TSメイドロボ少女、異世界に君臨す(仮)   作:TS銀髪ロリっ子メイドさん

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TSメイドロボ少女と、エルフの王女様。(前編)

 

 

 

 

 

 

 

朝が来た。

寝る前にも油断を怠らないオレは、規則正しく体内の睡眠機能(スリープモード)時間(タイマー)を、太陽が見え始めている日の出辺りの早朝に設定していたので、当然早くに起きる事が出来た。ぶい。

 

 

しかし、寝起きなので精神的な面から下がりつつある瞼が結構クる。未だ重い体を引きずりながら、何とか洗面所的なとこまで着いたので、レバーを捻って出てきた水で顔を洗う。うん、清い。

因みに、何でこんなファンタジー香る世界でそんなインフラがあるんだよと突っ込まれそうだが、どうやら相当国から離れた俗世との繋がりのない村*1等でない限りは、水源を発生させる事ができるふぁんたじっくな石を埋め込み、この様な行いを可能にしているらしい。まぁオレはマジカル冷蔵庫が出てきた時点で何となく察していたけどな!!!

 

何はともかく、顔もさっぱりと意識をはっきりとさせたオレは、今日もいつも通りにアイさん達の朝食作りに取り掛かろうとした......のだが。

 

 

 

「.........あれー」

 

 

オレがアイさんの家に住み着いてから、地道に街に出向いて購入した野菜、肉等を保存しているマジカル冷蔵庫の扉を開けてみても、溜め込んでいた材料一つ入っていない。

これはおかしい、とその場で数秒ほど硬直してから、一旦全てを忘却処理させて周りを見渡したオレは、ようやく昨日の出来事を思い出す。

 

そういえばここ、旅先での一時的な宿だったわ。

はなから自分たちの家の冷蔵庫じゃないので、そりゃ材料なんて入っている訳がない。ていうか入ってても怖くて使えない。

 

 

「ふ、私自身の老化を感じますね」 

 

 

宿の座椅子に腰掛けながら、ふと呟いてみる。

他の皆が起きていたら、こんな子供同然のちんちくりんな見た目で何を言っているのかと笑われそうだが、何だかんだ言って精神的にはもう二十五歳だ。うん、それでもまだそんなもんか......

 

 

「んー......人生も意外と長いものですね」

 

 

一人でしょうもない事をごちりながらも、体は既に外出する為の一通りの用意を終えている。

枕元にアンティークの如く据え置いていた、いつもの深緑の帽子を頭に乗せて、アイさん達を起こさない様に慎重にドアを開け。

 

 

さあ、いざ買い物へ───

 

 

 

 

「.........ばぁ!! ねぇねぇ、どこ行くの?」

 

「ぴゃ!!?!?」

 

「わっ、意外といい反応。えへへ、びっくりした?」

 

 

 

向かおうとしたオレの背後から、皆を起こさないようにと頑張っていた機械娘の努力もつゆ知らず。

朝早くから元気百パーセントの王女様、エルシィが飛び出してきた。

思わず反射的に振り返り、少し睨み付ける様な表情で応戦するも、そこにはまさにしてやったりといった顔で、あざとく目を細め、手を威嚇した猫のような形に変えたエルシィがいた。なんだァ? この野郎(メスガキ)......

 

 

あれ? もしかして結構怒ってる?......ご、ごめんね? ちょっと、ちょーっとその、出来心と言うか何というか......えへ?」

 

「ふふふ、まぁ、まぁ。私は大人なので? これくらいの事じゃ怒らないです.........と思いましたか! このおばか!!」

 

「いひゃー!!? ひゃめて、のびるのびるー!!」

 

 

零れ出る言葉とは裏腹に、何故かこの上なく楽しそうな声色のエルシィ。だがそんなほんわかした雰囲気でも容赦はしないのがオレである。

硬直したままのエルシィの頬を傷が付かない程度の力でつねり、両手で挟み込み、揉む。

この子の身内のお偉いさん達に見られたら多分怒られるどころか即刻投獄不可避の行為な気がするが、多分このくらいしておかないと明日もやられるだろう。いい反応で悪かったですねこのやろう!!

しばらく抵抗を続けていたエルシィだったが、オレの華麗なる手捌きに屈したのか、くすぐりのオプション追加で完全にのびてしまった。

ここから、暫しオレによる全力のお仕置きが続く......

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、これで懲りたでしょう。これからはこんな事はしちゃダメですよ、びっくりしちゃいますから」

 

「わー! ! ほっぺ伸びちゃったー!」

 

 

オレの手によって揉みくちゃにされ、部屋の隅っこで自分の頬の安否を確認している可哀想な少女は差し置いて。

エルシィによる朝のちょっとしたイタズラが終わり、暫しのクールタイムを交えたオレは、ようやく本来の目的を思い出し、再び靴を履き外に出ようとする。

 

 

「......よし、出ますか」

 

「うわーん! ごめんなさい、置いてかないでぇ!!」

 

と、恐らく本気で置いていかれるのかと勘違いしたであろうエルシィが、泣きながらオレの足元に縋り付いてきた。

ここまで来たら流石にちょっと可哀想なので、しょうがないなと思いつつも、床に張り付いている可哀想な子(エルシィ)へ手を差し伸べる。

 

 

「ふふ、全く。ほら、冗談ですよ。一緒にお出掛け、行きましょうね?」

 

「......! えへへ、やっぱりマシロちゃんとは全然似てないなー!」

 

 

その言葉がどういう意味なのかは分からなかったけれど、楽しそうに笑う彼女を見ていると、そんな少しの思いもすぐに離散してしまった。

.......というか、今更ながら未だにベットで眠っているアイさんには内緒のお出掛けだから、少しだけ申し訳無い気持ちが湧いてきたな。

アイさん、こういう普段活動してない時間帯の外出、すっごい大好きだからなぁ。子供かな?

 

 

 

「ふふ。少し早いめの朝ですが、今日も一日頑張りましょうか。眠ってるアイさんには、何か美味しい物でも買ってきてあげましょう。今度こそ行きますよ、エルちゃん」

 

「え、えぇえエルちゃん!!? 何それ何それ、すごく可愛い!!」

 

「まぁ愛称を更に縮めたあだ名って結構不思議ですけどね」

 

ふと、頭に浮かんだあだ名を呼んでみただけで、小動物の様に目をキラキラさせながら着いてくるエルちゃんを見て、まるで年の離れた妹が出来たかと錯覚してしまう程の可愛さパワーを全身に受けたオレだった。

 

エルちゃんにもお菓子、買ってあげよう......

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

「ふふ、手を繋いで、仲がよろしいんですね。行ってらっしゃいませ!」

 

「ありがとうございます。行ってきますね」

 

「あ、ありがとうございました! 凄い、あれが歴戦の()()()()().........!」

 

 

宿から出る際に、朝食の用意や、その他様々なお仕事をしていたと思われる従業員の方々に出会ったので、軽く挨拶を済ませる。

その時に、何故か従業員さん達に暖かい目を向けられた。具体的に言うとまるで子供に向けるかの様な。何故だ?

 

とまぁ、そんな事はどうでも良くて、まずは朝食の材料を買おうと思う。宿の予約の時に、ご飯は自分で用意するプランでやっちゃったからね。

 

 

というか、身も蓋もない事を言ってしまうと。

 

 

「ぶっちゃけ、私が作る方が安いし美味しいです」

 

「な、なんて眩いばかりの自信......! 全身から全力やる気精彩力(ぱわー)が溢れ出てるよ、みゃーちゃん!」

 

「え、みゃーちゃん?」

 

 

オレの身体から溢れ出るやる気パワーに感化されたのか、すっごく楽しみ!!とはしゃぐエルちゃんをなだめつつも、周りのお店の様子を見渡す。

 

多分、もう店内にお客さんが沢山居るんだろう。オレ達のすぐ側の酒屋からはそれはもう楽しそうなどんちゃん騒ぎが細やかに聞こえてくる。

にしても、こうして歩きながら周りを眺めているだけでも、少なくはない人数の人達がお店を見回ったり、通りにあるベンチで朝食を食べていたりして、それぞれがこの旅客さん方大歓迎な都市を満喫しているらしい。

 

 

「いや、それにしても早朝からとんでもない賑わいようですね。まぁ、最終的には三食分の食材を買う予定ですが......ふふ、この様子だと、まずは朝ごはんからですね」

 

「じゅるり......あっちもこっちも、美味しそうなモノだらけ......あっ、あれお母様の部屋にある本にも載ってたやつだ!」

 

 

横並びに手を繋ぎ、歩いているだけでも視線が右へ左へ、香ばしい匂いが漂う方へと体を寄せていき、中々寄り道が多いエルちゃん。

あまりにも微笑ましくて、こうして眺めているだけでも、自然と口角が上の方へと上がってしまう。

あぁ、なるほど。これが母性というものなのですね、ご主人様。

(オレ)は今、凄く微笑ましい気持ちでこの子を引率出来てます!!

 

 

「ふふ、全く......しょうがないですね。ここは一つ、お姉さんが気前良く買ってあげましょう」

 

「ほんと!? やったー!! えっとえっと、どれにしようかな......」

 

 

よほど嬉しかったのか、エルちゃんの頭に被せている自然味を感じられる緑のサークレットが跳ねる。何故そんな物を着けているのかと言うと、要は追っ手からの身バレ防止の為だ。どう見ても逆に王族感が増した様にしか見えないのは果たしてオレだけなのだろうか?

 

 

「そ、それじゃああのコトリカワ*2、ってのが食べたいです! お願いします!!」

 

「そんなに畏まられると、逆にこっちも調子狂っちゃいますよ。あれなら、これくらいで足りますかね。はい、どうぞ」

 

「.........?」

 

 

わぁ、人って本当に困惑した時ってこんな顔になるのか。ちょっと勉強になったわ。

それはそれとして、オレが今エルちゃんに渡したのは、まぁただの硬貨だ。勿論この世界のだよ?

まぁここまで言うと、何となくオレがこの子にさせたい事が分かったと思う。

 

 

「そう、第二回! はじめてのおつかい、エルフのお姫様へーん!!」

 

「??? 第二回ってことは第一回があったの?」

 

「あ、第一回は私です。機械なので言語も計算も余裕で覚えられました。えへへ」

 

「わ、それは偉いね。よしよししてあげようか?」

 

「やったー......って、そういう事じゃないんですよ!」

 

 

危ない危ない。引っ張るつもりが、またこの天然お姫様のノリに乗せられる所だった。全く、恐るべしエルフ。

改めて、どうしてこんな事しようと思ったのかという所だが、早い話、エルちゃんにも人間の国に、もっと言えば俗世に慣れて欲しいのだ。折角の自分の国を飛び出しての大脱走、これはもう楽しむしかないよね、というノリの元で。制作著作その他映像協力諸々は私です。おうかかってこいや◯テレ。

 

 

「な、なるほど。でも、流石のボクでもお買い物くらい、した事が、あれ、した事が.........」 

 

「え......マジですか?」

 

 

まさか、本当にお忍びでもお買い物をした事が無いとは......

ちょっとこの家系愛娘に対して過保護過ぎない? お姉さん心配になってきたよ?

まぁでも、丁度いい機会だ。何と言っても今、ここで慣れておけば絶対これから生きていく上で役に立つからな。

 

「ていうか、買い物をした事がないなら脱走期間はどうやって生きてたんですか?」

 

「あれ、言ってなかったっけ? ボク、自然の事なら何でも分かるから、どの木の実が食べれるかとかの見分けも付くし、おまけに動物さんとか精霊さん達が持ってきてくれるんだぁ」

 

「おぉ、何というか......羨ましいですね」

 

「でしょ? しかも動物さん達、凄く可愛いんだから!」

 

 

それを自慢しているエルちゃんの方が数十倍可愛いのは置いといて、本題のお買い物を早速やって貰おうと思う。

百何歳にして初めてなのだろう。おどおどしつつも、一生懸命気を張って買い物を遂行しようとしている。

 

 

「それじゃあ、行ってきます!」

 

「ふふ、頑張って下さいね」

 

「はい!」

 

コトリカワを売ってる店の人は、気前の良さそうなお姉さんだ。あの様子なら恐らく、酷い事にはならないだろう。

がんばれ、と心の中で応援しながら、事の成り行きを見守る。

 

 

「え、えっと......すみません!」

 

「お、随分と可愛らしいお嬢さんだ! 一体うちのどの商品がお目にかなったんだい?」

 

「あ......その、コトリカワを一つ、おねがいしま、しまひゅ......」

 

「はっはっは、そんなに焦らなくても商品は逃げないよ! よし、量はこんなもんかな」

 

「ありがとうございます!! えと、これ......」

 

「あはは、こっちこそ買ってくれてありがとうね。これからも頑張るんだよ?」

 

「ふみゅ、分かりました......そ、それじゃあ!」

 

 

見ているだけでハラハラしたが、何事も無く終わったみたいだ。

その身から可愛さパワーが溢れ出ていたのか、最後に店のお姉さんに一撫でされてから帰ってきたエルちゃんは、顔を赤らめながら帽子を押さえて、こちらに戻ってきた。

いやもう、よくやりましたと褒めちぎりながら抱き抱えて四回転したいくらいの上出来さだ。

 

 

「ふふ、よく出来ましたね。えらいえらい、ですよ」

 

「みゃぁ......くすぐったいよぉ」

 

 

オレに撫でられながらも、満更でも無さそうな表情でコトリカワを頬張るエルちゃん。かわいい。

いやぁ、なんかもし自分に妹が出来たらこんな感じなんだろうかと思ってしまう。とてもじゃないが、まるで日頃は内気な妹の成長を見届けたかの様な達成感を感じる。

 

 

「コトリカワ、おいしい......」

 

「よく噛んで食べるんですよ? 喉に詰まっちゃったら大変ですから」

 

 

旅先での朝食(コトリカワ)があまりにも美味しかったのか、元々の可愛らしい顔を更に綻ばせて、エルちゃんが無邪気な笑みを浮かべる。

そういえば昨日は驚く事ばかりで、ちょっとした間食等は摘んだ記憶は僅かにあるものの、肝心の夜ご飯は食べていなかった様な気がする。これは由々しき事態だ。

 

 

「帰ったら即刻、豪華な朝食を作らなくては。そうですね、まずはお肉から......」

 

「みゃーちゃん、あ、うぅいやその.........」

 

「ん、どうしたんですかエルちゃん? お代ですか? そんな事は一切気にしなくても良いですよえぇだって私が非常に個人的な理由で出した言わば先行投資の様な物ですからねあぁいやそれ以上にエルちゃんからは大量の可愛さという愛情を受け取っているのでこの言い回しは適切ではないですねさぁ何でもお姉さんに言ってみても良いですよ!!」

 

 

あっ、ちょっと待って。この子めっちゃ可愛い!!!

振り返ってみても過去類を見ない程に饒舌に喋りまくった私は、この時心の中で多分相当揺さぶられたら感情のボルテージがハイパーマックスになっちゃう系女子なんだなと感じました。さっきまで真面目に朝食考えてたのにね。

 

しかし、しかしそんな普段と様子の違う私を見て不思議に思ったのか、はたまた無意識なのか。いや間違いなく後者であろう目の前のエルちゃんは何とその美しいご尊顔を赤らめながら、こう言ってくれました。

 

 

 

「ありがとう、お姉ちゃん.......」

 

 

 

あ、これ死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

「みゃーちゃん、そんなに大荷物で大丈夫? 辛かったらちゃんと言ってね?」

 

「ふふーん、大丈夫ですよ。この程度の荷物、ロードローラー(重め)一つ分にも満たないです」

 

「わぁ、聞いたことない単位だけど名前的に重そう、凄いね!」

 

 

エルちゃんからの心配の声掛けという今この場で何よりも強力なバフを重ね貰ったオレは、伝説上の古龍もびっくりな筋力で荷物を全て持ちながらも、現在のオレ達のマイホーム、借宿へと向かって行きました。

 

 

「ただいまー!」

 

「ちょ、ここはまだ広場ですよ。すいません、うちの子が」

 

「あはは、行かれる前と同じで元気でいらっしゃるのですね。それではごゆっくり!」

 

 

エントランスホールまで帰ってくると、行きと同じの従業員さんがご丁寧にも対応してくれた。

そして大きな声で無邪気にただいま、と発するエルちゃんを宥めて周りを見ると、他の従業員さんも微笑ましい顔で此方を見ていて、何だか恥ずかしくなりました。

今更だけど、もしかしてこの宿って実は敷居高めのお宿なのでは?

 

 

 

「ふふ、そんなに走ったら転んじゃいますよー」

 

「だいじょぶ! 階段ならお城で何回も登ったよ!」

 

 

さっきまでの重たい荷物の心配もすっかり忘れて、とててと先に階段を物凄い勢いで駆け上がるエルちゃん。あぁ、可愛い。

すいませんね、王城の皆さん! (わたくし)みぃちゃんは今、貴女方の大切な愛娘さんを暫し預かっております! 的な手紙でも送ったらそのまま成り行きでうちの娘になったりしないかな。いやわんちゃんあるか?*3

 

なんて、我ながら中々の名案を思い付いたと自画自賛しながら意識を戻すと、いつの間にか部屋の扉の前まで着いていた。

 

 

「ふふふ、楽しい時間はあっという間、ですね。楽しかったですか?」

 

「うん、今までのお出かけの中でも一番楽しかったかも.......エルちゃんありがと! 大好き!」

 

 

「ぐっ......かわいい......、それは良かったです。さ、早速部屋に戻りましょうか!」

 

 

あーいけません、いけませんお客様!

突然のドストレートな愛情表現に戸惑いを隠し切れなかったオレだったが、ここは華麗に大人の余裕で受け流していく。因みに身長は負けそうである。解せぬ。

とまぁ、長々と宿の廊下でお話していたオレ達だが、これ以上は宿側にも迷惑だろう。そろそろ部屋に入るとしよう。

 

あ、そうだ。どうせなら入る直前に、エルちゃんをビビらせる為にもしもの話でもしてあげよう。

 

 

「無いとは思うんですけど、もしアイさんが起きてたらどうします?」

 

「えー? アイさん、こういう内緒のお出掛けは羨ましがっちゃう系の人だと思うから、もし起きてたら朝みたいにまたもみくちゃにされちゃうかも!」

 

 

絶対にありえない、イフの話で盛り上がるオレ達。

なんせ、アイさんは朝はだいぶ弱いタイプの人だからね。ここでドア越しに聞こえる声量でこんな事を言ってもへっちゃらなのだ。

 

 

「ふふ、確かにあるかもしれませんね。さあ入りま───」

 

 

 

ガチャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ.......もし、私が起きていたら......なんだって?」

 

 

 

「ぴゃっ.......」

 

「ひゃああああ!!!?」

 

 

 

と、油断しきっていた二人の異種族少女の前には、獲物を狩る虎の様なポーズを取り、ニヒルな笑みを浮かべたアイが立っていた。

 

まさかこの時間帯に彼女が起きている筈が無いだろう、と思っていた二人だったが、実は朝起きてから帰宅するまでに相当な時間が経過していた。

 

それもその筈、全ては突然転生&愛され寵姫コンビの世界の果てどころか道端の樽の使い道すら知らない、常識知らずにも程がある二人の外出だった。

そこら中を見て回り、遊んでいると時間はもうすぐお昼を迎えるというところ。二人揃って時間を見ていなかったのもあるが、これで起きていないと思われていたアイの額には、うっすらと青筋が浮かんでいた。

 

 

「......私が置いてかれている間に随分と楽しんでいたみたいね、お二人さん?」

 

あ、あのぅ......朝食を買いに行くついでに、ちょっと、ほんの少しだけ遊んでいただけ、ですよ? ね、エルちゃん! 時間もそんなに経ってないですし!」

 

「......みぃちゃん、いま、おひるまえ.........」

 

「あっ.......えっ? ほんとー?」

 

 

「〜ッ! 全く、ほんとにこの無自覚お馬鹿組は! 二人共、こんなに幼くて可愛いのに早朝からお出掛けなんてして! いくら観光を主にしてる都市とはいえ、悪い人がいるのは変わりないんだから! まずみぃちゃんはそもそも.......」

 

「ひゃ、アイさ、ち近い......」

 

「ひえぇ、ゼロ距離のお叱り! 私もお母様によくやられたやつだ......」

 

 

「勿論貴女もよこの溺愛お姫様! こーら逃げるなぁ!! 」

 

 

 

 

その後、宿にはおよそ四十分ほど、怒声なのか相手を褒めているのか、よく分からない曖昧な声が延々と響き渡っていたらしい.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

 

「......だからつまり、みーちゃんが一人で遊びに行ったりするのは私にとってはとても危険な行為なのであって、特にここは言わば異国の地なんだからそんなむやみやたらに.........」

 

 

「あー、うぅ.......ごめんなさい。アイさんの思いは充分に伝わったので、そろそろお昼にしたいかな、なんて「こらぁ! ちゃんと聞きなさぁい!!」ですよねー」

 

 

「みゃーちゃん、お腹空いたよぉ.......ちゃはーん、ちゃはあん食べたいよー!! あれ、言い方あってるかな?」

 

 

「それはそれで可愛いのでグッジョブですよ!! ただそれだけ余裕あるなら少しは助けて欲しいかなです!!」

 

 

 

あはは、一体オレはもう何分、いや何時間お説教を聞かされ続けているのだろうか。この世界の人達の感情の言語化能力がいや高すぎるのではないかと愚痴りたくなるみーちゃんです。

 

今現在アイさんからの熱烈ラブコール(解釈違い)が止まらない勢いである状況下の私ですが、目の前には私がこれから作る予定だった昼ご飯をご所望し過ぎてデフォルメキャラみたいになっている可愛らしいお姫様が。あら可愛い。

ていうかなんでこの子はお説教免れてるんだよ!! さっきまで仲良く怒られてた筈なのにおかしいだろ!!オレだけこんな一人だけ受け続けているの完全に不公平だと思うのですが!! 文明は現代より遅れてるのに一足早いAIいじめだ!! こんな様子だとうちのご主人が黙ってないよー! うわーん!!

 

 

「わー! もう助けてご主人さまー!!」

 

 

「ここが例えば北東の方にあるヤマノ郷国だったら、街の雰囲気もガラリと変わって国によって定められている規則も違うしそれからそれから......」

 

 

「あ、誰かが扉叩いてる。ボク見てくるね!」

 

 

 

それぞれが自由にやり過ぎていて、最早誰も統率出来ないとんでも空間になり始めた矢先、人見知りを克服出来たのかエルちゃんが率先して扉を叩いた人に応対しに行ってくれた。

誰だろう、下に居たホテルのお姉さんかな。てか扉叩く音うるさっ!!

 

 

 

「はひゃい! い、今すぐ開けますからそんなに叩かないでー!」

 

 

せっかちな扉の向こうの人に焦りながらも、一番上のドアロックを背伸びで開けるエルちゃんはやはり可愛い。まぁ背伸びしないと届かないのはオレも同じなのだが。はぁー世知辛。

 

 

 

「はい、一体何用でしょうか.......」

 

 

「ようやく見つけましたぞ! 姫様!! さぁもう逃げられま「さよならー」」

 

 

 

バタン。

 

 

 

 

「...........?」

 

 

「.................???」

 

 

「あはは、何でも無かったよ! ボク、早くみゃーちゃんのちゃあはーん食べたいな!.......む、むりかー」

 

 

 

 

上からアイさん、オレ、エルちゃん。恐らく反応は端から見ても三者様々だろう。面白いね(やけくそ)

 

 

この中で一番処理能力が早いと思われるオレですら今、目の前で起こった事に対しての状況把握が出来ていない。何ならさっきまで怒られていたので、格好ですらアイさんに抱き締められながらという無様な様子だ。

ていうか今の人、発言と格好的に多分騎士の人ですよね?

 

 

姫様、姫様! なぜこの様な暴挙に及び出るのですか!! 扉をお開け下さい!! 姫様!!!

 

 

「後ろの人、相当叫んでますけど大丈夫ですか?」

 

 

「あ、全然大丈夫。私の近衛兵みたいな人だから、多分ほっといたら開けるか扉壊すかだと思う」

 

 

「全然ダメじゃん......」

 

 

「全然ダメですね」 

 

 

 

あまりの衝撃に我に返ったアイさんのツッコミが刺さる。

こうして一人は扉を抑えて、オレ達は抱き合いながら絶妙な距離を取り話し合っている異様な光景がただそこにあるのだが、とりあえず話をしない事には始まらない。また厄介事が湧いてきた、と言わんばかりの表情を浮かべるアイさんをよそに、聞きたい事をどんどんと聞いていく。

 

 

「えっと、まずあの人は誰ですか?」

 

「うー、あんまり言いたくないけど......超絶ボクの国の人です。騎士団の中でも一番偉い立場の人、でしたね」

 

「なんでそんな他人行儀なんですか。っていうかもしかして、出掛けてる最中にたまに居た騎士姿の人って......」

 

「うん。外を回ってた時に居た怪しい人とかは、多分ぜーんぶ私を探しに来た騎士だと思う! ていうか絶対そう!」

 

「あの人達、全員エルちゃんのとこの騎士だったのね......」

 

「うぅ、面目ないです、はい......」

 

 

 

どこか余所余所しい様子のエルちゃんの言葉から、この事には触れて欲しくないという雰囲気を感じる。ていうかあの怪しい奴らやっぱりエルフの国の騎士だったのか。君主が実質存在しない観光都市に何でガチガチ装備の騎士が居るのかとは思ってたけど。ていうか結構な人数居たぞ。あいつら暇かよ......

 

 

「ていうか他国入るからせめて私服とかで潜入じゃないんですか?」

 

「ごめんなさい......うちの国そういう所あるんです......悪い子ではないんです......」

 

 

「いや怒ってるとかじゃないと思うけどね......」

 

 

「国ごと子ども扱いする器の広さでツッコミが供給過小過ぎるんですけど」

 

 

 

他国に自国の騎士姿で入るってそれ結構危なくない? 大丈夫?

いやそりゃエルフの国からしたら君主の娘がどっか行ってるんだもんね。居ても立っても居られなくて国ごと混乱してない訳ないわなワハハ。

それはそれとして、色んな事があり過ぎて全く聞く機会の無かった、今こそがエルちゃんが態々外の国々へ飛び出してまでやってきた本当の理由を聞ける大チャンスなのかもしれない。

こんな混乱状態でも頭の回るオレってほんと素敵。愛してる。

 

 

 

───よし、早速聞いてみるか!

 

 

 

 

「所で、後ろの騎士さん達が追い掛けているように......何故にエルちゃんは、こんな異国の国までやってきたんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
暴言

*2
鶏皮みたいなもの。カリカリしていて、ロックトラムに来た人達からはとても人気の商品。

*3
処刑。




ハッピーハロウィーンメリークリスマス明けましておめでとうハッピーバレンタインハッピーひな祭りハッピーホワイトデー。
遅れて誠にすいません。

次回は3月17日に投稿されます。
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