TSメイドロボ少女、異世界に君臨す(仮) 作:TS銀髪ロリっ子メイドさん
◇◆◇
「はぁ、はぁ───やーっと見付けたぞ、エルシィお嬢様! 」
「わっ」
小さなわたしの体が、ゴツゴツとしたよろいのうでに抱きしめられて、宙にうく。
どうやら、最近新しく騎士になったガーネストがわたしを追いかけてきたようだ。
いちおう、足をばたばたして抵抗してみるけれど、現役ばりばりの騎士であるガーネストには、これっぽっちも効かなかったみたい。
こわれ物を扱うみたいにそっと、優しく抱きとめてこちらを見るその姿は、まだ小さいわたしから見ても、正しく騎士であった。
「むうー! 早くおろしてよ、おばかがーねすと!」
「なっ、何て事を言うんだ、この我儘お嬢様は......なぁエルシィ、お前のお母様でさえ、小さい頃は割と可愛げがあったんだぞー? あ、今が可愛くないとか告げ口するのは禁止な。明日から俺の首が飛ぶから、いやマジで」
「ふーんだ、ぜったいに言ってやるもんね!」
「この年齢から権力を振りかざす味を覚えるとは......恐ろしい人だなあ、エルシィ様は」
あはは、と手のかかる子どもを相手にしてるみたいな態度のガーネストは、何やらわたしに用があるらしい。
でも予想はしてる。どうせまた、そろそろお友達をつくったらどうか、とかだろう。
「ここ最近、ずっとここで寝転んでるよなー。今の時期から友達を作っておくのが、将来の為になるんだぞ?」
「ふん、そんな事ぐらいわたしでも分かってるもん! でも、どうしても今日はここに居たいの!」
アンタは毎日ここに居るだろうが、というガーネストからの呆れた視線は見えないふりをして、どうにか帰ってもらえないか、とわたしは考える。
「おねがい、ガーネスト。また今度、つぎのぱーてぃーでお友達をつくるから!」
「そんな事言ってまた逃げるつもりでしょうに、お嬢様......俺の決意は固いですよ?」
「......ガーネストが好きなぱーてぃーのおかし、こっそり持って帰ってくるから!」
「ふ、どうやら俺はまたしてもエルシィお嬢様を見つけられなかった様だ......あ、柔らかめのブラウニーをお願いします」
そう言ってわたしに固い
ガーネストがバカでよかった。
「.........まだかな」
こうして待っている時でさえも、わたしの中のワクワクした気持ちは止むことがない。
そう、わたしがこうして毎日むりをしてここに来ているのには、やはり
自然が好きだから? それもある。
友達を作るのが苦手だから? それも、そうだ。
世界樹さまの近くが好きだから? もちろん、それもある。
でも、一番のりゆうは────
「ごめんね。遅くなっちゃって」
いつもの白いワンピースをはためかせ、その人はとつぜん、現れた。
謝っているようで、わざとらしく片目を閉じて微笑む彼女は、相変わらずわたしの心をどきどきさせる、とってもずるいひと。
わたしの、初恋の人。
「ううん、わたしも今来たところだよ!」
「ねえ、エルシィ。この植物は、どうしてこの時期にしか姿を表さないと思う?」
「うーん、なんだろ......聞くってことは、何かふしぎな理由でもあるってこと?」
わたしの目の前できれいに咲く、ごく普通のお花。
色は確かにとっても鮮やかな青の色だけど、このお花に何か特別なことでもあるのかな?
「ごー、よん、さん、に、いち.........ぜろ。ふふ、まだ子供のエルシィにはちょっと難しかったかな」
「だってわたし、まだこのお花のこと何も知らないんだもん」
「あ、それもそうか。ごめん」
もくろみ、って奴が外れたのだろうか。
いつもはもっと余裕のあるマシロちゃんが、少ししょんぼりしてあやまってきた。
.........かわいい。
「それに、マシロちゃんだって。まだ子どもでしょ?」
「なっ......エルシィ、何度も言うがね、私は、決して子供なんかでは無いのだよ。確かに、ナリはこの様に貧相だが.........」
更に、わたしがマシロちゃんのふしぎな所を言ってやると、いつにも増して顔を赤らめて、胸元に手を当てて声が小さくなった。
やっぱり、いじけてる時のマシロちゃんはとてもかわいい。
「......じゃなくてだね! 問題は何故、この花が特定の時期でしか咲く事が出来ない、という物だが.........」
「うん。結局なんでこのお花はそんなに変な感じになっちゃったの?」
おほん、と一息交えてまた話始めたマシロちゃん。
わたしが素直に疑問に思っていたことを伝えると、待っていましたとばかりに微笑んだ彼女が、説明をしてくれた。
「この花はね、雨の降るこの時期......暦で言うと六つ進んだ辺りなのかな。そんなジメジメとした、皆が薄暗い時期にこうして、鮮やかにその弁を咲かせるのが好きなのさ」
「うーん、どうしてそんな時に咲いちゃうんだろ......あ、もしかして雨がいっぱい降るから?」
「あはは、事がそれ程単調だったら良かったんだけどね。どうやらそうでもないらしい」
真剣な表情で
「雨と言うと、エルシィはどんな事を思い浮かべる?」
「ん、わたしは割ときらいじゃないよ。あ、でも雨の日はお外で遊べないし、マシロちゃんとも会えないならやっぱり嫌かも......」
「!? んんっ!......と、突然のデレは心臓に悪いだろう、エルシィ」
「えへへ、マシロちゃんがかわいくて、つい言っちゃった。でも、それと何か関係があるの?」
『こ、この無意識小悪魔っ子め......』という、よく分からない言葉をいいながら、話をもどすマシロちゃん。
まだ顔がちょっと赤いのは、言ってあげた方がいいのかな?
「とにかく、そう、雨に対する人々の思いは様々だ。大人であれば神様の仕業だとか、子供であればただの水溜り製造機、とか......だが大多数はきっとこう思っているはずだ。
「う、うっとおしい?」
それは、そうだけど。
一瞬、ちょっとだけふざけているのかな、とも思ったけれど、どこまでもマシロちゃんは真剣だった。
空は、まだいい天気だった。
「ふふ、気持ちは分かる。仕方のない事だろうね。誰であろうと、外での活動は制限されるし、生活をする上で色々とやりにくい」
「? つまり、マシロちゃんは何が言いたかったの?」
ここまで話をされても、わたしには全く意味が伝わらなかった。
やっぱり、わたしにはまだ色んな知識が足りていないらしい。
「そんな状況下に人が発する、
「???」
「もっと言えば、この花が観測されたのはごく最近の事だ。それに加えて、こいつの咲いている範囲がこの世界樹周辺に留まっている......という訳でもない」
......うん、たぶんこれは、今のわたしには分からないものだ。
だって、言葉は分かるのに何一つ頭に残らなかったもの。
「そこで私は、とある一つの事を......あぁ、ごめんね。エルシィにはまだ早かったかな」
「ううん、大丈夫だよ。マシロちゃんのお話、どれも聞いたことがないから、とっても面白いよ!」
わたしが最後までよく理解できなかったのは、そうなんだけど。
だけど、少なくともこの思いだけは本当だった。
幼いわたしと、同じくらいには小さくて、ホントはもっとか弱い筈なのに。
とても物知りで、綺麗な格好で、可愛いマシロちゃん。
大体、好きな人のお話がつまらないなんてわけない!
「──それは、良かった。ふふ、つまらない話はこれくらいにして、何か他の遊びでもしよっか。どうだいエルシィ、世界樹の枝、座ってみる?」
「.........! わーい!」
何だかんだ、マシロちゃんについてふしぎに思うことはいっぱいあるけれど。
やっぱりわたしは、どこまでも優しいマシロちゃんが、とっても大好きだ。
「..........もしかしたら、最早事態はそう簡単な物では無いのかもしれないな。やれやれ、折角こんなに素敵な友人も出来たのに」
それからは、いつものようにマシロちゃんといっぱい遊んだ。
「わ! みてみてマシロちゃん! とっても綺麗な鳥さんだよ」
「本当だね。というか、やっぱりエルシィは動物と仲良くなるのが早いよね。羨ましいよ」
「えへへ、この森の動物さんたちが優しいだけだよ、きっと。ねー、アオちゃん?」
「早速名前を付けてるじゃないか。どれ、私も可愛がってあげるとしよう。こっちにおいでー」
「......なんか、この子はマシロちゃんとは気が合わないみたい。何となくそんな声が聞こえる気がする」
「な、何だと......やはり、私のこの恐ろしいまでの無機質なボディが気に食わないとでも言うのか......」
「ふふふふ......エルシィ、これが何だか分かるかい?」
「どひゃー!!? なんてもの持ってるの!! そ、そそれ、最近うわさのミルワームってやつでしょ! むりぃ!!」
「ふっふっふ。ぶっちゃけ今こうして持ってる私も、このミニマムな身体から放たれている途轍もない気色悪さに嫌悪感を抱いている最中だよ。ていうか今すぐ放したい。......わー、手が滑った(棒)」
「きゃー!!? 何してるの!! マシロちゃんのばかー!!!!」
突然、わたしの体に止まった鳥さんを、どちらがいち早く懐かせられるか、だったり。
土の下によくいる、ちょっとわたしには向いてない見た目の虫さんをめぐって、マシロちゃんと激しい
二人で夢中になって遊んでいるうちに、いつの間にか周りは薄暗くなってしまっていて。
そんな気持ちはなかったのに、何だかちょっぴり寂しくなってしまった。
二人して世界樹さまの大きい根本に座り込み、夕日を見る。
「───ふふ、どうやらもう日が暮れてきたみたいだよ、エルシィ」
「......ほんとだ。うーん、わたしはもうちょっと遊びたいのになぁ」
そんなわたしの心の中の思いなどまるで知らないとばかりに、美しい夕焼け雲が空を流れてゆく。
まだ遊びたいなぁ、といじけているわたしを見かねたのか、マシロちゃんが手を握ってくれた。
「えへへ、やっぱりマシロちゃんの手は安心するなぁ。もっと握っててもいい?」
「こんな私でも良いのなら、いくらでも」
そうして二人とも無言の時間を過ごしているうちに、とっても短い、だけどそのぶんとっても綺麗な夕焼けの時間も、そろそろ終わりを迎えそうになっていた。
ふと、マシロちゃんが口を開く。
「ねぇ、エルシィ。唐突だけれど、私の話を聞いてくれるかい」
「ん、どうしたの? もしかして、マシロちゃんももう帰っちゃう?」
「ふふ。私にだって、雨風を凌げる家くらいはあるさ。これから話すのは、そんな事よりももっと単調な事だよ」
「?」
そう話を切り出すマシロちゃんの声の
「......エルシィと出会って、もう二年くらいは経つかな。私は、私自身のこの長い人生の中で、短くはあるがエルシィと過ごした毎日が、とても楽しかったよ」
「そ、そんな事急に言われると、はずかしいよ。......えへへ......でも、マシロちゃんはまた明日もわたしと会って、それでまたいっしょに遊ぶでしょ?」
「......あぁ、そうだね」
改めて思うと、この時のわたしの純粋な問い掛けに答えるマシロちゃんの顔は、とても悲しげだった。
「まぁ、結局何が言いたかったのかと言うとね。エルシィは私の人生の中でも、一番の親友であり、それでいて一番大切な人だよ、と最後に伝えておきたかったんだ───大好きだよ、エルシィ」
「ふえぇ!? ま、マシロちゃん!?」
マシロちゃんは、わたしに言いたい事だけを言うと、座っているわたしの膝に頭を乗せて、とたんにゴロゴロし始めた。
そ、それよりも、いまわたし、もももしかしてマシロちゃんに告.........!!?
「あー、やっぱりエルシィの膝枕は最高だね。具体的に言うと、私の中の荒んだ心が浄化される」
「ま、ままマシロちゃんってもしかして、もしかするとわたしの事......すき?」
「? うん。元からエルシィの事が大好きだよ、私は」
え。
えー!!!
こ、ここれってもしかして、いやもしかしなくても?
告白!! ってやつですか!!?
「はわぁ......わたし、幸せ.........」
「あ、そうだエルシィ。前々から思っていたんだが、君ってば、どちらかと言うとボーイッシュ系のが似合うと私は思うんだよ。いや本当に」
「......はっ! んぇ、ぼ、ぼーいっしゅですか?」
「うんそう。いっつあぼーいっしゅ」
あれ!? マシロちゃん、もしかしてそんなにこの話題に興味ない!!?
......にしても、ぼーいっしゅか。なんだかよく分からないけど、なるほど、いい響きだ。
「例えば、ちょっと一人称を『僕』にしてみたらどうだい? それだけでも、エルシィの魅力は一気に引き立てられると思うな」
「い、一人称を? ぼ、ボク......ボクはエルシィ! マシロちゃんの事が大好きなんだぁ、えへっ!」
「ぐはぁ!!!」
「ま、マシロちゃーん!!?」
言われてみた通りに、試しに自分の呼び方を変えてみたら、これがまたしっくりきた。それから勢いでマシロちゃんへの愛を叫んだら、マシロちゃんが急に血を吐いて倒れた。
うん......ボク、か。なんだか、とても馴染みやすくて、他の言い方より良い気がする。
「これからボク、マシロちゃんに言われた通りに、このままで過ごしてみるね。素敵な贈り物をありがとう、マシロちゃん」
「うぐっ!......さ、最後にこんな純粋な子に私自身の性癖を植え付けてしまうとは......ふふ、どういたしまして、エルシィ」
そうこうしている間に、どうやら本当に日が落ちてきたらしい。
そろそろ帰らないとお母さまやお父さまに怒られてしまうので、マシロちゃんにいつもの様に断りを入れて、帰る用意をする。
「それじゃあ、また明日ね。今日も一緒に遊んでくれてありがとう! ばいばーい、マシロちゃん!」
「.........うん、また明日。願わくば、どうかこの先も幸せに過ごしておくれよ、エルシィ」
最後に別れる前に、改めてお互いに顔を見合わせて、さよならを告げて。
その日からマシロちゃんは、二度と私の前に姿を表す事はなかった。
─────────
─────。
.............
誰かから呼ばれた気がして、目を覚ます。
声を掛ける時のこの喧しさからして、多分ガーネストがボクを探しに来てくれたのだろう。
それにしても、あぁ───
「やはりここに居られましたか、姫様! またこの様な所で寝転がって......御召し物が汚れてしまいますよ!」
とても懐かしい、夢を見た気がする。
私が
「む、おっきな世界樹様と自然に守られてるこの国で何てこと言うの、ガーネスト! ふふーん、こんなに優しい草っぱの感触......汚い所なんて全くないもん! ね、グロウー?」
「はは、姫様がこの場所を好んでいるのは存じておりますが、流石の私もガーネスト総長に口答えなんて......恐ろしいですよ」
「そんな事言っちゃって、グロウももう騎士団の中では指折りの実力者なんでしょ? それに、ガーネストも昔はボクに対してすっごく距離が近くてね〜」
「ひ・め・さ・ま!! それは当時の若さ故の過ちだと何度言ったら......いえ、申し訳ありません、姫様」
「ボクとしては、そんなに畏まられてもどう対応すれば良いのか困っちゃうんだけどなぁ」
気付けば、あの日から七十年は経った。
それだけの月日が経っても相も変わらず、ボクには友達と言える様な存在はごく少数であり、やっぱりお気に入りの場所はこの世界樹様の根元。
今更ここに居ても、特に意味がないのは分かっているけれど。
でも結局、どこまで行ってもボクはこの世界樹様の付近からは離れられないみたいだ。
もうあの子には会えないなんてことは、分かり切っているのに。
「......はぁ、いつまで経っても姫様は、この世界樹様の周辺がお好きなんですね」
「うん。皆には分からないかもしれないけれど、ボクとしては何よりも代え難い思い出がある場所だからね、ここは」
「私としては、姫様のそう言った思い出のある場所に関する深いこだわり、とても良いと思いますよ。やっぱり、誰しも一度は小さい頃の記憶に浸りたいですもんね」
「お、グロウはやっぱりボク寄りの性格だね。将来出世出来るよ〜」
まぁ、ボクは生まれついての王族道なんだけどね。
やった! とはしゃぐグロウを治めながらも、ガーネストは少しだけ此方に目配せをしたのち、そのままグロウを連れて帰ってしまった。
恐らく、此処にボクが居るという事は、私自身が満足するまで意地でも動かないという事が長い付き合いで分かっているのだろう。
そうして、二人の居なくなった世界樹様の草むら周辺には、たった一人ボクだけが残った。
───いつまでも変わらず、ただ優しい風だけが吹くこの場所。
「......はぁ」
いつもならもっと気持ちの良い筈なのに、今日は何だか陰鬱とした気持ちだけがボクの心に溜まって行く。
ついさっきまでは、凄く安らう事が出来ていたのにな。
「ガーネストも、ちょーっと年数が経っただけであんなに偉くなっちゃって。あーあ、前みたいに気軽に接してくれたらなー」
本当は、ガーネストも騎士団の総長に恥じない振る舞いをしようと頑張っている事だって、分かっている。
でも、あそこまで他人行儀になっちゃうのは、ボクとしてはあんまり良くないというか......何と言うか......
「結局、あれから成長していないのはボクだけなのかなぁ」
今だって、覚えている。
あの子がボクの前に姿を表さなくなってからの、代わり映えのない毎日を。
最初の頃はひたすら探したり、会えない日々を思い泣きじゃくったりもしていたが、年を重ねるに連れて、そんな事も容易く出来るようじゃなくなって。
「......この木、昔はマシロちゃんと二人で秘密基地にしてたなぁ」
特に意味は無いけれど、思い出に浸りたくて昔勝手にボク達が作り上げた、とある巨木の中の秘密基地に入ってみた。
そして、この時の何気ない行為が、ボクの第二の人生の転換点となる。
「......ん? 何だろこれ、手紙?」
※以下、エルシィの話を聞いた上での、みーちゃんの特別要約
『エルシィへ───久し振りの会話がこんな紙切れだけと言うのも寂しいとは思うが、どうか許してほしい。 まぁでも私のマイベストフレンドはそんな事気にしないよね! そして突然だが、単刀直入に言うと、世界樹様にはここ数年でとある呪い......弱体化、或いはデバフの様なものか。まぁとりあえず私の見立てではちょっと放置しといたらヤバめのとんでも呪縛システムが構築されているのを確認した。具体的に言うと、あの時私達が話していた人々の負の感情、って奴が何故か世界樹様の根幹部にも蓄積されている様だ。そこで、エルシィにはとある一人の人物を呼んで来て欲しい。......見た目は、完璧にではないが、ほぼ私と同じ様な、というか姉妹かってぐらい同じな子だ』
『あぁ、大丈夫だ。安心して貰っていい。勿論、エルシィには連れて来て貰うだけでオーケーさ。後の事は私が
──────────
「......かくしてボクは、マシロちゃんからのお手紙を頼りに、無事お城に辞表*1を叩き付けた後、直ぐ様この大規模な商業都市、ロックトラムへと旅立って行った......という訳だよ!」
「よく分かんないけどよく分かんないですね」
「隠れ世の森郷って、もしかしてお馬鹿な子しかいないのかしら......」
「あれー!? 思ってたよりも良くない反応!?」
思わず小◯構文が飛び出してしまう位には内容の濃い時間だった。そう、それはまるで後ろで扉を叩いていた騎士の方が疲れ果てて居るのが丸分かりなくらい。
にしても、いやぁこれはこっちが甘さで胸焼けしてしまう程の色恋話だったね。
途中なんて、聞いてるこっちが顔真っ赤になっちゃうかと思ったもん。あれオレって羞恥心芽生えた時に顔赤くなるプログラムあったっけ?
「そう、そしてこの話をし終えてから、やーっと気付けた事がありました。......ずばり、みゃーちゃん! 貴女こそが、我々の尊い世界樹様を元通りに戻せる肝心な要だと!! ていうか余りにも似過ぎてやいるので個人的には大好きだよとか囁いて欲しいですえへへ......」
「なんか、それにしては気付くの遅くないですか?」
「うぇ!? いや何と言うか、いざ国の外に出てみたはいいけど今まで外出らしい外出をした事が無かったので、ボクは結局異国ではまともにお話もままならないクソザコであって時間が経つと美味しい食事達にこの思いが向けられていたというか何と言うか.........」
一体誰に何を弁明しているのかも分からないまま、段々落ち込みどんどんと背中が丸まっていくエルフの王女殿下。
あれこの国大丈夫か? もしかして次代で滅びるんじゃないか?
「という事らしいのですが、どうしますかアイさん」
「え、ここで私に振ってくるの!?」
まさか此方に振られてくるとは思ってもいなかったのか、いつの間にか沸騰させたお湯に紅茶の素の様な物を二杯ほど入れて優雅に座っていたアイさんへと言の葉と共にアイコンタクト(激寒)を送る。
ていうか何だそのまるで不意を突かれたみたいな表情は。そんな顔でもとんでもなく美人さんだなこのやろう。
「いやー、まぁ私としては? 最終的にはみーちゃんの御主人様を見つけられたら良いなとは思っているので? 途中でいくら寄り道があっても別に良いかなーとは思っていますが?」
「ふふ、なるほど......
「私って保護者の立ち位置だったのね......」
まぁ、それはそれとしてね。
オレとしても、あんまりにも寄り道ばかりしているのは、そんなに良くないという事は分かっているのだが。
それでも、最後には御主人様が隣に居てくれて、御主人様に沢山褒めて貰えるような。
それでいて、ばっちりと有能なメイドさんとしての、沢山の武勇伝の数々は、いくらあってもいいと思うのだ。
「それに、もしやするとそのエルフの国に御主人様が居る可能性も無きにしも非ず、ですからね」
「まぁ、可能性の芽を一つ潰すのと同時に、人助けどころか国助けも出来たら相当有名にはなるだろうね〜」
一応、手元にあるチェックインの紙の残り日数を見る。
残り滞在可能期間、およそ二日余り。尚、途中退場による返金料金等は発生致しませんのでご了承下さい。
...............
「何も問題はありませんね」
「わあぁ私達の努力の結晶でも有るお金が湯水の様に溶かされて行く!?」
「えっと、本当に大丈夫でしょうか......?」
これくらい誤差だよ、誤差。
多分国助けしたらアドバンテージ爆有りだって。例え高級宿だろうがホテルだろうが問題なしです。
それに、此処に留まってたら宿の人達からしても迷惑だからね。だって今多分凄い数の騎士が押し寄せてると思うもの。
よし、久し振りに本気出すか!
「アテンションプリーズ。皆様、お荷物は纏められたでしょうか。当機は揺れによる事故、アクシデント等は一切の考慮をしておりませんので、御了承下さい」
「あ、結構久々だね、これ! ほらエルちゃん、しっかり掴まってなよー?」
「え、え!? ちょちょっと待って下さい! 一体何をする気なんですか、ていうかここ掴んでも良い場所なんですかぁ!!」
「大丈夫! 私も初めての時は死ぬかと思ったから!」
「それ全然ダメなやつですよねー!!」
アイさん達には、対物体性質感知管くんこと便利なヒモを握らせて、オレは動き出す為の準備を行おうと思う。
久方振りに、体内に貯蓄されている燃料をエンジンに回し、普段は奥の方で格納されているメカメカしい機械部品で彩られた人工性両翼を展開する。因みに表面は神話上のドラゴンが如く白銀の美しい翼にコーティングされているのでご安心下さい。
おい知ってるかお前ら。正に完璧で究極のメイドさんには不可能なんて三文字は脳内国語辞典に入ってないんだぞ。単刀直入に言うと今から飛びます。
「扉からは出られないと判断するので、窓からの脱出を確定ルートとして
「実際に飛び出したら多分人並みの速さになると思うから、エルちゃんも安心してね!」
「え、これほんとに飛ぶんですか、飛んじゃうんですか!?」
そういえばアイさんには、大精王国の時に一回だけ体験させた事があったなぁ。一緒にモンスター殺しまくってお互い血まみれになった後、色々処理とか帰る時の視線とかその他諸々面倒臭くなって飛び......おっと、とりあえず今は此方に集中しなければ。
オレが飛ぶ時の場合は、何よりも初速の勢いが重要だ。それだけでその後安定して飛べるかどうかが結構変わってくるんだよな。
脚を地面からしっかりと踏み込める形で、少しだけ角度を付ける。
宿の料金どう払おうかなぁ。痕から着払いとか出来ないかなぁ.........ちょっと雑念が多過ぎる!!!
『3、2、1.........』
よっしゃ、ちょっくら世界樹救いに行くか。
みいちゃん、行っきまーす!!
「.........Go!」
「ひゃっほー!!!!」
「ひゃあああぁああ!!!!!?」
後ろ側から聞こえてくる歓声と叫喚は聞こえないふりをして、白銀の翼で空を駆ける。
向かうは未開の新しい地。
いざ隠れ世の森郷へ!!
こんなに投稿期間が空いても見てくれている方々が居て、ただただ、嬉しい。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。