うちのポケモンがなんかおかしいんだが   作:右肘に違和感

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皆さん、お待たせしま……いや、そんなでもねぇか。
とりあえず作ったのでどうぞ。


2012年も終わりという今日、最後の最後で立派な人助けをしてきた。

なにやら職場の年下から「暇なら何かしませんか」とメールが来て
そいつんちに迎えに行ったら出てきやがらねぇ。

仕方が無いのでしばらく車で待っていたら
何やら聞き覚えがある「ヂュイィィィィィィン」という音。

そう、それは雪国特有の現象。
路面が上がり坂でツルッツルすぎて登れない車のタイヤのすべる音。

そう断定して音がある方向へ行って見ると
まさにその断定した状況通りの、一軒屋から出ようとしている家族の乗った車があった。
その家の駐車場のわずかな坂にあるジェラード上の雪のせいでタイヤが空回りしていた。

運転手に手で軽いジェスチャーをして車の後ろへスタンバイ。
【前後に動くタイミングにあわせてアクセル踏んでください】と指示を出して
俺は車の後ろで車にがぶり寄り。

4度ほど繰り返して、無事に坂を乗り越したのを確認。
お礼を言われてこちらも笑顔で手を振り、待機させてた俺の車に戻った。


俺の待ち人は30分来なかった。


タマムシシティ交流 忘れ去られたアイツ

 

 

誰も居なくなった、ポケモンセンター内でタツヤが借りている部屋。

ここに、なにやらうごめくものが存在した。

 

「…………。」

 

その動く物体は部屋の中を見渡し(?)、誰も居ないことを確認する。

 

「クッ……」

 

誰も居ない事を悔しがり、その身体にある足を使い自分が立っている場所から降りた。

 

「初めてですよ……この私をここまでコケにしてくれたおバカさんは……!」

 

一人で出てきて一人で勝手に盛り上がり、怨嗟の思念を燃え上がらせる。

その後ろに現れるは……まるで世紀末の覇者と思えるような濃密なオーラ。

 

そして最後に、それはそっと呟いた。

 

「この私を忘れやがるなんて……許しませんよ、マスターッ!!」

 

 

そう、呟いたのは。

 

 

 

 

なんか四角い物体だった。

 

人、それをポケモン図鑑と言う。

 

 

 

はず。

 

 

 

 

 

 

なにやら視点が飛んでいた気がするが一体何のことだろうか。

 

『どうした』

「いや、なんか……よくわかんないんだが恨み言かなんか言われた気がしたんだよ」

『ふむ……貴様のやっている事だ。どこかで恨みでも買ったのではないか?』

「昔にぶっ潰したロケット団員以外にゃそんな事してねぇと思うんだがなぁ」

 

金魂蹴ったりしたトレーナーは数多いけど、俺を恨んでるってこたぁあるまい。

まぁ俺がそれをされたら全殺しにするけど。

 

『貴様が思考している内容が矛盾だらけなのだが、どうしたらいいのだろう』

「気にしたところで世界は平和にならんよ」

『そういう問題だったのか……』

 

当たり前だ。

 

まぁ、ともあれ……気のせいなのは間違いないはず。断言。

 

『さて……私は一旦ハナダの洞窟に戻らねば……

 さすがに三日以上開けるのは不味かろうしな』

「ん、そうか……あぁそうだ、土産でも持っていくと良い」

『土産、だと?』

「おう。ほい、5,000円」

『ふむ』

「タマムシデパート行けばインスタントラーメンも地下のスーパーにあると思うし

 後はハナダの洞窟の水と石を適当に刳り貫いた岩鍋でも作ってみんなに食わせりゃいいし

 余った金で適当に菓子買って行くってのでもいいさ」

『ふむふむ、作り方は……そうやるのか』

 

俺の頭から勝手に思念を読み取ってインスタントラーメンの作り方を学ぶミュウツー。

ここら辺は、なぜかミュウツーも応用力が高い。

 

『ではさっそく向かわせてもらおうか。金銭に関しては感謝しておいてやる』

「まぁ、何気に色々と助けてもらってるしな。

 たまにゃぁ人間が作り出した文化でも味わってきてくれ」

『ふ……では、また来てやろう。一旦さらばだ』

 

そういって、ミュウツーはテレポートで部屋から消えた。

おそらくはそのままデパート前まで直で跳んだのだろう。

 

一気に白い嵐が静まり、部屋に平穏が訪れた。

 

俺もこのまま開発室辺りに行って新製品の概念でも構築するか。

そう思い立って、俺は部屋を出るために扉を開ける。

 

 

 

「あ、居やがりましたねマスターッッ!」

「……ん? マスター?」

 

なにやら呼び慣れない声に加えて聞き覚えが無い……いや、若干ある声が廊下に響いた。

その廊下には弾頭の社員が黒っぽいスーツとネクタイを締めて歩いているが

そちらに顔を向けると【私ではありません】的なジェスチャーで返された。

 

……? 気のせい、か。

 

しかしあんなはっきりした幻聴を聞くなんて珍しいな。

この街に来てから、不眠症になったことは無いのだが……

 

ともあれ開発室に出向いて今後の───

 

「無視しないでくださいよッ! あなたどんだけ私をいじめれば気が済むんですかッ!」

「……?!」

 

声が、した。

これは間違いなく幻聴といったものではない。

なんだ、一体どこから……

 

そうして廊下で立ち止まっていた弾頭の社員と目が合った。

【一体どうなってんだ】と目で問うた所、その社員は目線を下に向けた。

 

俺も釣られて下の方を見てみると、なにやら四角い物体がある。

 

 

 

けとばしてみた。

 

 

 

「ギャァァァーーーーーッッ!!」

 

あ、すっげー声出してすっ飛んでいった。

てことは犯人はあいつだったか。

 

よし、満足したし開発室に向かおう。

 

 

 

 

「ってわけでですね、もっとこう……主婦を味方につけるような発明をするんですよ」

「……何故、主婦なのかな?」

「大体の家庭で財布握ってんのなんてお母さんでしょ?

 あの人たちに魅力だと見られるようなものを発明すればお金周りが良くなります。

 つまりはこちらに回される開発費用も……ね?」

「おぉ、なるほど。急がば回れということかね。

 確かにそんな方向性で我々の匠は動かないと思うが、開発費用は是非欲しいものだからね」

 

前の世界では、健康サンダル(足の裏を置く場所がボツボツしてるやつ)とか

ご飯を冷凍する際に目安となる四角を作っただけのもの、とか。

そういうのですら販売金額が一億とか行ってたはずだからな。

 

 

 

 

「くぉらぁぁぁぁぁぁーーーーーッッ!! マァスタァーーーーーッッ!!」

「ッ!? な、なんの声だッ?!」

「あぁ、えーと……」

 

心当たりが超あるんだけど説明が面倒すぎる。

 

よし、放置。

 

「……開発室ッ! ここですねッ!」

 

そんな声が扉の辺りで鳴り響き、研究者全員が驚いてそちらに目を向けた。

 

するとどうだろう、何故か扉は開かずに……なにやら外枠の淵に沿う様に赤い線が伸びて行く。

それは外枠通りに一度90度曲がり、さらに90度曲がり……床まで線が伸びついた。

 

そして……扉は赤い線通りに、まるで切り抜かれたようにバターンと室内へと倒れ込んで来た。

 

「隠れても無駄ですッッ! マスター!」

「そんなわけでですね、やはり家庭のお財布の人にお買い上げ頂くのがベストと思いまして……」

「マァァァァスタァァァァァーーーーーーーーーーッッ!!」

 

……うっせぇなぁ。

最近ドレディアさんの暴虐に慣れて来た俺でもちょっとブチギレモードになってしまうレベル。

仕方が無い、構ってやるか。

 

俺は開発室前の廊下に居るその小さくて四角い物体まで歩いていく。

その四角い物体にはなにやら砲筒のようなモノがちょろっと出ていて

四角の四隅には、メカっぽいカギ爪の様な足が生え揃っていた。

 

「な、なんですかッ! 今更謝っても私は許しませ、って、あ、ちょっ」

 

まだなにやらかんやらと喚くそいつをひょいっと拾い上げ

俺の胸元まで持ってきて画面を直視する。

 

「ふ、ふんッ! 言ってるでしょう! 今更謝っても許さないってッ!

 えーと、そうですねぇ、とりあえず今までの忘れ去ってたお詫びに色々としてもらっ───」

 

 

ポチッ

 

電源OFF

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん、お騒がせしました。

 それじゃぁ開発方向のまとめに入りましょうか」

「……いいのかね、それは」

「というかそれは、なんなのかねタツヤ殿」

「ん? まあ気にしないでください。そんなことより開発実績を上げるのが先です」

 

そう、ここら辺は割りとマジで重要だったりする。

会社で何の業績も出せない部門なんてただのお荷物でしかない。

雇い入れたからにはしっかりとなんらかの成果を出さなければ色々と格差にも繋がってくる。

 

そんな事を起こさないために、とにかく一般人に受け入れられる開発をする必要があるのだ。

俺は手に持った四角い物体を部屋に設置されてるゴミ箱に投げ入れ、ソファーに座りなおし

今までの話し合いでまとめていた物をノートに書き込んで情報を整理していった。

 

 

 

 

それらも終わってポケセンへ帰ってみると

ドレディアさんとミロカロスが四角い何かとバトってた。

 

 

電源切ったのにどうやって戻ってきたんだろう。

 

 

 




というわけでまあ今年もこれで終了です。

ではみなさんで最後に一声を上げて終わらせましょうか。

サン、ハイ。


「リア充爆発しろッ!!」


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