TSメイドロボ少女、異世界に君臨す(仮)   作:TS銀髪ロリっ子メイドさん

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お待たせしました。

最終話までの大まかなプロットは完成したので、これからはより迅速に投稿出来ると思います。

追記:3月14日 エルシィのマシロに対する二人称を、少し変更致しました。


TSメイドロボ少女、いざ新天地へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───がたん、がたん、と。

 

 

まるで整備が遅れているのを思わせる様な荒々しい道を超えて、平滑な地帯へと辿り着いた馬車の車輪が、緩やかな音を立てながら進む。

 

観光の為にあるのだろう、少し埃で覆われた窓を上に持ち上げて外の景色を見渡してみる。

私にとっては取るに足らない、いつも通りのこの世界の光景が広がっているのだが、どうやらみーちゃんはそうではないらしい。

 

 

私が目を向けると、ちょっと済ました女の子風の雰囲気を醸し出して空を見ているのだが、逸らしたのを見届けたらもう崩壊。

たった正方形の小さな窓から、そこら中に生えている草木に、澄み渡った空に、そびえ立つ山々を一望して、星の様に目を輝かせるその姿は、どこまでも純粋無垢な儚い子供のそれだった。

 

 

......また見惚れてしまった。

これ以上*1悪化しない為に、みーちゃんに少し気になっていた話題を振る。

 

 

「あ、そうだ、みー......アズちゃんは、肝心の御主人様が居そうな国とか、そういうのは検討つかないの?」

 

「む、御主人様が向かわれそうな国ですか......はっきり言うと、私は此方の世界の国、土地、種族、風習......その何もかもを知りませんので、まずはこの世界の地理から学ばなければなりませんね」

 

「あちゃー、うっかりしてた。そういえばアズちゃんにそこら辺の知識、全然教えてなかった!」

 

「私自身、王国内に順応するのに忙しくてそういった書物を読むことすらしていなかったので、国以前にどの様な種族が居るのかも理解していません」

 

 

不甲斐ないです、とやや落ち込むみーちゃんを労いつつ、私自身も思い出せる限りの種族をみーちゃんにも伝聞する。

 

 

「んー、ひとえに種族って言ってもね、数は少ないけど人間の中にも半人、半森霊(エルフ)とかね。それから魔族(デモンズ)精霊族(エレメンター)竜人族(ドラゴニティ)獣人族(ビースト)......上げていくとキリがないんだよねー」

 

「ふおぉ......えるふ、でもんず、びーすと......まさにザ、ファンタジーって感じです!」 

 

「ふぁ、ファンタジー? まぁ期待に胸を膨らませてるその表情はやはり良し! うりうりー!!」

 

「ひゃ......えへへ、くすぐったいですよもう!」

 

 

あー、やばい、幸せ。

何だろうね。最初の頃の無感情なみーちゃんもそれはそれで良いけど、やっぱりこうやって無邪気に、年相応の笑顔を浮かべている姿が一番似合う。

もう戦いなんてやめてどっかの村でこの子と一生遊んどきたいなー。

 

 

「......じゃなくて! そう、今言った種族の中で、分からないやつとか、心当たりのある種があったら言ってね。補足するから」

 

「大体どんな感じかは種名で予想が付くのですが......挙げるとしたら、獣人族(ビースト)でしょうか」

 

「なるほど。因みに理由、聞いていい?」

 

「えっと、大した事ではないんですが......私の前の世界では、政府の管理下に置かれている生産性のある動物......所謂牛、豚、鶏等の生きる為に必要、或いは扱いやすい動物以外は、度重なる大気汚染によって、存在出来なくなってしまっていたので......昔は生きていたんですけどね」

 

 

「改めて聞くと、真面目に終焉の近そうな世界だね、そこ。みーちゃんがこっちの世界に来れて良かったよ、ほんと」

 

「ふふ、それは私も同じです。......話を戻すと、その昔に残っていた資料をかき集めた御主人様は、とある一つの写真を見て衝撃を受けてしまって.......」

 

「......それが、獣人族(ビースト)かそれに似た何か、だったって事ね」

 

「はい、もっと正確に言うとネコやイヌなのですが......まぁ、その写真を見て『......みぃちゃん、私バイオクローンテクノロジー技術にも手を出す日が来たかもしれないよ』と真剣に話しておられました」

 

 

「途中のバイオ云々は私には分からないけれど......次の旅の時には行ってみようか───獣人の国、獣種連合国に」

 

「......はい、喜んで」

 

 

緩やかに、大地を踏み締めていた馬車が止まり、停車する。

馬の操縦を任せていた御者の方に二人でお礼を言い、先に降りた私は、入口の方へ体を向き直し。

 

 

「まずはこの国から捜索を始めてみようか、アズちゃん」

 

「.........はい!」

 

馬車から降りようとするみーちゃんの手を握り、二人で駆け出した。

 

 

────私達が新たに来たのは、世界中の商人達が集まる場所。

 

 

 

商業都市、ロックトラムだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

「ロックトラム産の代表的で新鮮なサモン、今なら安いよー!」

 

「此方のブローチは、かの大精王国の服飾師、──が作り上げた、最上級の装飾品で───」

 

 

オレはいつもの緑クロークを身に着け、アイさんは身バレ防止の為にいつもの冒険服を。

検問官らしき人の許可を得て、早速オレ達は都市の中へ入っていった。

入って早速の感想なのだが──凄い。

 

確かに、大精王国も同じくらい繁栄していた。だが、この都市の人々の商業に対する情熱、そして場の賑わい様と言ったらもうとんでもなくて、どこもかしこも、見渡す限りの人集りだ。

中央の大きめの噴水の前で何かしらの音楽を奏でている人もいれば、あちこちの店を見渡しながら何を買おうかと、純粋にこの都市を楽しんでいる人達もいる。何だか怪しげに周りを見渡している人もいるが。

全てが活気に溢れていて、きっと現代で言えば観光都市が独り歩きしている様なものなんだろう。

 

 

「い、色々すごいですね、この街......」

 

「まー、伊達に世界一の商業都市名乗ってないからね。古今東西、あらゆる地域、土地、国から物が集まってくる。まさに繁栄都市の理想的な形態って感じ?」

 

右も左も、どこからでも聞こえてくる画期的な声音の数々に影響を受けたのか、はたまた初めての旅先で興奮しているのか。どこかはっちゃけた様子のアイさんがオレにそう語り掛けてくる。

なるほど、確かにとは思う。

消耗品でも名物でも、珍しいものの物流が良いから人が来る。人が集まるから商人も増える。

 

 

「そ、それにしても盛り上がり過ぎなんじゃ──」

 

「そこの君! 随分とイカした見た目してるねぇ! どうだい、ウチの自慢の焼きコリス、ちょっとだけ食べてみないかい?」

 

「ふぇ!? え、えっと私は、今は少し時間が」

 

「いやいや、貴女の様な可愛らしい女性にはウチの服を着せてみるべきだ!」

 

「あ、あああぁぁ.......」

 

あわわわ。喧騒が凄くて、なんだか目まいで視界がグルグルしてくる。

居た堪れなくなったオレは、傍で別の人から話し掛けられていたアイさんの服を引っ張り、助けを求めた。

 

「あ、アイしゃん......」

 

その表情、ヤバ過ぎる......はいはーい、とりあえずあっちの静かな所行こっか!」

 

呼び止めようとする人達を尻目に、オレを連れて颯爽と駆けていくアイさんが、今のオレには天使にしか見えなかった.......

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゅ、昼夜問わず皆が明るい陽気さは良い事ですが、私は少し合わないかもしれませんね」

 

「あははー......私は結構、全てが新鮮で楽しいんだけどねー」

 

 

押し寄せんばかりの人混みの中を掻き分け、大通りからは一変して比較的人通りの少ない、静かな広場のベンチでアイさんに訴える。

 

 

「確かに、私としても目新しい事ばかりでワクワクはしているのですが、これじゃあご主人様を探す事すらままなりません.......」

 

「うーん、王国以外の国で私の名前がどれだけ通用するのかも分からないし、とりあえずは地道に行くしかなさそうだね。時間はまだまだあるんだから、今はとりあえず遊びまくっちゃおう!」

 

 

「うぅ、こうなったらやけです......そこら中のお店食い荒らしてやらます!!」

 

「はいはい、お財布の管理は私がするからねー」

 

 

な、なんですと......

とまぁ、旅先で改めてこの世界の情報の通信手段が、以前のディストピア世界と比べて極端に乏しいという事を思い知らされた。

だが、その程度で諦めるオレなんかじゃない。オレのご主人様(アリアさま)大好きパワーを舐めてもらっちゃあ困るぜ。

 

 

「......でも、まずは遊びます! リフレッシュしてからが本番なのです!!」

 

「よーし、じゃあまずはロックトラム名物、金の究極揚げコリス八個入りから食べちゃおう!」

 

「なんですがその頭の悪そうな商品名は!! でもコリスってあれですよね、あの唐揚げっぽいやつですよね!! 私、何個でも食べちゃいます!!」

 

「うんうん、前から食べたかったんだー、あれ。何でも、食べたら魅了系モンスターの魔術くらい病みつきになっちゃうんだとか」

 

「ふふふ、唐揚げ(揚げコリス)の美味しさを舐めてもらっては困りますよ、アイさん。まずは唐揚げの歴史から......」

 

 

アイさんと横並びになりながら、ぎゅっと手を繋いで。

ひとまずはこのお祭りの様な都市の感覚に、慣れる所から始めるオレだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

「最高だったね」

 

「最高でした」

 

 

アイさんと一緒に、ちょうど夕暮れに差し掛かった時間帯で遊びを一旦切り上げ、ちょっとノスタルジックな気持ちで最後の観光名物を凝視する。

 

目の前で、海に向かって大きな橋が建てられていて、そのまま地続きに橋と連結して超でけぇ城が、海上に浮かんでいる光景が広がっている。具体的に言うとポ◯トガルのリ◯ボンのアレみたいな奴だ。

 

いや、もうぶっちゃけめっちゃ楽しかった。

初めこそ周りと自分の温度差に対するギャップで困惑したものの、いざここはそういうものだと割り切って楽しんでみれば、もうこれ以上ないまでの最高の都市だった。

 

 

「いやー......もう今日は何もしたくない気分だね、アズちゃん」

 

「実際何にもしてはいませんけどね。強いて言うならこの都市が私の電子脳内記憶帳(シークレット・メモリーズ)リピート確定地に登録されたぐらいですかね」

 

「し、しーくれ......よく分からないけど、商業都市(ロックトラム)の街や現地の人達の雰囲気とか、全体の構造図とか色々得られた物はあったでしょ!」

 

「確かにそうかもですねー、遊びと共に全体の調査も怠らないアイさんは賢いです。頭でも撫でてあげましょうか」

 

「すっごい棒読みだし、どっちかというと撫でるのは私の役目なの! まぁ、とりあえず今日はもう休もっか......宿も取ってあるし」

 

「はーい。あずちゃんも大賛成でーす」

 

「完全に無気力ねこの子......」

 

 

機械の(ボディ)を物ともしない自分のダメ意識にびっくりする。でも疲れたんだから仕方ないよね。

因みに今は、ロックトラムでも一、二を争うくらい有名な建物、水海廃城シャトートラムに来ている。詳しい事はよく読んでいないので分からないが、大昔にここが王政を敷いていた時の名残らしい。何で海に浮いてるんだろう。

 

 

「いや確かに綺麗なんですけど、何と言うか夕暮れに来るものじゃなかったですね」

 

「ちょっと見えにくいかもね......よし、積もった話は宿に帰ってから! とりあえず明日から本格的な捜索、開始するよ」

 

「ふふ、もし御主人様が居たら、スケッチ等を理由に後六時間くらいはここで.........」

 

「こら、ぼーっとしてたら危ない......あっ!」

 

 

雰囲気とか夕暮れとか、色々云々合わさって夢うつつの状態だったオレを、一瞬で目が覚める程の衝撃が襲った。

 

「みぎゃ!」

 

「う"ぇ」

 

 

気を抜いていたから変な声が出てしまった。超恥ずかしい。状況から察するに、どうやらオレはフードを被って走っていた女の子とぶつかってしまったらしい。

 

「もう、だから言ったのに......ほら、大丈夫? 怪我してない?」

 

「ふふふ、御主人様のメンテナンスで毎回花丸を貰っていたこの(ボディ)には傷一つありません。ぐっじょぶ、です」

 

「なら良かった。そっちの君も、うちのアズちゃんがごめんね? もし怪我とかしちゃってたら、私が治すよ?」

 

あいったぁ..........だ、大丈夫です、申し訳ございません.......」

 

恐ろしく小さい呻き、オレでなきゃ見逃しちゃうね......

いや、ふざけてる場合じゃないな。結構な勢いでぶつかったし、これはオレの所為でもあるから、表面上は見えない怪我でも、早めに対応出来る様に見させてもらおう。

 

 

「すいません、私もぼーっとしていて。ほら......怪我、していますよね?」

 

「い、いえ......全然大丈夫です。すぐ治りますので!」

 

そうは言っているが、しっかりとした解析を通していない簡易的なオレの(アイ)でも何かしらの怪我をしている事が分かる。

人前で分析するのはちょっと危ないかもしれないが、ここは人命救助(大げさ)を優先に......

 

 

生体(ライカー)解析(パース)、開始......膝蓋骨表面、膝に少しの打撲反応有り。氷や保冷剤等で早急な冷却を優先します。アイさん」

 

「はいはい、氷に関する事なら私の得意分野だね。この布に包んだ感じの物でいいかな?」

 

「おめがぐっじょb......ありがとうございます。ばっちりです」

 

 

女の子の手を取り、アイさんに目配せをし、氷魔法を使っていい感じの大きさの氷を包んで貰う。

クロークと帽子は処置を行う際の邪魔になる為、今だけは外しておこう。あとこの感謝の伝え方はオレがやると完全に怒られそうなのでやめておこう。

 

 

「では改めて。これで大丈夫ですか、お嬢さん」

 

ひゃ、やっぱりこの人は......だ、大丈夫ですぅ........ってそれより! あ、あの!」

 

 

オレが手を握りながら割と真剣な表情でそう呟くと、何故か一瞬目がハートの様になっていた目の前の女の子のフードがずり落ちる。

 

 

 

 

────次の瞬間、オレの目の前には()()()()()超絶可愛い女の子が居た。

 

 

 

あ、エルフだこれ、と脳内で理解した時にはもう既に相手の話すターンであり。

 

 

 

「もしかして貴女は..........もしかして! マシロちゃんですか!?」

 

 

 

 

 

 

お互いに相手を見つめ合いながら、こんな事を言われた。

 

 

 

 

.........いや、どなた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

「.........えー、これより第三回、ロックトラム井戸端会議を始めます。司会は(わたくし)、みーちゃんことAZ-No.005[MI]です。よしなに。」

 

「うーん、私はまだ状況がよく分かってないし、会議もまだ第一回だと思うんだけど......お菓子、いる?」

 

「どうしちゃったの、マシロちゃん!......あ、ありがとうございます、アイ・グレイスフォールド様。王宮内の他にも、美味しいお菓子はあるのですね」

 

 

いやだからマシロって誰なのよ。誰よその女!!

 

先程、このエルフの子と衝撃的な邂逅を果たしてから、とりあえず話の前に宿に帰ろうと、目をキラキラさせながらオレ達を見続けているエルフっ子を連れて帰ってきた。多分現代なら犯罪だった。

 

 

「わ、なんか名前を全部言われるのって変な感じ。普通にアイさん、とかでも良いよ?......あと、この子はそのマシロちゃん? って人じゃなくて、みーちゃんっていう名前の子だよ」

 

「うぅ、ごめんなさい。ボク、昔から森霊(エルフ)以外の種族とは話したことがなくて......あっ! い、いいえ私わわわ」

 

 

完全に油断していたのか、はたまた気が緩んだのか。

さっきまでの畏まった、と言ったらおかしいかもしれないが、どこかチグハグな敬語での話し方が崩れ、可愛らしい一人称が出てきた。

訂正しようと、手をあたふたさせたり目を回したりしているが、もうオレの中では完全にダメな子の印象が付いた。ボクっ娘だぁ.........

 

 

「正確に言うとみーちゃんでもないのですが......まぁとにかく、まずは自己紹介からです。では私から」

 

兎にも角にも、自己紹介をしないと始まらない。先手を切って、提案したオレから話を始める。

 

 

「本名は長いのでみーちゃんと。そうですね......種族としては機巧少女(エクスマキナ)で、肉体年齢的には十四才ほどでしょうか。好きな食べ物はキャラメルで、好きな人は御主人様です」

 

「じゃあ、次は私かな。さっき言ってくれた通り、アイ・グレイスフォールドです。種族はまぁ、分かると思うけど人族(ヒューマニティ)で、年は今年で十九になるかな? 好きな食べ物は氷に調味料等を混ぜ合わせたもので、好きな人は......内緒!」

 

「......えっと、プラヴァリー・エルフィール・ユグシル、です。長いから、家族からは愛称のエルシィって呼ばれてて......種族は、森霊(エルフ)です。年齢はたぶん百七十くらいで、好きな食べ物はお母様の手作りのシチュアーで、好きな人は......好きな人? お母様とお父様、それからお姉ちゃんと......」

 

 

 

 

ストップストップ。

色々突っ込みたい所は多々あるけど、一旦自己紹介も終わった所で気になる点から聞いていこう。

 

 

「最初に聞いておきたいんですが、エルシィさんの言うマシロ様、という方は誰なのですか?」

 

 

本題に入った所で、まずはこれだ。

当たり前なのだが大前提として、オレはマシロという名前ではないし、生憎エルフの知り合いも存在していない。

 

 

「ぅ、それに関しては本当にごめんなさい。......笑われるかもしれないですけど、ボクの古いお友達にあまりにも似ていたから.......」

 

「んー、古いお友達って?」

 

 

神妙な顔付きで、アイさんがそう呟く。

思わず見間違えてしまう程にオレがそのマシロさんと似ている、というのも何だか変な話だが、それよりも気になるのはエルシィの不思議な言い回しだ。

アイさんに突っ込まれて自分の言葉の綾に気付いたのか、弁明の為に慌ててエルシィが話を続ける。

 

 

 

「あ、今の言い方は少し変だったよね。えと、何と言うか、変な話かもしれないけど、ボクには幼少期だけ一緒に遊んでいた友達が居たんだ」

 

最初は場の悪そうな様子だったエルシィは、オレ達が決してその話を馬鹿にしない事を話を聞く態度で感じ取ったのか、次第に真面目な表情を浮かべて、内に秘めていた思いを溢し始めた。

 

 

「初めは何て事ない、ボクがいつもの様にお城をこっそり抜け出して、世界樹様の根本の辺りで遊んでいた時のことなんだけど......」

 

「なるほど、エルシィは昔から少しやんちゃだったのですね。というか、さっきから気になってましたが、お城とか王宮とか......もしかしてエルシィって相当なお偉いさんですか?」

 

 

「あ、うん。自慢じゃないんだけど、ボク達みたいな森に生きる種族が森霊(エルフ)って呼ばれ出したのも、うちの家名のエルフィールから取ったものなんだぁ」

 

 

さも当たり前かの様に、ふわっとした可愛らしい笑みを浮かべながらエルシィがそう紡いだ。

......思ってた数百倍良いとこ出のお嬢様だった。多分生身の体だったら嫌な汗が出ていた事だろう。アイさんは涼しい表情をしているが。この人鉄人か?

てか、え、大丈夫かなオレ達。この後お姫様を唆した罪とかでエルフという種族に国家ぐるみで処刑されたりしない?

 

 

「えっと、今までの不躾な発言の数々は、どうか帳消しにして頂けないでしょうか......」

 

「あははは、みーちゃんが珍しく動揺してる!」

 

「え、ちょちょっと待って! そんなつもりで言ったんじゃないよぉ!!......酷い事なんてしないから、顔上げて?」

 

 

「なるほど、世の中には庶民に優しい直系の王族がいるのですね。みぃちゃん、また一つ賢くなりました」 

 

 

「き、切り替えが早い......! それで、ボクが世界樹様の根元で遊んでいた時の事で......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

これは、(ボク)がまだ幼い頃の話。

 

 

 

小さい時から、自然の寵愛と家族からの惜しげもない愛を受けて育ったボクは、ある日こう感じた。

 

 

────何だか、つまんないなぁ。

 

 

 

大きくなった今にして思えば、なんて贅沢で失礼な事を思っていたんだ、と当時の自分を叱ってやりたくなる様な衝動に駆られるが、それはまぁ置いておこう。

 

家族のあまりの過保護さから、大きくなるまではお城とその周辺以外には出してもらえなかったボクは、産まれた時から授かっていたありとあらゆる動植物と仲良くなれる能力を駆使して、頻繁にエルフの国───通称、隠れ世の森郷の世界樹様の下へ遊びに行っていた。

 

 

世界樹様っていうのは、ボク達森霊(エルフ)の国の象徴みたいなもので、ボク達の国は全てこの大きな大木と森に守られている。

しかも、世界樹様の近くの森に生えている鮮やかで綺麗な花や草木の数々は、秘蔵の特効薬や薬草、そして塗り薬に変えたりも出来てしまう。他の伝承とかでは、お花を摘んで家で大事に育てていたら、その家にはあらゆる幸福が訪れる、だったり。

 

そんな数々の噂を聞き付けた周辺国が、色々難癖を付けて自分の国の物にしようと攻め込んできた事もあったらしいけど、それはまた別の話だ。

 

 

 

ともかく、そんなボク達を何年、何百年、何千年と見守ってくれた世界樹様の下で遊ぶのが、ボクは大好きだった。

 

 

 

─────寝転がった時に、肌に触れる優しい草や葉っぱの感触。

 

 

そして目の前に広がる世界樹様の、青々とした樹冠。風に吹かれて、無数に羽撃く葉と葉の隙間から溢れる、眩しい太陽の木漏れ日。

 

両手足、全身で感じれる自然の恵みが、とても心地よくて。

 

だからこそ、初めは気付かなかったのか。

目一杯の大自然を堪能して一息付いた頃、突如としてその人は姿を表した。

 

 

『......あれ? なんだろ、あのひと.........』

 

 

 

いつもの様に地面に寝転がり、大空を見ようとするボクの視界に映った、高い世界樹様の長い枝に腰掛け、風に銀髪を靡かせてあらぬ方向を見つめる、美しい女の子。

その蒼く鮮やかな眼はまるで、世界を見透すかの如く。

吹かれた風で邪魔になった髪を、陶器の様な白く美しい手で耳に掛ける何気ないその仕草すら、あまりに幻想的だった。

 

 

────すごく、きれいなひと。

 

 

幼いながらも、確かそんな感想を抱いていたと思う。

 

 

ボク程度の魔術なんかじゃ、到底届かない程高い位置に佇む、当時九十歳ほどだったボクより少し大人っぽい、人で換算すると十四才ぐらいの女の子。

 

 

 

あれはもう、完全に一目惚れだった。

 

 

 

 

ボクにとっての神様を目に映したその日から、毎日の様に世界樹様の下へ通っては、飽きもせずにその子を見つめていた。

 

 

 

────あぁ、よかった。今日もいる。

 

 

 

そんな、まるで想い人を待っているみたいな日々が続いて。

 

何度も。

 

何度も。

 

 

 

そしてそんな日が続いたある日、その想いは実を結んだ。

 

 

 

 

 

『──────ねぇ、毎日こんなとこに来て、私ばっかり見ちゃって。暇なの?』

 

 

いつもはボクじゃないどこかを見ていたその人が、ふと此方を向いて、少しの微笑と首を傾げる仕草を交えて、そう話しかけてくれた。

見た目はこんなに可愛いのにも関わらず、キリッとした、かっこいい声の人で。

まるで森のそよ風に混じって消えてしまいそうな、小さな小さな声だった筈なのに、何故か遠く離れていたボクにもはっきり聞こえた。

 

 

『ふぇ!? あ、えと、その......! ひ、ひまじゃないです!』

 

 

初めて話し掛けられた時は、もう興奮と混乱で何が何だか分からなくなった様な気がする。

だけど、確かにボクはその時、その人と一歩距離が縮まったのを感じたんだ。

 

 

そして、ずっと通い詰めていたボクに興味を示したのか、その人は生身の体で世界樹様の枝から飛び降りると、ボクのすぐ目の前で着地して。

 

 

『あはは、どうやら相当面白い能力を持っているみたいだね、君。名前、なんて言うの?』

 

その姿に見惚れる間もなく、名前を聞かれた。

 

『......プラヴァリー・エルフィール・ユグシル、です。』

 

『へぇ。エルフィールって事は、あの子の末裔か......ただの可憐なお嬢さんかと思いきや、存外に偉いお方だったとは』

 

『えっと、その、あのぉ......』

 

 

半歩足を進めるだけで、肌と肌が触れ合いそうな位置で囁かれても、当然話は頭に入ってこず。

すごくいい匂いがする。ていうか近くで見るとより一層かわいい。

その可愛さとは正反対に冷静な大人の余裕が、小さい子が背伸びをしている様でもうなんか逆にかわいい。

 

 

『......む、君、今何か失礼な事を考えたでしょ。私、そういうのには目聡いんだよ、機械だから』

 

 

機械......キカイ?

自然に愛されて、自然の中で生きてきたボクからしたら、何が何だかよく分からなかったが、とりあえず相手を不快にさせてしまった事だけは理解できた。

何とか次の話題へ移行できないものか、と足りないぽんこつな頭で考えた結果、相手の名前を知ろうと言う事になって。

 

『ご、ごめんね? ()()()、まだあなたの名前もしらないのに、へんなこと思っちゃって。よかったら名前、おしえて?』

 

『.........そうだな、私の名前か』

 

 

ふと、考えるような仕草を混じえてから、彼女はこう言い放った。

 

 

 

『────"真白"。マシロって呼んでほしいな』

 

 

 

 

 

 

 

それが、ボクとマシロの長いようで短かった、初めての交流だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

「......とまぁ、ここまでがボクとマシロの出会いから話し掛けるまでの、ざっくりとした話かな」

 

「いやー、私とみーちゃん以上に運命的な出会いしてる人なんて中々居ないと思ってたけど、これは完敗だね。世界樹様を引き合いに出されると、流石に負けちゃうよ」

 

「あの、素晴らしい色恋話の盛大な序章が聞けたのは良いんですが、今日はもう寝ませんか?......外、もう夜通り越して深夜ですよ?」

 

 

女三人寄れば姦しい、とはよく言ったものだ。

オレ自身、楽しんでエルシィの話を聞けたのはいいんだが......

 

 

「そうだねー、今日は新天地一日目でもあるし、明日に備えてもうそろそろ寝なくっちゃ。ベッドはもちろん、キングサイズー!」

 

「個別じゃないんですか!? アイさんの金遣いが、段々荒くなっている様な気がしてならない私です......」

 

「......あの、非常に申し訳ないのですが、今日はボクもここに泊めて頂けないでしょうか? その......多分、家族達にもバレてるので、追手がボクを探し回ってる頃だと思うんですよね」

 

 

昼間の怪しげに周りを見渡していた奴らはそれか。

まるで難解なパズルピースが上手い事ハマった様な達成感を感じた後、オレはベッドの上ではしゃぐアイさんに向かってダイブした。

 

 

「うおりゃー。もうどうにでもなれ、です」

 

 

「ほいっ、と。ふふふ、みーちゃん確保!! さーて、後はエルフの国のお姫様だけだぞー......?」

 

 

「ひえっ......あ、ありがとうございます!!」

 

 

 

最後に、アイさんがエルシィをぽすっと抱き止めて。

 

 

 

マシロと名乗る人物とのその後や、エルフの国などの存在など色々聞きたいことはあるけれど。

 

 

 

「おやすみなさい、皆さん.......」

 

 

 

 

明日一日を元気に過ごす為に、睡眠機能(スリープモード)へと移行するオレだった......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
※私自身が







プラヴァリー・エルフィール・ユグシル(エルシィちゃん)

エルフの国のお姫様。
とある目的の為に唯今脱走中の、由緒正しい女の子。マザコンでファザコン。そしてシスコン。
好きは食べ物はお母さんの手作りシチュアー(シチュー)で、好きな人はマシロ。
尚最近の悩みは驚異的な体の発達である。



真白(マシロ)

エルシィの幼い頃の友達。

何処か儚く幻想的な彼女のその立ち振る舞いは、今でもエルシィの心の奥底に深く刻み込んでいるだろう。
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