TSメイドロボ少女、異世界に君臨す(仮) 作:TS銀髪ロリっ子メイドさん
「.........おはよう、ございます」
朝。
いつもの様に、最早オレの私有地と言っても過言ではない気がする廃館のベッドで、オレは目を覚ました。
当たり前だが、いくら同じ夜を迎え目を覚まそうとも、もう横で笑って頭を撫でてくれるご主人様は居ない。
そんな事はとうの昔から分かっていると言うのに、つい、反射的に横を向き挨拶を.........
(えへへへ、おはよう! みーたん!)
(みーたん、みーたんおきたー!)
(たんたん、みーたんたん!)
「.........」
..........そこには、オレの異世界での記念すべきお友達第一号、キューティクルかわいい精霊さん(五体)達が居た。
しかも全員、オレの寝てたベッドに寝転がってるし。ていうか布団捲ったら、なんか体キラキラさせながら毛布の中に潜んでたし。
何やこいつら。
話を聞く限り、どうやらいつもより起きるのが少し遅かったオレを心配して、急いで皆で駆け付けてくれたらしい。
こんな朝っぱらからオレの所へ一直線とか、マジで好かれてるじゃん。一途かよ。
最も、早寝早起きを心掛けているオレ基準の朝のため、多分普通の人はまだ寝てる時間帯だと思う。
まぁぶっちゃけた話をすると、オレみたいな機械は寝なくても生きてはいけるんだけどね。前の世界でも
それでも、そう言った生活を長いこと続けていると、いくらオレ達
そんな事で自分の
改めて、オレの周りをフヨフヨ浮いている精霊さん達と顔を会わせ、挨拶をする。
「.........今日も一日、頑張りましょうね、皆さん。」
(うん、わたしたちもがんばるの!)
(みーたん、おなかすいた!)
(みーたんたん、なんだかうれしそう?)
オレの意気込みに応える様に、煌やかな半透明の羽をはためかせて、自信ありげな表情を浮かべる精霊さん達。
いつのまにか、自然に笑みが溢れてしまっていた。
........
どうやら私は、この謎だらけの世界でも、可愛らしいお友達が出来た様です。
その日から精霊さん達は、私が寝床に着く時には必ず一緒に寝てくれる様になった。
◆◇
清純に澄んだ森の空気が、私の体の中を透き通っていく。
地盤にずっしりと根を張った、美しい緑の葉を宿した長寿の木々が、私という一人の人間の来迎を、心から祝福してくれている気がした。
つい先程、アリーネちゃんから廃館の調査依頼を受け取った私は、百聞は一見にしかずと言わんばかりの早さで、早速フォーレス大森林の中心部分まで足を進めていた。
「........うぅ、前に来た時もそうだったけれど、本当に魔獣が多いわね、この森............」
私の存在を確認次第、協調性の欠片もなく次々と襲ってくる魔獣達。
その全てを悉く
ちなみに、こう言った生物環境に多大な影響を与える様な魔法は、この様な特定下では原則禁止とされている。
だって、初心者の冒険者さんが『魔獣一体を倒そうと炎魔法を使ったら、森を全て燃やしてしまいましたー』なんて事になったら、もう目も当てられないからね。
この場でも使用が認められているのは、私の様な一部の手練れの冒険者だけである。
自分で言うのも恥ずかしいんだけどね.........
それはそれとして。
私がこのフォーレス大森林の最も厄介な所だと睨んでいる所は、他の魔獣が生息している地域や森と比べても、比較的強めの魔物が多く潜んでいる点だと思う。
まるで、野生の弱肉強食の極地みたいな有り様を体現しているこの場所は、初心者の冒険者さんやパーティーの人達には荷が重い。
とは言っても、パーティー内で役割分担がはっきりとしていて協調性があり、ソロでも魔獣があまり見られない道筋を辿って行ったら、恐らく廃館までは初心者さんでも行けると思う。
全く、あの国の初代国王様は、どうしてこんな危ない森がすぐ傍にある所に大精王国を建設したんだろ........
「───そこか」
「グギャッ!?」
そして今、私の後ろ側と右斜め前の木の死角から襲ってきたオーク等の、魔獣達と比べればまだ知性のある魔物も、この森には存在する。
彼らは、ただ群れるだけの獣とはまた違った存在の為、自分達で独自の住処を作ったりして、この森の残酷な弱肉強食を生き抜いている。
それでいて、人を襲ったり邪魔したりするんだから、正直かなり鬱陶しい。その知能を別の所に使えなかったのか......
「.........む」
アリーネちゃんに貰った地図通りに、丁度目印の×マークが記されている箇所まで進んでいく。
膝下まで伸びている雑草や、少ししだれた青葉を掻き分け、足の踏み場を直感に任しながら一気に駆け抜けていると、突如開けた場所に出た。
その場だけ一定の間隔を空けて木々が並んでいるからか、向かいから射してくる陽光の光彩が少し目に痛い。
しかし、そんな些細な事を気にする暇もない程の光景が、私の目に広がっていた。
私の眼前にそびえ立つ、まるで貴族御用達の別館と説明されても驚かない様な、広大な土地を占めている廃館らしき物。
「なるほど......ここが例の廃館か........」
廃館の存在自体は、依頼を受け取る前から知っていたけれど、流石にここまで大きいとは思ってもいなかった。
建物自体の外観は、見た感じはそこまで悪くはないと思う。ただし、部屋の中を見なければだけど。
「うん、でも中身さえ頑張って掃除すれば、住めちゃうのも夢じゃないかも.........?」
住めば都、という言葉もあるくらいだからね。
........あれ、何で私、ここに住める事前提で考えてるんだろう。
「危ない危ない、なんだか盗人の思考みたいになっちゃった......」
そんな事を考えている暇はない。
私はアリーネちゃん、いやギルド全体から責任を持って依頼を承った、かなり危険度の高い依頼をこなしている最中だ。
気を引き締めて行かないと、私でもやられてしまうかもしれない。
私は今一度精神統一を図り、集中により憤った身体中を駆け巡るマナと精霊の力を治めると、周囲への警戒の度合いを最大限まで引き上げつつ、その廃館の中へと足を進めて行った。
「失礼します.........」
少し色褪せた大きな扉に手をかけ、力を込める。
まるで建付けの悪いガラスかと思ってしまう様な開けにくさと開閉音だったけれど、そこはやはり昔ながらの建物なのだろう。
もしもの為に備えて注意深く周りを観察しながら中に入ると、廃館と言うだけあってやはり内装は酷いものだった。
.........視界の端に、目に入れるどころか同じ空間に存在しているだけでもおぞましい、無駄に黒光りしているこの世の塵の死骸が見えた。何とは言わない。
「うえぇ、勘弁してよぉ........」
せ、精神的に追い詰められるのは予想外だったよ........
まだ肝心の敵にすら出会っていないのに、私の中の少し士気が下がった様な気がする。
出来るだけ
一応、元の屋敷主の沽券の為に断っておくが、素早くとは言ったものの、その実相当に広かった。
ていうか思わず見とれちゃったし.........
「となると、残りは二階ですか.........」
ただ、一階に何か違和感は無かったのかと言うと、ない訳ではなかった。ていうかあった。
何故か食材の調理をしたり料理を完成させるキッチンと、客人をもてなしたり自分がくつろぐためのリビングの部分等が、他の部屋と比べても異様に綺麗にされていたのだ。
それどころか、私が見た玄関と一部の部屋は酷い有り様だったが、それ以外の箇所は普通に住める程度の清潔さだった。
やっぱり、ここの屋敷に住み着く謎の生命体は、一定数の知能を持った者だと理解させられた。
.........目の前にある、二階へ上がる為の広々とした、廊下から階段にかけて赤の絨毯が敷かれている階段を見上げる。
「───よし、行こう」
これから戦うことになるであろう相手の、あらゆる攻撃の仕掛け方を想定しながら、今度こそ私は二階へと上がっていった。
───────────
........これで、五十回目の勝利だ。
「
(むぅ~! わかったよ、みーたん!)
(みーたん、まるでこころをよんでるみたいですごい......)
(みーたん、すごい! みーたんたん!)
ダメだこいつらまるで話を聞いちゃいねぇ。
異世界にやって来てから、やはりやる事が一向に見つからないオレは、相も変わらず、内側から見た外の眺めが最高なこの部屋で、日々精霊さん達と怠惰な毎日を過ごしていた。
ちなみに今オレ達がやっていたのは、地方で言い方が変わるのかもしれないが、
種明かしをすると、精霊さん達がそれはずるいと抗議してくる。
ふはは、せこくないせこくない。この世は最終的に勝てばよかろうなのだ。おいこらやめろ、やめなさい。そんなにぺちぺちオレのボディを叩くんじゃない。
お、そうこうしている内に、館内を彷徨い歩いていた精霊さんの一人が帰ってきた。
(み、みーたんみーたん! たいへん!)
え、大変なこと?
やだなぁ、こんな辺境の地(推測)に、やって来る危ないイベントなんて、精々魔獣ぐらいじゃ.........
(すっごいつよそうなひとが、はいってきてる!)
..............え?
「せ、せせ精霊さん、私の服装に何処か違和感の感じる点等はありませんでしょうか」
(う、うん! だいじょーぶ!)
(みーたん、おにくたべたい!)
(あいさつしてもいいかな?)
よしよし、まずは落ち着けお前ら。
服装は大丈夫。とりあえず君は後で誰でも簡単、初心者でもできる私の脳内クック○ッドに入ってる魔獣料理作ってあげるからちょっと待っといてね。最後の君はガチの不審者だったらヤバイからちょっと待っとこうな。
怯えている(当社比)精霊さん達を落ち着かせる為に、バルコニーに作っておいたお手製の椅子と机の上で一人づつ頭を撫でながら、オレは今の状況を整理していた。
ただの侵入者だったら完全にオレの杞憂なのだが、この子達の勘は馬鹿にならない。
森の番人、とでも言うべきか、野生本来の本能を発揮して、全力で相手が強者だと言うことを此方に訴えかけてくる。
今の自分、端から見たら少し震えているだけに見えていると思うが、内心はかなり動揺している。ていうかドキドキで死にそう。
すっごい強そうって、どういうとこを指して言った言葉なんですかね。
見た目? 装備? それとも何か相手の性能とかを感じ取ったの?
........考えていても仕方がない。
「......じゃあ、精霊さん方。とりあえず、私の認識視覚が届く範囲であれば、全力を掛けて御守りするので、この場で留まって───」
ガチャ。
「........がちゃ?」
(わ、わぁー! にげろー!)
今、完全にこの部屋の扉が開く音がした。
精霊さん達は一目散に逃げ、バルコニーには虚しくオレと淹れたての紅茶だけが残る。
あらゆる事態を想定する。
対話の望める
とてもそれが通じ得なさそうな
短期間ではあるが、どうやら私は、この場所を存外に気に入っていたらしい。
さぁ、侵入者の
「............」
「.............」
わぁ、すっごい美人さんだなぁ。
◆◇
「........よし、ここが最後の部屋ね」
一部屋一部屋、相手に私が侵入している事を悟られない様に、丁寧に探っていった。
でもその鬱陶しかった作業も、この部屋で最後。
もしかしたら、今は不在中なのかもしれない。
なんて事を思い浮かべてしまった私は、少しだけ気を緩めながら、最後の部屋の扉を開けた。
「───わぁ......」
─────月並みの感想ではあるが。
そこに居たのは、とても可愛らしい子だった。
バルコニーの白い椅子に、僅かに体を持たれ掛からせながら此方を見てくる、銀髪の美しい少女。
まるで何が起こったのかを理解していない様な、あどけない表情を浮かべている。
とても廃館に居るとは思えない、この薄汚れた屋敷にあまりにも不釣り合いなその姿に、一瞬だけ意識を狩り取られた。
何故か屋敷に雇われる人の様な格好、所謂メイド服を着てはいるが、それだけではこの幻想的な美しさは誤魔化しきれない。
彼女が不思議そうに首を傾けると、少女の透き通った銀髪と、カーテン脇にそれぞれ付けられている色褪せた白いレースが、仄かに優しい風に揺られて舞う。
そんな夢幻的な光景に魅せられた私は、いつの間にかすっかりと戦意を分散させてしまっていた。
───先に口を開いたのは、その子の方だった。
「お客様、でしょうか」
「......え?」
「ふ、
「えっちょ、いやいやいや!ちょっと待って!」
まるで『えぇ、私はちゃんと分かっていますよ』と言わんばかりの満足げな表情を、僅かに無表情の中に浮かべながら行動を開始する銀髪の子。
絶対に分かってない。
ていうか初対面の人に対して、そんな親身に接してくる子いる!?
「こちらの紅茶、私が先程用意したばかりの出来立て.........いや、淹れたてでございます、お客様。」
「......あ、ありがとうございます.........?」
ふふ、と済ました顔でそう言ってくる、目の前の可愛い女の子。
いつの間にか距離を詰められ手を取られ、息を付く暇もないままバルコニーの椅子に座らされていた私は、訳の分からぬままその少女と相対する。
悪意の欠片もないその立ち振舞いにやられた私は、無用心にも少女の持つお盆の上にある、綺麗な花柄のカップに手をやり、少し口に付けた。
「.........美味しい」
これは凄い、と素直に思った。
今まで緊張続きだった体が、心身共に強張っていた肉体に染み渡る優しいストレートティーの味に翻弄され、不思議と気が抜ける。
メイドの格好をしているだけあって、目の前の女の子は紅茶を淹れるのもとても上手かった。
「
彼女の発言に、私は驚いた。
この子に御主人様が居るということは、この館はしっかりと人が住んでいるという事。
とてもではないが、この様なボロボロの廃館に人が当たり前のように暮らしているのは、中々想像出来ない。
第一、この館は人が完全に居なくなってから、もう随分と時が経っていた筈だ。
次々と思い浮かぶ疑問を抑え付けながら、私はこの美しい少女との会話を続けた。
「貴女、御主人様がいるの?」
「.........えぇ、私には御主人様が居ます。.........いえ、正確に言うと、今は離ればなれとなってしまっているのですが」
そう、私に話してくれた少女の顔がほんの一瞬、歪んだ様に見えた。
どうやら、完全に無表情だと思ってはいたが、存外に内心の表情は豊からしい。
......一々、少女少女と呼ぶのも、何だか他人行儀でくすぐったい。
「それはまた........ねぇ、貴女。名前はなんて言うの?」
「───私の名前、ですか」
ふと、私がそう聞くと、何やら先程より真剣身を帯びた顔付きになった少女。
こちらも別段、無理をしてまで言って貰おうとは思ってもいなかったので、私はやや焦り気味に、言わなくても大丈夫だよと断ろうとした。
「名前.......どうしたものでしょうか。」
「ん、何か言った?」
「いえ、大丈夫です。......私の名前は──」
私の悪い癖だが、勝手に想像してみる。
こんなに可愛い子なんだから、きっと愛情深く育てられたんだろうな。
銀髪で碧瞳だし.........あ、アオちゃん?
......うぅ、この前アリーネちゃんと街へ遊びに行った時も、道端にいた子猫に何気なく名前付けたら
ダメだダメだ、とりあえずはこの子の名前を聞いてからだ。
「.........私の名前は、AZ-No.005[MI]、です」
「.........へ?」
訪れたのは、沈黙。
目の前の彼女は、少し気まずそうに目線を逸らしながら、そう言った。
........あ、あずなんばーぜろぜろふぁいぶ、えむあい?
一体何語なのだろうか。いやそもそもこれは名前なのか。もしかして偽名?
うんうんと色々考えを巡らせていた私は、改めて少女が口にした名前を復唱した瞬間、ふと前にアリーネちゃんから一度だけ、風の噂で聞いたとある話を思い出した。
このコーアド大精王国の隣に位置する国、機械類等の最新技術に長けているダクトネス帝国が、そう言った名前の連なる秘密人造兵器なる物を、密かに開発しているという噂。
今でこそ、うちの国とは密接な関係にある帝国だけど、確かあの国と王国が戦争をしていたのは、わりとここ数十年の話だった筈だ。
それさえも、結局は悪しき独裁を強いていた帝国が戦争により弱り、内部の不満を持つ人達が見事反乱を起こして、今はその時の反乱を起こした中心の善良な方が、普通の国として統治をしている訳だけど。
......未だに、一部の王国と帝国の国民の間にある仕来たりは大きいらしい。
昔から、様々な事柄を推測して解決するのが好きだった、私の従来の悪い癖が頭の中を駆ける。
何故、かの国が一度崩壊した今も尚、帝国と名乗っているのか。
態々、こんな廃館に住み続けているのであろう、慣れた手付きで家具に触れる彼女。
まるで同じ人とは思えない程の、美しいとも見える、抱き締めたくなる様な可愛らしい見た目。
まさかこの子は、帝国の実験から逃げてきた......?
─────────────
「んんっ、えーっと、あー.........エムアイ、ちゃん? ちょっといい?」
そう、此方を探る様な声音でオレに喋りかけてくる、目の前の人。
あまりの美しさに、普段なら冒険者は全員等しく森の外送りにしていた所だが、思わずお客様扱いをしてしまった。ぶっちゃけ、お近づきになりたい。(本音)
いや、もうね。ヤバイよね、マジやばみ。
.........何だこの綺麗な御方は!?!?!
うわぁ、近付くだけでめっちゃいい匂いする、しかもすっごい可愛い!!
金髪だ!!! かわいい!!(二回目) 髪編み込んでる!! かわいい!!(三回目)
服の上からだけどおっぱいでっけぇ!!!でかい!!!
あちょっと待って一旦落ち着こう。
「ひゃあ! え、大丈夫!? 突然自分を殴ってどうしたの!? ていうか凄い硬い音したよ!!?」
「お気になさらず。
自分で言ってから、冷や汗がだばっと出ているかの様な感覚に陥った。多分今、顔すっごい青いと思う。
やばい、いつもの癖でぺらぺらと喋ってしまった.........
絶対、このファンタジーよろしくな世界観でこんなメカメカしい事言っても伝わらないじゃん!!
むしろ、新種の異種族としてやられちゃう可能性も無きにしもあらず........?
柄にもないが、無表情であたふたとしてしまう。
あ、怪しまれない様に言い繕わなければ......
「えっと、違うのです。今のは言葉のあやで───」
「───もう、大丈夫だよ」
「ふぇ?」
オレが何とか誤魔化そうとしていたその瞬間、突然体を掴まれたかと思うと、目の前が真っ暗になった。
.........なんかすっごい、柔っこい物が当たっている様な気が......
少し、顔を動かしてみる。
「........ふにゅふにゅ?」
「む、感想いらない!......そう言えば、まだ私の名前を伝えてなかったわね、私は───」
いや、そんな事より、いやそんな事ではないんですけど。
こ、この服越しでも伝わる人類が持ちうる叡智、素晴らしい感触は......
お、おっ..........
「
「ちょ、ちょっと!?」
あぁ........今はまだ、再会の目処が立たないご主人様.........
もう少し、もう少しだけこの異世界に居させて下さい........
「と、こんな感じで私と
「なるほど~......ふふ、流石お人好しなグレイちゃん!」
「も、もう! そんな馬鹿にした様な言い方しないで、アリーネちゃん!」
「.........」
目の前で、アリーネちゃんに膝の上に乗せられて、凄い勢いでよしよしと頭を撫でられているMIちゃん、もといみーちゃんが居る。未だに無表情だけど、よく見たら満更でもなさそう?
あの後、無事みーちゃんと打ち解けた私は、しばらくゆっくりとした時間を過ごした後、屋敷を出る際に、このままこの廃館に住み続けるか、私と一緒に来てくれるかを聞いてみた。まぁ、もし断られても
ぐいぐいと距離を詰めながら言ったからか、そしたら彼女は、髪をくるくるしたり、『うー......』と唸ったりしながら、私の服の端を掴んで一言。
『い、一緒に行動をしたいです.........ます?』
恥ずかしいのだろうか、頬を赤らめ、こくんと首を傾けながらそう告げてきた彼女のいじらしさに、私は直ぐ様心臓を射たれた気持ちになった。
この子、あまりにも可愛過ぎる........!
どうやら、あの少し引いた様な口調は、ご主人様仕込みの従者口調だったらしい。
素の彼女は、こんなにも可愛いんだから、ずっとこのままでもいいのに.........
それから、あの冒険者達を騒がせた一連の騒動も、やっぱりこの子が引き起こしていた出来事らしい。やっぱり、見知らぬ冒険者達を警戒してたのかな?
何はともあれ、とりあえず依頼を解決した私は、颯爽と事の顛末をギルドマスターに伝えて、こうして自分の家でアリーネちゃんと共に彼女を愛でている、という訳だ。もちろん、伝えた話の殆どは嘘の話だったが。
「うふふ、可愛いですね~みーちゃんは!」
「んみゅ......ほ、ほっぺたを押すのはやめて下さい。.........た、助けて下さい、精霊さん.....」
アリーネちゃんに好き勝手にいじられているみーちゃん。口ではこう言っておいてやっぱり無表情だけど、少し焦った様な感じでおどおどしている。
私、いかにも困っていますよと言わんばかりの表情を浮かべている彼女は、若干の焦りを表しながら、なんと森で仲間になったと言う精霊達に助けを求めていた。
(みーたん、うれしそう!)
(みーたん、かわいー!)
「あら、貴女達も随分と可愛らしいですね?」
(ふふん、じつはそうなの!)
(ぐらまらすでしょ!)
「せ、精霊さん.........」
ぐらまらすはちょっとよく分からなかったが、助けてくれるどころか
「た、たすけて下さいーアイさん.........」
と腕を伸ばし............
あ、ダメだ可愛いこの子。
「んもー可愛過ぎる! 私と一緒に住んじゃいましょ!」
「んむっ......... 」
「あはは、相変わらず仲良くなった人には甘いんだから、グレイさんは......」
アリーネちゃんが何か言っていた様な気がするが、関係ない。
いつも通りの何気ない日々だった私の日常は、この日から新しい、そしてとても可愛い同居人が増えたのだ。
ちなみに帝国は悪くないです。
次の更新は早めにがんばります。