百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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20 今ここに2人の戦士が

「最初の歌詞は、珈琲ライナーと来部ファイアーが出撃する様子を表現している。続いて、戦いを前にして燃えている操縦者の気持ちを歌う。そして、合体して来部ボクサーになる様子。……この歌はきっと、ロボの名称や、合体のタイミングを操縦者に教えるためのものだったんだ。いわば、説明書みたいなもんだな」

「でも、さっき合体したときはかき消されて、ほとんど聞こえなかったわよ?」

「うん、それは俺も思った。改良が必要だな」

 

 あとでキンジに文句を言っておかなくては。裕介は、心の中の備忘録にそう記入した。

 

『パンチだ フックだ 来部 来部 ボクサー! 打たれても 心が壊れても』

 

 さらに、歌が教えてくれるのは合体のタイミングだけではない。攻撃のタイミングも、だ。

 

「――さあ、ここからが本領発揮だぜ!」

 

 

 裕介と美明日が、コクピットでレバーをぐいと引く。それに呼応し、力強く大地を蹴って来部ボクサーが再起した。兄妹攻神が繰り出した剣を、両の拳で軽々と受け止めている。

 

「喰らいなさい!」

 

 大剣を払い除け、来部ボクサーの反撃が始まる。右、左と連続で強烈なパンチやフックを叩き込み、龍虎型ロボの装甲を損傷させた。

 

『ピストンパンチだ 来部 来部 ボクサー! 前に出なけりゃ 勝利はないのさ』

 

 さらに、来部ボクサーの技の一つ「ピストンパンチ」を発動。ボクシングのような動きで、高威力の殴打を次々に見舞う。

 

「ぐあああっ……」

 

 兄妹攻神は節々からスパークを迸らせ、かなりダメージを受けていた。

 

「意味が分からん。なぜ急に動きが俊敏になり、攻撃のキレまでもが上がったのだ⁉」

「音楽の力ってやつだ」

 

 裕介が簡潔に答える。

 

 

『ミラクル ツインブロー ノックアウトだぜ‼』

 

「……BLACON・SUN。お前の乗る兄妹攻神も、確かに強力だったよ。でもな、ロボってのは一人で乗るもんじゃねえ。開発に携わったたくさんの人々の思いを乗せて、操縦者の俺たちは戦えているんだ。アメリカにいる俺の仲間が残した歌が、来部ボクサーの真の力を引き出してくれたぜ!」

「原典の力を失い、自分が弱体化しつつあることをあなたは恐れていたわね。けど、人を本当に強くするのは、強力な武器でも、ましてや原典のイメージの力でもない。信じ合える仲間との絆や愛が、どんな不可能も可能にする。私たちはそれを、無貌との決戦で学んだわ!」

 

 歌にタイミングを合わせ、二人の戦士は同時に叫んだ。

 

「「『ミラクル・ツインブロー』!」」

 

 来部ボクサーの持つ全エネルギーが、両拳に集中する。赤い光と超高熱を発している拳を武器に、巨大ロボは兄妹攻神へ勢いよく突進。至近距離から連続パンチを浴びせ、龍虎型ロボを彼方へと吹き飛ばした。

 

 

「――ノックアウトだぜ!」

「早川くん、必殺技の名前はともかく、そこも忠実に真似る必要はないと思うのだけれど」

「そ、そうか」

 

 かっこつけて呟いたら、美明日からクールにツッコまれた。裕介は照れくさそうに頭を掻いた。

 過程こそかなりグダグダだったけれども、歌の真意に気づいて大逆転。かくして、来部ボクサーは華麗なる初勝利を収めたのである。

 

 

 間一髪でコクピットから脱出したが、既に瀕死の状態だ。

 バッタ怪人は力なく地面に横たわり、不規則な呼吸を苦しそうに繰り返していた。来部ボクサーを合体解除し、二機のマシンを帰還させた裕介と美明日が、彼の元へ駆け寄る。

 弱った敵にとどめを刺すような、無粋な真似はしない。黙って今際の際の言葉を聞いてやるのが、全力を尽くして戦った相手に対する礼儀というものだろう。

 

「……原典の力がなくとも、絆と愛で強くなれる。お前たちはそう言ったな」

 

 弱々しい声で、BLACON・SUNは言う。

 

「しかし、そんなことが本当にできるだろうか。俺たちは、いかんせん原典の恩恵を長く受けすぎた。今さら、元の生活に戻れるかは分からない。これから俺は、何にすがって生きて行けばいいんだ」

「立って歩け、前へ進め。お前たちには、立派なオリジナリティーがあるじゃないか」

 

 自分たちを新たな原典だと再定義することで、裕介たちは無貌に勝利した。そんな彼らだからこそ、言える台詞だった。

 

「俺は……間違っていたのか」

 

 ほどなくしてバッタ怪人は目を閉じ、動かなくなった。敵の最期を見届け、裕介が踵を返す。

 決着はついた。あとは、ヒーローとしての力を活かし、破壊された街での救助活動に協力するだけだ。バイクに跨り、パートナーと共に走り出す。

 

(BLACON・SUN。お前の生きざま、確かに見届けたぜ)

 

 

 今後も、BLACON・SUNのような無貌支持派が攻めてこないという保証はない。皆が皆、お菊らレジスタンスのように無貌へ反発していたわけではないからだ。

 だが、超次元界はきっと、少しずつ変わっていくだろう。原典のイメージを強制的に付与されていた時代は終わり、自分の足でしっかりと大地を踏みしめ、オリジナリティーを持って生きていく時代が始まる。

 そのときこそ、本当の意味での平和が訪れる。

 

 

『野生に目覚めろ 珈琲ライナー! 雄叫び上げろ 来部ファイアー! 輝く瞳で 明日に生きる』

 

 なお、地下にある格納庫へ戻っても巨大マシンのコクピット内では歌が流れ続け、二番の歌詞に突入していたことを裕介たちは知らない。歌が始まったときは合体時の轟音でほぼ聞こえず、戦闘終了後に歌を止めるボタンがついていないとは、なかなかカオスな仕様だ。いずれ、キンジやピーターに直してもらう必要があるだろう。

 戦え、オメガ珈琲シルバー! 負けるな、超次元ライダー・来部! 新たなロボ「来部ボクサー」を武器に、どんな敵もノックアウトしてやるんだ!

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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