怪しい訪問販売買った骨董品は実は恐竜の卵でした!? 作:k9suger
「こんにちは」
「わざわざありがとう御座います......どうやってお越しで?」
ドアのチャイムを鳴らしてから程なくして、扉が開き背の低い年老いた女性が現れる。優しそうな口ぶりで今の所怪しい点はない。
「まぁその、車で」
「そうでしかたか。それでポイントカードは?」
「それなんですけど......実は持っていなくて、本当はお伺い」
と言いかけたところで女性は「騙したんですか?」と大きな声を挙げてから「すいません、もう帰ってください」と言って扉を閉めようとする。
しかし、何故か扉は途中までしか閉まらず女性は焦った様子でなんどもドアを開けたり閉めようとしたりしてバタバタさせる。
何故扉が完全に閉まらないのかと思いドアを見ると、日毬がドアとドア枠の間に靴を挟んで扉がそれ以上閉まらないようにしていたのだ。
まるで悪徳新聞販売業者のようなやり方と、腕を組んで威圧するような態度に少しだけ......いや、かなり驚く。
「あの、日毬これは......」
「“これは”じゃないじゃないでしょ? 私たち折角ここまで来たのに、ここで扉を閉められてはい終わりですって納得できないもん」
たしかに日毬の言うとおりだ。
「あの、取り敢えず落ち着いてください。ただ俺たちは聞きたいことがあってここに来たんですよ。あの庭にある血痕ってなんですか? 恐竜に関係ありますか?」
と尋ねると、恐竜という言葉に反応したのか一度ドアを開く手を止める。
「それは......いえ全く関係ありません。私達はまったく知りませんから」
と再び叫んでからドアを閉めようとする。
「あの落ち着いて......」
「おい、どうした? 煩いなと思ったらお前達は誰なんだ?」
そんなやり取りをしていると、廊下の奥から初老の男性が現れる。髪の毛は薄く体型は少し丸い感じの男性で俺と日毬はその剣幕に圧倒される。
「誰なんだって聞いてんだろこのガキが......お前らここになんの用があるんだよ。関係ねぇって言ってるんだからさっさと諦めて帰れ」
「いやでも......」
「警察呼ぶぞ。さっさと帰れよ、早く!」
「えっと、その......」
「警察を呼ばれて困るのはおじさん達なんじゃない?」
振り返ると杏と長尾が立っていた。
「この家を少し調べたらガレージの中に縦横4m高さ2.3mの檻が存在していた。中には恐竜の物と思われる血の跡と羽毛、そしてその檻は解錠されている状況だった。このことからあなた方はあのガレージ内で恐竜を飼育しており、ある時その恐竜が怪我をした為、治療しようとあの扉を開けた際に恐竜が脱走してしまったと考えられる」
そう長尾が特有の早口で言うと、杏がその檻を撮影した写真を俺たちと言い争っていた老夫婦ふたりに見せつける。
「証拠もバッチリ」
「恐竜を飼育してはいけない法律は存在しない。ただ危険な生物と知りながら杜撰な管理をし、恐竜を世に放ったとなれば責任は問われるはずだ」
「どうなんですか? なんか良い言い訳が有るなら聞いてあげるけど」
「......それは.......お前達が言うように恐竜のものだ」
「やはりそうですか。種類は?」
「あまり覚えてないない。映画に出てた恐竜に似ているから孫に見せてやろうと思って買っただけで詳しい事は全然知らないんだ」
さっきまで強気そうだった男性が、そう弱々しそうに言う。
「じゃあ質問します。ドロマエオサウルスみたいな名前でしたか?」
「いやそんなに言い難い名前ではない」
「名前で聞くより特徴を聞いたほうが絞り込みやすいですよ。あの大きさは?」
「高さは俺より少し小さいぐらいで、長さは尻尾も入れたら車ぐらいあった」
「羽毛は生えていましたか?」
「羽毛は全身に生えていました......あと大きな鉤爪が」
「そうだ、あなた確か書類があったわ......今取ってきます」
そう言ってお婆さんは一度家の奥へと歩いていったかと思えば、ファイルを持って再び玄関に戻ってくる。そのファイルには色々と書類が挟まっていた。
「これは?」
「その恐竜を購入した時の書類です。何処かに種類が載っていたの」
「ここか......えっとアキロバートル?」
英語で名前が記載されているため、正しい発音がわからない。
「恐らくはアキロバトル。モンゴルで化石が発見されたドロマエオサウルス科の恐竜で今までの証言とも特徴が一致する」
「あの、購入とさっき言ってましたけど具体的にはどんな風に?」
「家に......あぁここは別荘で家はもっと街の方にあるんですけど、その家に訪問販売の人が来て恐竜を買わないかと言ってきたんです」
その老夫婦の話によると、最初は意味がわからず帰ってくださいと言ったそうだがその押し売りは実物を持ってきますと言って、次の日トラックに積まれた恐竜を見せて再度購入を勧めてきたと言う。
元々会社経営者でお金に余裕があり、孫が有名な恐竜映画で言っていた好きな恐竜にも似ていたため購入しこの家で密かに飼っていたそうだ。
今年のお盆に孫がこの別荘に来る予定だったので、その日にお披露目する予定だったが逃げ出されてこうなってしまったらしい。
「因みに値段は?」
「90万円です」
安いのか高いのかよくわからない。ただ押し売りという点では俺のロープとも共通点が有る。もしかしたら同じ業者なのか?
「なるほど......」
ひと通り話を聞き終えて、俺がそう呟くと後ろから長尾がその夫婦に話しかける。
「まず今のことは警察に通報させてもらいます......というかもう通報して今警察の人がここに向かってきています。恐らくは同じ様な話を警察の人にもすることになるでしょう」
「そうですか......」
「それでは、僕達はこのへんで帰らせて頂きます」
「え?」
「僕達の目的は恐竜探しです、ここに残っている必要はありません。では」
そう言うと長尾は俺を、杏は日毬の腕を掴んで敷地外に引っ張り出す。
「ちょっとなんだよ、もう少し話を聞いたって......」
「話は後だ取り敢えず、舗装された道路を下り街の方へ向かおう。詳しい話はその道中でする......まずは一刻も早くここから離れよう」