TSメイドロボ少女、異世界に君臨す(仮) 作:TS銀髪ロリっ子メイドさん
好きなものを詰め込んだだけです。
──ピーピーピー、と。
とても喧しい電子音の様な物が、一定の間隔を空けつつも、容赦なく俺の耳を
.........あー! あぁー!! めっちゃうるせぇ!!
えっ、もう起きる時間なの? もし今見逃してくれたら後二時間は余裕で寝れますよ?
ちくしょう、今日もまた朝早くから色々身支度して、学校に遅刻せんばかりの時刻の電車にギリで乗りにホームまで急がなきゃならんのか......これが本当のホームイン! 俺はバカなのかもしれない。
電車来てからホーム着いても意味ないけど。うちの駅広くないから停車時間なんてないさ。
「──目覚めろ」
......ん?
俺の掛けてる目覚ましには、こんなめっちゃ渋い声のお兄さんのおはようボイスは搭載されてない筈なんだけどなー。
ていうか目覚めろて何やねん。癖強すぎんか。
それにもし買うとしたら、俺なら年上系のクールなお姉さんのボイス買うしなぁ......これはただ単に俺の性癖だけど。
とにもかくにも、とりあえず起きねば。(使命感)
もしかしたら俺が寝ぼけてるだけで、兄貴が起こしに来てくれてるだけかもしれないしな。
さーて、今日も一日頑張って学校行きますか!
.............
.............
.......................ここ、どこですか?
──────────
「んぅ、くあぁ......」
随分と可愛らしい声を上げて、
いやー! やはり寝起きのご主人様のこの無防備さ!
ついついいたずらしたくなっちゃいますね。
もう可愛いの化身ですよ。この可愛さは自然界でも通用すると私は睨みます。なんだその可愛さは!
誘ってるのか? もしかしなくても私を誘っちゃってるのか!?......一旦落ち着こう。
私を少女型のヒューマノイドと勘違いしているからか、私のご主人様は寝る時だけは、普段とは違いワンピース型のキャミソのみという、超絶ラフな格好で就寝なされるのだ。
いや、あえてもう一度言わせてほしい。
私のご主人様は、ほんとに可愛いのである。
おっと、ご主人様におはよう、と伝えるのがまだだった。
これがなけりゃ私、今日を頑張る分のご主人様エネルギーが圧倒的に足りんくなるのです。
まぁ冗談だけどね!
「.......おはようございます、ご主人様。」
「んふふ......おはよう、みぃちゃん。今日もかわいいねぇ......」
可愛いのは
あっ素が出ちゃった。
「私の容姿をお褒め下さり、このみぃちゃん、とても嬉しいです。超感激です。」
「もう、またそんなに畏まっちゃって! 今日も一日頑張るよ、みぃちゃん」
「
「んふふふ、今日はねぇ.........」
真面目な顔付きになった御主人様に応える様に、オレもしっかりと
ちなみにこの『みぃちゃん』という名前は、今のご主人様がオレを買ってくれた時に付けてくれた、正真正銘オレ自身の名前である。
オレの区別個体名の[MI]から取ったらしい。安直だけど、何だかんだオレは気に入っている。
ちなみにこの少女型うんぬんの奴は、めんどいからオレは縮めて
......そんな事は置いといて。
今更かもしれないが、何の因果か。今のオレはなんと、女型のヒューマノイドとなってしまっているのだ。
あの日、目覚ましと勘違いして起きたあの部屋の中は、オレのベッド等ではなく、それはもう見渡す限りに痛いくらいの機械類が、びっしりと屋内の大半を占めている部屋。
そして、寝転がっているオレのすぐ傍で、腕を組ながらオレを凝視している、謎のおっさん。いや見た目的にはギリお兄さんだったかも。
そこでオレは起き上がってから初めて、奥の方に置かれていた鏡を見て、自らの体が
全身の
だけれどそれは、決して違和感を抱かせる程の白さではなく、触れてみてもまるで人の肌と大差のない程の自然な感触だった。
そして、何故か知らないが、髪だけは輝かんばかりの、一面の銀世界にも負けず劣らずと自称してもいい程に綺麗な、美しい銀髪。
しっかりと幼さを残した『少女』と言える、だけど少し口足らずなソプラノボイス。
目は太陽と真逆の、夜の光を名一杯吸い込んだ、中心が薄藍で周りが空色の、あどけない綺麗な瞳。
おまけに背中には、相手の特性や性質を感知する為の二本の管が、まるで尻尾のように垂れ下がっている。
そして、オレは目の前のおっさんに、こう言われた。
『......お前の名は、AZ-No.005[MI]だ。覚えておけ』
いやそれ名前じゃねぇじゃん。最早個体名じゃん、ウケる。
まぁ一応OKって言っとこ。どうせ夢だし。
『
なんかさっきの言葉一言一句間違わずに言えるんだけど。オレ天才じゃね?
ていうかめっちゃ可愛い声出るんですけど!!
もしかしなくてもこれ、オレから出てる声ですか!!?
.........とか、当時は思ってた。
まぁつまり、今のオレの見た目を要約するとだ。
少女型
.......って、なった当初はとても嬉しかったのだが、現実はそう上手く行かなかった。
まず最初の不幸は、オレの
どれくらい酷いかと言うと、オレの目の前で精製に失敗した同族を葬り去ってスクラップにしちゃうくらいには酷いやつだった。
いやオレにも心あるんだよ。ていうか元々人間だったし。
生産者としては間違った行為ではないのかもしれないが、少なくとも前世のオレの価値観では、とても直視できる光景ではなかった。
いやだってホントに目の前でやっちゃうんだよ、あの人。
しかも造ってる最中に
『そのオレという一人称、直しておけ。煩わしい』
『
そしてオレの扱いが基本的に酷い。
なんやコイツ、喧嘩売っとんのか。オレにも心あるねん。(二回目)
こちとら自分を保つ為のアイデンティティー残念ながらこれくらいしかないんじゃい。思わず最近流行りの○ーニャちゃんみたいな回答してしまったわ。
まぁここで抵抗するとオレも
創造主には勝てなかったよ......
そして第二の不幸は、オレ自体が戦闘用機巧少女だったという事。
お陰で容赦なく同族と戦わされたりもしましたね。
さも当然といった感じで遠くから戦闘データ取られた時は、もうアイツにこのメカメカしい大剣振りかざしたろかなと思いました。
報復が怖いんでやってませんけどね!!
毎回ギリギリの戦いだったし、尚且つ負けた方は一切の容赦無く
ほんとに一体コイツはオレを何だと思ってるんだ。オレにも心あんねん(三回目)
そろそろしつこくなってきたから次に行くと、まぁ紆余曲折あってオレは、ようやく地獄の研究所での連戦を勝ち抜き、見事売りに出された。
何でも出来る最高級の、戦闘用機巧少女としてだ。
.........
.........いや、何勝手に売っとんじゃい!!!!!
─────────
と、まぁこんな感じで生まれてすぐからハードモードだったオレの人生......人生で合ってるのかな......
まぁ研究所での一幕は、最終的に売りに出されて終わったのだ。
露店で周囲の人達の視線に晒されながら、オレ自身の購入者を待つ日々。
それはそれは、言葉では言い表せられないほど退屈でした。
そんな毎日に終止符を打ってくれたのが、今の私のご主人様の、アリア様。
たまたま店で売られていた私を見た途端、即座に店主に巧みな話術で交渉をし、あっという間に私を購入する権利を得たのだ。
その際に聞き耳を立てて、アリア様の私の購入理由を聞いてみたら.......
『こんなに可愛くて何でも出来る子がまだ買われてないなんて! 絶対私が買うわ! 買います! ていうか可愛い!かわいいぃ!!!』
......と。
店主さんも若干引き気味だった。
アリア様には申し訳ないけど、あの時は店主さんの気持ちが分からなくもなかった......
────でも、これが私の中での最初の、人生が変わる大きな出来事だった。
......パンをトースターで焼いている内に、まだ新しいカリカリのベーコンを焼きながら、卵を片手で割って、殻を捨ててかき混ぜる。
もうこの作業も、手慣れたものだ。
どうでもいいが、今の私は御主人様の
スカートと白いタイツの間から見える黒の縦模様がチャームポイントである。
仕上げに、私がご主人様からの要望で冷蔵庫に大量に買溜めしておいた、○ックスコーヒー。通称マッ缶を取り出し、ハムエッグトーストと共にご主人様の元へ届けに行く。
凄いよね、この世界私みたいなとんでもヒューマノイド作れる癖に、マッ缶あるんだぜ。
流石天下の○カ・コーラ社。
マジリスペクトっす。
「本日の朝食は、トーストの上にハムエッグを乗せた代物と、御主人様の大好きなマック○コーヒーです。」
「いつもありがとね、みぃちゃん。......んっ、やっぱりみぃちゃんが作ってくれたトーストハムエッグ、最高です!」
「
「んもう、みぃちゃんったら。あなたがこんな簡単な作業、一度だって失敗したことないでしょ?」
うりうり、と私の御主人様のアリア様が、まるで茶化すかのようにオレに抱き付いてくる。
......アアアァァァア!!!!↑↑ ごっごご御主人様のすば、素晴らしいお胸がぁ、この
すいません!!! こんなナリしていて、実は私元々男だったんです!!
確かに今は少女型のただの機械ですけど、心はしっかりとオトコノコなんですうぅぅぅ.........
「き、
「み、みぃちゃーん!!?」
あぁ、私は幸せ者です、ご主人様..........
─────────
午前の分の洗濯を済まし、食器も洗い、そのままいつもなら直ぐ様昼食の準備に取り掛かる......所だったのだが。
ふと気付いたら、いつの間にかオレの横に居たアリア様にちょんちょん、と肩を叩かれた。
「みぃちゃん、今日も........やるよ。」
「........了解。いつものアレですか、御主人様。」
「本当は私だって、こんな何の利益にもならない実験、やりたくないんだけどね。やっぱり、上の人の考えてる事はよく分かんないよ」
「
呆れているという態度を隠しもせずに、オレと横並びになって歩きながら愚痴る、アリア様。
正直めっちゃ分かる。もうこの首の部分取れそうなくらいには頭を縦に振れる自信がある。
実際にオレも、
実は今、オレの
と言っても、今オレ達の住んでいる国の重要機関の一つの、異界方途考証研究所.........という、何か無駄に長いところの所長を務めているのだが、凄く簡単に言えば他の世界行ってみたいから異世界行ける装置作ってくれよプロジェクトである。
はい、もうこの時点でクソですね。
いくら他国との戦争に勝ち続けているからって、調子に乗って平民から重税を課して集めた金で、こんな途方もない計画を成功させようとしているのは、はっきり言って大馬鹿のクソカ○野郎共である。
そしてこれまた今更なのだが、
ていうかもう完全に廃れた国とか何ヵ国もあるもんね。人だけが消えた、一部しか残っていないビル群に野生の植物等が複雑に絡まり合う様は、できればリアルで目にしたくなかった光景第一位だった。これがポストアポカリプスか(達観)
下手しなくてもすぐ死ぬじゃないですか、やだー。
しかもその上、御主人様があまりにも天才過ぎて、他のこの
は?? お前らほんとに何してんの??? 殺すよ??
こんなに幼くて可愛い御主人様を、己の醜い嫉妬だけで追いやるとは.........上のお偉いさん方、採用する人達間違えてますよ? あっ元々馬鹿なのでそんな事考えてないですよね。すみませんでした。
そうして一人追いやられた御主人様は、上の人達から支援を受けつつも、なんと自分の自宅内にその研究所を完成させてしまったのだ。
へーい、御主人様をぞんざいに扱った奴ら、見てるー?
お前らよりうちの御主人様の方が、よっぽど研究の成果上げてるからなー!
そう、これは茶化している訳でも何でもなく、本当に後少しで異世界へと繋げるゲートを造り上げちゃいそうなのだ。
ついでだがこの前、バレない様にこっそりとその例のゲートに、オレの腰回りに付いている対物体性質感知管二本を、そろーっと近付けてデータを読み取ろうとしてみた。
結果は想像以上の構造の複雑さにオレが目を回し、最終的にエラーで終わったのだが.........
うちの御主人様、凄過ぎ......!?
「......着いたね~」
「出来れば着きたくなかったです、御主人様。」
「同感です」
例の実験室へ着いてしまった、オレと御主人様。
その足取りは大変重かったが、来てしまったものは仕方がない。
「これが終わったら、膝枕してよぉ......みぃちゃん..........」
「ええ、えぇ。私は分かっていますよ、ご主人様。今日も一緒に頑張って、好きなだけ膝枕させて頂きます」
「えへへ、じゃあ私も頑張らなきゃね! 約束だよ!」
本日もあざと可愛いでございます、私の
これでいてわざとじゃなく素でこの可愛さなんだから、もう破壊力が桁違いです。
ですが、しかし私は誠実なロボットですから!
良かったですね、御主人様。私以外のヒューマノイドでしたら、御主人様の魅力にやられ、直ぐ様
しかし、しかし!! 私は違うのです!!!
「んふふ~くすぐったいよぉ~」
「全神経集中、御主人様をご満足に致すまでこのみぃちゃん、頭を撫でさせて頂きます。」
そう、私は頭なでなでで済ますのです。
.........って違ぁう!!!
「! 今、私の中の隠された感情が目覚めた様な気がします」
「えぇ!? それはおめでたいね!」
さて、おふざけはこれくらいにして、今日も一日、頑張るとしましょう。
────これが、私と御主人様の、最後の会話でした。
◇
「ご主人様、ご主人様。」
そう、私を呼んで起こしてくれたのは、数年前に私が露店で一目惚れして衝動買いした、可愛い可愛い
どうやら戦闘用だったらしいのだが、そんな事は関係ない。
元々戦闘用だったのなら、私が家庭用メイドさんに変えてしまえばいいのです。
私は店主からその子の個体名を聞き、[MI]から取って『みぃちゃん』と名付けた。
毎日毎日、政府関係者や国のお偉いさんからの依頼を消化して、そして寝る。
思えばあの時に私がこの子と出会って居なかったら、今よりもっと後の私は、それはそれはとてもつまらない日々を送っていたんだと思う。
普段は冷静沈着で、家事でもメンタルケアでも何でもこなしてくれるのに、一緒にお風呂に入ってみれば、あっという間に顔を赤くして
ああ見えて、きっと内心ではもっと明るい子なのかなぁ、なんて想像してみたり。
初めて家に迎えた頃は、私の愛用していたお茶碗を割ってしまって、青ざめた様な表情で土下座されたこともあったっけ。
家に来てから一年が経った時には、みぃちゃんの誕生日を盛大に祝った事も、記憶に新しい。
───でも、そんな私の毎日を支えてくれたあの子は、もう居ない。
あの日、いつもの様に異界への扉を開く実験をしていた際に、それは起こった。
事が終わった今でも、何が起きたのか、そして何が原因だったのかは未だに判明していない。
私が装置の一本の管を切った瞬間、まるで臨界実験かの様な目映い光が装置から広がり、私達の実験室を覆った。
その光が私の元へ到達する前に、あの子が人智を越えた反射神経で、私を扉の外へと突き飛ばした。
「御主人様!!!」
最後に聞こえたのは、今まで一度も聞いたことがない、あの子の本気の声音。
私を守る為に突き飛ばしてくれたみぃちゃんも、やはりあの一瞬では力加減が出来なかったんだろう。
広い廊下の壁に激突した私は、そのまま意識を失った。
あぁ、みぃちゃんは大丈夫なのかな。
───────
あぁ、何だろう。
見るも無惨な、ボロボロの廃館の二階の窓から、外の景色を見渡す。
オレと御主人様がいた、あのディストピアよろしくな世界の欠片もない、スモッグどころか雲一つない澄んだ青空。
周りには青々とした木々が、オレが今いる廃館の回りを囲むように並び、密集している。
地面には一面に雑草が広がっており、ここが所謂『森』なんだという事を知らせてくれる。
ふと、小さな鳥が、窓辺に佇むオレの手の甲に止まってきた。
オレの手をツンツンとつついてくる小鳥は、オレに一時の安らぎを与えてくれる。
前の世界では、こんな風に森を自由に駆けていく小鳥なんて居なかったのに。
オレに他の人と交流できるスレッド機能が搭載されてたら、絶対スレ立てするんだけどなぁ、と思う。
題名はなんだろうか。
【悲報】、オレ氏。ディストピア世界から謎のファンタジー世界に、再び転生してしまうwww
前に言った様な気がするが、あえて言わせて貰おう。
................
................
...............................ここ、どこですか...........
あれから暫く、時間が経った。
気付けばオレの周りには、羽の生えた可愛らしい
なんか知らんけど属性全コンプらしい。マジで何の事なんだろうね。
未だにこの廃館から離れられずにいるオレは、絶賛退屈した日々を送っている。
やはり、こんなに立派な館という事もあってか、数年前までは屋敷主や使用人達が住んでいたのであろう。
余るほどある部屋の各所には、未だに生活の痕跡が色濃く残っている。
そんな部屋の一室で迎えた朝、太陽が登り始めた時間帯に目覚めたオレは、目一杯美しい朝日を浴びながら、今日も自分の体をメンテナンスしていた。
今までは、御主人様にやって貰っていたんですけどね。
「
なんか精霊達が喜んでる。かわいいね。
でもお前らこの廃館の持ち主誰か分かっとんのか??
オレやぞ? この廃棄されていた主不明の建物を占領したからにはオレの物やぞ??
そこんとこ理解してから入ろうな??
......あ、元からこの辺りは貴女達の住み家でしたか。そうですよね、森ですもんね、ここ。
はいすみません。精霊さんこれからも仲良く生きていきましょう。
そして昼間は、森に住み着くどっから来てるのか分からない魔獣達を狩る。
「.........≪
「クク、ヤレルモノナラヤッテミ......グギャ!?」
「ナ、ナンダコイツ........強スギル......グェ!?」
ちなみに今は、精霊さん達からの依頼として、森壊したり人襲ったり等々、いらん事しかしないオークの集落にいる奴らを、
いやー、久々に戦ったらやっぱり体も鈍ってるもんだね。
それでも、あの研究所での同じ
ていうかオレ、元より戦闘用ロボットですし。
そして最近は何故か、オレの住んでいる廃館によく来客が来るのだ。
こいつらがやってくる都度、極限まで身を隠しながら、精霊さんにあれらは何をしに来ているのかを聞くと、どうやら彼らは所謂冒険者という奴らしい。
何でこの廃館に来るかまでは判明しなかったが、とりあえず出会った冒険者は片っ端から気絶させた後に、森の外へ倒れ込ませておいた。
オレと精霊さんのパーソナルスペースを汚す様な野蛮な奴は、一生来なくていいです。
あでも、丁寧な対応で尚且つオレの好みにドストライクな美人さんが来たら別かも。絶対来ないんですけどね!!
昼間の冒険者追い返しが終わったら、今度は夜がやって来る。
夜になると、いつもの精霊さん達でさえあまり姿を見せてくれない。
実を言うと、オレはこの世界に来てからの夜は、あまり.........いや、嫌いになった。
勿論、前の居た世界とは違い、美しい月明かりが廃館の一室、オレが寝転んでいる部屋に入り込んで来て、それはそれでとても幻想的だと思う。それは分かっている。
だが、足りない。
『ねぇねぇ、みいちゃん! 今日は何の日だと思う?.........んふふ、時間切れだよ。答えはね、私とみいちゃんが、初めて出会った日だよ!』
『あー、みぃちゃん。そうそう、そこ。奥の方にあるスパナ取ってくれる?......ありがとうね!』
『んふふ~、今日もやって来ました、おやすみの時間です!.........ふあぁ、みぃちゃん、おやすみなさい.........』
今の私は、一人。
一人寂しく、この廃館から出ることなく、毎日を過ごしている。
私の心の中にある、煩わしいこの気持ちを収める為に、夜の分の狩りでもして、気を紛らわせようかと思った。
ふと、起き上がって満月を見ていた私の体に、ポタッと何かが落ちてきた。
「───あ、ぅ」
それの正体が涙だと言う事に気付いた時には、既に私の目からは止めどなく、ポロポロと涙が溢れ落ちていた。
また、私と他愛のないお話を、して欲しいです。
また、私と美味しい食事をとって欲しいです。
また、私と一緒に、お風呂に入って欲しいです。
───また、私と手を繋いで、同じ夜を過ごして欲しいです。
「.........一人という物は、こんなにも、こんなにも.........」
──────こんなにも、辛いことなのですね。
◆◇
朝、カーテンの僅かな隙間から漏れ出た眩しい太陽の光は、私という存在が普段通りの時刻に起きる事を助長してくれる。
「くぁ、ふあぁ.........」
貴女は一度目を開けたら、比較的寝起きがいい方だよね、と数少ない友達に言われた事のある私は、たった今その事が事実だったんだな、と改めて再認識させられた。
ベッドから起き上がり、両手で勢い任せにカーテンを開くと、思わず目を細めてしまう程の眩さと快晴。
「───うん、今日もとってもいい一日になりそうね」
昨日とは違う、また新しい日の幕開けを見届けながら、今日も私は朝食の準備に取り掛かった。
「.........ご馳走様でした」
朝食を食べ終えた私は、今日は何をしようか、なんて事を考えながら、朝の身支度に勤しんでいた。
冒険者という職を
私の様な、
心の中で服職人に親指を立てながら、最後の仕上げに右の髪を編み込み、リボンで結ぶ。
「んっ.........よし、完璧」
客観的に見ても、恐らく恥ずかしくはないと思う形に出来た。
それから、いつも外へ行く時に常備している持ち物等を揃え、最後に一応の護身用として持っている軽いロングソードを背中の鞘に収納して、私は今日も扉の外へ出ようと───
「........危ない、忘れる所だった」
いつも、おまじない兼最後の砦として持っている、氷結晶の魔鉱石と光の神鉱石がブローチとして組み込まれている装身具を、首にかけた。
..........仕切り直して。
今度こそ、私は外の世界へ飛び出した。
私の生まれ育ったこの国、コーアド大精王国には、ウルネアという国の重要都市がある。
そのウルネアの中心位置には、国を代表する豪華な冒険者ギルドがどでんと構えていて、他のどの国よりも一線を凌駕しているその場所は、各国から力に自信のある者や、名声を求めてやってくる人は少なくない。
そんな国だからこそ、我先にとやってくる商人も多いため、周辺国で一番栄えてると言っても過言ではない。
まぁ、今から私が用のある所なんだけど。
まだ朝早くにも関わらず、ギルドの扉越しには、冒険者達の喧騒が痛いくらいに聞こえてくる。
「よし、行きますか」
今日も新しい依頼が入っているのかな、と内心少しワクワクしながら、私は扉に手を掛け、そして開けた。
「.........」
「.........」
あぁ、やっぱり私が来ると、騒然となっちゃった.........
▽▼▽
様々な冒険者や商人、貴族までもが入り雑じり栄えるこの国、コーアド大精王国には、とある噂がある。
数年前に起こった、コーアド王国の危機。
狂魔獣大侵攻戦の南部分、フォーレス大森林から来る狂魔獣達を、たった一人で"全滅"させた、可憐な一人の少女。
近くでその一部始終を見ていた当時の冒険者からは、伝説の人物として未だに尊敬されている。
大森林から無尽蔵にやって来る魔獣達を、無数とも言える鋭利な氷の剣や魔術で侵攻を止めた、奇譚な少女。
───その少女が今、このウルネアの街の冒険者ギルドへ入ってきた。
「..........」
「..........」
何処からか「おぉ」や「これが.......」と言った、思わず漏れ出たのであろう声が聞こえた。
男なら見逃す者は居ないであろう、整った端整な顔立ちと、豊満に育っている胸部、そして程好く冒険者向きな、女性としては少し高めの身長。
その少女の目は、どんなに高価な魔結晶をも容易くはね除けてしまう程紅く煌めき、見られた者を魅了する。
その瞳に宿る"紅"の目は、豊富な魔力量を持っている証とも言える物だ。
長く腰までかかっている、美しく
容易く、さも当たり前かの様に、幾千万もの氷精剣と氷魔法を駆使して敵を殲滅する、その少女のあまりの強さと美しさに魅入られた者達は、一斉に彼女の通称を王国中に広めた。
───彼女の名は、アイ・グレイスフォールド。通称 "氷の寵姫"。
◆◇
私がギルド内へ入った途端、何故か静かになるのはいつもの事だから、無視していつも私が並んでいる、顔馴染み兼お友達の受付のお姉さんの所へ一直線に歩く。
.........うぅ、誰かちょっとくらいは、私に話しかけてくれてもいいのに..........
「おはようございます、アリーネさん。今日もよろしくお願いしますね」
「あら、アイさんじゃないですか。 おはようございます!! 今日は昨日より一段と美しいですね!!」
「ふふ、お世辞でも嬉しいです。今日はどの様な依頼が?」
私が、周りの人達からの視線を出来るだけ避ける為に、いつも端っこの受付の人に、受注された依頼を確認しに行っていたのが、アリーネさん、もといアリーネちゃんとの初めの会話だった。
最初の頃こそ、お互いに謙遜した会話ばかりだったのだが、珍しく私が夜のギルド内で食事を取っていた際に同じ席で食べる事となり、そこからお互いの趣味や好きな物、生い立ち等を笑いながら伝えあって、今や私の数少ない友達となっている。
今は、依頼を受ける冒険者と、様々な依頼を紹介する受付嬢という仕事上の立ち位置の為、こうして他人行儀な話し方をしているが、休日に遊びにいったりする時はもちろん、砕けた話し方で楽しんだりもする。
今は仕事上「アイさん」と呼ばれてはいるけれど、この前遊びに行った時は「グレイちゃん」と呼ばれちゃったりして.........
ちょ、ちょっとだけ恥ずかしいなぁ.........
「えーっと、今日はですねー........本当に色々あるんですよっと........お、最近話題の、これなんてどうでしょうか?」
私に会えたからか、嬉しそうな表情を浮かべたアリーネちゃんが見せてくれたのは、また一風変わった依頼だった。
「.........フォーレス大森林の廃館に巣食う謎の生命体の調査、ですか......」
「はい、そうです。何でも、初めのうちは何てことのない普通の依頼だったんですが........色んな初心者や中級者のパーティーの方々、そして高位の冒険者の方がなんと返り討ちに遭ってしまい、森の前で意識不明になっていたのを皮切りに、ついに調査だけでここまで報酬金の高い依頼になっちゃいました、あはは.........」
これまた不思議な話だ、と私は思った。
普通、こう言った一部の場所を捜索、調査する依頼は、比較的簡単な物が多く、初心者や中級者の人達が稼ぎの足し程度に受けられる事が殆どだ。
それが、高位のある程度手慣れたパーティーの冒険者達が追い返される上に、強弱関係なく、必ず森の前まで運ばれている。
そしてその帰ってきた冒険者達に何が起きたのかを聞くと、皆口を揃えてこう言うらしい。
"覚えていない"と。
「........分かりました。この調査依頼、私が受けさせて頂いてもいいですか?」
「えぇ、アイさんであれば、私や周りの方達も安心出来ますし!!.........でも、いくらアイさんとはいえ、この謎の人物は、冒険者パーティー四人を纏めて相手した後に、必ず勝ってしまうぐらい恐ろしく強いです。もし実害が出ていたら、あっという間に高ランクの指定重要依頼として貼られていたでしょうし........」
私の身を案じてくれているのか、珍しく焦った様子であたふたと私を心配してくれる彼女に、私は余裕を持って言い放った。
「大丈夫よ。今回で私が、街の人達が被害に遭う前に、この依頼を終わらせて見せる」
「........どうか、お気を付けて!」
そう、きっぱりと言い切った私の姿を見て、アリーネさんも安心したらしい。
私は、この国、この街が大好きだ。
だからこそ、こう言った危険性のある依頼は、被害が出る前に私達冒険者が解決すべき物だと、私は思う。
それが、私達が日頃お世話になっている、街の人達への精一杯の恩返しになると思うから。
────でも、私はその依頼で、自身の運命が変わる程の、大きな出会いを果たした。
AZ-No.005[MI](みぃちゃん)
主人公。
どの世界でも気苦労の絶えない、かわいそうな子。何故なのか、研究所では五十戦無敗の記録を誇る。
好きな食べ物はキャラメルで、好きな人はご主人様。
実は寂しがりや。
とてもかわいい。
アイ・グレイスフォールド (アイちゃん)
同じく主人公。
周りの人達や多くの冒険者の憧れの人となっているため、中々話しかけてくる人がいない。
好きな食べ物は、現代で言う氷菓。好きな人はいない。
最近の悩みは、友達が少ないこと。
とてもおっぱいがおおきい。
ご主人様 (アリアちゃん)
ヒロイン(?)
多分一番の苦労人。
見た目こそ幼いが、実年齢はそこそこである。
好きな飲み物はマッ缶。好きな人はみぃちゃん。
とてもかしこい。
・
アイちゃんの体内から絞り出したマナと、召喚または野生の氷精霊から力を借りて作り上げた、アイちゃんの最高傑作の大精越魔法。発動させるだけで周囲を氷の息吹で凍てつかせ、触れるだけで余裕で壊死する。
ロングソードの代わりに扱うもよし、無数に複製してさらに打ち出すもよしという、まさにチートスペックな技。
数年前の侵攻の時も、この技でとりあえずその場を収めたらしい。
つづく。