怪しい訪問販売買った骨董品は実は恐竜の卵でした!? 作:k9suger
「久しぶりだな長尾」
長尾とあったのは実に二年ぶり。一応高校3年生の時も委員会で顔を合わせたことはあったがその時は喋ることもなかった。
「久しぶりだな織部拓哉......それで僕をファミレスに呼び出してなんの用事なんだ? マルチ商法やサービス勧誘その他怪しい話はたいてい事務所近くのファミレスで開かれると相場が決まって......」
「待て待て待て、違うからそーゆータイプの話じゃないから」
「じゃあ金を借りにでも来たのか?」
「それも違う」
思い出せば長尾はこんな感じの奴だった。声はそこまで低くないが話し方は平坦かつ猛スピード、オタク特有の早口らしい。
ただ見た目は細くてジーパンに少しお洒落なTシャツを履いていてオタクっぽい見た目ではない。なんか全然変わってないな。
そしてクラスでは少し浮いていたが、決して悪く浮いていた感じでもなくて、愛されオタクマスコットみたいな立ち位置でよく周りの人達と話していた。
「じゃあなんの用だ?」
「長尾って恐竜に詳しかったよな? 高校の時も机にフィギア並べてたし」
「恐竜に関しては未知の部分が多い。実際人間が確認できる恐竜は化石しか存在しておらず、得られる手がかりからは......」
「違う違う、そういうのを聞いてるんじゃない......俺よりは詳しいよな?」
「恐らくそうだろう」
「じゃあ質問がある。この写真を見て欲しい」
俺は出かける間に撮影したロープの写真を見せる。
「ふむ......一見するとただの鳥だが通常の鳥には見られない特徴がいくつか存在しているな......これは何処から持ってきた写真だ?」
「俺の家で飼ってるペットの写真なんだ」
「ふむ実に興味深い。君がこんな冗談を言う人間だったとは」
「いや冗談じゃない......その実物も持ってきた」
「実物?」
写真を見せてもよくわからない可能性があるので、俺は大きなボストンバックにダンボールで作った飼育箱を入れてロープをここまで持ってきたのだ。
「これか......君、これを何処で手に入れた?」
「あの、押し売りで謎の卵を買わされて......孵化した」
「孵化してから育てたのか?」
「うん」
「よくやった君は実に素晴らしい人間だ。見直したよ......さて今の気持ちをどう表せばよいのか僕にはわからない。喜びや興奮という言葉では収まりきらないこの感情を僕はどう表現し発信すべ......」
「ご注文は」
「......サンドイッチふたつ」
「俺も同じのでお願いします」
「かしこまりました」
店員が去ったのを見届けて俺は長尾に尋ねる。
「なぁ長尾、こいつは鳥なのか?」
「いや鳥ではない......まだ種類は判断できないが、おそらくは恐竜だ。しかし6600万年前に隕石の衝突により姿を消したはずだ。まぁ正確には現存する鳥類に姿を変えて進化したがこの姿で生き残っているとは考えずらい。もし......」
「はい、サンドイッチです」
「ありがとう御座います」
「ごゆっくり」
店員さんが去っていくのを見届けて俺は長尾に言う。
「あのさここじゃ人が多すぎる。俺の家で話そう」
「僕も同じ意見だ。早めに食事を済ませてここを去ろう」
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「いい家に住んでいるな、しかし何故一人暮らしなのか疑問だ。大学は実家からでも通える範囲内に存在しているはずだろう?」
「一人暮らししたかったからだよ。親も案外簡単に許してくれたし」
「なるほど......それでもう一度よく見せてくれないか?」
「いいよ」
俺はボストンバックから飼育箱を取り出して床の上に置く。長尾は興味津々でその飼育箱に入っている恐竜を覗き込む。
「手袋はないか? この恐竜に触れたい」
「ゴム手袋なら......でも素手で触っても大丈夫だぞ。噛む力も弱いし」
「いや、恐れ多いんだ。すべての恐竜好き及び恐竜研究者であれば一度ぐらいは“生きている恐竜をこの目で見て手で触れたい”と思うはずだ。こんな恐竜オタクの僕がそんな事をしても良いのかと思うと、恐れ多くて素手では」
「......いや良いだろ。お前も恐竜好きなら触れば良いじゃん」
「ふむ、飼い主がそう言うのなら」
そう言って長尾はロープに手を伸ばす。ロープは最初見慣れない人間お手に怖がっていた、が俺のサポートもあって少し時間が経てば長尾の手に触れられても大丈夫になった。
「どうだ?」
「感動的だ......実に感動的だ」
「それは良かった......で、この恐竜なんだがどうすれば良いと思う?」
「どうすれば......難しいことを聞くな。恐らく一番良いのは権威ある研究機関に持ち込むことだと僕は思う。生きている恐竜が居るのであれば現在の恐竜研究は飛躍的に進歩するのは間違いないだろう。それに正直僕も君も素人だ知識のある人間に任せるべきだ」
「そうだよな......それで何処に持っていこうか?」
「恐らく一番良いのは 北海道札幌市北区北10条12番地西8丁目......北総合博物館へ行き大森教授を頼ることだろう」
「大森教授?」
「有名な恐竜学者で、北大学では教授も勤めている。むかわ竜という恐竜の発見に大きく貢献しディノケイルスの全身骨格も発見している」
正直長尾が何を言っているのかは理解できなかったが、その大森教授が恐竜に詳しく、権威のある存在だという事は理解出来た。
まぁ長尾の言う通り知識ある人に頼ったほうが良いかもしれない。
「じゃあ博物館に行くか」
「まて、先に電話をかけた方が良いだろう。博物館に言ったところで大森教授が居なければ意味がない」
「そうだな」
俺は博物館に電話をかけ大森教授が居るのかどうかを、電話に出た学芸員の人に尋ねる。
残念な事に学芸員の人曰く、大森教授は今海外へ出掛けているらしくあと5日間は帰ってこないそうだ。
「ふむ、あと5日間はこのヒナをこの家で保護しておく必要がありそうだな......織部拓也買い物へ行くぞ」
「買い物?」
「あと7日間このヒナを家で保護しておく際に、このような狭いダンボール箱で育てていくのはこのヒナにとって良くない可能性が非常に高い」
確かにヒナも生まれた頃と比べれば大きくなっているし、このダンボールで育ていくのもそろそろ限界かも知れない。
「金は僕が払う」
「いや悪いよ」
「僕は必要な出費は惜しまないタイプなんだ」
「じゃあ半分は俺が出すよ。一応飼い主なんだし全部払って貰うのは悪いよ」
「わかったそうしよう。では行くぞホームセンターに」