灰色のネズミ もしも雨取千佳並のトリオンモンスターが戦闘狂だったら 作:マイクロトフ卿
迅悠一にとって、灰原雪とは今ほど快い印象は持てなかった話。
迅悠一は未来が視える。
町行く人々や本部ですれ違う隊員の未来を視て、こちら側の世界の危険につながるものに対処する。
その過程で、話した方もない人の不幸な未来を見ることも日常茶飯事である。
その日、迅悠一は上層部に呼び出されたまたま本部を訪れていた。
会議室へと向かう最中、廊下の向こう側からC級の白い隊服を着た女性隊員が歩いてくる。
(初めて見る顔だな…同い年くらいか?)
自分で言うのもなんだがエリート隊員である自分に見向きもしない彼女は、きっと数週間前にあった入隊試験を突破してきたばかりの新人なのだろう。いつものようにそっと未来を視る。
知らぬ顔のC級の女性隊員からは、何パターンかの彼女の死の未来が視えた。ただ、不思議なことにそれらの未来はかなり不確定で見えずらい。
迅悠一はすれ違いざまにさらに詳細に彼女の未来を視る。それらは、こちらの世界の危機につながりうる事態はない。彼女にとって最悪でも、こちらの世界の防衛には支障をきたさない。
迅悠一は目を瞑る。
彼にできることなどそう多くもない。この力は個人のためではなく、大衆のために使わなければならない。
それに彼女からはボーダー隊員として働き続ける未来も視える。
そのより良い未来を彼女自身が選べることを祈って、廊下進んでいく。
二ヶ月後、迅悠一は再び所用で本部を訪れていた。必要だった資料をまとめ歩いていたところ、知った顔の数人にいつものように声をかけられ、そのまま訓練を少し見てやることになった。
訓練室で談笑しながら様子を見ていると、そばを一人の女性隊員が通りかかった。
(独自の隊服を着ているということはB級隊員だろうか?)
女性隊員の尻を触りセクハラして歩く癖がある迅は、新しい隊員なら顔を覚えておこうと覗き込んだら、それは数ヶ月前に死の未来を予知したあの隊員であった。
(相変わらず、エリート隊員と名高い自分には目もくれない。玉迫所属で本部に顔を出す機会も少ないから、仕方ないっちゃぁ仕方ないが…しかしもうB級に上がったのか…)
と、ついつい気になって再度未来視を発動させた。
すると、相変わらず不確定で靄のかかったような彼女の未来がいくつか見える。しかし、一ヶ月前の未来視の時とは比べ物にならないほど死の可能性が濃厚になっていた。
ありとあらゆるパターンで死亡する断片的な未来からはこちら側の世界のさきの未来に発展するものはない。
ではなぜB級になり強くなったはずなのにこんな死の香りを漂わせているのだろうか。
それは彼女の雰囲気や断片的な未来から推察するに、彼女からは生きる気力がなく、どこか死にたがっているようにも見える。
やはり自分で死にたがっているものの未来はどうしようもない、とやはり迅悠一はそっと目を逸らし、彼女のことをなるべく考えないようにした。
それ以来、本部への用事の際、数度同じように偶然彼女を見かける時があった。いつ見ても死の未来があるどころか、だんだんその可能性が確定的になる彼女はどこか暗く、死の香りを漂わせており、迅悠一は段々と苦手意識を持つようになっていた。
見たかった未来を書くために、筆を取りました。
初めてゆえ、いろいろ不慣れかもしれませんが出来るだけ続けたいです。