よし、君にはこれもあげよう」

「ディァ~♪ ディ~♪」

「ん……1日1個券?」

 

ドレディアさんは予定通りの食い物をGETしとても嬉しそうだ。

しかし、俺がもらったこれは……なんだこれ?

 

「まあ、それは僕が今作ったもんなんだけどもね。

 この街に居る間なら、1日に1個だけならこの売り物をあげるよ。

 ドレディアさんに食べさせてあげて」

「え、でも……いいんですか?タダなんて」

「今日は本当にフル回転だったしね、1日1個位のおまけなら

 こっちも何とか出来るから、まあ頑張ったで賞ってところかな?」

 

良いお兄さんである。

なおドレディアさんはこれの意味がわかっていないようで

【もう食ってもいいか!?いいよな!?な?!】という目で見てきて

なんといえばいいのやら。

 

「わかりました、それじゃあお言葉に甘えます。いつこの街から旅立つかはわかりませんけど

 ドレディアさんの気が向いたら、またこちらにお手伝いさせに来させるので、よろしくです」

「わかったよ、今日は本当にありがとう」

「いえ、こちらこそ我がままを通してしまってすみません」

「いやいや、いいんだよ、これも何かの縁だったってことさ~」

「そうですね、縁なんてどこからでも来ますしね!」

「ディッ!」

 

 

 

こうしてトキワシティ入場から5日目が終わった。

本日の収益、まさかの1万円オーバー。

ちなみにお金の額に関してはドレディアさんには虚偽申請してます。

 

また7割食費にされたらたまったもんじゃねぇ。




overjoyって、最高やん?

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