TSロリっ娘魔法怪盗「配信者」ジョーカー   作:稲光結音

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探偵少女と異世界人

 

 

「という事で法律に詳しい専門家の間では怪盗「配信者」ジョーカーが魔法を盗むのは治療にあたり、あくまで治療の際に行われるまでの強引な押し入りでしか逮捕を行えないという見解を示しています。ただし、田中商事の一件では暴力を振るっていたという証言もあり、しかしまだ小さい少女であるという点も含め議論は混迷を極めていきそうです――続いてのニュースをお送りします」

 

 

 指名手配されて俺の活動が犯罪だとか、犯罪じゃないとか。気にならないと言えば嘘になる。だが、それも俺が小心者だからだろう。だが、善行か善行じゃないかもどうでもいい。俺は自分の意志で救える命を救おうとしているだけで、視聴者ウケしてるかどうかの方がよっぽど大事なのだ。

 

 朝のニュースを消し、朝食を食べ終えたので自宅一階、喫茶スペースに降りていく。

 

 

「おはよう、ママ、パパ」

 

「おはよう。オーコちゃん」

 

「……おう」

 

 

 俺は両親の事をママとかパパとか呼ぶようになっていた。この歳になって甘えてるみたいで恥ずかしいが、今の俺にはこれがしっくりくるのだ。

 

 すっかり慣れてしまった母とは違い、父はまだどうにも照れがある。まあなんたって俺美幼女になっちゃったからね。突然の女の子供が出来たようなもんだ。違和感があるのは仕方ないだろう。

 

 母が紅茶を出してくれたので、窓際の特等席で一杯。味と香りを楽しむ。今日もいい朝だ。

 

 

「オーコちゃん今日もかわいー」

 

「服もいいよねー、うちらくらいになるとこういうの似合わなくなってくるしー」

 

 

 今日は学校が休日なので昼間から来ている常連の女の子達に囲まれてちやほやされている。うーん、ハーレムみたいで幸せだ。

 

 などと思っていると、リュックサックを背負った見慣れない眼鏡の少女が店に入ってきた。少女と言っても俺くらい小さい訳ではない。中学生か、高校生か……それくらいだ。そして胸がやけに大きいのが特徴だ。一回見たら忘れないだろうというその見た目から、ご新規さんの客である事は一目で分かった。そして、彼女はこちらを見ると、注文もせず近づいてきた。

 

 

「……こちらの女の子はこの中の誰かの妹というわけではありませんね? どういうご関係で?」

 

「オーコちゃんはこの店の子だよー」

 

「妹っていいねー。みんなの妹って事にしちゃお」

 

 

 気を悪くする様子もなく、きゃいきゃいとはしゃぐ女学生達。

 

 

「それは失礼しました。探偵のカンが……怪しいと囁いたもので」

 

「探偵?」

 

「そうです。こちらを見て頂けますか?」

 

 

 そう言うとリュックサックから地図を取り出すと、ピンを立てていく。その場所は……俺が、怪盗として活動を行った場所だった。

 

 

「これらを、こうやって線を引いていくと……ほら、この辺りに線が集中しますよね? つまり怪盗ジョーカーはこの辺を拠点としているはずなのですよ」

 

「えー、すごー」

 

「ジョーカー会ってみたいよね。この辺にいるんだー」

 

 

 内心、冷や汗をかいている。この少女の推理、正しいぞ。

 

 

「そういえばアルセーヌにオーコちゃんが顔見せるようになったの最近だよね? というか学校とか行ってないの?」

 

 

 探偵にアシストを出してしまうのは俺のハーレム女子学生の一人だ。探偵少女の眼鏡がきらりと光ったように見えた。

 

 

「オーコちゃん、ですか? 失礼ですが貴女はここの娘という事ですが……先程こちらの女性が言ったことが、どういう事か説明できますか?」

 

「わ、わたしは実は成人してて……病気でこんな姿になってしまっただけなので」

 

「それはそれは。でもその容姿、怪盗もそのくらいの背丈をしているように思えるのですよね。どうですか? 実は――貴女が怪盗である、という可能性についてお聞きしたいのですが」

 

 

 まずいぞ。どうする……

 

 

『まかせて。ボクの言う通りにしてくれ』

 

 

 頼れる相棒がテレパシーを送ってくれる。俺は彼女の指示に従う他、この場から逃れる手段は思いつかなかった。

 

 

「わたし実は魔法覚醒病の治療中で……本当は使わないでいないといけないんですけど、そんなに疑われるなら、使っちゃいますっ」

 

「魔法覚醒病。なるほど……魔法は原則一人一つ。怪盗がおかしいだけですからね。でも貴女が怪盗なら人々に見せてない魔法を使って見せてもいいわけですから。証拠には成り難いですよ?」

 

 

 マキナはその辺の事も考慮して、俺に言い訳を作ってくれていた。

 

 

「大丈夫。わたしも怪盗さんと同じような『妖精召喚』の魔法が使えるんです。怪盗さんも妖精を召喚しますよね? あれと別の妖精さんを出して見せたら、少しは疑いも晴れませんか?」

 

「ふむ。エクスでしたか。怪盗の相棒は。しかし、しくじりましたね?」

 

「な、なにを」

 

 

 もう心臓はバクバクだ。頼むぞエクスマキナ。お前の案にすべてがかかってるんだぞ。

 

 

「魔法は、生きている使い手が存在する限り、同じ魔法の使い手は生まれないんですよ。つまり怪盗と同じ魔法が使える貴女は怪盗という事になります。――貴女が、犯人だ」

 

 

 びしりと指を差す、巨乳眼鏡の探偵少女。逆転の目は……ある。

 

 

「ち、違います。怪盗さんのが『固定の妖精召喚』だとすれば、わたしのは『ランダム妖精召喚』なんですよ」

 

「……ふむ?」

 

 

 差した指を取り下げ、ありもしないあごひげを触るような仕草をすると、私の言葉の続きを促した。

 

 

「じゃあ、使います。……えいっ」

 

 

 助けて、助けて、助けて。望むのは妖精。魔法覚醒病による異世界とのラインを利用して、異世界から召喚するイメージで……。

 

 次の瞬間、十体に届くか届かない程度の、色とりどりの妖精が姿を現した。

 

 

「あはは」

 

「うふふ」

 

 

 楽し気な妖精の輪舞。しかしそれは美しいだけではなく。

 

 探偵の髪を引っ張る者、カップを落として割る者、ケーキをつまみぐいするもの……つまり悪戯を始めた。

 

 

「ちょっ、ちょっとちょっと! この子達どうにかしてくださいよ!」

 

 

 探偵がそう言ってわたしに助けを求めるので、わたしは妖精達に指示を出す。

 

 

「みんな落ち着いて! わたしの前に集合」

 

 

「え、なんで」

 

「きみだれ」

 

「やだー」

 

 

 そんな調子で、まるで従ってくれない。そしてマキナがこう言えと囁く。

 

 

「……すみません。魔法、使い慣れていないので指示の仕方が分かりません」

 

「消す事は! 消す事はできないんですか!」

 

「あ、それはできます」

 

「じゃあさっさと消してくださいー!」

 

 

 さっきの逆をやればいいだけ、そう教えられて私は大混乱のカフェを落ち着かせるため、妖精達を帰還させた。

 

 なんとか落ち着いた店内で、探偵は眼鏡の位置をくいっと直した。

 

 

「なるほど、厄介そうな魔法を持っているようで……使わせてしまってすみません」

 

「ちなみに私の魔法が『妖精召喚』なのはお医者さんにも認定してもらったので間違いないですよ。怪盗の使う、魔法を盗む魔法を持っているとは診断されてません。確認してもらってもいいです」

 

 

 診断されてないわけじゃなく意図的に隠してるだけだけどな。なんせ医者が怪盗活動を推奨してきたのだから。

 

 

「そういうことは早く言ってくださいよ……うう、酷い目にあった。しかしすみません。治療中なのに魔法を使わせてしまって。この淡庭メイ。いかようにも保障いたします。お騒がせした皆さんにも、償いをさせてもらえればと思います。こちらのオーコさんに魔法を使って見せてくれとお願いしたのは私ですからね」

 

 

 しょんぼりした様子の探偵を見て、俺はほっと息を吐いた。もう疑ってもいないだろう。そして、医者に確認に行ったところで、警察でもなければどのみち個人情報なんて教えてもらえるはずもなく。さらに言えば仮に教えてもらえたとしてもそこには確かに『妖精召喚』の使い手だと証明がされるだけなのだ。

 

 こうして休日の穏やかな昼下がりに起こった探偵騒動は静かに幕を閉じたのだった。

 

 しかし、一つの謎は隠されたが新たな謎が生まれたのだ。あのアリバイ作りのための妖精召喚はなんだったのか、と。

 

 

 夜、店も閉店して自分の部屋に戻った時、マキナに聞いてみた。

 

 すると、あれはなんでも魔法覚醒病保持者なら本来誰でも出来る事だという。

 

 

「他人に対する助けを求める心の声が強くなれば、だけどね」

 

 

 つまり俺はあの危機的状況で本気で助けを求めたから、召喚に成功したということか。

 

 

「今までの相手は、自分の力で怪盗と戦おうとした者ばかりだ。『マスターキー』の使い手でさえ、自分の力で怪盗を捕まえる事で事態を解決しようとした。そういうのじゃなく……もっと、元から戦いに向いてないような魔法の持ち主なら、異世界にヘルプを求める可能性がある」

 

「つまり?」

 

「戦えない能力だからと油断してると、異世界人を召喚して戦わせてくる可能性は充分にある」

 

「げ」

 

 

 俺が嫌そうな顔をしていると、マキナは俯いてこう語った。

 

 

「実はね、ボクも異世界人。君のニートは嫌だ、誰か助けて欲しいという声に呼ばれてきたんだ」

 

 

 そんな事思ってたのか。他人任せなあたり恥ずかしいな。

 

 

「あの医者がそう診断を下したから『怪盗七つ道具』のフリをしていたけど……本当の七つ目はこれ」

 

 

 そう言ってマキナが取り出したのはシルクハット。

 

 

「……なんで七つ道具のフリなんてしてたんだ?」

 

「君も見ただろう。異世界人は簡単に異世界に転送できるんだ。ボクはもっとこの世界にいたかった。それだけだ」

 

 

 俺にとって、エクスマキナは大事な相棒だ。帰還なんてさせるつもりはない。そう告げると、彼女は嬉しそうに笑った。

 

 

「ありがとう、オーコ。――さあ、シルクハットの使い方を教えるよ」

 

 

 これで本当の『怪盗七つ道具』が揃った。

 

 認識阻害の効果のついた目元を隠す仮面と身体能力を上昇させる赤と黒の柄の衣装のセット-衣装

 

 伸縮自在の特殊能力を持った-ワイヤー

 

 近くにいる重度の魔法覚醒病患者の情報が浮き出る。手元から離れると予告状になる-カード

 

 魔力で弾丸を生成する魔法の麻酔銃。ハンドガンモードとスナイパーライフルモードがある-麻酔銃

 

 認識阻害のついたバイクと自動操縦のモーターパラグライダーの二つの顔を持つ-乗り物

 

 三秒間ターゲットに触り続ける事で魔法の力を奪い取れる-魔法

 

 なんでも入る、なんでも取り出せる黒の帽子-シルクハット

 

 

 これが俺の『怪盗七つ道具』。

 

 盗んだ魔法は温度を操り、発火や冷凍まで行える『熱』、あらゆる物を開閉する『マスターキー』、あらゆる毒物を無効にする『耐毒』、鋭い斬撃を繰り出す『斬鉄』、そして問答無用のチート能力『時間停止』。この五つだ。

 

 

 そして――最高に頼れる、電子に関する事ならお任せの相棒、エクスマキナ。

 

 圧倒的な手札の枚数、質。怪盗「配信者」ジョーカーはまだまだ人々を救い、強くなる。たとえそれが人々に認められず犯罪だと言われようと、俺は俺の道を行く。

 

 しかし……刑事で俺の兄、頑固でしつこい不知火洋一。俺を追い詰めた探偵、淡庭メイ。どちらも厄介な相手だが。鮮やかに逃げ切ってみせる。

 

 それが、怪盗ってもんだろう?

 

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