灰色のネズミ もしも雨取千佳並のトリオンモンスターが戦闘狂だったら   作:マイクロトフ卿

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年下にも容赦ない。灰原雪は決して聖人ではない話。


第一印象と第二印象(緑川の場合)

緑川俊は灰原雪が気にくわなかった。

緑川は教室でぼうっと数学の授業を受けながら考えにふける。

教師が黒板に退屈な式を書き連ねるのが終わるまで、憧れの迅について考えるのだ。

多忙なエリートS級隊員である迅が本部に来る数少ない機会にて、緑川は積極的に声をかけて覚えてもらい、ついには模擬戦やランク戦を見てもらえるほどの関係になった(無理やり引っ張ってきているともいう)。

そんな迅であるが、これまでは本部に来たらいろんな人に満遍なく声をかけて去って行った。

女性隊員や職員にセクハラをして怒られていることはあるが、迅の同期や友達を除き、特定の一人を誰か気にかけるということはこれまであまりなかったように思える。

 

(最近の迅さんはおかしい。本部に来てもかなりの確率であの女に自分から積極的に話しかけている。)

緑川は板書を取り始めてからさらに考え巡らす。

(あんな1人のB級隊員に構うのなんて馬鹿げてる。そもそも最初はあんな女の名前すら知らずにそこら辺にいる隊員に名前を聞き出す始末だったし)

灰原雪。生意気にもB級でソロとしてオペレーターと二人の隊を結成したという噂を聞いた。

曰く、灰原雪は常人よりもトリオン量が多い。

曰く、灰原雪は一人であるにもかかわらず連戦連勝である。

 

(あいつ、いつも迅さんに話しかけられてるっていうのに無愛想なんだよな。そもそも一人対多数の団体戦自体がおかしい。ちょっと一人速攻で倒してから最後まで生き残れば生存点もらえてお得だし。それに対して他の隊は一人の隊に対してそんなに探しても隠れられたら無駄足だから手を出しづらいだけでしょ)

緑川は、このままよく分からない女のために迅の時間が使われるのを嫌がった。

 

その日、灰原雪は訓練室で嵐山談笑をしていた。講義や期末という声が聞こえるので、おそらく同じ大学での話なんだろう。

緑川「ねぇ、アンタが灰原雪?」

階段の上から緑川はニヤけながら無遠慮に声かける。

灰原「そうだけど…あなたは?」

対する灰原は無表情である。

緑川「緑川駿。ねぇ、アンタって強いんだって?俺とランク戦やらない?」

灰原は少し怪訝そうな様子である。

緑川「B級のくせに迅さんに目をかけられてるでしょ?その実力を見せてよ」

緑川はニヤニヤと灰原に話しかける。その内心は闘争心でメラメラであった。

緑川「何点欲しい?10本500点とかでいい?」

緑川は手すりに身を乗り出しながら聞く。灰原はあまりのりきでないようすだ。それもそうだ、A級とB級のソロランク戦にそう乗ってくるわけないか。

緑川「俺A級だしハンデあげるよ!先にそっちが3本ありの状態からでもいいし」

嵐山「おい、緑川、灰原は…」

あまりにも無遠慮な緑川の態度に、灰原と直前まで談笑をしていた嵐山が思わず止めてくる。

灰原「いや、ハンデはなしで大丈夫です。それより折角A級の方と戦える機会ですので、100本勝負2000点とかではどうでしょう?」

灰原は嵐山の静止を遮るように言う。

(こいつ、馬鹿だ!それに2000点も獲得するチャンス!)

緑川は軽い気持ちで承諾した。

緑川「いいよ!それとさ…」

「もしさ俺に負けるみたいなことあったら、もう迅さんにあまりまとわりつかないでよ?」

これが悪魔の100本ノックの始まりだと知らずに…

 

 

トリオン供給器官破壊、ベイルアウト---

勝者 灰原雪

結論を言うと灰原雪はべらぼうに強かった。緑川の機動をことごとく遮るような正確なバイパー、膨大なトリオン量に起因する圧倒的な手数。緑川はここ20本一本も取ることができていずにいた。

ベイルアウト、ベイルアウト、ベイルアウト…

(くそっ!あと何戦戦えばいいんだよ!)

極め付けは、緑川をベイルアウトさせた瞬間の雪のあの冷たい目が緑川の心を完全に折っていた。

ベイルアウト、ベイルアウト…

 

灰原「あー、流石にバイパーでこんなに連戦するの飽きてきたなぁ」

灰原は余裕ありげに伸びをしながら言う。

緑川は期待した。もしかしたら年下の緑川をこんなに一方的にボコボコにしたことでそろそろ辞めてくれるんじゃ…

緑川「す、すみませんでした…灰原さんが強いのはわかったので、もう…もう…」

緑川は一握りの可能性に掛けてそう声をかける。

 

灰原は孤月を出現させながら言う。

灰原「残り50は孤月とスコーピオンでポイント稼ぐか…」

無表情なまま孤月を構えながら次の一線を促す。

緑川の顔から血の気がひいた。もちろんトリオン体なので、血の気が引いたような気がしただけではあるが、灰原の無情な宣言に緑川はもう戦える気力は残っていなかった。

緑川「お、鬼!こんな年下を一方的に痛めつけてなんとも思わないのかよ!!」

灰原「あぁ、言ってなかったっけ…」

灰原は緑川をあまりにも冷たい目で見下しながらそう残酷に告げた。

 

 

灰原「私、初対面なのに馴れ馴れしいやつ嫌いなんだよね。特に初対面の年上に敬語も使えない無礼なクソガキとか。」

緑川は思わず白目を剥いた。

灰原「ありがたく、2000点はいただきますよ、A級の緑川さん」

緑川には忘れられない悪魔の100戦の続きが始まったーーー

 

100対0

灰原「これに懲りたら、もう初対面の奴に無礼な態度で突っかかってくるのは辞めることだな。」

灰原はそう言いながらさっそうと対戦ルームを出て行く。

緑川は100連続で叩きつけられたベイルアウトルーム先のベッドに寝転びながら100連続、トリオン体とはいえ冷酷に己の息の根を止め続けた灰原の強さに身を震わせた。




舐めてたからと、心を最初にバキバキに折ったからこの結果ということで。灰原は意地でも一本も取られないように内心かなり苦戦していた。
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