百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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23 オペレーション〈無貌〉

 BL警察本部にて。

 

「先輩。俺、一つ気になってたことがあるんですけど」

「何だ」

 

 書類の山と格闘しつつ、サクヤとケイイチロウは言葉を交わしていた。紙から視線を上げず、目を合わせぬままで淡々と話す。

 

「無貌たち超次元生命体は、自分たちの世界が環境汚染されて、新たな居住地を求めて他の世界へ侵攻したんですよね?」

「そうらしいな」

「でも、彼らが操っていた高次元生命が既にいくつもの世界を支配しているのに、どうして人間界までも攻める必要があったんでしょう?」

「可能性は三つある」

 

 ほとんど間を置かずにケイイチロウが答えたところを見るに、彼自身、その疑問に向き合ったことがあるらしかった。

 

 

「第一に、超次元界の人口が多すぎて、今までに征服した世界に全員を住まわせることができなかった。第二に、征服した世界の多くは居住に適した環境ではなかった。第三に、この二つの説のどちらでもなかったが、強い力を持つ人類を警戒し、潰そうとした。……と、まあ、俺もここまでは考えた」

「先輩、俺も四つ目の説を考えましたよ。超次元生命体はなるべく裏方に徹していたかったから、高次元生命体の前に姿を現して『この植民地は我々が頂いた!』みたいな台詞を迂闊に吐けなかったんじゃないでしょうか? ほら、次元大魔王を泥人形とすり替えたのも無貌の仕業でしたし。その辺りの工作がバレたら、高次元界と全面戦争になりかねません」

「だが、サクヤの説でいくと、仮に高次元生命体が地球を植民地できていたとしても、無貌は地球を横取りできなくなってしまうぞ?」

「あっ、そうか……」

 

 頭を掻くサクヤを、ケイイチロウは「仕事の手を止めるなよ」と軽く叱った。

 

 

「泥人形で思い出したが、アメリカに妙なカードゲームの使い手を送り込んだり、無貌は常々用心深い奴だったな。どうにか倒せて良かったよ」

「全くです。もう二度と会いたくないですね」

 

 しみじみと、二人は頷き合った。

 

「肝心の無貌が死んだ今となっては、超次元界上層部の思惑なんて知りようもない。すべては闇の中か」

 

 ケイイチロウがそう呟いたのを見計らったかのように、デスクに備え付けの電話が鳴り響いた。

 

「もしもし。ああ、早川か。……何だって? 無貌の遺伝子情報を宿した五枚のカードが、日本に向かっている? 無貌が復活するかもしれないって? おい、今日はエイプリルフールじゃなかったよな?」

 

 

 都内、といっても二十三区外の閑静な住宅地。

 三十歳独身男性、趣味はカードゲーム。こう書くとあまりパッとしないけれども、実はこの男性、もう一つの趣味は競馬で、予想を次々に的中させる。競馬で儲かって金には困っていないので、大胆にも高額なカードの取引に手を出し、それを売却してさらに金儲けすることもしばしばあった。資金が潤沢だから、ちびちび賭けるのではなく、思い切って博打が打てるのだ。

 

「よし、もうすぐ届くぞ。一枚数百万ドルは下らない、世界にたった一枚の超レアカード、『封印されし無貌』シリーズ! その五枚をすべて手にした僕は、性癖王というカードゲームの王になったと言っても過言ではないね! フッフッフッフッフ!」

 

 独特の笑い声を上げていると、ピンポン、と宅配業者が自宅のインターホンを鳴らした。

 

「フラミンゴ様、いらっしゃいますでしょうか? お届け物です」

「はいよ、すぐ行きます。フッフッフッフッ!」

 

 玄関で応対すると、なぜか宅配業者の男は困った顔をしていた。

 

 

「あのー、お届け物はカード五枚ということになってますが、何だかさっきから、段ボール箱の中から光が漏れてるんですけども……」

「ええ?」

 

 怪訝な顔で、フラミンゴと呼ばれた男は箱を受け取り、ガムテープを剥がした。開封すると、中には眩しく光る「封印されし無貌」シリーズの五枚のカードが鎮座している。

 

「おお、何と神々しいことか。偉大なカードというのは、光輝いて見えるものだよ」

「それにしても、光りすぎじゃないでしょうかね?」

 

 気味悪そうに、宅配業者は言った。ハンコを押してもらうと、そそくさと退散していく。

 

「フッフッフッフッ! これだから素人は。なぜ、このカードの良さが分からない。信じられん馬鹿共だよ」

 

 フラミンゴもさっさと自室に引き上げ、じっくりとカードを眺めようとした。が、部屋のドアを閉めたちょうどそのとき、「封印されし無貌」の輝きが一段と増した。

 

「何……だと……?」

 

 

 男は目を疑った。五枚のカードが重なり合うようにして、一つに融合していく。やがて、それは光の中で形を変え、幼い子供のような姿として顕現した。

 段ボール箱の中に立つのは、小学校低学年、いや下手をすると幼稚園児くらいだろうと思われる、桃色の髪の少女。カードをオークションで落札したはずなのに、どうして今自分の部屋には幼女がいるのか。フラミンゴには、まるでわけが分からなかった。

 はたして、少女は辺りを見回すと、きょとんと首をかしげた。

 

「ムーヴォ、ここ、どこかわからないます」

 

 変な日本語だな、とフラミンゴは思った。ていうか、ムーヴォって何だ。どこかで聞いたような響きだが……。

 




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・SPY×FAMILY
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