怪しい訪問販売買った骨董品は実は恐竜の卵でした!? 作:k9suger
『もしもし、当然すいません博物館の者なんですが大森教授がご帰宅になったので折り返し連絡させて頂きました』
ロープが産まれてからはや三週間。最初は“少し尻尾が長くて口には歯が並んでいる変な鳥のヒナ”みたいな見た目だったが、今では長尾に見せて貰った写真のようなトロオドンの見た目に近づいてきている。
ジャンプもするし早く走れるし、小さいがもう立派な恐竜だった。
そんなロープが成長したある日俺のもとにそう電話が掛かってきた。
「あぁわざわざすいません、大森教授と会えるんですよね?」
『はい、いま博物館にいらして頂ければ』
「わかりました。直ぐ向かいます」
俺は長尾に電話をかけてからロープをボストンバッグの中に入れる。体も結構大きくなったてきたため今のロープには少し狭いだろう。
「行くぞロープ......でも、このままお別れとかになったらどうしよう」
もちろん最終的には施設とかで保護して貰いたいが、まだ幼い今の状態であれば俺の家でも飼えるので、今直ぐロープと離れ離れになるのは望んでいない。ただ恐竜発見が大きく騒がれ厳重に保護されてしまったりした暁には......
『落ち着け拓也......流石に見せてすぐ隔離されるなんてことはないはずだ』
長尾は電話越しにそう言うが正直不安だ。
『取り敢えず僕は君の家へ向かう。その後タクシーを手配して博物館へ行こう』
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「初めまして織部拓也です」
「長尾誠司です」
「初めまして大森新市です」
印象は、少し失礼な表現だが“どこにでも居る優しそうなおじさん”みたいな雰囲気で、イメージしていた恐竜学者とは少し印象が違った。
「それで何か私に見せたいものがあるんですよね?」
「そうなんですが......ここではちょっと難しくて」
博物館のバックヤードみたいな場所で話しているので、周りにお客さんは居ないが学芸員の人や、その他研究員の人たちが忙しそうに歩き回っている。
あまり恐竜の存在を明かしたくないので、人通りが多いこの場所で教授にロープを見せる事に少しだけ躊躇いがある。
「そうなんですか......じゃあこの部屋で見せてもらいましょう」
案内されたのは机が並ぶ会議室のような場所で、さっきのバックヤードのような人通りもなくロープを見せるにはうってつけの場所だった。
「それで、これなんですが」
俺はボストンバッグの中からロープを取り出す。ロープは新しい場所に来たのにも関わらずかなり落ち着いていて、俺の手の上から離れることはなかった。
「やけに落ち着いているな」
長尾もロープが活発ではないことを指摘する。
「これは......恐竜ですよね?」
「多分そうなんじゃないかなぁって俺も思ってます」
「なるほど......」
そう言って大森教授は近くにあったキャスター付きの椅子にドスンと腰掛ける。そして少し頭を抱えた後天を仰ぐように言った。
「また恐竜見つかったかぁ」
「え?」
「今なんて?」
「いやあ、それが最近まで海外に行ってたんだけど、その理由がここだけの話ディノケイルスっていう恐竜の生態調査に参加してた為なんだけど......日本に帰国してすぐ恐竜に会えるとは思ってもなかったよ」
「はぁ」
大森教授の話によると、ここ最近恐竜研究界隈では“生きている”恐竜に注目が集まっているらしい。
というのも二ヶ月前アメリカの乾燥地帯でテノントサウルスの干からびた死体が発見されて以来世界各地で恐竜と思われる生物の発見が相次いだという。
最近ではフランスで猟師が撃った生物がプレノケファレだったり、インド北部で滑落によって死亡したと考えられる謎の生物が、ディノケイルスという大森教授と関わりの深い恐竜だった為その調査に行ったりと、色々見つかっているらしい。
「まぁ無用な混乱を避けるために内密で話を進めてるんだけどね......」
「因みに今の所存在が確認された恐竜の種類について教えて頂けないでしょうか? また発見場所も分かるのであれば教えて下さい」
恐竜の話になると長尾は止まらない。生きている恐竜がこのトロオドンだけではないと知った瞬間目を輝かせてそう尋ねる。
「一般の人にこのことを教えて良いものか......でもまぁ恐竜飼ってるもんなぁ、もはや一般人とは呼べないか?」
とかなんとか呟いた後、長尾の質問に答えてくれる。
今の所存在が確認されているのはロープを除いて12種類。先程例を上げていたプレノケファレ、ディノケイルスに加えてジョバリアがアメリカで、ネオベナトルがイギリスで、ペンタケラトプスが......と素人の俺では理解できない話が続く。
「なるほど......恐竜が化石の発掘された地域とは関係なく出現している? いやでもミンミはオーストラリアで発見されている」
「そうなんだよね」
俺は長尾の恐竜知識に驚く。正直名前も聞いたことがないようなマイナー恐竜しか居なかったのに、ちゃんと生息地域まで覚えているのは恐竜オタクと言えど凄いことだと思う。
「でも、そのほとんどが死んでる状態で発見されてるからね......生きた状態で見つかって捕獲に成功したのはセケルノサウルスとミンミぐらいだよ」
「となれば生存している恐竜の確認はこれが三件目?」
「そうなるね......それに今まで見つかった中にこんな産まれて間もない恐竜は居なかったから、かなり珍しい例になるよ。それでこれは何処で見つけたの?」
「えっと訪問販売で......」
俺はロープと出会うまでの経緯を大森教授に説明する。
「訪問販売で買ったのか.......恐竜の卵が出回っているのか?」
「僕も同じ意見です。知らない所で恐竜の卵が流通している可能性があります」
「そうだよね。取り敢えず友達に連絡してみるね」
「友達?」
「そうアメリカで古生物学者をしてるバークリーっていう人なんだけど、その人は主に恐竜の幼少期について研究している人なんだ。今は丁度講演で東京に来てるから、もしかすればコッチに来てこの恐竜のこと調べてくれるかも」
そう説明すると、大森教授はポケットからスマートフォンを取り出してそのバークリーという人に連絡をする。何コールかしたら電話が繋がり大森教授は英語で対応している。
「うぇ! 本当? really?」
話している途中大森教授は、少し驚いた感じで声を上げた。
「Okay, I'll be right there」
電話を始めてから一分ぐらいした後そう言って電話を切る。
「えっとねぇ......東京湾で海棲爬虫類の死体が上がったそうなんだ。それでこれから調査に向かうんだけど......その恐竜どうしようか?」
「じゃあ取り敢えず俺今まで通り家で飼うんで、また時間が空いたら連絡してください」
「わかった、ありがとう。じゃあ行ってくるね」